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続・美少女「プラモデル」の現在地 ~フレームアームズ・ガールを作ってみる~

公開日:センセイ (べ・一文字)

予告通り、前回に続いての美少女プラモデル話です。何でも前回のコラムを契機に「たいむましん」のプラモデルページが美少女モノを扱うことになったとか…。な、なんつーバタフライエフェクトと戦々恐々としつつ、今回も経験と記憶がベースの視野の狭めなお話をさせて頂きます。かつ、文中敬称略です。予めご了承ください。

 

現在市場で大きい存在感を持っている各社の美少女プラモデルですが、突如「美少女キャラクタープラモデル」がぽこじゃか発売され続けたわけではなく、長い蓄積があって現在の状態に至っています。その「美少女キャラクタープラモデル」の始まりは何かと言うと、ガレージキットや美少女フィギュアと根源を同一としており、80年代に多数発売された美少女キャラプラモデルが祖であることは、過去コラム「美少女ゲーム界隈と美少女フィギュア市場のカンケイ【1】」にも書いた通りです。

この回で取り上げた「うる星やつら」のラムのプラモデル内のスカート内の下半身にパンツのモールドが刻まれていたことを示すインパクト抜群の表紙の『我々は如何にして美少女のパンツをプラモの金型に彫りこんできたか。』(著・廣田恵介/双葉社)に詳細が書かれていますが、80年代は初代ガンダムの登場キャラが100円で販売されていたキャラクターコレクション、表紙を飾った『うる星やつら ラム』等のキャラクターが発売されていたのです。


『我々は如何にして美少女のパンツをプラモの金型に彫りこんできたか。』(著・廣田恵介/双葉社)

 

90年代、人気キャラクターのガレージキットが徐々に流通し始めた時期でも、美少女プラモデルは発売されています。有名な所ではバンダイから、「美セレクション」と言うキャラクタープラモデルが発売されました。当時バンダイのプラモデルで採用されていた「いろプラ」で塗装せずとも付属シールで見栄えがするものが出来ると言うコンセプトで、『美少女戦士セーラームーン』『幽遊白書』からの商品化が行われて、このラインナップからも判るように美少女だけではなく男キャラ(『幽白』の浦飯、飛影、蔵馬)もラインナップに入っております。

さらに有名なのでよくネタにされるのですが、『ママレード・ボーイ』もこのラインナップに入っており、主人公の「小石川光希」だけでなく男キャラの「松浦遊」もプラモデル化がされています。どの層に向けた商品化だったんだ本当。


美セレクション『小石川光希』『松浦遊』


顔は彩色済みなのが見て取れます

90年代半ば、これも過去コラム「美少女ゲーム界隈と美少女フィギュア市場のカンケイ【1】」にも書きましたが、『ときメモ』を始めとしたゲームキャラクターが模型業界にて大きな存在となっていく中、これまた世間を揺るがす存在になる『新世紀エヴァンゲリオン』のTV放送が開始し、その人気を受けてバンダイよりプラモデルが発売されます。

その中で「リミテッドモデル(LM)」と言うシリーズが立ち上がり『エヴァ』の各メカや敵キャラである使途がこのLMシリーズで次々と商品化されます。先日再版された『エヴァ』のプラモデルは「LMHG」と言うこのLMシリーズの発展系なんですよね。

このLMシリーズの特徴はプラモデルでありながら内部までギッシリプラ素材で埋まったその構造で、組み立てはレジンキットと同じ要領で切ったりパテを盛ったりする必要がある、と言う物です。

通常のラインナップではないマイナーなメカが商品化されるのも特徴で、『機動新世紀ガンダムX』のガンダム以外の量産型メカや『天空のエスカフローネ』『VS騎士ラムネ&40炎』等から立体化が行われ、メカ以外では『エヴァ』からは第三使途サキエルの他、『覚悟のススメ』の強化外骨格も商品化されています。ここまで来れば迷走と言うかナナメ上に突き進んでますな。

そのラインナップ終盤に当時発売されたばかりの『ファイナルファンタジーⅦ』のクラウド、エアリス、ティファが商品化されています。ただしキット成形色は肌色一色でポーズを変更する場合は「切り取って隙間はパテで埋めよう」と制作に必要なスキルはガレージキットそのものだったので、残念ながらあまり定着せずにシリーズは終焉を迎えました。もっと色んなキャラが出ていれば変わったのかなとか思ってしまいます。


リミテッドモデル 『エアリス』

 

そして90年代が終わって21世紀頃になると、食玩を中心に塗装済み完成品需要が急激に高くなり、美少女フィギュアの認知度がオタク市場の中でどんどん高まっていきました。ガレージキットでも美少女ゲームを出典とする商品が増えていった、過去コラム「美少女ゲーム界隈と美少女フィギュア市場のカンケイ【3】」の辺りがこの時期になります。

そのメーカーの一つ、美少女ゲーム発のガレージキット・PVC塗装済み完成品フィギュアを発売し続けてきたメーカー、コトブキヤが2003年に『スーパーロボット大戦シリーズ』オリジナルメカのプラモデル商品化を開始します。「ヒュッケバイン」「アルトアイゼン」「SRX」「ダイゼンガー」等の人気メカのプラモを次々と発売し、『スパロボ』メカはコトブキヤの商品ラインナップとして定着し、現在まで続くシリーズとなります。
そのラインナップに美少女メカである「ヴァルシオーネ」があり、2006年に美少女フィギュアのノウハウを活かし「交換用表情パーツ」「眼の部分はタンポ印刷済」等の要素を以って商品化までされた事で話題となりました。

その後もコトブキヤは「ホイホイさん(一撃殺虫!ホイホイさん)」「KOS-MOS(ゼノサーガⅢ)」と言った美少女キャラのプラモデルを次々に発売し、それらのキャラクターキットのノウハウが『フレームアームズ・ガール』に活かされている、と開発者インタビューでも語られています。


コトブキヤ「KOS-MOS(ゼノサーガⅢ)」

 

また原型師・浅井真紀がワンフェスにてPSOのロボ娘「レイキャシール」のフル稼働ガレージキットを発売、可動とプロポーションを両立したそのキットは大人気となって以後数年にわたって「レイキャシール」が発売され続ける事になります。浅井真紀は後にコナミが展開するメカ少女アクションフィギュア「武装神姫」シリーズの企画や、figmaの原型にも携わり現在のホビー業界に無くてはならない人物の一人です。

また2007年にはLiquid Stone(リキッドストーン)が『魔法少女リリカルなのは』の登場キャラ・ヴィータをフル稼働色分け済みのガレージキットで発売、市販の関節パーツを使ってのアクションキットですが、驚異的なまでの色分けがその特徴で、衣装から口の中に至るまでパーツ毎に色分けが行われており、組み立てるだけでフルカラーに成ると言う優れものでした。この色分け毎のパーツ分割、特に「顔パーツと口の中・目部分が別パーツになっている」パーツ分割構造は以降の他キットや商品に少なからず影響を与えていると思われます。


Liquid Stone『フル稼働レジンキット ヴィータ』組立説明書
このパーツ分割でのレジンキットは当時驚愕でした

 

そしてコトブキヤは2010年にオリジナルのロボットプラモデルの『フレームアームズ』シリーズを展開します。基本の素体に様々な外装部を付けて人型メカを構成すると言うオリジナルのシリーズで、基礎となっている素体は共通ながらも外装で如何様にも変化させられるその汎用性と拡張性が売りで、現在までシリーズが続くヒット作になります。

ベースのデザインは『ガンダム00』等のメカデザインを担当した柳瀬敬之。この柳瀬の同人誌に参加した島田フミカネ(『ストライクウィッチーズ』『ガールズ&パンツァー』キャラデザ等)が寄稿したフレームアームズの擬人化イラストが発端となり、『フレームアームズ・ガール』のシリーズが始動することになります。

2011年5月に発売した『フレームアームズ・ガール 轟雷』は1stロット3万2千個と言う物凄い出荷数量でしたが、大人気により次々と増産が行われ、同時にシリーズ化も次々に行われました。
キャラクターデザインは島田フミカネが担当していましたが、『フレズヴェルク』のデザインは駒都えーじ(『蒼い海のトリスティア』原画、『イリヤの空、UFOの夏』挿絵等)が担当してスクール水着風衣装の再現が行われました。その他にも『フレームアームズ』シリーズにも参加した新川洋司、木下ともたけ等がデザインを手掛ける等、様々なクリエイターが参加するシリーズにもなっています。


『フレームアームズ・ガール 轟雷』(コトブキヤ秋葉原店にて)

 

『フレームアームズ・ガール』は2018年に川口敬一郎監督(代表作に『ハヤテのごとく!』『もえたん』監督等)にてTVアニメ化、翌2019年には劇場版『フレームアームズ・ガール~きゃっきゃうふふなワンダーランド~』が公開されています。アニメ化に際しては、タイトルが商品名を冠していることもあり、現在では一般的な複数のスポンサーが集う製作委員会方式ではなくコトブキヤの単独出資・提供にて製作されているのがポイントです。

ホビーアニメでありながら主人公・源内あおがホビー・プラモに疎い事を逆手に取った『フレームアームズ・ガール』キャラクター達との日常を描く物語は脚本兼シリーズ構成の赤尾でこ(『リューナイト』『クリスタニア』主題歌担当・三重野瞳の別名義)の手腕が光ります。なおその単独出資に関して、イベントやトークショーでコトブキヤの担当が「『フレームアームズ・ガール』のプラモで出た利益だから全部アニメにつぎ込んだ」と面白可笑しく語られることも多いので知っておいて損はないかと。
 
その『フレームアームズ・ガール』のヒットを受け、コトブキヤが新たに展開した美少女プラモデルのシリーズが『メガミデバイス』で、2016年の発表、12月の発売以降順当にシリーズを重ねています。『フレームアームズ・ガール』が擬人化コンテンツの為にプラモデルには明確な設定は無かったのに対し、ホビーバトル物のストーリーが用意されており、ソーシャルゲーム『アリス・ギア・アイリス』とのコラボでキャラクター「吾妻楓」「兼志谷シタラ」が発売され、元々はコナミで発売されていた『武装神姫』の再起動プロジェクトとして「猟兵型エーデルワイス」も発売されるなど、ラインナップは順当に続いています。

 

そして今年のワンダーフェスティバル2020冬で発表されたのが、「キズナアイ」のイラストレーター森倉円とのコラボレーション企画『創彩少女庭園』で、「自分の手で組み立て女の子をコーディネートする“プラモデル”」をコンセプトとしており、これからも発展してゆく美少女プラモデルのシリーズには期待大です。

『創彩少女庭園』リーフレット


ワンダーフェスティバル2020冬、コトブキヤブースでの『創彩少女庭園』展示

 

『フレームアームズ・ガール』シリーズに『メガミデバイス』共通の仕様として、各種パーツを固定する軸のサイズが3㎜で固定されており、これは『フレームアームズ』シリーズから続く仕様で、以前から展開していた各種メカモデル用ウェポンのシリーズ『M.S.G(モデリングサポートグッズ)』とも共通です。この3㎜軸を採用して様々なオプション・パーツ流用が可能な事が、シリーズをさらに拡大させていく事の一因であることは間違いないかと。

ちなみにBANDAI SPIRITSがオリジナルのプラモデルメカシリーズ『30 MINUTES MISSIONS(通称「30MM)を2018年より展開され、好評を博しているのですが、シリーズ名の通り、3㎜軸をメインに据えてパーツ入れ替え・組み換えを念頭に置いての設計となっています。シリーズも順当に続いており、いーやぁ本当BANDAIさんってば柳の下に圧倒的物量で殴りこんでくるなーと。


コトブキヤ秋葉原店の組み換え案内

 

と言う訳で説明と言うか前フリと言うかを一段落させ(長い!)、実際に手を動かしてみたいと思います。

今回製作するのは『スティレット AISカラー』。「フレームアームズ・ガール」のシリーズ第二弾で、アニメにも登場したスティレット・通称スティ子のファンタシースターオンライン2「A.I.S(Arks Interception Silhouette)」カラーです。
正直に言うと選んだ理由は以前セールで購入した積みプラの中から一番手に取り易い位置にあったからです。


『スティレット AISカラー』

 

塗装とか制作についての基本事項は、初心者に毛の生えた程度でいろいろ言うのもおこがましいので、基本の組み立て方法は「ヴィークルズマニアックス」の「差がでるガンプラの作り方徹底解説!」とか「基礎から学ぶ失敗しない塗装方法」とかを読んだ方が良いと思います。特に前回に書いたように、ここ10年でマテリアル含め使用する工具の進歩も物凄い事になっているので、ブランクがある人ほど慢心せずに組み立て方解説等をじっくり読む事をお勧めします。

ここ10年程で、特にBANDAIのメカプラモデル中心にかつてほどポリキャップ絶対主義みたいなものはなくなってきており、高い精度で軸と受けのパーツを組み合わせ長期間のポーズの維持を考えてるような風潮を感じます。かつ塗装をしなくても見栄えするような多色成形が標準になっており、小サイズながらもパーツ数は昔のものと比較にならない程。

今回の『スティレット AISカラー』はカラバリと言う事もあり、同じ形状のランナーが複数枚入っていたり、ランナーの内使用するパーツは一点だけだったり、他キットと互換で共通パーツのランナーが用意されていたりといろいろな発見がありました。


ランナー
 
 
コトブキヤの『フレームアームズ・ガール』シリーズは、既にアイプリも施された顔パーツが交換用も含めて同梱されているのが特徴。瞳デカールも用意されているので、タンポ印刷をシンナーで拭ったり上描き塗装で消してから好みの表情を用意することが出来ます。
コトブキヤダイレクトショップの直販特典では印刷なしの顔パーツや別カラーの髪パーツが付いてくることもあり、作るのが楽しくなってきた頃の心をくすぐる特典として人気を博しています。

これらの顔パーツにひと手間チークを入れるアイテムに、タミヤのウェザリングツール「ウェザリングマスター」にフィギュア用にピンクメインで構成されたセットがあります。付属のスポンジとブラシでちょいちょいと化粧の要領で頬に赤みを入れるのですが、ここで豆知識、ウェザリングマスター等の小型スポンジはほぼ同形状のアイシャドウチップが100円ショップで複数本入りが入手できるのでお得ですよー。


顔パーツ&アイシャドウチップ

 

今回は改造などは行わず、ストレートに全塗装を行う事にしました。…ら、今回のキット『AISカラー』は細部細部で塗り分けが多くて想像以上に苦戦しました。だからこそ楽しいこともまた事実、マスキングをちまちま行っている時にはこうすれば良かったああすべきだったとブツブツ言っているのですが、塗装作業で着色されていく工程を目の辺りにすると脳内でドーパミンが沸々と溢れ出て延々と塗装作業を続けてしまうんですよね。実際にシンナーにやられてるかもしれません換気にはくれぐれも注意。

組み立ても接着剤不要のスナップフィットですが、サイズに対し部品数が多めと言う感じで、ガンプラで例えると出始めの頃のMG(マスターグレード)か、現在のHGとMGの中間に位置する感じでしょうか、値段的にもその位ですし。そして意外な程ポリキャップが少なく3㎜軸がメインで構成されている事が判り、一昔前のポリキャップ全盛辺りでプラモデル史が止まっていた身だとかなり新鮮です。

そんなこんなで苦戦しましたが、ようやく完成しました。

 

 

苦戦した分完成した後の自己満足もひとしおです。今回の塗装はパールカラーを使ってみましたが、赤のパールカラーは下地に影響されやすいと言うのはこう言う事なのね…と身を以て知った次第です。各所のメタリックグリーンは偏光パールカラーを使用し、角度によって色が変わるのが確認出来てニヤニヤしています。
あと各所のマーキング・デカールは付属の物以外にも市販されているものを使用しています。手軽に本体の情報量を高められるデカール貼りは実は大好きな工程のヒトツですが、際限なくやってしまうので見極めが難しいです。これも脳内でドーパミンが沸々と溢れ出る作業ですね。ただでさえFAGシリーズは縞パンツの縞柄がデカールで用意されていたりとたくさん貼る事が前提なわけですから。

で、一体作ると判るんですがFAGは一体だけで完結させるものではなく、他のキットとの組み合わせや『M.S.G』のウェポンを組み合わせて「世界に一体だけの物を作る」と言う事が容易に出来るのでそれが魅力なんだろうなと言う事がよく判る次第です。

塗装に力入れるよりも無塗装で作ってブンドド[1]プラモやフィギュアなどを手に持ちセリフや効果音を口で言いながら戦わせるごっこ遊びの事の方が合ってるのかも。
本家本元コトブキヤ秋葉原店でも、使用できる1/12用ドール服が展開されている事からもそう言った節が伺えます。メカ部がない企画『創彩少女庭園』等はこの傾向が強くなるんじゃないかなーと。


コトブキヤ秋葉原店の1/12ドール服展開
 
  
と言う訳でつくづく恥さらしではありますが、初心者に毛の生えた程度の腕で作ってみました。正直作業中は作る事に精一杯で途中写真とか撮る事が出来ません。まぁ途中画像が必要な製作何てしていない訳ですが。
それでも一体完成させると得も言われぬ満足感があり、次は何を作ろうと思うのですが、美少女プラモデルですと次はもっと可愛く作りたい、この肌塗装を試してみたいとこれまでにないベクトルの欲望が出てくるのが判ります。新商品も新シリーズもどんどん発売されますしね。新シリーズ、新キットでコレは!と言うものがあった時には手を出すと思いますので、その際はお付合い下さい。

 

脚注

脚注
1 プラモやフィギュアなどを手に持ちセリフや効果音を口で言いながら戦わせるごっこ遊びの事
センセイ(べ・一文字)のメモリが少なくても語りたい
センセイ (べ・一文字)さんの
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