センセイ(べ・一文字)のメモリが少なくても語りたい

美少女「プラモデル」の現在地 ~みんなも手を動かし作ってみよう!~

公開日:センセイ (べ・一文字)

 

突然ですが、先日通信販売で届いたこの荷物をご覧ください。


複数買いはオタクのたしなみ 

ご存じの方も多いであろう、先日2月22日に発売された『ラブライブ!』の大天使南ことりちゃんですが、これはいわゆるフィギュア、塗装済みPVC完成品フィギュアやガレージキットではなく、プラモデル、そう、部品を切って組み立てるあのプラモデルです。


バンダイのプラモデル


ジオン驚異のメカニズム(違)

事前のイベント(過去コラム「メガホビEXPO 2019 Autumnアフターレポート」もご参照ください)や店頭の見本展示の完成品状態だけを見てもプラモデルと言う事がにわかに信じられなかったのですが、こうやって箱に収まった部品が繋がっている「ランナー」と言われている組み立て前の出荷された状態を見ると、本当にプラモデルなんだ…と驚嘆の感想しか口に出なくなります。
この南ことりは、BANDAI SPIRITSから発売された「Figure-rise LABO」シリーズの三作目で、第一弾は『ガンダムビルドファイターズTRY』のホシノ・フミナ、第二弾は「初音ミク」がそれぞれ発売されています。第一弾のフミナから「やや透けるプラスチックの肌色パーツの下に赤色パーツを配置し、人体の肌色感を表現する」と言うどこからそんなこと思いついたと言う驚愕の技術で、ファンからは「変態技術…」と呼ばれました。第一弾のフミナが肌表現、第二弾の初音ミクが「髪の毛(ツインテ)のグラデーション表現」がポイントで、第三弾の南ことりが「衣装の質感表現」と、どんどん進化してゆくのが判ります。正に「変態技術」。
さらにBANDAI SPIRITSはプラモデルでの美少女キャラを多数発売しており、近々では「Figure-rise Standard」シリーズにて『ソードアート・オンライン』のアスナを、現在放送中の『ガンダムビルドダイバーズRe:RISE』 のメイをMS形態とのコンパチブルで商品化されています。


BANDAI SPIRITS「Figure-rise Standard アスナ」

この事から判るように現在は美少女プラモデルが非常に熱い! と言う事で今回は美少女プラモについてです。いつも通り経験と記憶がベースになりますが、お付き合いください。

 

まず現在の美少女プラモの震源地と言うか起点になるアイテムは、コトブキヤが2015年に発売開始した『フレームアームズ・ガール』シリーズです。
模型業界全般としては、2012年から放送された『ガールズ&パンツァー』と2013年にサービスを開始した『艦隊これくしょん ~艦これ~』のヒットで、劇中に登場する戦車や艦船のプラモデルは新製品が発売されたり、過去の商品が完売・再販されたりした事で好況に沸いていました。この時期、MAXファクトリーが擁する『figma』に代表されるアクションフィギュア、グッドスマイルカンパニーを中心に発売し続ける『ねんどろいど』等のディフォルメフィギュアは、塗装済み完成品美少女フィギュアと並んで既にオタクアイテムとしての地位を確率しており、美少女モノとメカを繋げる要素が確立した状態になり、折しも塗装済み完成品の高額化も重なり、安価で組み立てることの出来る美少女プラモデルが支持されるに至った、と思われます。


コトブキヤ『フレームアームズ・ガール スティレット A.I.Sカラー』PSO2登場の限定カラーです

 

ここ10年位で、ホビー業界の各種工具や塗料等マテリアル系統が大きく進化したことも理由の一つではないかと思われます。代表的な所では、ガイアノーツによる各種のキャラクター専用色をあらかじめ調合された状態で発売しているラッカー系塗料の『ガイアカラー』や、模型用水性塗料界隈に革命を起こした『シタデルカラー』、プラモ用塗装と言えばこれが真っ先に思いつくだろう水性ホビーカラーやMr.カラーでお馴染みGSIクレオスからも別原料の水性塗料『アクリジョン』が発売され、昨年水性ホビーカラー自体も大きくリニューアルされています。
工具に眼を向けると、「究極」のロゴで有名なゴッドハンド社の『ゴッドハンドニッパー』の登場がプラモデル界に大きな衝撃を与えました。パーツを切り取った後をヤスリで成形する事すら不要とする切れ味が売りで、各メーカーが精密片刃ニッパーを次々と発売する契機ともなりました。ゴッドハンド社のマスコットキャラ「ニパ子」は模型界隈で得体の知れぬ存在感を持ち、様々なコラボを経てfigmaやねんどろいどと言った自身の存在意義を問いかける塗装済み完成品フィギュア化も行われています。
これらの工具の発展と共に、実際に使用するプロ・コアユーザーが具体的な使用方法をホームページ、SNS、近年では動画投稿サイトを通じて技法と共に紹介することで、実際に作ってみようと言う潜在ユーザーを育てていることも挙げられます。


ゴッドハンド社製『ブレードワンニッパー』『ケロロニッパー』『神ヤス』
愛用しています

その近年の技法で個人的に衝撃だったのは、塗料の攪拌方法。小さい瓶に入った模型用塗料は置いてあると内部成分が分離するので使用前にかき混ぜる、攪拌作業が必須なのですが、20世紀の専門誌だと「振ると内部に細かい気泡が入るので攪拌棒で丁寧に混ぜろ」と書いてあったのが、現在では「振れ、振って混ぜろ。んで裏蓋の凹みに溜まったのを上手く使え」とかあって何年かぶりに作ろうと思った際にじっくり読んで驚愕でした。実際前述の塗料メーカーGSIクレオスは塗料瓶内に入れる「攪拌用メタルボール」等も発売しており、時代は変わっているんだと言う事を否が応でも感じさせるものです。
 

ホビージャパン社『月刊ホビージャパン2015年12月号』
「塗料を振る!」


GSIクレオス『Mr.攪拌用メタルボール』

 

それで実際に作ってみると、やはりこれが楽しいのです。
プラモデルに限らずガレージキットも含めた模型全般に言えることだと思いますが、自分の手で組み上げていく物が完成品に至る過程が目の前を逐一確認できると言うのは得も言われぬ快感があり、それが近年入手するのが塗装済み完成品が主だった美少女ジャンルのものであればなおさらです。
冒頭の『南ことり』も無塗装で組み立てを推奨するかのような完成度ですが、プラモデルであれば手を加えたくなるのが何というかサガと言うもの。そこで少々手を加えてみることにしました。
や、実は予約開始時に複数の通販サイトで注文してしまったのを忘れていて、発売日に二点届いてしまったんですよね。それの減価償却と言う事で。

「Figure-rise LABO 南ことり」
チョイチョイと塗装してますが、塗装していなくてもすごいんですよ。

と言っても手の混んだ事はせず、少し塗装をするだけに留めます。段差や線に濃い色を入れる「スミ入れ」作業を衣装部に施し、衣装にはパールカラーを吹いてみました。肌部分の濃くなるような場所にパステル粉をチークのように塗っています。大した手間じゃないのですが実際に手を加えると満足感も増します。
風船塗装に使ったのは、ワンフェスで衝動買いした偏光パールカラーです。見る角度で色が変わるので面白い効果になったと思います。もう一体は本格的に手を加えたいですね。

 

ついでにもう一つ制作例を。同じくBANDAI SPIRITSから新展開している美少女プラモシリーズに「ぷちりっつ」と言うディフォルメシリーズがあります。可動や交換用パーツを極力少なくする事で価格が大幅に抑えられ、その価格は実売1300円前後、しかもそのキャラクターは現在大人気の『Fate/Grand Order』(FGO)から主に商品化されており(過去コラム「美少女ゲーム界隈と美少女フィギュア市場のカンケイ【1】」もご参照ください)、無塗装でも付属のシールを使うことで塗装済みPVC完成品ディフォルメフィギュアに匹敵するような立体が手に入るのです。


「ぷちりっつ シールダー/マシュ・キリエライト」シリーズ第一弾

『FGO』は多種多様のキャラクターが登場し、各キャラクターが衣装等を変更して登場したり、「同一キャラでも別の存在」として登場したりと「同じ顔」の様々なキャラが集合するのが魅力の一つ。プラモデルですから塗装・改造も容易な事を利用し、キット化されていないキャラも改造することで作ることが出来るのです。

そこで今回は、「ぷちりっつ」シリーズの第三弾「アヴェンジャー/ジャンヌ・ダルク・オルタ」を改造してみました。


「ぷちりっつ アベンジャー/ジャンヌ・ダルク・オルタ」

「オルタ」と言うのはFateシリーズ共通の「召喚された英霊の別側面」多くは「負の側面」が表面に現れた黒化キャラで、性格に髪や肌の色、衣装や装備が違うものの共通している部位も多く、今回の「ジャンヌ・オルタ」の元となった「ルーラー/ジャンヌ・ダルク」とはほぼ衣装の違いだけで再現できるので、改造と塗装で再現してみます。
「ルーラー/ジャンヌ・ダルク」はアニメ化もされた『Fate/Apocrypha』でメインを張った人気キャラでもあるので、同じような事をする人は多いと思いますが、まぁ参考になればと言う事で。


「ぷちりっつ アベンジャー/ジャンヌ・ダルク・オルタ」
写真は塗装しています

まずは外装部の衣装、オルタの焼け焦げでボロになったスカート部を埋めます。裏に0.5ミリプラ板を貼り、プラ板を下敷きにパテを盛って埋めていきます。盛り付けたパテが乾燥したら、デザインナイフでサクサクと切り削り形状を整え、表面をサンドペーパーで整えます。パーツ一つ一つじゃなく実際に組み合わせた状態を見ながら整えていきます。


灰色の部分がポリパテです

同時に、オルタは無いジャンヌの長い三つ編みの後ろ髪をパテで作っていきます。細長く伸ばしたパテを三本、乾燥硬化する前に実際に三つ編みで作ってみました。先端のリボンはガチャフィギュアのものを流用。本体との接続は後ろ髪部分をくり抜き、市販のボールジョイントで固定するようにします。この時に頭頂部のアホ毛パーツの装着部もパテで埋めておきます。
顔パーツは、ニヤケ笑いの口と吊り上がった眉毛の部分をやはりパテで埋め、口元は閉じた状態で彫り直します。眉毛は塗装することにしました。
 


三つ編み先端が流用と言う事が判るかと。

これらの改造工作が完了してから下地であるサーフェイサーを吹き、その後から塗装を行います。
持ち手棒を使って直接パーツを触らないように、台座に刺して固定します。今回は複雑な塗装をしないので大きい面積を一気に塗れる「イージーペインター」を利用しました。
使用した塗料は、濃い青に前述のガイアノーツ製ヴァーチャロンカラーのマーズディープブルー(テムジン747Jの機体色)、髪の毛はGSIクレオスの髪の毛色用カラーシリーズ「LASCIVUS Aura(ラスキウス・アウラ)」のブロンド、鎧部分の銀色はパールシルバーをそれぞれ使用しています。肌色も「オルタ」は若干白くなるので、元のキャラに近い若干濃いめのキャラフレッシュを吹きます。
これらのベース色が塗られてから、細部を細筆で塗り分け、光り輝く鎧は「トップコート(つやあり)」を、その他の衣装・肌・髪は「つや消しトップコート」を吹きます。


直接部品を持たないように持ち手を付けて

瞳部分は、付属のテトロンシールの上から下地を犯しにくい水性塗料アクリジョンを面相筆で塗り、乾燥した後に本体に貼り付けます。エナメル塗料と面相筆で本体に直接描くのが一般的な方法ですが、今回はお手軽に行うのが目的と言う事で。


この方法なら上からなぞるだけで簡単

細部をさらに塗ったりした後に、組み立てを行って完成!

お手軽に作成した割に満足度が高い仕上がりになったと思います。実際にかかった時間は、毎日の工作は帰宅後に1~2時間前後で、休日にもう少し時間をかけて塗装を行う、というペースで約10日ほどです。部品数が少ない「ぷちりっつ」シリーズだから手軽に作る事が出来たというのもあります。

この「ぷちりっつ」のジャンヌ、ジャンヌ・オルタは縁があり、某店のトイズコーナーにて展示させていただきました。いやーぁ子供の頃の夢ですよ自分の作った物が模型店の店頭に飾られているのって。そうしたらこの展示した改造ジャンヌを「これ、ありますか」と聞かれたそうで。事情を知らないスタッフがあっちこっち探し回ったと言う事です。申し訳ない事をしたスイマセン!

 

と言う訳で今回はBANDAI SPIRITS製の美少女プラモデルを作ってみた実例です。初心者に毛が生えた程度の腕なので細部に関しては目をつぶって頂けると有難いです。
そして今回、ムーブメントの火付け役『フレームアームズ・ガール』についてはサラッと流しただけですので、次回があれば『フレームアームズ・ガール』を中心に挙げることが出来たらなぁ、とか考えてます。期待せずお待ちください。

 

 

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