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「カスガノソラ」フィギュアノスベテ

公開日:センセイ (べ・一文字)

「カスガノソラ」フィギュアノスベテ

 

2022年になりました。まだまだ世の中は安定しないのですが、今年もこの場を通じて濃いぃ話がお届けできればと思いますのでよろしくお願いします。
2019年から始めているのに不定期連載なのでまだ総本数が全然少ないので、今年はこの本数を少しでも増やせればと思い、今回は原点回帰の意味も込め、最も得手とするジャンル二つ「PC美少女ゲーム」と「美少女フィギュア」を兼ね備えてる「PVC塗装済完成品フィギュアでエロゲー業界を代表するキャラの一人」(過去コラム「美少女ゲーム界隈と美少女フィギュア市場のカンケイ【番外編】」より)である「春日野穹」についてです。

 

ヨスガノソラ 初回限定版
Sphere『ヨスガノソラ 初回限定版』
2008年12月発売

 

 

春日野穹(カスガノ ソラ)は、有限会社CUFFSの姉妹ブランドSphere(スフィア)より2008年12月に発売されたPC美少女ゲーム『ヨスガノソラ』登場ヒロインの一人で、主人公春日野悠(カスガノ ハルカ)の双生児の妹、銀髪ツインテールで病弱でヒキコモリ気味でネットジャンキーと言うキャラクターです。キャラクターデザイン・原画は橋本タカシ&鈴平ひろの二名体制で、穹の原画を担当したのは橋本タカシ、『Pia♥キャロットへようこそ!!3』等でF&C(エフアンドシー)の看板原画家として名を馳せていましたが、F&C以外で初の原画作品です。
春日野穹は『ヨスガノソラ』のタイトルに掛かった名前ではありますが、初回限定版のパッケージこそ巫女ヒロイン瑛とのWヒロインですが、通常版パッケージ及びキービジュアルを見るとそれほど大きい扱いと言う訳ではない、計5人のヒロインの中の一人と言う扱いです。事実当時のメーカーHPのスタッフ開発日記で「開発当初はサブヒロインでありながらメインに昇格」した事が語られていました。それを如実に示すのが、2022年1月現在もまだ現存している公式HPにある店舗特典イラスト一覧です。

 

初回限定版パッケージ裏
初回限定版パッケージ裏

店舗様特典イラスト一
公式HPより「店舗様特典イラスト一覧(一部修正)」

 

 

元々PC美少女ゲームは秋葉原のように専門店が複数ある場合、購入時の予約特典があるかどうか、そして特典がある場合はどんな特典か、キャラは誰か、描き下ろしか否か、絵柄はシチュはと言った要素で選定されることの多いものでした。その予約特典でソフトの予約数、ひいてはソフトの販売本数が決まるので各店舗趣向を凝らした特典が用意されており、この特典は90年代半ばにコンシューマーゲーム含めたゲームの特典にテレホンカードが付くかどうかと言う所から始まっていると思われますが詳細は不明です。
しかしPC美少女ゲームが大いに認知度を上げた「泣きゲー」の代表格、Key『Kanon』では特典としてついてきたA0ポスターをリュックに差した姿が「Kanon砲」として語られたり、全国各地各店で深夜販売が行われたKey『AIR』は麦わら帽子や目覚まし時計と言ったアイテムが特典として各店で用意されていた事は過去コラム「美少女ゲーム界隈と美少女フィギュア市場のカンケイ」で語った通りで、PC美少女ゲーム販売現場に於いては特典は切っても切り離せないモノであるのは確かな事実です。
一例として、かつて秋葉原に店舗を構えた専門店「メディオ!」は中国地方を拠点とした専門店でしたが、秋葉原に出店する際に当時の担当氏は他店との差別化を図るために「特典図柄を裸エプロンで統一」と言うセレクションとネットを介した情報発信を駆使、SNSが普及して以降はSNS全般を大いに活用する事で生き馬の目を抜く秋葉原のPC美少女ゲーム市場で唯一無二の存在感を誇っていました。その「裸エプロン」特典絵柄は後にコアマガジンよりムック『裸エプロン Visual Collection』として纏められ、収録数は実に250枚以上。続編も発刊され、PC美少女ゲームと切っても切れない特典史にメディオ!と担当氏の名は燦然と輝いています。

 

裸エプロン Visual Collection
コアマガジン『裸エプロン Visual Collection』
コアマガジン『裸エプロン Visual Collection2』
表紙イラスト:涼香

 

 

話を『ヨスガノソラ』に戻して、この2008年前後はPC美少女ゲームの特典商法がある意味極まり始めた頃で、『ヨスガノソラ』公式HPの店舗特典一覧は非常に判り易く「描き下ろしグッツ」→「描き下ろしテレカ」→「オリジナルテレカ(既に発表した版権絵やゲーム中のイベント一枚絵を使用)」の順で掲載されており、トップに掲載されかつ当時販路最大手であるソフマップの描き下ろしは原画担当二人の合作での大型シーツ+グッツと豪華なものですが、キャラは春日野穹ではないのです。穹の描き下ろしを採用したのはラオックス一店のみで、前述のメディオ!担当の審美眼をもくぐり抜けた、あくまで「計5人のヒロインの中の一人」と言う扱いでした。それでもオフィシャル通販の描き下ろしが穹で、発売日当日の購入者向けイベント配布ミニポスターの描き下ろしキャラも穹だったので、製作者側のチョイスには入っていたんじゃないかなぁと。
実際発売当時の印象としては、橋本タカシ&鈴平ひろと言うすでに実績のある原画家2名のソフトと言う事で絵目当てのユーザーが多かったと言う感じでしたが、ソフト本編の発売後にその穹の「キモウト(キモい+妹=キモウト)」としてのキャラ及びシナリオが極一部で知れ渡ると同時に穹の人気は圧倒的になり、翌年2009年9月発売のファンディスク『ハルカナソラ』には穹メインのアフターシナリオ収録他、初回盤には特典として穹が肌身離さず抱えている黒ウサぬいぐるみのミニサイズ版が付属し、店舗によっては開店数十秒で完売しました(実話)。メディオ!では手のひらグルングルンひっくり返して「穹ちゃんの萌え萌えハァハァ抱き枕カバー」を予約特典とし、秋葉原店では予約完売となりました(これまた実話)。

 

ハルカナソラ DL版
Sphere『ハルカナソラ』DL版タイトル(パッケージ版とは異なってます)

 

 

その翌年2010年12月に『ヨスガノソラ』はTVアニメ化を果たします。監督は高橋丈夫、シリーズ構成・脚本は荒川稔久、製作はfeel.。複数ヒロインがいるPC美少女ゲームの映像化と言う事で、誰か一人メインのヒロインは固定せず、それぞれのキャラのルートが完結したら分岐地点に戻り別のヒロインの物語を描くという構成でヒロイン4人の物語を完結させ、所謂CパートでドタバタSD調ストーリー含め全5人の物語を完結させています。具体的に穹ルートは第1話(全員共通)第7話(ルート選択話)第10話~第12話(穹ルート)となっており、Blu-rayはこの各話で収録されました。
ちなみにエンディング曲『ピンキージョーンズ』は「Z」になる前の「ももいろクローバー」が歌唱、そのSD調のキャラがわちゃわちゃ動く楽しい映像に仕上がっておりますが、これがデビュー2枚目のシングルと言う事もあり、当時は「無名のアイドルか…」と言う反応が多数あった事もまた懐かしい事です。
んでその映像本編は、まぁこれが匂わせレベルじゃないダイレクトな性行為描写の嵐。これがTOKYO MXとは言え地上波で放送されたのかと驚嘆するレベルで、BS11はおろか天下のAT-Xでも放送時には修正が加えられ、完全版はBlu-ray又はDVDの発売を待たなければならなかったと言うモノでした。放送後に不健全図書を指定する東京都青少年健全育成審議会にて論じられ(第623回東京都青少年健全育成審議会)ましたが、「兄妹の近親相姦シーンが含まれるが、実際に視聴して確認した所、必要以上に繰り返し描いたりしているものではなく不健全図書類には該当しない」と指定を免れています。現在でもニコニコ動画、GYAO!、dアニメストア等で視聴可能ですが、地上波TV放送版の修正有り版です(そりゃそーだ)。

 

ヨスガノソラ 天女目 瑛
Blu-ray Disc『ヨスガノソラ 天女目 瑛』
全4巻の内2巻に当たり、第1話、第2話(ルート選択話)、第5話~第6話(瑛ルート)を収録

 

 

そう、春日野穹を語る上で欠かせないのがその「兄妹の近親相姦シーン」含む「キモウト」としてのキャラクター。双子の兄である主人公の悠・通称ハルに生活レベルでどっぷり依存しているだらしない様は劇中序盤、アニメだと試聴できる一話で描かれているのですが、ルートが進むにつれ異性としても意識するレベルじゃないがっつり性的対象として意識する様が地上波でも描かれました。具体的に言うと(ピーーーー)から始まり、ルートが進むと他の女の子と親密になるハルに対しあからさまな独占欲を見せるようになり「私だけを見て?」「私は、ハルだけを見てる」と台詞も依存度合いがかなり進むようになります。
さらに一線を越えて肉体関係(!)を持ったら持ったで「もっと好きになってくれたら、もう周りなんてどうでも良くなるから」と依存を強固なものとし、他人は文字通り眼中になく他ヒロインに二人の関係がバレたときも「どうしたの? ねぇ…続き…しよ…?」と眼前でその関係を暴露すると言う豪胆さ。
アニメではこの関係バレがさらに衝撃的に描かれていまして…、キーワードは「玄関」って事でヒトツ。あまり一般的ではないもののネットミームとして「ヨスガる」「ヨスガにソラってろ」と言う近親相関を暗喩する単語も出来ました。個人的には『School Days』の「Nice boat.」、『SHUFFLE!』の「空鍋」に次ぐ、「ゼロ年代PC美少女ゲーム原作アニメの、原作ゲームファンですら言葉を失った衝撃シーンを元とするネットミーム」に数えられると思っています。その他には「一人糸電話」「キャベツ」「滑り台」とか…、詳細は各々ググるなりなんなりして下さい。

 

ヨスガノソラ&ハルカナソラ ビジュアルファンブック
Sphere『ヨスガノソラ&ハルカナソラ ビジュアルファンブック』

 

 

そのアニメが放送する前の2010年1月に、原作のPC美少女ゲームの人気を受けて塗装済み完成品フィギュア化が行われていました。第一報は前年2009年4月末に当時開催されていたPC美少女ゲームメインの物販イベント「DreamParty2009春」にて「有名メーカーより塗装済み完成品フィギュア化決定!」との告知が行われ、後に正式発表が行われたメーカーは「ワンピース P.O.P」シリーズでも有名なメガハウス、「ブリリアントステージ」と言う美少女キャラ中心のブランドでの発売が行われました。チューブトップ水着姿の立体化ですが元絵はゲーム発売日当日に購入者向け特典として配布されたミニポスターの描き下ろし絵柄のものが採用、原型製作は乙山法純氏。企画協力にトイズ・プランニングがクレジットされています。
「ワンピース P.O.P」シリーズ等を擁するメガハウスからは珍しく肉付きがヨロシク無いキャラの立体化ですが、肩幅は小さく、薄っすらと影が落ちるアバラ付近の造型とか、X脚気味の脚とか、後ろ姿の肩甲骨の影が成熟しきっていない感じとか、膝裏の余分な肉がない感じとか各所各所の影塗装もそれらを際立たせるように色付けられて、“少女”の造型として優れており、全般的な雰囲気が穹らしくなっているのなぁ、と言う出来です。
まぁ有り体に言うと 炉 利 で、この製品製作に関わった人の中に間違う事なき ホ ン モ ノ がいることを伺わせます。
なのに薄い胸を隠すチューブトップビキニと意外に面積が小さいビキニボトムから伺えるのは炉利でありながら妙に肉感的な様が醸し出されている一級品の美少女フィギュアとなりました。後に再販も行われています。

メガハウス 『ブリリアントステージ ヨスガノソラ 春日野 穹』
2010年1月発売
原型製作:乙山法純、企画協力:トイズ・プランニング

 

 

同年の2010年5月にはコトブキヤより『春日野 穹 ‐すくみず‐』が発売、現在ではメカ美少女プラモ「フレームアームズ・ガール」シリーズを展開しているコトブキヤ(過去コラム「続・美少女「プラモデル」の現在地」もご参照ください)の美少女フィギュア部門で、よりマニアックなキャラクターがチョイスされた「4-leaves」ブランドからの発売です。原型製作は槙尾宗利氏。
2008年末に頒布したイベント限定マクロファイバータオルの絵柄の紺スク水(旧)の立体化で、紺スク水の絶妙な色合いの再現も然ることながら、肩ひもを脱いだその仕草と、露わになる鎖骨と肩甲骨の細っそい造型に加えて、裏地のサポーター部分まで造型していると言うそのコダワリ様にひたすら脱帽。基絵にも描かれているとは言え、この辺りをきっちり造型する老舗メーカーの矜持を感じます。
右胸の先端付近も微妙に微妙にツンと立っている造型に仕上がっており、スク水(旧)ならではのエロさを如何無く造型しているのでした。

コトブキヤ 4-Leaves 『春日野 穹 ‐すくみず‐』
2010年5月発売
原型製作:槙尾宗利

 

 

2011年5月にはフリーイングより『春日野 穹 体操服Ver.』が発売。フリーイングはフィギュア業界でリーディングカンパニーとして活躍し続けるグッドスマイルカンパニーと提携しているメーカーで、可動フィギュアのfigmaシリーズより『アイアンフォスル(ダライアスバースト)』『ギャラクシップ(ギャラクシアン)』等往年のSTGからのアイテムや、「テーブル美術館」としてfigmaの『ダビデ像』『考える人』『叫び』等を発売しているメーカーです。美少女フィギュアではメインで発売するサイズが1/4と相当大きめになっている事と、その飽くなき執念とも言うべきバニーに対するこだわりは他の追随を許しません。商品化はアニメやゲームから人気のあるキャラを次々に行っているのですが、版権元の許可さえあれば「全員バニーにしてやる、お前もバニーにしてやろうか」と言わんばかりのバニーへのこだわりが見られるメーカーです。
そのフリーイングからの商品化された穹ですがバニーではありませんでした。その代わりに体操服バージョンとなっており、この体操服が実際の布製で着脱も可能である、と言うのがウリの一つ。しかも着脱後の下着姿からさらにもう一段着脱、所謂キャストオフが出来るのがこの商品の隠れた魅力です。なお、その「着衣時用」「脱衣時用」で両手足のパーツが違っていると言う豪華な仕様で、やたらと大きい箱にはそれだけのパーツを収めると言う理由もあった大物商品です。

フリーイング『春日野 穹 体操服Ver.』

フリーイング『春日野 穹 体操服Ver.』
2011年4月発売
原型製作:阿部まさと

 

 

同じ2011年の11月には、アルターから『春日野穹』が発売。キービジュアルを飾った私服姿が初の立体化です。
メーカーのアルターは、美少女フィギュア市場が隆盛してきた2005年頃から、常にハイクオリティな商品を出し続け、それほどフィギュアに詳しくない人でも高品質商品を出すと認知されているメーカーです。一つの商品を出すとその原作コンテンツシリーズから登場キャラを続けて商品化する事が多く、『けいおん!』『ストライクウィッチーズ』『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』『魔法少女リリカルなのは』等の作品からは登場するメインヒロインをほぼ網羅する商品化を行いました(過去コラム「なのは15周年」もご参照ください)。ですがこの2010年頃は「担当者や原型師の好みが前面に出たとしか思えないマイナーキャラ」も結構商品化されており、この穹もそのラインナップの一環と考えると納得のチョイスでした。
原型製作は乙山法純氏で、メガハウスチューブトップ水着版のセルフリファイン的な要素がそこかしこに感じられる造形と見受けます。前髪パーツの大きさとその隙間から覗く眉毛、ツインテールのシャープさ、表情の乏しいキャラの特徴をとらえている口元とクールな目線辺りに前作よりブラッシュアップした趣を特に感じますね。
スカートの裾をチョンと持っている姿ですが、手に持たれて持ち上げられたスカートの布の動きとか、小躍りしているように後ろが「ふわり」と浮いている様にフィギュアの「動き」を感じることが出来る造形は正に熟練の技です。
商品のプラスアルファとして、髪型を変更した交換用頭部が丸々も一つ同梱すると言う力技で、ツインテをほどいた風にたなびくロング髪の再現を行っており、この状態での立体化も初。こう言うチャレンジブルかつ謎のプレイバリューがアルターだなぁと思う次第です。

アルター『春日野 穹』
2011年11月発売
原型製作:乙山法純

 

 

少々年月を開けて2014年11月に『チャイナドレスver.』がアルターより発売されます。前年のメガホビEXPOで原型展示の第一報があった際は既にアニメ終了して数年経つコンテンツなのに…と驚嘆しました。事実このチャイナドレスver.の原作表記&パッケージの商品ロゴはアニメ版ではなく原作のPC美少女ゲーム版になっています。原型製作は橋本涼氏で、彩色に彩部一路氏がクレジット。この彩色担当クレジットもアルターが率先して行ったフィギュア市場の慣習の一つです。
コミックマーケット78(2010年夏)頒布の描き下ろしB0タペストリー絵柄の立体化で、元絵がチャイナ服めくり上げ黒パン丸見えの誘っている事この上ないポーズをまんま立体化に落しこんでいます。
黒パン丸見えなのに非常に繊細な感を醸し出すのは、細く造られた各所の出来がそう感じさせるのかと。チャイナ服の塗装の質感&刺繍模様の再現、さらにいかにもえろげ絵っぽい感じで柔らかく広がるツインテールの先端が細く気が配られて造型されているのが全体の雰囲気にまで影響を与えています。腰かけている中華風椅子も元絵のイメージを損なっていないのが善く、かなり贔屓目になっているのは有ると思いますが、間違いなく傑作の部類に入る商品です。その事前人気から、翌2015年3月にカラバリ版となる『黒チャイナドレスver.』も発売されました。

アルター『春日野 穹 チャイナドレスver.』
2014年11月発売
原型製作:橋本涼、彩色:彩部一路

 

 

2016年10月に『春日野穹』とシンプルな商品名で発売したメーカーはアルファマックス。ここは香港が母体のメーカーで、その製品チョイスも日本国内だけではない海外向けを意識したラインナップであることが伺えます。同メーカーの別ブランド「スカイチューブ」ではアダルト色の強い年齢制限のある商品を次々発売している事でも有名です。
今回の立体化は『橋本タカシが描くアニメBlu-rayBOXパッケージイラストの立体化』(商品説明)の穹で、このイラストは後年発売の『TAKASHIHASHIMOTO ARTWORKS 橋本タカシ画集』表紙にも使われています。
そして発売3カ月前に開催されたイベント、ワンダーフェスティバル2016夏にて「限定数200体をワンフェス先行販売」された事でも話題になりました。
物語序盤の引っ越してきた直後を彷彿とさせる「余所行きのお出かけ着」「トランク」で、フリフリのスカートが三層になっており、チェック模様もキチンと再現されていると言う何気に高い技術を垣間見れます。物語序盤を思わせる表情に乏しい感じと、パンツ丸見えなのに寂しげ・儚げな感じを出す立体に仕上がっています。胸元に抱いている黒ウサギの下にはブラウスのほんのわずかなふくらみを感じさせる造型があるのも肝ですな。特徴であるピンピンと跳ねたアホ毛&ツインテールは極めてシャープで破損注意。
台座部分のトランクは無駄に精巧に出来ていて開ける事が可能で、内部にアルファマックスのロゴも入っている豪華な出来。ちな二台のトランクは磁石でこの向きで固定となっていると言う、アニメ終了からも時間が経っているのにドンだけ力(リキ)入れているんだと思ったのものです。


アルファマックス『春日野 穹』
2016年10月発売(WF先行販売有)
原型製作:MOON

 

 

 
2017年4月に再びアルターから発売されたのが『春日野 穹 -Bunny Style-』。元絵は2015年夏CUFFS通販の描き下ろしタペストリーの立体化で、フリーイングが行わなかったので縁がないと思っていたバニーverが6年の時を経て日の目を見た訳です。ちなみに2016年中発売予定から延期に延期を重ねて決算期を越えての4月発売です。『チャイナver.』に続いて原型:橋本涼氏&彩色:彩部一路氏のコンビがクレジットされています。
特徴であるいかにも美少女ゲームキャラっぽいツインテールのシャープさ、バニースーツのツヤツヤ具合、ウサ耳のふわふわ感と各所の素材の違いを感じさせる塗装と造型を一目見て堪能できるのが実に良く、チョイと出た舌と摘まんだチェリーが添えられる事で得も言われぬ色気がにじみ出ています。
胸元のバニースーツが作る隙間はナイチチの極地とも言うべきスキマの造形美で、実際に着てるような浮き具合を感じられる丁寧な仕事の証拠。穹のトレードマークとも言うべき黒ウサギぬいぐるみ、磁石固定で脚の間にちょこんと収まる方式で、これまでの展示ではあまりにも自然で全く気がつかなかったんですな黒ウサギの存在に。
チャイナver.で高くなっていた期待値のハードルをしっかり越えたこれも傑作の部類に入る出来で、定冠詞のようになってしまいますが「流石アルター」と皆で言い合ったモノでした。

アルター『春日野 穹 -Bunny Style-』
2017年4月発売
原型製作:橋本涼、彩色:彩部一路

 

 

2018年5月にアルファマックスから発売されたのが『春日野 穹 制服ver.』で、元絵としてはメガハウス版の告知もあった2009年春の「DreamParty2009春」で販売された描き下ろしテレホンカードの絵柄で使用されていましたが、後年2017年夏のCUFFS通販でこの絵柄を使用したタペストリーも発売されています。ごくごくスタンダードな劇中の穂見学園制服姿の立体化も初だったりします(コレまでのバージョンが多すぎるんや)。この商品も原作PC美少女ゲームのように2月→3月→5月と延期かましていたので、もう慣れっこと言う感じです。
んで元絵通り、制服姿で少しだけ首を傾け頬を染める仕草での立体化。トレードマークであるシャープなアホ毛もきちんと再現されています。そしてこの制服姿の各所のシワが表現されているのが善し。左胸には穂見学園校章ロゴもキチンとプリントされています。
たくし上げと言う挑発的なシチュエーションと相反する赤面表現と、ストッキング越しの白ぱんつの透け具合のと言った塗装表現がこの商品のキモで、キャラ的に澄ました表情ばかりの穹フィギュアに新たな一面を開拓したと言えるでしょう。

アルファマックス『春日野 穹 制服ver.』
2018年5月発売
原型製作:MOON

 

 

2019年8月にまたまたアルファマックスから発売されたのが『春日野 穹 着物ver.』、2017年夏CUFFS通販の新規描き下ろしタペストリーが元絵で、キャラの大きな特徴である髪型がツインテールではなくサイドポニーに大きくアレンジされています。が、それでも穹らしい挑戦的な目つきが失われておらず、銀髪とそれに似合った白地ベースの着物のマッチングが実に素晴らしい逸品です。着物と縁台ベースの模様は「現在の塗装済み完成品フィギュアではここまでの再現が可能なのか…」と技術の向上を実感します。
今回の立体ではサイドポニーが別パーツになっており、縁台に座らせてから取り付けしないとサイドポニー先端がくるんと回って縁台下に入っているので取り付けし辛くなるので注意。あと、アホ毛が別パーツ化されているのですが、最初から二本同梱されての破損対策には笑いました。
襟部分の衣紋(えもん)が抜いている状態、と言うかはだけて細い肩が見えている状態まできちんと再現できているのは善し、です。裾を捲りあげる物凄い挑発的なポーズですが、奥は見せつけることのないGIRIGIRIイムズが徹底されているので脱がすことも出来ないためにそっち方面を期待した人は残念この上ないのですが、それゆえ生じる色気は数ある和服フィギュアの中でも屈指ではないかと。
また、販売店限定で「あみあみ」限定版の交換用顔パーツ“照れ顔”が用意されており、一味違った感じの穹が拝めます。

アルファマックス『春日野 穹 着物ver.』
2019年8月発売
原型製作:MOON

 

 

昨年2021年7月に発売された現時点での最新作は、アルターから発売の『春日野 穹 Ending Ver.』です。原型製作は蒼炎の人形師氏で、彩色は渡邊恭大氏がクレジットされています。
商品名に『Ending Ver.』とある通り、もうネタバレ全開ではありますが、穹ルートの最後の最後でハルと二人旅立った後の姿、ファンディスク『ハルカナソラ』で語られたアフターストーリー「蒼穹の果てに」の姿です。このサイズでも判別できる左手薬指の指輪のモールドがすべてを物語ります。
ツインテールのシャープさは言うに及ばず、衣装の部位部位によってパール塗装の有無やツヤを変化させ、ほぼモノトーンの中で複雑な変化を感じさせるこの塗装技術は並大抵のものではない事を実感させます。立ち姿ながらスカートの「ふわり」とした感を再現すしているめくれ方も尋常じゃないですよ。
そしてこれまでの立体化では再現されなかったそのやわらかく微笑む表情、『ハルカナソラ』でなくては見ることが出来ない特別なものとなっています。正に『Ending Ver.』で、10年以上の歴史を費やして再現に至ることが出来た春日野穹フィギュアの到達点と言っても過言ではないかと。

アルター『春日野 穹 Ending Ver.』
2021年7月発売
原型製作:蒼炎の人形師、彩色:渡邊恭大

 

 

で、ここにヒトツ歴史の陰にお隠れになったモノがありまして。

メガハウス版より前、さらに『ハルカナソラ』発売前の2009年4月にタキ・コーポレーションと言うメーカーがこの春日野穹フィギュアを生産・発売しているのです。2010年夏ごろにこのタキ・コーポレーションはフィギュア部門からの事業撤退(倒産?)しているために情報ソースらしいソースも提示出来無いんですが、このメーカーは正直『(エロい)意余って技足らず』で、まぁ兎に角出来がアレなフィギュアを次々商品化し続けたメーカーと言う印象が強く、これが美少女フィギュア市場黎明期のゼロ年代初頭とかならまぁ…と思わなくはないですが、すでに市場が浸透し、バブルと呼んでも差し支えない爛熟期を経てからのこのクオリティなので、そりゃぁ現在では影もカタチもなくなっても可笑しくないですよ。
ちなみにタキ・コーポレーション、やたらと脱衣機構である「キャストオフ」にこだわりを持っていたようで、商品案内やパッケージに「キャストオフ機構搭載!」を堂々と謳っている事が多かったのです。このタキ製『春日野穹』も「キャストオフ」を銘打ってましたが、力の入れどころと言うかベクトルが間違っている事甚だしいと思わずにいられない物でした。ちな元絵は上記の「本編発売時のラオックス描き下ろしテレカ絵柄の裸Yシャツ」姿、だから発売日にラオックスアソビットシティ(当時)でしか商品陳列見なかったんだ…。


画像は当時のタキコーポレーション公式HPより

 

 

実はこのタキ製『春日野穹』は、タキ製の中ではまだ“マシ”な部類で、例えばメーカー名で検索して出てくるサンプル画像や完成品画像はプライズ商品と見間違うかのようなクオリティの物ばかりで、この出来でフルプライス商品の価格が付いていたのかと暗澹たる思いに囚われます。事実タキ・コーポレーションが市場デビューを果たした商品は『同級生』の「桜木舞」でしたが(『同級生』については過去コラム参照)、当時メーカーがアレで監修された形跡も無かったので、年季の入ったPC美少女ゲームファンすら敬遠していたのを思い出します。このタキさんのキャストオフ版も、周りの(目の肥えた)フィギュア愛好家達と「これは無い」「無いな」「無いわー」と言い合っていた思い出があります。
まぁ初っ端のタキさんがアレだったので後の商品では版権元の監修がガッチリ行われることで高クオリティを担っていると想像すれば、今となっては無駄足ではなかったのかなぁと思ったり思わなかったり。

 


CUFFS『TAKASHIHASHIMOTO ARTWORKS 橋本タカシ画集』
2020年夏発売

 

 

『ヨスガノソラ』が世に出てから13年以上(!?)と言う歳月が流れたのですが、今後もアダルト色の強いメーカーQ-sixより『春日野 穹 水着ver.』の発売が決定しており、穹のフィギュアは初期から連綿と、そのクオリティで以って美少女フィギュア市場で確固たる存在感を示している、と言う事が出来ると思います(タキさんのヤツは忘れる)。原作から他キャラの立体が一向に出る気配も無いので、タイトルも併せピンヒロイン単独作品と勘違いしている人も多そうだよな…。
原作PCゲームは現在ではDMM.R18を前身に持つ「FANZA」にて独占DL販売が行われており、セール等も頻繁に行われているので興味がありましたら(とりあえず穹ルートだけでも)プレイしてみては如何でしょうか。

(文中敬称略)

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