デバッグ・マジック! Byまつがん

デバッグ・マジック! vol.9 ~もっともっと!!『イニストラード:真紅の契り』編~

公開日: / 更新日:まつがん

By まつがん

 

あけましておめでとう!2022年の到来だ。

今年もモダン環境の様子を注視しながら、新セットのカードをどんどんデバッグ (発見・解明) していくとしよう。

 

 

1. 雑多なデッキを突き放す上位デッキたち

2021年12月~2022年1月にかけてのモダン環境の様子は、以下のようなものだった。

 

Tier 1
グリクシスシャドウ
装備シュート
4Cブリンク/4Cオムナス

Tier 2
青赤ラガバン
青白/ジェスカイコントロール
ジャンドラガバン

 

青赤ラガバンがグリクシスシャドウにとって代わられたくらいで、メタゲームの大勢は前月とほぼ変わっていない。問題は、この状況が1ヶ月以上続いたためにプレイヤー間でも上位デッキの認識がほぼ浸透し終わった結果、Tier 1にあたる上位デッキとTier 3以下にあたる雑多なデッキとの間の差がますます開いてしまった点にある。

 

 

現状のモダンには4種の神器があり、《敏捷なこそ泥、ラガバン》《ウルザの物語》《孤独》《夢の巣のルールス》がそれにあたる。これらのパワーカードをより上手く使用できるコンセプトであることがTier 1~2の最低条件であり、使用できないコンセプトとは上位互換・下位互換の関係になってもおかしくないほどに決定的な差が開いてしまう。

もちろんTier 1だけで見れば、装備シュート (ベスト・アグロコンボ)、グリクシスシャドウ (ベスト・ミッドレンジ)、4Cブリンク/4Cオムナス (ベスト・コントロール) といった具合に3すくみの均衡は保たれており、バランスは悪くないように見える。だが多様性という観点では、Tier 3 (まだしも通用するローグ……Yawg Chord、ティムール続唱、死せる生、ライブラリーアウト、バーン、アミュレットなど) 以下にまで目を向けないと観測することができない状況にある。それほどまでに、『モダンホライゾン2』が環境に与えた影響は大きかった。

いちモダンプレイヤーとしての私のわがままだけで言うならば、現状のTier 3たちをTier 2にまで引き上げて環境の多様性を取り戻すために、上記の4種の神器と、それらが禁止された場合にアンフェアとして強くなりすぎるであろう《断片無き工作員》、それとカードタイプごとの対処しやすさを無視するあまり多様性を制限しすぎる《虹色の終焉》まで禁止にして欲しいと考えている。

だが一方で、これはあくまでも私人の個人的な予測であって先の出来事を何も保証するものではないが、そもそも発売したばかりの高単価セットの目玉カードをそんな簡単に禁止するわけがないといった商業的な事情などあらゆる要素を加味すれば、『モダンホライゾン2』の発売から1年が経過するまで、すなわち少なくとも半年間は『モダンホライゾン2』関連の禁止改定は出ないだろうというのが私の現実的なものの見方だ (なので《夢の巣のルールス》に関してだけは「もう十分遊んだでしょ」ってことで禁止の可能性があると考えているが、それでも5分5分くらいだろうと思う)。

それに、こうしたメタゲームはマジック・オンラインでの幾百幾千の対戦データを見て数%の勝率を取りにいく判断をする人にだけ関わりのあることで、リアルのカードショップで大会に出たりする分には、モダンは自分の好きなデッキで好きなように対戦して楽しむことができる素敵なフォーマットであることに依然変わりはない

あるいはもしかすると、新たなアイデアや一つのアーキタイプへの究極の修練によってこの膠着した状況を打開するのはあなたかもしれない。好きなデッキがあるなら、楽しみながら己の道を究め続けてみて欲しい。

 

赤白果敢
Modern Challenge - #12372524 3位
プレイヤー名:maxxattack
サイドボード(15枚)

2《コーの火歩き
1《夢の巣のルールス
2《流刑への道
2《ボロスの魔除け
2《摩耗
2《虚空の杯
2《魂標ランタン
2《高山の月

旧来のテンプレート型バーンが通用しなくなってきた中で、ある程度のカード交換を前提としたリソースゲームを見据えることでミッドレンジ・コントロール耐性を獲得した新たな赤いアグロとして注目されているのがこの赤白果敢だ。

驚くべきことに《無謀なる衝動》を除くメインデッキ内のすべてのスペルが1マナでキャスト可能という構造となっており、それによって2種のリソースカードである《無謀なる衝動》《舞台照らし》のバリューが極限まで高められている。

《敏捷なこそ泥、ラガバン》を巡る攻防が序盤のカギとなる以上、バーンとは異なる強みとして《溶岩の投げ矢》がうまく使えるという点も評価に値する。環境に合致したアグロとして、これからTier 2に近い位置に上ってくることもありえそうだ。

 

 

エムリーブリーチ
Modern Challenge - #12367819 3位
プレイヤー名:Jiggywiggy
土地(20枚)

2《乾燥台地
2《溢れかえる岸辺
1《
2《
4《沸騰する小湖
2《尖塔断の運河
3《蒸気孔
4《ウルザの物語

サイドボード(15枚)

2《稲妻
2《呪文貫き
2《金属の叱責
1《破壊放題
2《仕組まれた爆薬
1《トーモッドの墓所
2《ドラゴンの爪
3《広がりゆく海

エムリーブリーチというアーキタイプは長らく純正コンボとして《時を解す者、テフェリー》をフル搭載した形が主流だったが、この製作者は10月頭からほぼ一貫して《時を解す者、テフェリー》抜き・《敏捷なこそ泥、ラガバン》《ドラゴンの怒りの媒介者》入りのこの形を使い続けてリーグで5-0を重ねていた猛者である。

《ウルザの物語》というカード自体がビートプランとコンボプランの両立を可能とすることから、デッキ全体の方向性を装備シュートに類似したアグロコンボに据えるというのは確かに理に適った判断であり、《湖に潜む者、エムリー》の生存率にも一役買っていそうである。

「じゃあ装備シュートで良くね?」というのは予想される反論だが、「先手《敏捷なこそ泥、ラガバン》ゴーに対して《敏捷なこそ泥、ラガバン》《モックス・アンバー》《邪悪な熱気》という最強の後手まくりパターンが存在すること」「《孤独》が効かないコンボであること」といった点で差別化はできている。長い間専用機だったが、Yawg Chordのように強者たちの研究によって一皮剥ける可能性は多分にあると言えるだろう。

 

 

鱗親和
Modern Challenge - #12372530 7位
プレイヤー名:Souze6
呪文(12枚)

1《溶接の壺
1《活性機構
1《影槍
1《バネ葉の太鼓
3《オゾリス
1《ゲスの玉座
4《硬化した鱗

サイドボード(15枚)

1《夢の巣のルールス
2《自然の要求
1《流刑への道
2《夏の帳
3《虹色の終焉
1《墓掘りの檻
1《真髄の針
2《大祖始の遺産
2《倦怠の宝珠

『モダンホライゾン2』では《微光蜂、ザーバス》という喜んでいいのか微妙なラインの強化を得ていた鱗親和だが、白緑ベースにすることで《エスパーの歩哨》も搭載しつつ、《古きものの活性》を単体で《硬化した鱗》との相性も良い《巧妙な鍛冶》に差し替えた形へと進化したのがこちらのリストだ。

《電結の荒廃者》《オゾリス》からの《歩行バリスタ》や《墨蛾の生息地》によるワンショットが狙えるデッキだが、《孤独》をかわすには先に「《孤独》を当てないと死ぬ打点」を組んで《孤独》を使わせる必要がある。《巧妙な鍛冶》はコンボサーチ要員でありながら、そうしたプレッシャーメイク要員としても活躍しそうだ。

 

 

 

 2. もっともっと!!『イニストラード:真紅の契り』でバグを探そう

 

『イニストラード:真紅の契り』については、これまでvol.7vol.8計8枚ものカードをピックアップし、デッキを作ったり作らなかったりしてきた。

もとよりスタンダードで活躍することを主眼において作られたはずの通常のセットである。モダンで使用される可能性のあるカードが8枚も見つかったというだけでも、御の字とするべきかもしれない。

だが、本当にもう可能性は残されていないのだろうか?

否。新たなるデッキの可能性は、デッキビルダーが諦めない限り無数に存在しうるのだ。

何度も見直したカードリストでも、時間が経てば新たな発見があるかもしれない。さあ、まだ見ぬバグを探しにいくとしよう。

 

◇《悪魔の取り引き》

これまで、「3マナ以下であること」「能力に上限がないこと」など、モダンで使用される可能性のあるカードに特有の特徴について述べてきた。

ここで、新たな特徴を追加しよう。それは、「テキスト内に書かれている数字が大きいこと」だ。

 

《悪魔の取り引き》は、ライブラリーを13枚追放してから好きなカードを1枚手札に加えられるという、どこか《Demonic Consultation》を彷彿とさせる能力を持っている。

だが、ここで着目するべきはわずか3マナで13枚ものカードを一度に追放領域に送り込めるという点だ。

追放領域にカードが送られるのは通常はデメリットである。とはいえ自らライブラリーを減らせる領域移動であることに変わりはないから、低コストでこれほど大量の追放が可能となるカードはこれまで存在していなかった。

しかし、追放領域を生かせるカードなどいかにモダンといえど存在するのだろうか?

 

 

それが、するのだ。

 

 

 

 

 

 

《うねる曲線》のトークンのパワーを上げまくって《ドスン》で20点シュートできるのでは???

 

 

《うねる曲線》は墓地と追放領域にあるインスタント・ソーサリーの枚数を合計した数+1のパワー/タフネスを持つトークンを生成する。すなわち、墓地と追放領域に合計19枚以上のインスタント・ソーサリーを送り込んだ状態でこれを唱えれば、いきなりパワー20のトークンが生み出せる。それを《ドスン》で生け贄に捧げれば、対戦相手を一撃で宇宙の彼方まで吹き飛ばせるという寸法だ。

というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!

バーゲン・シュート
まつがん
土地(8枚)

2《真鍮の都
4《宝石鉱山
1《
1《

《うねる曲線》と同種のカードとして《弾けるドレイク》も併用する選択肢もあるが、追放されるカードがなるべくインスタントかソーサリーになるようにしたいので、今回は採用を見送ることにした。コンボパーツを揃えるためのサーチカードである《暗黒への突入》《悪魔の取り引き》がどちらもカードを大量に追放できる点が動きと噛み合っているほか、セットした両面土地を《秋の際》の「サイクリング」で墓地に落として《うねる曲線》カウントをプラスするテクニックがオシャレで気に入っている。

《血清の粉末》で1~2回マリガンすることで勝利条件がぐっと近づくという前代未聞のコンセプトとなっている (というか、マリガンで追放しないと追放領域が足りない) ので、面白いと思った方は一度試してみて欲しい。

 

 

 

◇もっと!《悪魔の取り引き》(?)

 

《悪魔の取り引き》がすごいのは、13枚を追放領域に送り込めるという部分にとどまらない。

 

 

これまでモダンでライブラリーから無条件でクリーチャーをサーチできるカードとしては《エラダムリーの呼び声》が、インスタント・ソーサリーをサーチできるカードとしては《方程式の求解》があった。

これがアーティファクトなら《加工》、エンチャントなら《牧歌的な教示者》……と続くのだが、要はライブラリーからのカードサーチはカードタイプごとに行われるのが普通で、カードタイプを横断したサーチカードというのは、《不気味な教示者》を除けば《不敬な教示者》のように「待機」を持つか、《願い爪のタリスマン》のように対戦相手にもサーチを許してしまうような、不完全なものしか存在していなかったのだ。

 

 

その《不気味な教示者》にしても、3点のライフを支払う上にダブルシンボルときている。

そこにきて《悪魔の取り引き》は、ライブラリーを13枚追放してしまうとはいえ待望のシングルシンボルでの無条件サーチカードである。これは、カードタイプを横断したコンボパーツを揃える必要のあるデッキにおいては圧倒的な強化と言えるだろう。

では、カードタイプを横断したコンボパーツを揃える必要のあるデッキといえば何があるだろうか?

 

 

 

 

 

《天使の嗜み》《大霊堂の戦利品》《タッサの神託者》の3枚コンボを揃えられるのでは???

 

 

《猿人の指導霊》の禁止により、《天使の嗜み》+《むかつき》のコンボは「唱える=即勝利」とはいかなくなってしまった (浮きマナが1~2マナ必要)。そうなると《睡蓮の花》や《五元のプリズム》もこれまで以上に実質コンボパーツとして扱わなければならず、2枚コンボというより3枚コンボとして見るべきという話になってくる。

だが3枚コンボでいいなら、もとより《猿人の指導霊》とは無関係な《天使の嗜み》《大霊堂の戦利品》《タッサの神託者》の方が必要なマナが少ないので、《悪魔の取り引き》という無条件サーチカードが加わった今なら、《睡蓮の花》から脱却した形も組めるはず……というわけだ。

 

 

何より、現在のモダン環境には《時を解す者、テフェリー》《孤独》が跋扈している。《睡蓮の花》に頼らず、これらに引っかからなくなったコンボデッキというだけでも、試してみる価値はあると言えるだろう。

とはいえ、《悪魔の取り引き》が本当にモダン級かは疑わしかったので、まず私は《悪魔の取り引き》抜きでテンプレートから《睡蓮の花》《不敬な教示者》《むかつき》だけを抜いた形が組めないかというところからスタートした。

 

ターボ・オラクル
まつがん
土地(20枚)

1《花盛りの湿地
2《植物の聖域
4《真鍮の都
4《宝石鉱山
1《
3《マナの合流点
2《剃刀境の茂み
3《反射池

クリーチャー(7枚)

3《森の女人像
4《タッサの神託者

呪文(33枚)

4《天使の嗜み
4《考慮
4《選択
4《大霊堂の戦利品
4《夏の帳
4《
3《成長のらせん
2《暗黒への突入
4《シルンディの幻視

《火+氷》を「時間稼ぎ+ドロー」として活用し、キャントリップと《シルンディの幻視》でコンボパーツをかき集めるというのは、脳内ではソリューションに近い形に思えた。

 

 

だが。

 

 


 

実戦を通じて学んだのは、「そもそもキャントリップ頼みでは3枚コンボはなかなか揃わない」というのと、「《孤独》はかわせても《タッサの神託者》の能力スタックで《忍耐》でライブラリーが突如増えて死ぬ (1敗)」というものだった。

 

 

干渉を受けない手札コンボだからこその強みがあると思っていたが、それすら実は干渉を受けると発覚したとなると、相手のハンデスとカウンターを《夏の帳》でくぐるというプランを根本から見直さざるをえない。

求められたのは、《忍耐》をかわす手段

ならば、そう。

 

 

 

《否定の契約》を入れればいいのだ。

 

というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!

パウダー・オラクル
まつがん
土地(18枚)

2《陽光昇りの小道
4《真鍮の都
4《宝石鉱山
2《連門の小道
4《マナの合流点
2《平地

クリーチャー(4枚)

4《タッサの神託者

サイドボード(15枚)

3《堂々たる撤廃者
4《摩耗
4《虹色の終焉
4《神聖の力線

 

一見して正気を疑わざるをえないリストとなっているが、これにはきちんとした理由がある。

このコンセプトは、「4ターン目の10~11枚の中に《天使の嗜み》《大霊堂の戦利品》《タッサの神託者》が1枚ずつ (相手によっては《否定の契約》も) と土地4枚を揃える」ことを目的とする。ということはデッキの最小枚数を無視した場合、理論上は「土地14枚、《天使の嗜み》《大霊堂の戦利品》《タッサの神託者》《悪魔の取り引き》が4枚ずつ」の30枚でデッキが組めてしまうことを意味している。

つまり、他の30枚はどうやってもノイズにしかならないのだ。それでもデッキの最小枚数は60枚であるため、ノイズであるにしてもましなノイズを入れる必要がある。上記の30枚を実部、ノイズ部分を虚部とおいた場合、虚部にふさわしいカードとは何か。

 

それは、虚部でありながら実部に変換できるカードに他ならない。

 

 

この点《血清の粉末》は、虚部が多い初手を引いた場合にデッキから虚部を追放して実部の割合を高めることができるカードと言える。逆に実部が多い手札にあると実質マリガンハンドになってしまうという弱点もあるが、それを補って余りある機能を果たすと判断した。

だがそれでも初期手札以外で手札に来るとさすがにあまりにノイズすぎて脳の血管がブチ切れてしまう。そこで《信仰の繕い》も採用することで、パーツ被りや後引きの《血清の粉末》の処理を任せられるというコンセプトだ。

 

このコンセプトは今度こそ完璧に思われた……が、しかし。

 

 


 

 

完璧なる敗戦。そしてこの経験から、私は正しいフィードバックを受け取ることができなかった。

最後に私が作ったのは以下の形だ。

オラクル・コンボ
まつがん
土地(18枚)

2《陽光昇りの小道
4《真鍮の都
4《宝石鉱山
2《連門の小道
4《マナの合流点
2《平地

クリーチャー(4枚)

4《タッサの神託者

サイドボード(15枚)

3《堂々たる撤廃者
4《摩耗
4《虹色の終焉
4《神聖の力線

 

 

 

《悪魔の取り引き》抜けてるじゃねーか!!!

 

 

やはり4キルが普通のモダンで盤面に何の影響もない3マナソーサリーは蛮勇すぎたというのか。

だが、ここで事態は急展開を見せる。ツイートを見てアイデアに共感した私のフォロワーが、《むかつき》時代のテンプレートリストとのハイブリッドで構築してリーグ5-0を達成したのだ。

 


 

《不敬な教示者/Profane Tutor》は、「《時を解す者、テフェリー》に強くする」というコンセプト上抜いていたカードだった。だが、「《悪魔の取り引き》と併用する」というのは考えもしなかったアイデアだった。確かに「待機」ターンが2マナなのはマナカーブ的に噛み合っているし、「《天使の嗜み》《大霊堂の戦利品》《タッサの神託者》《否定の契約》+(青)(青)(白)(黒)出せる4マナ」という手札内容を4ターン目までに確実に作りたいなら、カードタイプに縛られない完全チューターは多ければ多いほど良いに決まっている。

傍目八目という言葉のとおり、「《時を解す者、テフェリー》に強くしたい」という当初の発想に囚われるあまりに盲目的にデッキの可能性を自ら閉ざしていたところを、客観的な視点を持った第三者に救ってもらう形となった。こうしたコンボビルダー同士の協働作業ができるのは、SNSが発達した現代ならではだろう。

 


 

その後私はチューター8枚体制のアイデアをもとに、最終形に限りなく近いと思われるリストまで仕上げることに成功した。どこまで行ってもグリクシスシャドウに勝てないため、現状のメタゲームで通用するデッキとは言えないが、風向きが変われば出番が来るかもしれない。それでも、ひとまず《悪魔の取り引き》による新たなアーキタイプの製作には成功したのだから、デバッグによって《悪魔の取り引き》のポテンシャルを実証するという当初の目的は達成したと言えるのではないだろうか。

 

 

 

◇《掘り起こし》

 

モダンにおいては、《悪魔の取り引き》レベルでも無条件サーチカードとして一定の需要があることは証明された。

だが『イニストラード:真紅の契り』には、《悪魔の取り引き》とはまた違った使用感の無条件サーチカードが実は存在していたのだ。

 

 

《掘り起こし》。1マナ呪文としては《地勢》だが、4マナ払えば《魔性の教示者》になるという2つの表情を持ったカードである。

とはいえ、「ただの《地勢》が《魔性の教示者》になる」というのがモダンで一体どんな価値があるのか?と思われるかもしれない。

しかし、モダンにおいては《地勢》がキーとなるアーキタイプが既に見出されていたのだ。

 

 

 

 

 

土地を切り詰めまくった緑単ベルチャーデッキに最適なのでは???

 

 

「《地勢》として機能しつつも余ったら《魔性の教示者》として《ゴブリンの放火砲》をサーチできる」というのは、緑単ベルチャーというコンセプトにおいては理想の1枚と言っていいほど噛み合ったカードであることは言うまでもない。

というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!

緑単ベルチャー
まつがん
土地(4枚)

4《

クリーチャー(4枚)

4《絡み森の大長

サイドボード(15枚)

1《
2《否定の契約
4《殺戮の契約
4《活性の力
4《思考囲い

 

一応言っておくと、現状のモダンには既にベルチャーデッキは存在する。が、それは両面土地を大量に搭載して普通の土地を逆に0枚に絞った形で、《小道の再交差》でライブラリーの順番すべてを操作しつつ《魂の再鍛》をトップに積んで一気に勝負を決めるプランをとっている。

他方で《地勢》系のスペルを大量搭載したこの形は、確実に勝利するなら「ライブラリーから基本地形をなくす」という手順を挟んでから《ゴブリンの放火砲》を起動する必要があり、その点では既存デッキの下位互換と言えなくもない。

しかしマナ加速が儀式系スペルではないため、3ターン目→4ターン目と《ゴブリンの放火砲》を連続設置する必要があるパターンなど、緑型の方が勝っている部分もないではない。いずれにせよ、「こういうこともできるよ」と頭の片隅に入れておいて損はないだろう。

 

 

 

 3. 終わりに

 

セット間隔の都合で、『イニストラード:真紅の契り』については3回もデバッグを試みることとなった。1回目の段階で既に「モダン向けのセットではない」と述べていたところから結局全部で10枚もピックアップすることができたのは、私の見込みより『イニストラード:真紅の契り』が強かったからとも言えるが、おそらくそれだけではないだろう。

人は明確な課題を設定したとき、何よりもその解決に対して一生懸命になることができる。一度探し尽くしたと思ったリストを必要に迫られて3ヶ月にわたって様々な視点で見直すことを強いられたからこそ、このセットの真なるポテンシャルに気づくことができたのだ。

だから「どんなセットでも必死になって探せば、モダンでワンチャンスありそうなカードが10枚くらい見つかる」というのが、今回の教訓だ。

さて、来月2月18日(金) には新セットである『神河:輝ける世界』が発売となる。日本をテーマにしつつもどちらかと言えば「それっぽいイメージ」の方を大胆に強調したコンセプトとなっており、プレビューを見ているだけでもワクワクするようなアートがてんこもりなので、デバッグするのが楽しみなセットとなりそうだ。

ではまた次回!

 

記事内のデッキリストは「Study hall of M:TG」のデッキエディタを使用しています。

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