デバッグ・マジック! Byまつがん

デバッグ・マジック! vol.8 ~もっと!『イニストラード:真紅の契り』編~

公開日:まつがん

 

『イニストラード:真紅の契り』が発売して約一か月が経過した。

11月~12月のモダン環境はどのようなものだったか?メタゲームを振り返りながら、新たなバグを模索していこう。

 

■ 1. ラガバンに染まりゆく環境

 

Tier 1
青赤ラガバン
グリクシスシャドウ
装備シュート
4Cブリンク/4Cオムナス

Tier 2
青白/ジェスカイコントロール
アミュレット
ジャンドラガバン

 

前回と比較して、「続唱」・バーンの後退とグリクシスシャドウの大躍進が11月~12月の一大トピックと言えるだろう。

グリクシスシャドウの躍進は、《邪悪な熱気》《虹色の終焉》の隆盛による《稲妻》の減少が背景にある。実は今、メタ上位で《稲妻》を4枚積んでいるデッキは、これだけ《敏捷なこそ泥、ラガバン》が流行している現状にあってもなお、バーン以外には存在しない。そして《邪悪な熱気》相手なら、ライフを6にして7/7の《死の影》を立てることで対処が容易となる。

これまでは青赤ラガバンの《濁浪の執政》がその役割を担ってきたが、逆にラガバン同型戦ではそれ以外に突破口がないため、相棒である《夢の巣のルールス》のアドバンテージもあってグリクシスシャドウがラガバン・メタゲームの最前線に立つことになった。

そう、問題はなんだかんだいってグリクシスシャドウもラガバンデッキであることだ。上記7つのデッキも、突き詰めればラガバン×3、コントロール×2、最速コンボ×2という形でしかない。

もちろんあらゆるフォーマットで青赤のデッキを下支えする《表現の反復》が強すぎるせいもあるだろう。ただ、《敏捷なこそ泥、ラガバン》と同じ色なのが本当にまずかった。リソースの交換を強要するコンセプトにおいて、爆発的な勢いでリソースを補充するこれら2枚は他の追随を許さない。

次のセットである『神河:輝ける世界』は2022年2月18日発売と発表されているが、例によってモダンへの影響は大きくないだろうし、その前に例年通りであればおそらく来年の1月~2月は禁止改定のタイミングとなる。そこではたして審判が下されるのかに注目だ。

 

『グリクシスシャドウ』
(チャレンジ2日連続優勝)
プレイヤー名:SoulStrong
土地(19枚)

2《血の墓所
4《血染めのぬかるみ
1《
4《汚染された三角州
3《沸騰する小湖
2《蒸気孔
1《
2《湿った墓

長い間環境には存在していたが、《瞬唱の魔道士》《スカイクレイブの災い魔》を排して《激しい叱責》を定着させたなどのリストの洗練と、主にバーンの後退が理由となってトップメタに躍り出ることになった。

手札破壊+《死の影》のプレッシャーは雑多なデッキに対して滅法強く、除去でもある《湖での水難》が蓋としても機能する点が心強い。デッキの地力が高いこともあり、環境の構造が大きく変わらない限りしばらくはメタ上位に君臨しそうだ。

 

 

『発掘』
(チャレンジ準優勝)
プレイヤー名:Violent_Outburst
呪文(21枚)

4《暗黒破
4《異世界の凝視
1《燃焼
4《安堵の再会
4《身震いする発見
4《這い寄る恐怖

サイドボード(15枚)

3《宝石の洞窟
3《思考囲い
3《神聖の力線
2《コジレックの審問
2《虹色の終焉
1《古えの遺恨
1《天啓の光

《否定の力》が減っていることもあり、2ターン目の《安堵の再会》《身震いする発見》にオールインすることが正当化されてきた流れを受けて組まれた新たな形の発掘。《暗黒破》をナチュラルに4枚積める点で《敏捷なこそ泥、ラガバン》にも対抗している。

《ウルザの物語》がある時点で墓地対策が一定以上手薄になることは見込めないものの、メタ上位に墓地を積極的に使うデッキが存在しない以上、軽視されるタイミングは必ず存在する。そこを狙って持ち込みたいデッキだ。

 

 

『エンチャントレス』
(CSQ準優勝)
プレイヤー名:Bertram

そこまで使用者は多くないアーキタイプなものの、地雷としては十分なポテンシャルがあるフェア殺しのコンセプト。グリクシスシャドウがトップメタの現在は向かい風だが、手札破壊が少なめかつ《仕組まれた爆薬》が減ったタイミングで持ち込みたい。

 

 

 

■ 2. もっと!『イニストラード:真紅の契り』でバグを探そう

『イニストラード:真紅の契り』の中で、モダンの一線級に採用されたのは結局アミュレットの《耕作する巨躯》くらいだったというのが現実的な評価だろう。

だが、それは全ての可能性が閉ざされたことを意味しているわけではない。

まだ誰にも試されていないコンボやシナジーの中にバグが存在するかもしれないからだ。

高度に情報化された現代社会では、ネットの情報を鵜呑みにしたコピーデッキに手を出す方が勝率は安定するだろう。

しかし、それではイノベーションは起こせない。デッキビルダーとして自分の力で新アーキタイプを切りひらくことこそが、最終的には自分の地力につながるのだ。

 

 

◇《船砕きの怪物》

 

「スタンダードで活躍したカードは下環境でも活躍の可能性がある」というのは、歴史を振り返っても一定の信憑性がある法則だ。

とするならば、『イニストラード:真紅の契り』の中で最もスタンダードで活躍しているカードに注目するべきだろう。

 

 

そう、《船砕きの怪物》だ。

といっても、スタンダードではわざわざ7マナ払って召喚されているこのカードをモダンでそのまま使うのはさすがに筋が悪すぎる。
しかし、「着地すれば勝ち」と言えるほどの制圧力があることは確かなのである。

ならば、マナコストを払わずに着地させるしかない。

では、《船砕きの怪物》をマナコストを支払わずに戦場に出せる方法といえば何だろうか?

 

最近流行りの《不屈の独創力》?否。

 

《頑強》によるリアニメイト?否。

 

 

《ウーラの寺院の探索》で出したら格好良いのでは???

 

そう、《船砕きの怪物》は「クラーケン」なので《ウーラの寺院の探索》で出せるのだ。

 

 

最近では最強の「海蛇」こと《星界の大蛇、コーマ》も登場し、地味に強化されていた《ウーラの寺院の探索》だが、ここにきてさらなる強化が入ったとくれば、デッキを組まない理由はない。

というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!

 

 

・・・

 

《ウーラの寺院の探索》引くまでマリガンじゃねーか!!!!

 

 

仕方がないんだ……どうにかして他の方法でデカブツを踏み倒すサブプランを作ろうとしたものの、《頑強》《予想外の結果》などすべて挫折してこの有り様なんや……。

結論としては、《ウーラの寺院の探索》が8枚積めるようになったら起こして欲しい。それまでは冬眠します。

 

 

 

◇《耕作する巨躯》

 

前回「上限がないカードはモダンで活躍する可能性がある」と述べた。それは実際、膨大な量の新セットのカードの中からモダンで活躍しうるカードを判別するための一つの指標であることは間違いない。

そして『イニストラード:真紅の契り』の中には、前回使用した《嵐追いのドレイク》の他にも、そのような「上限のない」カードが存在していたのだ。

 

 

《耕作する巨躯》。土地を引き続ける限り土地を出し続けることができるという、一見自己完結した能力を持ったフィニッシャーだ。

だが、モダンでアミュレット以外のデッキで7マナのこのカードを使うなら《船砕きの怪物》と同様何らかの踏み倒し手段が必要となるところ、そのような踏み倒し手段をデッキに入れれば入れるほど土地の連鎖が止まりやすくなるというジレンマが存在した。

とはいえ極端な話、土地58枚と《耕作する巨躯》2枚のデッキで《耕作する巨躯》を2ターン目に出せるなら《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》でほぼ確実に勝てるはずなのである。

そのような構造に限りなく近づけることは不可能なのだろうか?

否。実は存在したのだ。

スロットを圧迫せずに《耕作する巨躯》を踏み倒す方法が。

 

 

大量に土地を入れたデッキで《変身》《異形化》から出したらいいのでは???

 

デッキ内の土地を《山》で縛りつつ《山》をサーチできるフェッチランドを入れておくだけで、《ドワーフの鉱山》で《変身》や《異形化》の対象を用意することが可能となる。

さらに《探検》や《成長のらせん》を使えば手札を減らすことなく土地の枚数を伸ばせるので、《耕作する巨躯》による3ターンキルが現実のものとなるのだ。

というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!

 

『巨躯変身』
クリーチャー(2枚)

2《耕作する巨躯

呪文(16枚)

4《成長のらせん
4《探検
4《変身
4《異形化

 

 

除去もハンデスもカウンターも何されても顔面爆発じゃねーか!!!!

 

 

ええ、まあ、ハイそうです。ていうかそれ以前にいくら土地が止まらなくても《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を1枚も引かないと相手に1点もダメージが飛ばなくて詰んだりもします。

が、それでも勝てるデッキには勝ててしまうのが3キルの怖いところなので、何回爆発してもいいから一発ネタを披露したいという方 (?) にはちょうどいいデッキかもしれない。

 

 

 

◇《ランタンを携える者》

 

モダンにおいて同一の効果を持つカードが8枚積めるようになると、コンセプトの安定性が増してアーキタイプが生まれる確率が高くなる。

では16枚、いや20枚積めるようになったとしたならばどうだろうか?

 

 

《ランタンを携える者》。誰も気にしてはいないと思うが、このカードはモダンで「青か白の」「1マナ」「飛行」「スピリット」という条件を満たす5種類目のカードなのである。

とはいえ、「青か白の」「1マナ」「飛行」「スピリット」が20枚デッキに積めたところで何が起こるのか、と思われるかもしれない。

だが、この重なり合いを満たすカードが増えることで誕生するアーキタイプが存在していたのだ。

 

 

1マナスピリットを2マナで全体強化しまくるデッキが組めるのでは???

 

《順風》は「飛行」を強化するので、クリーチャーを飛行で固めておけば全体強化になる。

さらに《兵員の結集》はクリーチャー・タイプを指定して強化するので、「スピリット」で揃えておけばこれまた全体強化となる。

そしてダメ押しに「スピリット」を強化する《至高の幻影》も積めば、実質2マナの《栄光の頌歌》を3種12枚搭載したデッキが爆誕するのだ。

というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!

 

『フライング・スピリット』
クリーチャー(24枚)

4《ランタンを携える者
4《灯籠の神
4《霊廟の放浪者
4《幽体の船乗り
4《倒し霊
4《至高の幻影

呪文(16枚)

4《亡霊招き
4《霊灯の罠
4《順風
4《兵員の結集

 

 

 

こんなんで勝てるわけねーだろ!!!!

 

 

《亡霊招き》とかいう墓地が必要な1マナスピリットを入れざるをえないのも無用なフェッチランドによるライフ損失を必要としており美しくないのでマイナスポイント。もう一種類1マナの飛行スピリットが出ればワンチャンスあるだろうか……?いや、ない (反語)

 

 

 

◇《霊狩り、ケイヤ》

 

《王冠泥棒、オーコ》で手痛い教訓を得たせいか、最近では新セットのプレインズウォーカーは大人しい能力を持つものが多いが、スタンダードで活躍していないからといって、モダン以下でノーチャンスかと言われるとそういうこともない。

なぜなら、スタンダードでは生かせないスケールの能力を持っている場合もあるからだ。

 

 

《霊狩り、ケイヤ》。このカードの「-2」能力はすさまじく、そのターン中ずっとトークン生成量を2倍にしてくれる。

といっても、モダンでトークンを大量に並べて勝つデッキは今のところ存在していないため、能力の生かしようがないようにも思える。

だが、存在しないなら新しく作ればいいのだ。

 

 

 追加の《アカデミーの整備士》として運用できるのでは???

 

《アカデミーの整備士》は食物・手がかり・宝物トークンいずれかの生成の際に他の二者も追加で生成してくれる能力を持つが、2体並ぶと生成量が累乗で増えていくため、複数体並べることの価値が高い点に特徴がある。

他方で《アカデミーの整備士》自身は1/3と死にやすいため、安全に複数体並べることが難しいという弱点を抱えていた。

だが、累乗にはならないもののトークン生成量を2倍にしてくれる《霊狩り、ケイヤ》が《アカデミーの整備士》の追加分として機能するなら、トークンを大量生成できる盤面をかなり作りやすくなるはずだ。

 

 

《最高工匠卿、ウルザ》がいればマナも減らないのでトークン生成をさらなるトークン生成へとつなげられる。あとは《大霊堂の信奉者》か《群の祭壇》でフィニッシュだ。

というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!

 

『MOクラッシャー』
土地(21枚)

1《繁殖池
1《
1《神聖なる泉
1《
4《霧深い雨林
1《草むした墓
3《汚染された三角州
1《
4《ウルザの物語
3《新緑の地下墓地
1《湿った墓

 

ヒストリックで大活躍のフードシナジーを軸に《地獄料理書》と《楕円競走の無謀者》の毎ターン地獄料理生成コンボも搭載し、《アカデミーの整備士》さえ生き残ればありとあらゆる角度でトークンを生成できるデッキとなっている。

ただ、《霊狩り、ケイヤ》の登場で安定性もバッチリ、これでいよいよ実用的なコンセプトに……と思われたが、とてつもないトークン生成量でPCへの負担がヤバすぎる上にクリック量が膨大すぎて右手が破壊されるため、あまり実戦的なデッキではないという結論に至ってしまった。PCと右手に自信がある方だけチャレンジしてもらいたい。

 

 

 

 

 

 

■ 3. 終わりに

モダンの上位デッキの壁は厚く、正直生半可なデッキでは太刀打ちできないのが現状だ。

ただこの現状はウィザーズも認識しているだろうし、『モダンホライゾン2』の発売から半年が経過した今、環境に多様性を取り戻すためにも一度メスが入ってもおかしくないタイミングではある。

冷静に考えて、《死儀礼のシャーマン》が禁止されているのになぜ《敏捷なこそ泥、ラガバン》が許されるのかという説もある。否、《表現の反復》がある今、むしろ《敏捷なこそ泥、ラガバン》の方がより危険かもしれない。

いずれにせよ、2021年はモダンフォーマットにとって激動の1年だったことは間違いない。2022年は『モダンホライゾン2』が残した大きすぎた爪痕を少しずつ癒していく時期になるのではないだろうか。

といったところで、また次回!良いお年を!!

 

 

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