「イニストラード・チャンピオンシップ」終了時点のスタンダード環境をチェック!
おっすおっす。
かーむです。
前回の記事では『イニストラード:真紅の契り』のリリースから半月が経過したスタンダード環境についてざっくり解説させていただきましたが、その後、「日本選手権SEASON3本戦」や「イニストラード・チャンピオンシップ」など節目となる競技イベントも開催されました。
そこで今回は『イニストラード:真紅の契り』のリリースから約1ヶ月が経過した現時点のスタンダードの状況を見ていきたいと思います。
(※デッキリスト画像の表示はMTG-Decklist Viewerを使用しています。)
目次
11/27-28の大会結果:日本選手権とRed Bull Untapped
それでは今回も競技イベントの結果からチェックしてきましょう。
まずは『日本選手権 SEASON3本戦』。
『日本選手権 SEASON3本戦』
単体のアーキタイプでは白単アグロが最大勢力となり、イゼット天啓が2番手となりました。
イゼットはフィニッシャーや勝利手段によって天啓、コントロール、ドラゴンの大きく3タイプに分けられますが、それらを合わせると使用者43名、支配率は約33%と圧倒的トップメタ。
勝率も悪くなく、イゼットコントロール勝率33%と大敗していますが、天啓は56%、ドラゴンは65%と良いパフォーマンスを見せています。
3強最後の一角である緑単アグロですが、使用者は7名と少なめ。
サイズと継戦能力でイゼット系デッキに強く出られるアーキタイプではありますが、めちゃくちゃ有利と言うわけでもない割に白単相手は明確にキツいのが苦しいところ。
(僕も緑単で出場して白単にやられました…)
『Red Bull Untapped』
続いて『Red Bull untapped2021 国際予選Ⅳ』のメタゲームがこちら。
緑単が少し多い以外は、メタゲームは日本選手権と近い構成ですね。
RedBullではイゼット系デッキは累計で179名で支配率は約25%。これだけの使用者がいていずれも勝率50%以上と、やはりデッキが強い。
頼みの緑単は勝率は5割を切っており、いまだ立ち位置は改善せずといったところ。
『日本選手権』、『Red Bull Untapped』のTOP8デッキはこちら。
両イベントともに半数がイゼット系デッキという結果でした。
イゼット8デッキのうち、7つが天啓ですね。
白単アグロは健闘しているものの、やはり緑単アグロの影は依然うすいまま。
オルゾフクレリックやジャンドトレジャーなど、豊富な除去と巨大なクリーチャーを擁するミッドレンジがアグロ殺しとして登場していますが、これらのデッキはクリーチャーデッキに寄せているためイゼット系デッキとのマッチアップは少し苦しく、Tier1に登るのは難しそうな印象です。
そうこうしているうちに、依然イゼットの牙城を崩せないまま『イニストラード・チャンピオンシップ』を迎えます。
12/3-5の大会結果:『イニストラード・チャンピオンシップ』
そして迎える『イニストラード・チャンピオンシップ』。
マジック・プロ・リーグやライバルズ・リーグの所属選手を始め、アリーナやMO(Magic Online)の厳しい予選を勝ち抜いた猛者だけが参加できる、MTGにおける超ガチイベントです。
本イベントではスタンダードとヒストリックのダブル構築制でしたが、この記事ではスタンダードの部分だけ切り取って話していきます。
『イニストラード・チャンピオン』のスタンダードのメタゲームはこちら。
イゼット天啓が最大勢力となりました。支配率38%と驚異的な数字で、他のイゼット系デッキも合わせると45%に迫ります。
次いで白単、緑単と続き、3強の構図は依然変わらず。
3強合計でおよそ全体の70%ほどを占めます。
スタンダードをやり込みまくった猛者たちが集う最高峰のイベントにおいて、4割ほどのプレイヤーがイゼットが最適解だと認識した事実はかなり重いように感じます。
ちなみに前回の『ストリクスヘイブン・チャンピオンシップ』のトップメタはスゥルタイ根本原理で支配率約21%でした。(次点はイゼットドラゴンで16%)
上でも書いた通り、本イベントはスタンダードとヒストリックの2構築制で、両方の戦績で順位が決まりますが、総合成績10-5以上の35名のスタンダードの戦績を切り取ってみました。
その表がこちら。
……やっちゃってない??
3強は本当に3強なのか
そしてこちらがイニストラード・チャンピオンシップのアーキタイプごとの戦績。
2枚目はそれに日本選手権、Red Bullのデータを追加したものです。
Innistrad Championship Winrate Matrix (712 matches) and Standard Winrate Matrix from all events of VOW – Week 4 (2222 matches) pic.twitter.com/vctRxlq0jD
— MTG Data (@mtg_data) December 8, 2021
イニストラード・チャンピオンシップはメタも特殊な部分があるので、パンピーとしては2枚目を見てみましょう。
プレイヤーの質や構成によって勝率はかなり違ってくるため、こういったデータはあくまで参考程度に見ることにしていますが、3強のデータに注目すると白単がちょっとメタられてパフォーマンスが落ちています。
また、勝率ベースでは緑単もイゼット(天啓)と遜色ないように見えます。
ただ、緑単アグロはあらゆるタイプのイゼットに大きく勝ち越しているおかげで数字を作っている部分が強く、白単にもやられているしオルゾフコンやジャンドといったアグロキラーにもしっかりやられています。
対してイゼット天啓は緑単アグロ(とグリクシス天啓)以外にはまんべんなく勝てている印象です。
(ジャンドに7-9で負け越してるのがちょっと気になりますが母数が母数なので…?)
白単はというと、緑単には順当に勝てているものの、イゼットにしっかり意識された結果ちょっとやられ気味。
そして緑単と同じくオルゾフコンやジャンドといったアグロ殺しにやられています。
(よく黒単コントロールに10-2できてるな…)
ざっくりまとめるとこんな感じでしょうか。
3強から頭一つ抜けたイゼットに白単アグロと緑単アグロが追従し、アグロに有利なミッドレンジや除去コントロールが存在しています。
本来、アグロをミッドレンジが倒し、ミッドレンジをコントロールが倒し、そしてコントロールをアグロが倒す構図でじゃんけんになるはずです。
ですが、アグロの一角である白単がコントロール(イゼット全般)にメタられていてイゼットを倒せておらず、「アグロがコントロールを倒す」が半分成立していません。
ならばとイゼットを倒すために緑単が増えそうなものですが、そうはなっていません。
アグロ内の序列では白単アグロに劣り、さらにジャンドやオルゾフといったアグロ殺しはしっかりキツいこともあって、緑単アグロを選択しにくいのが現状です。
しかしイゼットの方はちゃんとアグロ殺すマンたちを倒せていて、気を付けるべきデッキはミラーを除けばほぼ緑単アグロのみと言っていい状態になっており、非常に良いポジションにいます。
個人的には、もう3強という状態ではなくなっていると考えています。
ちなみにイゼットの中でもメタが回っていて、下記3タイプの整理が進んでいます。
①イゼット天啓:《感電の反復》と《アールンドの天啓》のコンボを中核に据えたタイプ。
②イゼットドラゴン:《黄金架のドラゴン》や《くすぶる卵》を採用したタイプ。
③イゼットコントロール:《アールンドの天啓》を排し、《溺神の信奉者、リーア》や《船砕きの怪物》を採用したタイプ。
便宜上3タイプに分けられていますが、境界は非常にあいまいです。
イゼットコントロールに《アールンドの天啓》が入っていることもあれば、イゼット天啓に《黄金架のドラゴン》が入っていることもあります。
ただ、最近の傾向としては《感電の反復》を採用しているイゼット天啓が主流になりつつあります。
『日本選手権』と『Red Bull』のTOP8で半数を占めた8つのイゼットデッキも、そのうち7つが天啓型でしたね。
そうなる理由はイゼット天啓の勝ち手段にあります。
具体的には、《黄金架のドラゴン》や《船砕きの怪物》と違い、イゼット天啓の勝ち手段である《感電の反復》+《アールンドの天啓》のコンボだけが1枚で回答できず、基本的に《感電の反復》+《ゼロ除算》でしか回答できないからです。
つまり、「イゼットミラーにおいては天啓が最強で、天啓とは天啓で戦うのが一番」となります。
ただ、《黄金架のドラゴン》は相手にタップアウトのリスクを負わせることができ、《溺神の信奉者、リーア》も白単アグロ戦で攻勢に折り返すのに非常に良いカードです。
そこで今回イニストラード・チャンピオンシップで優勝した市川選手が使用したのがこちらのイゼット天啓。
Yuuki Ichikawa
イニストラード・チャンピオンシップ (2021年12月3~5日)
スタンダード[MO] [ARENA]
1《黄金架のドラゴン》
1《溺神の信奉者、リーア》
1《船砕きの怪物》
《黄金架のドラゴン》、《溺神の信奉者、リーア》、《船砕きの怪物》といった各タイプのフィニッシャーが1枚ずつ採用されています。
イゼットミラーが頻発すると踏んでか、メインから《才能の試験》とともに追加のドローソースとして《多元宇宙の警告》を採用。サイドにはハンデスの《罠を探す》を採用しています。
《罠を探す》はあまり自分では使ったことのないカードですが、このたった1枚だけのために黒をタッチしているのは興味深いですね。増やしたりしないんでしょうか?
サイドには白単戦で2ターン目に出せればベストムーブの《くすぶる卵》。
序盤はほぼ全てのクリーチャーのアタックを受け止めることで、大きくライフを守ることができ、変身すれば一気に盤面を制圧します。
白単を使っていた時は一番使われたくないカードでした。
ちなみにこちらのデッキは日本のプロプレイヤーたち12人のチームで開発されたもので、スタンダードラウンドでは7-1が1名、6-2が3名、5-3が5名と圧倒的なパフォーマンスを見せました。
マジで上位総なめしてビビった。みんな凄い。凄すぎる。 pic.twitter.com/EBGKGipWLs
— Yoshihiko Ikawa (@WanderingOnes) December 5, 2021
というわけで今回はイゼットが大暴れした結果、イゼットをやたらとフィーチャーした記事になってしました。
大きなイベントも終わったことでメタゲームの動きが多少落ち着き、3強から頭1つ抜けだしたイゼットの王座はしばらく続きそうですが、週末には今環境最後の大型競技イベントになるであろう『Red BuRed Bull Untapped 2021 Portugal Finals』が開催されます。
結果がどうなるか楽しみですね。
それではまた次回の記事でお会いしましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました!!
MTGアリーナの情報を発信する「かーむブログ(https://www.calm-blog.com/)」の管理人。 競技勢でもあり、主な実績は日本選手権2021 SEASON2 7位、BIG MAGIC Summer Challenge5位など。 プレイヤーズツアーへの参加を夢見て日々研鑽中。Twitter ID:@calm_blog