池田貴浩のレガシープリズン 第一回 ~ラガバンに支配されたレガシー~
みなさんこんにちは。東京を中心にレガシーをプレイしている池田と申します。この度、縁あって現在のレガシーのメタゲームと、モダンホライゾン2(以下:モダホラ2)発売以降の注目カードについて記事を書かせていただくこととなりました。
私はレガシー専門プレイヤーで、特に紙での競技を中心に活動しています。主な実績は日本レガシー選手権優勝や、晴れる屋レガシー神挑戦者といったものがあります。これからどうぞよろしくお願いします。
さて、2021年6月18日、レガシー界に激震が走りました。エターナルフォーマット向けに設計された、モダホラ2の発売です。
発売前からいくつもの強力カードが話題になりましたが、その中でも特に注目されていたのが《敏捷なこそ泥、ラガバン/Ragavan, Nimble Pilferer》でした。
この《敏捷なこそ泥、ラガバン》は早速多くのデッキに組み込まれ、猛威を振るっています。
また、モダホラ2で強力なカードは《敏捷なこそ泥、ラガバン》だけではありません。
《ウルザの物語/Urza’s Saga》、《濁浪の執政/Murktide Regent》、各色想起エレメンタルサイクルなど、強力なカードが目白押しです。
今回は、そんなレガシーの今が一体どうなっているのか、最新の情報をお伝えします。
ラガバン率いるURデルバー
いま環境の中心になっているデッキは、間違いなくURデルバーです。レガシーにおいてはURデルバーは常に環境に居続けてきたデッキではありますが、現在のURデルバーは約4分の1(17枚)のカードが新たなカードに組み替えられています。
プレイヤー名:kentaro_hokori
1《溢れかえる岸辺》
1《霧深い雨林》
1《汚染された三角州》
4《沸騰する小湖》
1《冠雪の島》
1《冠雪の山》
4《Volcanic Island》
4《不毛の大地》
1《樹木茂る山麓》
2《秘密を掘り下げる者》
4《ドラゴンの怒りの媒介者》
4《濁浪の執政》
4《敏捷なこそ泥、ラガバン》
勝ち上がったURデルバーの中には、そのデッキ名の由来であり、10年間レガシーの顔でもあった《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》が採用されていないデッキリストすらあります。
それでもURデルバーと名乗って良いのかは所説ありますが… (参考:《秘密を掘り下げる者》が収録された「イニストラード」の発売は2011年9月30日)
《敏捷なこそ泥、ラガバン》の攻撃が通ると、《水蓮の花びら/Lotus Petal》の精製と対戦相手のデッキから衝動的ドローをすることができるため、2つものアドバンテージを得ることができます。
レガシーというフォーマットで2アドというのはゲームを決定付けるだけのインパクトがあります。それをカウンターと除去でバックアップし、圧倒的なテンポで攻めるこのデッキは環境の最適解です。
モダホラ2のカードではありませんが、ストリクスヘイブンの《表現の反復/Expressive Iteration》も強力なドローカードとして加わりました。
《敏捷なこそ泥、ラガバン》以外にもモダホラ2から得た新たな戦力があります。《ドラゴンの怒りの媒介者/Dragon’s Rage Channeler》《濁浪の執政/Murktide Regent》《邪悪な熱気/Unholy Heat》の3枚です。
この中でも《濁浪の執政》の存在がURデルバーには大きく、《敏捷なこそ泥、ラガバン》や《ドラゴンの怒りの媒介者》を捌かれた後に唐突に出てくる2マナ8/8飛行は、相手に立て直す隙を与えず、速やかにゲームを終わらせます。
今のレガシー界で《濁浪の執政》をキレイに対処できるカードは非常に少なく、《剣を鍬に/Swords to Plowshares》《紅蓮破/Pyroblast》しかありません。一番安心して任せられるクロックであり、私の知り合いのURデルバー使いは、「ラガバンが禁止になっても《濁浪の執政》がいればURデルバーはtier1に居続けられる」と言っていました。
このようにURデルバーは間違いなく強力なデッキです。しかし、私たちのようなレガシーの民は、全員がすぐにtier1のデッキに鞍替えするわけではありません。tier1のデッキに勝てるよう、自分のデッキのアップデートを試みる人もいれば、ゼロからデッキを作り直す人もいます。
ここからは王者URデルバーに立ち向かうデッキたちを紹介していきます。
対応力と安定性を手に入れた”4cコントロール”
プレイヤー名:AnziD
4《溢れかえる岸辺》
1《カラカス》
4《霧深い雨林》
1《Plateau》
1《Savannah》
1《冠雪の森》
1《冠雪の島》
1《冠雪の平地》
1《Taiga》
2《Tropical Island》
2《Tundra》
2《Volcanic Island》
1《吹きさらしの荒野》
1《忍耐》
2《瞬唱の魔道士》
3《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
URデルバーに対抗するデッキとして、最初に注目されたのが、4cコントロールです。 このデッキもモダホラ2で新たなカードを手に入れていました。
コントロールデッキが手に入れたこれら2種のカードの特徴は、とにかく対応できる範囲が広いことです。
《忍耐/Endurance》は3マナ3/4到達という恵まれたスタッツで、URデルバーにおける《濁浪の執政》以外のクリーチャーを全て受け止めることが可能です。
さらには墓地のカードをデッキに戻すCIP能力によって、《濁浪の執政》の着地を遅らせます。
《虹色の終焉/Prismatic Ending》は、コントロール使いにとっては念願の万能除去です。
白のダブルシンボルで使い勝手の悪さを感じていた《議会の採決/Council’s Judgment》の代わりとして採用されています。
メインボードに複数枚採用することが許される除去カードなので、コントロールデッキはメインボードから軽量アーティファクト、エンチャントに触れるようになりました。
特に《霊気の薬瓶/Aether Vial》《虚空の杯/Chalice of the Void》などの強力な置物に触ることができるようになったことが大きく、デス&タックスやストンピィ系との相性が劇的に改善しました。
また、《突然の衰微/Abrupt Decay》のための黒タッチも必要なくなり、足回りが綺麗に動くようになりました。
最強の「矛」を手に入れた”デス&タックス”
プレイヤー名:YawgmothPT
1《魅力的な王子》
4《ちらつき鬼火》
1《ルーンの与え手》
4《ルーンの母》
1《宮殿の看守》
4《護衛募集員》
1《聖域の僧院長》
4《スカイクレイブの亡霊》
4《孤独》
4《迷宮の霊魂》
4《石鍛冶の神秘家》
4《スレイベンの守護者、サリア》
1《封じ込める僧侶》
1《議会の採決》
3《耳の痛い静寂》
1《エーテル宣誓会の法学者》
1《レオニンの遺物囲い》
2《精神壊しの罠》
1《平和の番人》
1《ファイレクシアの破棄者》
1《真髄の針》
2《安らかなる眠り》
1《空を放浪するもの、ヨーリオン》
デス&タックスもURデルバーに対して有力なデッキとしても台頭しています。このデッキがモダホラ2で手に入れたカードは《カルドラの完成体/Kaldra Compleat》と《孤独/Solitude》です。
そもそもデス&タックスは、メインから無理なく《カラカス/Karakas》を複数枚採用することができるため、伝説のクリーチャーである《敏捷なこそ泥、ラガバン》に強いです。
また、デス&タックスはヘイトベア戦略によって、相手の展開を遅らせることが得意な盾のデッキなイメージでしたが、モダホラ2の登場によって、ついに《カルドラの完成体/Kaldra Compleat》という最強の矛を手に入れました。
更に《護衛募集員/Recruiter of the Guard》からのサーチ先として追加された《孤独/Solitude》は、《否定の力/Force of Negation》によって消されない&《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn》に対応できる数少ないカードとしても重宝します。
これらのETB能力持ちが増えた為、最近はデッキを80枚にして、サイドボードに相棒として《空を放浪するもの、ヨーリオン/Yorion, Sky Nomad》を採用するケースが主流になりつつあります。
ウルザの物語デッキたち
次に忘れてならないのが、ラガバンに次ぐ禁止候補、モダホラ2の新カード《ウルザの物語/Urza’s Saga》を使用するデッキです。
《ウルザの物語》は無色土地であり、構築物トークン精製能力と、1マナ以下のアーティファクトを場に出す能力を持っています。一見、専用の構築が必要に思えますが、パッケージとしても《ウルザの物語》に加えて、1マナ以下のアーティファクトを2枚程度入れるだけで十分な強さを発揮するため、多くのデッキに採用されています。
1章では土地として機能し、2章ではインスタントタイミングでクロックを展開することができ、3章ではシルバーバレット戦略もできるので、非常に柔軟性の高いカードです。
この強力な土地カードを引っ提げて、最初に頭角を表したのは白青奇跡コントロールに《行き詰まり/Standstill》を入れたサーガミラクルです。従来の奇跡コントロールのボードコントロール力に加え、《ウルザの物語》と相性の良い《行き詰まり》でアドバンテージを得られるようになっています。
(第17期レガシー神挑戦者決定戦Top8)
プレイヤー名:Kobayashi Tatsuumi
3《冠雪の島》
2《冠雪の平地》
2《Tundra》
2《Volcanic Island》
4《溢れかえる岸辺》
2《霧深い雨林》
1《カラカス》
1《神秘の聖域》
1《ヘリオッドの高潔の聖堂》
2《ウルザの物語》
3《永久のドラゴン》
《行き詰まり》によってお互いが呪文を唱えづらい中、こちらだけ《ウルザの物語》と、モダホラ2からの新戦力である《永久のドラゴン/Timeless Dragon》でのクロック展開が可能なので、コントロールデッキながらも勝ち筋が多く、多角的な攻め方ができるデッキになっています。
他にも、モダホラ2から《思考の監視者/Thought Monitor》を得た青単親和や、コンボパーツがサーチできるアーティファクトデッキのペインター、土地であることを最大限に生かした土地単、古くからある部族デッキのマーフォークなど、様々なデッキに採用されており、私がこよなく愛する赤単プリズンにも採用実績があります。
プレイヤー名:Minest110
4《湖に潜む者、エムリー》
4《練達飛行機械職人、サイ》
4《思考の監視者》
また、現在のレガシー界のカードパワーを結集させたデッキである、《敏捷なこそ泥、ラガバン》+《ウルザの物語》のカウンターモンキーというデッキも開発されました。カウンターモンキーはマナベースに少し難があり、足回りの歪さはあるものの、デッキのパワフルさは凄まじく、一度回り始めると手が付けられないカロリー満点のデッキとなっています。
プレイヤー名:Bullwinkkle6705
2《溢れかえる岸辺》
1《島》
2《霧深い雨林》
1《山》
1《神秘の聖域》
2《汚染された三角州》
4《沸騰する小湖》
4《ウルザの物語》
4《Volcanic Island》
2《不毛の大地》
4《濁浪の執政》
3《敏捷なこそ泥、ラガバン》
サイドボードにも大きな変化が
このような環境変化により、構築やサイドボードにも大きな影響を与えました。まず《敏捷なこそ泥、ラガバン》対策として、1マナの軽量除去が増えました。以前は多めに採用されていた《突然の衰微》などの2マナ除去は、後手だと《敏捷なこそ泥、ラガバン》のコンバットを許してしまうため数を減らし、その枠は《虹色の終焉》や《邪悪な熱気/Unholy Heat》に代わりました。
一方、URデルバーではミラーを意識して《はらわた撃ち/Gut Shot》が採用され始めています。また《敏捷なこそ泥、ラガバンr》と《濁浪の執政》の両方に対応できるカードとして、《死亡+退場/Dead+Gone》も見る機会が増えました。
もう1枚の問題児、《ウルザの物語》対策としては《溶融/Meltdown》や《激しい叱責/Dress Down》の採用が増えています。《溶融》は《ウルザの物語》が生み出した構築物トークンと、サーチしたアーティファクトをまとめて破壊することができます。
《激しい叱責》は、構築物トークンの能力の失わせて状況起因で墓地送りにすることができます。 また《激しい叱責》の影響下で《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature’s Wrath》をキャストすると、自身を生贄にする能力が誘発せず、3マナ6/6のクリーチャーとして運用できるのもポイントです。
まとめ:レガシーは変わり続ける
まだまだ進化し続けているレガシー環境。今でも遅くありません!レガシーの世界に飛び込んできてください。1枚のカードと1つのアイデアで環境が激変するエキサイティングな環境です。特に《敏捷なこそ泥、ラガバン》と《ウルザの物語》については、今後いろんな意味で注目のカードです。それではまた来月、お会いしましょう。
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赤単プリズンをこよなく愛するレガシー民。赤単プリズンを擦り続けて5年以上。青が強いレガシーには珍しく、非青デッキを得意とする。レガシー以外には、EDHとボードゲーム、Among Us、お酒が大好き。
実績:日本レガシー選手権2018春優勝、14期レガシー神挑戦者
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