ボードゲーム遊び方紹介 第57回 『さかな、さざなみ、さようなら』 前編
一人で遊ぶボードゲーム、『さかな、さざなみ、さようなら』を紹介します。
対象年齢は15歳以上です。
説明書にはサリンジャーの短編「テディ」[1]アメリカの小説家「J・D・サリンジャー」が1953年に発表した短編集『ナイン・ストーリーズ』に収録されている作品からの引用文や書いてあったり、「諸法無我」という仏教用語がうたわれていたりします。
「諸法無我」は「全てのものは因縁によって生じたものであって実体性がない」という意味を持っています。ゲームの世界観を表すストーリーも記載されていますので、物語好きにも要注目のゲームです。
言葉だとピンとこないかもしれませんが、『さかな、さざなみ、さようなら』は、デッキのカードを減らしていくゲームです。勝利条件は、全てのカードをなくして無の境地に至ること。真の自由と安らぎがゲームによって味わえるという主旨を持っています。
もしかしたら、心が疲れている人向けのゲームなのかもしれません。
カードは全部で30枚。内訳は、数字の書いてある「徳カード」が12枚、行動の書いてある「アクションカード」と「合点カード」は合計12枚、欲を描いた「煩悩カード」は6枚あります。
中央に大きく数字が書かれているのが徳カード。コストとして使えるお徳ポイントが得られます。
【アクション】【合点】【特殊】カード。使用時にそれぞれの効果を得ることが出来ます。
内箱は「彼岸」「超彼岸」と二つに分かれています。ターンの行動内容によっては、手札を「彼岸」に送る場合もあります。これを、「解放」と呼んでいます。
(「アクション」は1ターンに何回でも使用できますが、「解放」は1ターンに1回しかできません。)
なくなった山札を作り直すときは、三途の川を渡らなければならず、渡し賃が必要になります。彼岸にあるカードから2枚を超彼岸に送ると、それが渡し賃になります。この超彼岸にカードを送ることを、「超解放」といいます。
彼岸にカードが2枚無くて「超解放」が出来ない場合にはその場でゲーム終了です。
ゲームは30枚のカードをよくシャッフルして伏せて山札とし、山札から5枚取って手札にします。一人用ゲームなので、カードの内容を隠す相手もいません。下の画像みたいな感じにテーブルに並べるとプレイしやすくなります。
畳模様のカードは山札用のボードです。この上に山札を置きましょう。
ゲームの勝利条件は、カードをすべて解放すること。
ターン中に、カードを1回解放できます。アクションカードの使用は、何回でも好きな順番でできます。使用したカードや残った手札はターンが終了したら捨て札に流します。
では、やってみましょう。ゲームスタート!
私が引いたカードは、「徳カード」の1と2、「特殊カード」の縁、「合点カード」の悟り、「アクションカード」の因です。
すべてのカードの左上には数字が書いてあります。
この数字は、そのカードを解放するためのコストで、コストがないと、カードを解放することができません。
徳カード2を使って悟り[2]悟り:【合点】このカードを開放するとき、コスト5以下の手札を1枚開放してよい。この効果ではお得ポイントや解放枠は消費しない。を解放したいですが、もう少し様子を見たほうが良さげです。因[3]因(カルマ):【アクション】山札からカードを3枚引く。を使って、山札から3枚引きました。内訳は徳カードが1と2と、食欲カードです。
1回しか解放はできないので、徳カード2を使って、お徳ポイントを2ポイントゲット。コスト2で解放できる、食欲を解放しました。
使ったカードと残りの手札は捨て札に流し、続いての手札は、「徳カード」1と2、「合点カード」の悟り、「アクションカード」の諦め、そして食欲です。
徳カード1と2を使って3お徳ポイントをゲットし、諦め[4]諦め:【アクション】コスト4以下の手札を一枚開放する。この効果ではお得ポイントや解放枠は消費しない。を解放しました。この解放分はお徳ポイントや解放枠を消費しないという効果があるので、まだ解放できます。まったく不要なコスト2の食欲を解放して終了です。
3ターン目は、「徳カード」が1と3、「合点カード」は赦しと気づき、それに色欲です。コスト0の気づき[5]気づき:【合点】このカードを解放したとき、解放枠を3増やす。を解放して解放枠を3つ増やし、コスト0の徳カード1を解放。色欲を解放したいところですが、コスト8には到底届かないので、ここで終了です。
長くなりましたので、後編に続きます。
冒険企画局
プレイ人数:1人
プレイ時間:15分
対象年齢:15歳~
メーカー商品紹介ページ
千澤のり子さんも寄稿されている平成をテーマにしたアンソロジー小説集『平成ストライク』の文庫版が10/23に角川文庫から発売になります。
これは決して「過去」ではない。9つのミステリでたどる平成の軌跡。
JR尼崎駅で通勤電車を待っていたカメラマンの植戸は電車脱線の報せを受ける。その後、ホームで見かけた高校生が事故の取材現場にも現れて……(「加速してゆく」青崎有吾)。私は悪を倒すため、正義のために、彼のブログに殺害予告を書き込み続ける(「他人の不幸は蜜の味」貫井徳郎)。
平成に起きた、印象的な事件や出来事をテーマに9人の注目作家が紡ぐ衝撃のミステリ。今を手探りで生きる私たちの心に刺さる、珠玉の競作集!
脚注
1973年生まれ
作家。2007年に宗形キメラ名義で二階堂黎人との合作『ルームシェア 私立探偵・桐山真紀子』で作家デビュー。2009年には『マーダーゲーム』で単独デビュー。近刊は「少女ティック 下弦の月は謎を照らす」(行舟文化)
ボードゲーム好きで『人狼作家』の編集も手がけ、羽住典子名義でミステリ評論活動も行っている。
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