スタンダード環境解説 All Will Be One、全ては白になるのか?
かーむです。
今回は冒頭にちょっとお知らせがあります。
これまで僕は「かーむの MTGスタンダードたいむず」と題してスタンダード環境の解説を行ってきましたが、今後は僕だけでなく、僕が所属しているMTGチーム「明星Hive」のメンバーたちにも記事を執筆してもらうことになりました!!
※明星Hiveについてはコチラの記事の冒頭でも紹介しています
今回は早速、チームの中心的存在でもあり稀代のデッキビルダーである茂里選手に新環境スタンダードについて解説してもらいましょう。
おっすおっす、MTG Arenaの王(自称)にして、ラストMPLの茂里憲之です。
この度は「明星Hive」というチームでお世話になっている友人のかーむさんにお誘いいただき、チームとして記事を執筆させていただきます。
では早速、新セット『ファイレクシア:完全なる統一 』のリリースで激動のスタンダードについて解説していきたいと思います。
目次
前環境までのおさらい
ローテーションとともにリリースされた2つ前のセットである『団結のドミナリア』。ここから黒いデッキの黄金時代が始まった。
新たに《黙示録、シェオルドレッド》を得た黒はローテーション前から活躍した《策謀の予見者、ラフィーン》とともにまずエスパーで猛威を振るった。エスパーに始まりエスパーに終わるかに見えた『団結のドミナリア』スタンダードであるが、世界選手権という大舞台で流れが変わる。
※画像はマジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイトより引用しております。
32人中22人がエスパーをプレイした中、齢20の若き新チャンピオンNathan Steuerの手にあったのはグリクシスミッドレンジだった。
またしても黒いパワーカード《絶望招来》に加え、スタンダード最強カード《鏡割りの寓話》を採用し、テンポでエスパーに有利をつけた王者にふさわしいデッキだ。
前セットの『兄弟戦争』でグリクシスミッドレンジの勢いは衰えるどころか加速する。グリクシスは汎用除去の《喉首狙い》にマナフラ受けができるフィニッシャー《刃とぐろの蛇》を手に入れた。「グリクシスに強いグリクシスを作れ」という方向へ環境は動いていった。
手前みそではあるが、この流れは以前noteでもう少しだけ詳しく書いたのでこちらも。
https://note.com/maddogmtg/n/n207095398508
スタンダードクイックガイド グリクシスミッドについて|Noriyuki Mori @kushiro_mtg #note https://t.co/Dwn5pOCDkF スタンダード前環境からなんもやっとらん人向けのクイックガイド。なんでグリクシスはやっとるのかとかどういうゲームを考えてるかとかについて
— Noriyuki Mori (@kushiro_mtg) December 13, 2022
完全なる統一、世界は白へ
リリースからわずか数日ながら、『ファイレクシア:完全なる統一』は環境に変化をもたらした。
2/11 STANDARD CHALLENGE
まず初めのイベントは2/11、Magic OnlineのSTANDARD CHALLENGE。
優勝 ボロス招来
準優勝 アゾリウス兵士
TOP4 白単ミッドレンジ
TOP4 ボロス招来
TOP8 グリクシスミッドレンジ
TOP8 白単ミッドレンジ
TOP8 白単ミッドレンジ
TOP8 白単ミッドレンジ
優勝はボロス招来。このデッキの中で圧倒的存在感を放つのはやはり《偉大なる統一者、アトラクサ》。
本体が強力でありながら高いリソース回復能力を持ち、《報復招来》でのリアニ対象として採用されている。7マナというマナ域は《大勝ち》の宝物を使い手札から唱えることも狙いやすく、マナ域、性能共にデッキにマッチしている。
2/12 STANDARD CHALLENGE
続いて2/12のStandard Challenge。
優勝 5Cアトラクサ
準優勝 アゾリウス兵士
TOP4 ボロス招来
TOP4 赤単アグロ
TOP8 グリクシスミッドレンジ
TOP8 エスパープレインズウォーカー
TOP8 グリクシスミッドレンジ
TOP8 ボロス招来
異なるデッキタイプで《偉大なる統一者、アトラクサ》を使ったデッキが二日続けて優勝。飛び抜けたカードパワーが示された結果となった。
こちらは土地をせっせと並べて手札から出す型である。リアニ型のようなインチキ感はないものの、その分一枚一枚のカードが強く、《偉大なる統一者、アトラクサ》の能力でより強い手札を作ることを期待できる。版図デッキを支える除去の《力線の束縛》がエンチャントでありカード種類がばらけているのもよい。
2/12 蒼紅杯
2/12には日本でも参加者100人規模の草の根大会が開催された。蒼紅杯は参加者のレベルが高く、公式動画でも取り上げられたイベントである。実は筆者は呼んでいただいて解説をやった。
優勝 白単ミッドレンジ
準優勝 白単ミッドレンジ
TOP4 エスパーミッドレンジ
TOP4 グリクシスミッドレンジ
TOP8 ゴルガリミッドレンジ
TOP8 白単ミッドレンジ
TOP8 白単ミッドレンジ
TOP8 グリクシスミッドレンジ
結果はというと白単ミッドレンジが優勝。
白単ミッドレンジは前環境でグリクシスミッドレンジに有利ということで注目を浴びるようになったデッキである。スタン最強カード《鏡割りの寓話》に3マナ域で張り合うよりも、もっと長いレンジでのリソース勝ちを目指す。《婚礼の発表》や《聖域の番人》のような《絶望招来》の危機が悪くかつ強固な盤面を作る。新カードの《骨化》はグリクシスキラーとしての立ち位置を確固たるものにした。《鏡割りの寓話》のトークンを丁度良く処理した後、《絶望招来》から《婚礼の発表》の身代わりにできる。
前環境覇者のグリクシスも以上の3大会上位にちらほらいるものの、24人中8人が白単ミッドレンジでありデッキの地力の高さが伺われる。
白単ミッドレンジに加わった新カードで存在感があるのはやはり《永遠の放浪者》。
盤面コントロール能力が高く、特に白単ミッドレンジミラーで強力である。蒼紅杯準優勝のYushi Uzuki氏のリストでは《聖域の番人》の代わりにメインから採用されている。前環境では《絶望招来》の存在から重いプレインズウォーカーのメインデッキでの採用は稀であった。結果を出したデッキが「白単を意識した白単」であることは、新たな王者の到来を告げるようである。
メタゲーム・その他のデッキ
ざっと優勝デッキを見てきた。続いて2位以降のデッキをピックアップしながらメタゲームの変化や新カードの可能性をさぐっていく。
グリクシスミッドレンジ
目の敵にされたグリクシスももちろん黙ってやられているわけではない。《感電の反復》と《大勝ち》のパッケージが搭載された型が蒼紅杯でTOP4に入っている。
宝物でマナ加速をして強いスペルをコピーする動きは《アールンドの天啓》禁止前の環境でミッドレンジ(特にカウンターのないもの)を駆逐していた。本来不利な白単もアンフェアな動きで圧倒できるポテンシャルがある。
青白兵士
環境最強カードの《鏡割りの寓話》に白単ミッドレンジがより遅いレンジで有利をつけることを目指しているのに対し、1マナ域からクリーチャーを出して圧をかけ、より速いレンジで戦うことを目指すデッキもある。アゾリウスは2/11のStandard Challengeでスイスラウンドを1位通過し、準優勝した。
1マナの優良クリーチャー《離反ダニ、スクレルヴ》の追加とファストランドの再録により、アグロも新セットの恩恵を受けた。
エスパープレインズウォーカー
グリクシスはプレインズウォーカーに強い《絶望招来》を使うが、白単がプレインズウォーカーに対処する手段は限られている。そう、プレインズウォーカーの黄金時代が始まっているのだ。プレインズウォーカー戦略が環境で優位である。また、新セットでは10種のプレインズウォーカーと、プレインズウォーカーや《勢団の銀行破り》と相性のいい「増殖」をするカードが加わった。
最後に
以上、既に大きな環境の変化が起こっていること、これから起こりうることがわかったのではないだろうか。
環境はこのまま白に染まり、All will be One、完全なる統一となるのか、それとも打ち破る勢力が現れてくるのか?これからのイベントをお楽しみに!そして自分自身も楽しみたい。
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灯争大戦からMTG Arenaでマジックをはじめ、競技歴1年で世界トップ24人のプロプレイヤーであるMPLメンバーになる。様々な分野の知識をマジックへ応用することや、カードゲーム理論の一般化が好きで、日々発見をnote綴っている。
note:https://note.com/maddogmtg/
Twitter:https://twitter.com/kushiro_mtg