センセイ(べ・一文字)のメモリが少なくても語りたい

『ゲーム小説』の一読者視点からのアレコレ【後編・PC美少女ゲームとの微妙なカンケイ】

公開日:センセイ (べ・一文字)


 
 
続いてしまいましたが、今回も同じ調子で。前回はコンシューマを起源としたコンピュータRPGのノベライズで印象的なものだったので、引き続いて、ゲームノベライズで印象的なものを語っていこうかと。例によって個人的な記憶と体験・経験則が元ですのでご了承の程、かつ、文中敬称略です。
 
ゲームからのノベライズにかこつけて前回、1989年に創刊した角川スニーカー文庫について触れましたが、創刊直後のラインナップは水野良『ロードス島戦記』以外にも、『ガンダム』の富野由悠季、『エルガイム』の渡邊由自、『マクロス』の富田祐弘等の脚本家が名を連ねており、創世記のライトノベル市場を作り上げていたのでした。ゲームのノベライズだと『イース』のオリジナルストーリーでのノベライズ(著者は飛火野耀)も角川文庫から行われ、スニーカー文庫で新装版と続編が出版されてもいました。
これらの作品群で印象的なのは、小説と言う媒体を得てか性的なもの、ジュブナイルポルノの側面を多く持った作品が多かった事が挙げられます。何分『ガンダム』からして、当時この文庫版を貸してくれた先輩の「セイラさんが〇〇〇〇だよ!」の言葉が深く深く記憶に残っているシロモノだからして。
さらに遡ればスニーカー文庫の角川書店の一部門だった富士見書房が、歴史に残るアダルトアニメ『くりいむレモン』シリーズのノベライズを富士見文庫として刊行しており、この頃の文庫フォーマットが角川スニーカー文庫、ひいては後の富士見ファンタジア文庫に活かされています。
その上この富士見文庫の『くりいむレモン』ノベライズを筆頭としたジュブナイルポルノは、紫綬褒章作家である故・稲葉真弓が倉田悠子の変名で作品を発表し続けていた事が後年本人のコラムにて明らかになっています。個人的にはシリーズ後期のオリジナル作『サイレント・レイク』(イラストはねぐらなお)が近未来ディストピアSFモノだったのですが「これを稲葉真弓が書いてたのか…」とモノスゴくビックリしたのを覚えています。それらの『くりいむレモン』ノベライズ作品ですが、2020年に星海社FICTIONSより『黒猫館』『続 黒猫館』が合本して復刊、以降も『エスカレーション』『旅立ち 亜美・終章』『マイ・ソング 亜美それから』とシリーズとして続々復刊、イラスト担当も岡崎武士・いとうのいぢ・渡辺明夫(=ぽよよんろっく)と非常に分かっているというか特定の層狙い撃ちと言う感で出版されています。


星海社FICTIONS『黒猫館・続 黒猫館』著・倉田悠子/イラスト・岡崎武士

で、脱線しましたが何の話だっけなとゲームノベライズの話を絡めて、これらのジュブナイルポルノの系譜とゲームノベライズの融合と言うか交差と言うかを語ると、過去コラム(「美少女ゲーム界隈と美少女フィギュア市場のカンケイ【2】」辺りをご覧ください)にもありますが、ゲーム市場で恋愛シミュレーションゲームが次々発売されて大きな存在になり、恋愛シミュレーションゲームに影響を与え与えられ確固たる市場を築き歴史に残る傑作・名作が多数発売されたアダルト要素を含むPC美少女ゲーム、俗に言う“エロゲー”は90年代半ばには「ノベルゲーム」と称される物語を読み解く形式が多数を占めるようになるのですが、それらPC美少女ゲームのノベライズも多数輩出されるようになります。
その代表格にして切欠と呼ぶべき作品としては、1996年にワニブックスノベルより発行された、中山文十郎による小説版『同級生 -もうひとつの夏休み-』を挙げます。


ワニブックス 小説版『同級生 -もうひとつの夏休み-』
著・中山文十郎/表紙・竹井正樹/イラスト・珠梨やすゆき

元となったPC美少女ゲーム『同級生』は、1992年末にエルフから発売されたPC/DOSゲームで、さかのぼる事その前の「沙織事件」によるPC美少女ゲーム摘発とそれを契機にした翌1992年のコンピュータソフトウェア倫理機構(ソフ倫、EOCS)の設立とPC美少女ゲーム市場激動の余波冷めやらぬ時期に発売され、後のPC美少女ゲーム市場を一変させるだけの存在でした。先日発売されたコミック『16BITセンセーション!』(漫画/若木民喜・原案/みつみ美里(アクアプラス)&甘露樹(アクアプラス))でもそのセンセーショナルさは取り上げられており、その影響はいかに大きかったかをうかがい知る事が出来ます。その人気によってPC美少女ゲーム市場にコペルニクス的変換が発生し、過去コラム「美少女ゲーム界隈と美少女フィギュア市場のカンケイ【1】」にもあるPCエンジン版のコナミ『ときめきメモリアル』の発売もこの頃で、エロゲー含めた美少女ゲーム市場の拡大と認知度の上昇が起こっています。


KADOKAWA『16BITセンセーション!』
漫画/若木民喜・原案/みつみ美里(アクアプラス)&甘露樹(アクアプラス)


『16BITセンセーション!』177頁、CREDIT
壮観たる各社権利元一覧

 

『同級生』はピンクパイナップルによるOVA版(出演声優にはこおろぎさとみや高橋美紀など)やPCエンジン版への移植(過去コラム参照)等のマルチメディア展開を経て、ワニブックスの小説版に繋がります。既に1995年にPC/DOS版の続編『同級生2』が発売され、その人気でPC美少女ゲーム市場が大きく注目されていた時期ですが、新書版で発行された『小説版同級生』はゲーム本編のシナリオをなぞりながらもキャラを掘り下げ、背景をも語らせた上で魅力的に描き、主人公をゲーム本編にある画一的なナンパ野郎・ハーレム野郎にせずにパートナーを選択すると言う行為を示し、濡れ場もガッツリ用意するという、ゲーム本編を知らずともその物語に没頭できるジュブナイルポルノとしての傑作に仕上がっています。ゲームノベライズと言うジャンルに於いてもその存在感は圧倒的で、事実全三巻の最終巻が発売されたのは1997年と刊行には時間を要していたのですが、いずれの巻もベストセラーとして評価されています。
しかしワニブックス(『コミックガム』等を刊行)だったか、近年の潮流からワニマガジン(『コミック快楽天』等を刊行)とごっちゃになってたわ。


ワニブックス 小説版『同級生 -星空の記憶-』(2巻)
著・中山文十郎/表紙・竹井正樹/イラスト・珠梨やすゆき


ワニブックス 小説版『同級生 -きっと、忘れない夏-』(3巻)
著・中山文十郎/表紙・竹井正樹/イラスト・珠梨やすゆき

最終巻だけ450頁と他の巻の倍近い分量です

著者の中山文十郎はこの『小説版同級生』の前には前回コラムに登場した小学館スーパークエスト文庫にて『うしおととら』のノベライズ等を手掛けていましたが、『小説版同級生』以降は同じワニブックス刊でジュブナイルポルノ・現代ファンタジーの『雪菜のねがい』(イラスト/陽気稗)を出版、さらに後にぢたま某作画のコミック『まほろまてぃっく』原作を手掛け、『まほろまてぃっく』はガイナックス製作でアニメ化、20世紀末から21世紀にかけてのメイド萌えの始祖を築き上げました。
『同級生』以降、原作をPC美少女ゲーム作品に持つ新書版のジュブナイルポルノ要素が極めて高いノベライズが多数出版されます。『同級生』を出版したワニブックスからは、『同級生』と同じエルフを発売元とするPC美少女ゲーム『野々村病院の人々』が紙谷龍生によりノベライズされています。更に紙谷龍生が手掛けた作品には『慟哭 そして…』があり、この原作はコンシューマー(セガサターン)の美少女ゲーム原作(しかも発売元はDECOことデータイースト)で、セガサターンとは言えコンシューマー作品にも拘らずメインヒロインとのグランドEDに明らかに事後を匂わせる朝チュン一枚絵が用意されている等、当時の様々な市場の広がりを垣間見ることの出来る一本だったのですが、その濡れ場をきっちり文章化していました。いいぞよくやった。


ワニブックス『慟哭 そして…』著・紙谷龍生/イラスト・横田守/協力・データイースト

また、この頃にはPC美少女ゲームのノベライズがジュブナイルポルノとしての位置づけで次々に発行されています。この手法の先鞭をつけたパラダイム出版のパラダイムノベルは、殆どの作品でゲーム本編の画像を本文内に収録し、描き下ろしの挿絵を用意せずにノベライズにのみ特化するという手法でPC美少女ゲームのノベライズを次々に発行しています。
有名なのは、過去コラムでも触れた「泣きゲー」の始祖とも言うべき『Kanon』で、各キャラクター毎に一冊づつ計5巻のノベライズが本編に忠実に書かれています。著者の清水マリコはこの時期を代表する泣きゲーの『君が望む永遠』(これまた過去コラムも参照)のノベライズも担当し、後にライトノベルレーベルMF文庫Jの創刊ラインナップの一角を務めます。


パラダイム『Kanon ~陽溜まりの街~』原作・Key/著・清水マリコ/原画・樋上いたる

さらにサーカスから発売されたシリーズ『D.C.~ダ・カーポ~』も、パラダイムノベルから各キャラクター毎に一冊づつの刊行を行い、ファンディスクや続編での追加キャラでも同様に各キャラクター毎に一冊づつの刊行を律儀に行っているので、シリーズを通してものすごい数が発行されています。具体的には無印で6冊、『P.C.~プラスコミュニケーション~』で6冊、ファンディスク『C.D.C.D.2 〜シーディーシーディー2』『D.C.Dream X’mas』で一冊づつ。こんな感じでシリーズがⅣまで継続しているんですからそりゃものすごい数になりますよあーた。さらに手元にあった『朝倉音夢編』『白河ことり編』を見てみたら5刷とか9刷とかあって、新作発売とかアニメ化とかで重版重ねてたんだなぁ…、とあの時代のイキオイを感じずにはいられません。
パラダイムノベルは2013年以降発行が行われておらず、同社の文庫レーベルである「ぷちぱら文庫」にてPC美少女ゲームのノベライズを現在でも発行し続けていますが、PC美少女ゲームの新書版ノベライズを大いに広めた立役者としてオタクの脳裏にその名を刻んでいるのは間違いないかと。


パラダイム『D.C.~ダ・カーポ~ 朝倉音夢編』原作・サーカス/著・雑賀匡
パラダイム『D.C.~ダ・カーポ~ 白河ことり編』原作・サーカス/著・雑賀匡

この頃(過去コラム『美少女ゲーム界隈と美少女フィギュア市場のカンケイ【3】』もご参照ください)萌え市場の最前線に位置していたPC美少女ゲーム市場は、その性質上メインのソフトが年齢制限有りで販売されている事が殆どで、未成年のファンがゲーム本編ではなくノベライズを入手することでその世界に触れる役割を果たしていたと当時どこかで読んだ記憶があるのですが如何でしょ?少なくとも書店員の友人からそう言った話を聞いたことはあります。まぁコミックが「成年向けマーク」の存在もあり販売に際し年齢制限がかかっているのですが、ジュブナイルポルノは「小説」という形態から制限がない事もあり、「本来の目的」での用途が強い事は『Kanon』巻末のパラダイムノベル既刊ラインナップを見ても察することが出来ます。しっかしまー濃いぃタイトル揃いだよなぁ。


『Kanon ~陽溜まりの街~』242頁、パラダイム既刊ラインナップ

 

PC美少女ゲームのノベライズには本編のストーリーをそのまま、あるいは大幅になぞるものが大半でした。先の『Kanon』はその典型で、メインヒロイン五人分5ルートを一人一冊で計五冊刊行すると言う手法で選択肢を選ばない物語に没頭できる方式を取っています。この方式は後年でも、シナリオ丸戸史明でアニメ化もされた『WHITE ALBUM2』がライトノベルレベルGA文庫から刊行された際(著者は月島雅也)も、視点変更と一人称の変更で既存の読者層にも新鮮に読めるものの独自解釈などは設けず基本的にメインのシナリオをなぞる展開でした。新規の読者層を開拓すると言う意図が見えるマルチメディア展開を前提にした作品や、エロに特化して濡れ場オンリーの原作PC美少女ゲームのノベライズでは主にこの方式が取られていたので割合でも高いのではと思われます。
逆にこの方式ではない、本編発売後のファンディスクで見られるような本編で描かれていないアフターの関係や幕間を描いたりするノベライズもあり、パラダイムノベルではなかなか見なかったのですが、ソフガレノベルから刊行されたHOOKSOFTの各作品『Like Life』『_summer(アンダーバーサマー)』のノベライズは各キャラの関係と濡れ場に力を注いだオムニバスとなっており、著者の神尾丈治が後に一迅社文庫にて発表したオリジナル作品『Re:俺のケータイなんてかわいくない!』を刊行した際に『Like Life』登場キャラと設定を一部拝借すると言う、知っている人には判るニヤニヤしてしまう暴走をしています。好きですけどねこういうの。
前述の『Kanon』も、パラダイムノベルから新書版で出版された後に、原作PCゲーム発売元のビジュアルアーツから発行されたVA文庫にて大幅加筆・修正も含めた文庫版での再版が2011年に行われていますが、その際にパラダイムノベルにはなかった6巻、キャラで言うとメインヒロインではない佐祐理さんルートがノベライズされています。こういう複数のルートに寛容なのがPC美少女ゲームの原作の特徴でもあり強みだよなと思ってしまいます。


VA文庫『Kanon ~笑顔の向こう側~』原作・Key/著・清水マリコ/イラスト・樋上いたる
VA文庫『Kanon ~彼女たちの見解~』原作・Key/著・清水マリコ/イラスト・ZEN

パラダイムノベルと並んでPC美少女ゲームのノベライズとして名高いのがキルタイムコミュニケーション社の「二次元ゲームノベルズ」レーベルで、雑誌「二次元ドリームマガジン」「コミックアンリアル」の流れを汲む「二次元ドリームノベルズ」のゲームノベライズレーベルです。元の誌面の作風的に、ジュブナイルポルノのみならず官能小説全般と比較しても「二次元でしかできない」事を売りとした非常にハードな濡れ場が殆どで、それが売りです。ノベライズされたPC美少女ゲームタイトルは『ぶらばん!(ゆずソフト)』『つよきす(きゃんでぃそふと)』『プリンセスラバー!(Ricotta)』等アニメ化もされたタイトルが中心ですが、前述のオムニバスにも近いキャラクターを掘り下げたオリジナルストーリーを展開してディープなファンにも納得するものを刊行しており、『つよきす』シリーズのアナザーストーリーを出版し続けた著者のさかき傘は続編の『つよきす三学期』のメインシナリオライターに抜擢もされました。
また二次元ゲームノベルズの創刊ラインナップは200412月の瀬戸口廉也『CARNIVAL』、原作はS.M.Lから発売された同タイトルPC美少女ゲームで、実力派アニメーター倉嶋丈康(『IS<インフィニット・ストラトス>』キャラクターデザイン・総作画監督)による一人原画・絵コンテ・演出のフルアニメOPはPC美少女ゲーム市場以外にも衝撃を与え、ただしゲーム内容はポップなOPと相反する虐待等をも扱ったサイコスリラーな問題作です。ノベライズはシナリオ担当の瀬戸口廉也が直接手掛け、内容はライター本人によるこのゲーム本編の後日談的内容になりますが、このソフト『CARNIVAL』はダウンロード版が発売された今でも発売時の定価以上の値を付けてショップに並んでいる事が多い、中古市場ではあまりにも有名なプレミアソフトです。そしてこのノベライズもこの本編のプレミア度に比例して値段が跳ね上がっており、たわむれに検索すると発売時定価の30倍!と言う値段を付けてました。シナリオライターのトークショーに参加する直前に新宿の成人向け書店に在庫残ってたのがこんな値段になるとは…、あの時やはりサイン貰っておくべきだった。
 
 

キルタイムコミュニケーション『CARNIVAL』原作・S.M.L/著・瀬戸口廉也/挿絵・川原誠
PC美少女ゲームノベライズでのプレミア価格筆頭
 
  
ここで、個人的にPC美少女ゲームのノベライズで一番印象的なものは何か、と聞かれると迷いなく答えることが出来る一冊があります。それはファミ通文庫『EVE burst error plus サヨナラキョウコ、サヨナラセカイ』で、著者は桜庭一樹。2008年の直木賞作家(受賞作は『私の男』)桜庭一樹によるノベライズです。
『EVE burst error』はこれまた過去コラムでも語っていますが、『YU-NO』の剣乃ゆきひろがシナリオを手掛けた複数の視点から物語を追うシステムが好評を得た作品で、1997年のセガサターン移植以来一般層への認知度も高いシリーズです。そのセガサターン版移植から1年後にサターン版オリジナルとして発売された続編『EVE The Lost One』の 脚本を手掛けた山田桜丸が桜庭一樹の別名義です。
ただし『ロストワン』の作品としての評価は正直芳しいものではなく、傑作とされる『EVE burst error』との整合性が取れていない点を含めてシナリオの粗がそこかしこに見受けられる物でした。その内容はゼロ年代初頭に『超クソゲー』に取り上げられた事からもお察し、と言う感じです。


イマジニア『EVE burst error』(セガサターン)

シリーズはコンシューマーにて『EVE ZERO』『EVE The Fatal Attraction』とリリースされ、このノベライズをファミ通文庫から桜庭一樹が手掛けてましたが、リメイク版である『EVE burst error plus』のノベライズは異色中の異色となっており、ゲームのメインストーリーには関わらずにサブキャラで、でも人気のあるキャラクター・氷室恭子をメインとし、他の桜庭作品に見られた「家庭内含めた歪な環境下でそれでも自立しようとする女性」像が投影されることでキャラがを一段掘り下げて書かれ、外伝要素が強いながらも本編と並立する、非常に腑に落ちる内容でした。このキャラ掘り下げが『ロストワン』の頃に行われていればなぁ…、と思うことしきりです。
桜庭一樹は『EVE』シリーズのノベライズ以降に発表したオリジナル作品の富士見ミステリー文庫『GOSICK -ゴシック-』『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』等で一般文芸界に注目され、『GOSICK -ゴシック-』はアニメ化も果たしました。その頃から作品発表の場をライトノベルから一般文芸に移しておりオタク界隈で名前を見ることは少なくなりましたが、いい意味でも悪い意味でもその存在感は決して小さくはなかったと言えます。


ファミ通文庫『EVE burst error plus サヨナラキョウコ、サヨナラセカイ』
著・桜庭一樹/口絵&本文イラスト・シーズウェア

この桜庭一樹のように現在は一般文芸に活躍の場を移した作家には、アニメ化もされた電撃文庫『とらドラ!』『ゴールデンタイム』の竹宮ゆゆこがいますが、この竹宮ゆゆこは小説家としてデビューする前後に発売されたフライングシャインのPC美少女ゲーム『Noel』のシナリオを手掛けています。このフライングシャインと言うメーカーは現在は倒産(2019年法人格消滅)していますが、開発のみを行い他社ブランドから発売を行った作品があり、その中に前述のS.M.L『CARNIVAL』もあります。トークイベントで語った所によると竹宮は瀬戸口のシナリオも読んだそうで、会場が大爆笑に包まれたその評価は「オフレコ」と言う事で以下略。しかしこの時代はアチラコチラが落ち物パズルのように連鎖していくよなーとつくづく思った次第です。 
 
これらの作品群ですが、現在主流となりつつある電子書籍での発行がほぼ行われていないのが難点と言うか。これは前回にもあったノベライズからしてそうなのですが、90年代の権利関係に甘いというか無頓着な時代のマルチメディア展開・派生作品が非常に多く、電子書籍化含む現代での復刊には権利関係だけで非常にハードルが高いことが考えられます。『16BITセンセーション!』の壮観たる各社権利元一覧はそれらをクリアした証です。
それだけに前回コラムの話の中心だった『小説ウィザードリィ』が著者にとっても読者にとっても非常に理想的な形で復刊され、電子書籍で現在でも読むことが出来るのは幸運なことなので、今後もこのようなケースが増えることを望んで止みません。

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