ラマダーン柿沼 MTGエターナルのススメ

【MtGエターナルのススメ】2020年上半期レガシー環境の総括

公開日:ラマダーン柿沼

こんにちはラマダーン柿沼です。

7月に入りついに基本セット2021が発売されましたね。過去に類を見ないカードパワーを有する基本セットと各所で叫ばれる中、レガシー環境でも所々で新しいカードを目にする機会が増えてきています。
そんな中で今回は2020年上半期のレガシーの変遷と現環境のメタについて私見を織り交ぜつつ考察していきたいと思いますのでお付き合い頂ければ幸いです。

 

2020年上半期のレガシー環境について

1月〜3月 ジェスカイ死の国からの脱出

今年の上半期のメタの変遷は大きく荒れたものになりました。
1月24日発売の「テーロス還魂記」に収録された《死の国からの脱出》はレガシー環境をも一変。昨年度の「エルドレインの王権」にて収録された《王冠泥棒、オーコ》の力は依然健在であり、「バントミラクル[1] … Continue reading」と「ジェスカイ死の国からの脱出」は瞬く間にトップメタに躍り出ました。
また長期戦が苦手な「ティムールデルバー」も昨年末に《レンと6番》を失ったことで、数を減らすと思われていましたが、オーコの存在は古来のクロックパーミッションとしての動きを損なうことなく、後半はミッドレンジの様な立ち振る舞いが可能だった為、多くのプレイヤーが使用することになりました。

それらの新デッキの中でも「ジェスカイ死の国からの脱出」は頭一つ抜け出た力を有しており2020年の初頭を彩るデッキとして環境に君臨しました。
ジェスカイ死の国の強さは少ない枚数でコンボを始動できる強さにあります。最低限のコンボパーツと残りのスペースにキャントリップ、カウンター、除去によりデッキが構成されており、さながらコントロールのように振る舞うことも可能でした。

コンボパーツ兼ユーテリティーカード達

 

自身のキルターンを伸ばしながらコンボパーツを揃える動きは他のコンボデッキより頭一つ抜け出る要因になりました。
というのも、必須コンボパーツである《思考停止》や《ライオンの瞳のダイアモンド》が揃わずとも《死の国からの脱出》1枚から、墓地に落ちているキャントリップの連打でコンボに繋げる見切り発車も容易である点が他と大きく違うと言えます。

《セヴィンの再利用》をデッキに1枚投入した事により、十分なストームを稼いだ《思考停止》の対象を自身に打つことで《死の国からの脱出》と《セヴィンの再利用》を墓地に落とし、フラッシュバックで盤面に《死の国からの脱出》を戻す動きはさながら《悪魔の教示者》をキャストする様なムーブを可能にしました。

 

またこの時期には複数のコントロールデッキがメタに台頭していた為、そういったデッキに対して、《死の国の脱出》を巡るカウンター合戦で十分溜まったストームからの《思考停止》は、予期せぬところからのフィニッシュを決めることが可能だったため、コントロール側のプレイヤーは細心の注意を払ってアクションを行う必要がありました。

しかし、攻守に置いて隙がない《死の国からの脱出》でしたが、その使用率の高さとコンボ成立の容易さからWotC[2]ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社(Wizards of the Coast LLC)により3月9日に禁止リスト入りすることになりました。

 

 

4月〜5月 夢の巣のルールスと黎明起こしザーダ

日本では4月17日に新エキスパンションである「イコリア:巨獣の棲処」が発売されました。
怪獣をモチーフとしたこのエキスパンションで登場した新キーワード能力の相棒は各フォーマットで旋風を引き起こしました。その中でも特に強力だった相棒能力持ちのクリーチャーが《夢の巣のルールス》です。

ルールスを相棒とする場合の条件は”デッキ内のパーマネントのマナコストが2以下”ですが、スタンダードだけならまだしも、パイオニア以下のフォーマットでは条件の達成は容易であるため、様々なフォーマットで《夢の巣のルールス》を目にする機会が増えることとなります。

低マナ域で強力なパーマネント達

 

特にレガシーでは《夢の巣のルールス》の存在は圧倒的でした。
デルバーをはじめとするテンポデッキ全般から感染、デス&タックス、ANT、ミラクル、土地単等のビート、テンポ、コントロール、コンボのいずれのデッキに於いても採用することが可能でした。その為この時期はデッキ名の頭にルールスと冠するデッキが数多生まれることになり、レガシーの長い歴史の中でも取り分け異常な事態が起こることになりました。

上記の異常な事態を受け、5月18日、発売から32日後にWtoC社からの声明により禁止されることとなります。

北米ではイコリア発売から実に2日後の声明であり、これは発売から45日で当時の全フォーマットで禁止に指定された《記憶の壺》を上回る過去最速禁止として話題になりました。
また同じタイミングで禁止にされたのが《黎明起こし、ザーダ》でした。

 

《黎明起こし、ザーダ》を使用したデッキは絶対数こそ多くはありませんでしたが、ボンバーマン[3] … Continue readingの新パーツとして採用されたクリーチャーです。
《黎明起こし、ザーダ》は《ライオンの瞳のダイアモンド》との相性が非常に良く、《厳かなモノリス》と《玄武岩のモノリス》とのコンボで無限マナの精製が可能でした。

実質1枚で成立するコンボが許されるはずもなく…

 

《黎明起こし、ザーダ》は相棒能力でキャストが可能だった為、実質モノリスの1枚コンボだったこともあり、抜群の安定性と速いターンでの勝利が可能なデッキとして愛好家により仕上げられていきました。しかし、それ故に高い勝率を有していた為、WtoC社の目に留まることとなり、《夢の巣のルールス》の禁止以降に環境を支配されることが予想された為、《夢の巣のルールス》と共に禁止リスト入りする運びとなりました。

 

 

6月 空を放浪するもの、ヨーリオン

《夢の巣のルールス》と《黎明起こしザーダ》が禁止になった後も相棒デッキはレガシーの環境に根付くこととなります。台頭して最も数を増やしたのが《空を放浪するもの、ヨーリオン》です。

《空を放浪するもの、ヨーリオン》を相棒にする条件が最小デッキ枚数+20枚というものですが、こちらもエターナル環境であれば強力なカードが数多ある為、+20枚の不便さを然程感じることもありませんでした。
ヨーリオンは特に4cコントロールやミラクルと言ったミッドレンジ〜コントロールに好まれて採用されました。1対1交換を繰り返して、相手のハンドが枯渇したところでヨーリオンを着地させ、CIP能力で《アーカムの天則儀》や《海の神のお告げ》、《瞬唱の魔道士》、《豊かな成長》等をブリンクさせてからの大量ドローで蓋をするというのが基本的なムーブになります。

大量のキャントリップパーマネントから大量ドロー!

 

その中でも《アーカムの天則儀》と《豊かな成長》は4cかつ80枚と言ったアンバランスなデッキに於いての潤滑油として多くのヨーリオンデッキに採用されていました。

また、この時期には今までスポットライトが当たらなかった相棒にも注目が集まるようになりました。
それらの中でも《巨智、ケルーガ》を使用した「グルールエルドラージ[4] … Continue reading」や《呪文追い、ルーツリー》を使用した「ティムール・ハイランダー[5] … Continue reading」、そして新たなベルチャーとの呼び声が高かった《深海の破滅、ジャイルーダ》を用いた「ジャイルーダコンボ[6] … Continue reading」といった相棒を使用したデッキはマジックオンライン上で次々と結果を出して行きました。

新たな相棒デッキが登場するも…

 

《夢の巣ルールス》と《黎明起こしザーダ》亡き後もレガシー環境は相棒一色になる事が予想されていた中、WotC社より新たな声明が出されることになります。それが相棒能力のオラクル変更です。

6月1日のWotC社の声明により、「(3)を支払い手札に加える」にルールが変更。この変更によりレガシー環境で相棒能力を使用することに耐えうるデッキはヨーリオンコントロールに絞られることになり、それまで相棒能力と抜群の相性を誇っていた《ライオンの瞳のダイアモンド》は相対的に弱くなり、実質ジャイルーダコンボは消滅することになりました。

この変更はテンポを重要視するレガシーでは非常にネックな変更でした。その為、少数派だった他の相棒デッキも環境から姿を消していくことになります。

 

 

7月中旬現在 現在のメタ

ここからは筆者の主観を交えたメタの考察になります。

7月現在、2020年前半とは異なり様々なデッキが環境に存在する様になりました。現在のトップメタは「ティムールデルバー」です。

 

 
レガシー黎明期からの流れを汲む、テンポデッキの末裔といえるのが現在の「ティムールデルバー」になります。年始より大きな変更点はありませんが優秀なクロックとカウンターを有し様々なデッキと対等以上に戦える為、現在の環境を支配しています。

その下のTier2に位置するのが「デス&タックス」「氷雪オーココントロール」「ロームコントロール[7]土地単、アグロローム等の壌土からの生命を主軸にハンドアドバンテージとボードコントロールの確保を得意とするコントロールデッキ。」です。上位層を見ると優秀なカウンターとヘイトパーマネントによるコントロールが上位を占めてるように見られます。この様なメタの背景には黒のハンデスの欠如、即ち《夏の帳》によるものと推測しています。

夏の帳は環境からハンデスを追い出した…

 

また《夏の帳》の存在は、ハンデスの相対的な弱体化に繋がっています。それまでハンデスにより前方確認+確実な驚異の排除を兼ねていたANTやゴルガリデプス[8] … Continue readingにとってこれ以上無い痛手になり、数を大きく減らす要因となっています。
また、ゴルガリデプスの凋落の要因には、《剣を鍬に》の数が増えていることも挙げられます。《アーカムの天則儀》の存在により多色化が容易な昨今ではマリッドレイジに対する対抗札が増えている点に於いても逆風だと思われます。

 

その為現在環境で活躍しているゴルガリデプスの多くがスローデプス型からターボデプス型にシフトチェンジしており、《この世界にあらず》や《真髄の針》といった黒を用いない妨害によりスピード勝負する型がメタにマッチしているようです。

 

また、相棒のオラクル変更後に数を伸ばしつつあるのが「タイタンフィールド」です。
このデッキは「テーロス環魂記」より収録された《イリーシア木立のドライアド》と《溶鉄の先鋒、ヴァラクート》を組み合わせたコンボデッキなのですが、土地コンボによる妨害のしにくさと上位のメタデッキに対しての相性が良好な為少しずつですが利用者が増えているようです。

 

基本土地が多い昨今、《基本に帰れ》や《血染めの月》といった特殊地形対策が少なくなっている点も追い風になっていると思われます。こういったメタの合間を縫った新しいデッキの活躍はレガシー ならではでとても面白いですね。

タイタンフィールドの隆盛で再度流行るのか…!?

 

 

今回は2020年前期の変遷ということで以上になります。お付き合いいただきありがとうございました!

脚注

脚注
1 奇跡のキーワード能力を有するスペルを採用したコントロールデッキの1つ。王冠泥棒、オーコや氷牙のコアトル、夏の帳といった緑を含むパワーカードが多数採用されている。
2 ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社(Wizards of the Coast LLC)
3 ライオンの瞳のダイアモンドとオーリオックの廃品回収者の2枚で無限有色マナを発生させることで勝利を目指すコンボデッキ。フィニッシャーは歩行バリスタによる無限ダメージや僧院の導師からの無限トークン&パンプ
4 赤単エルドラージからの派生デッキ。アドバンテージを取りにくい純正タイプに比べ、ケルーガによるハンドアドバンテージの確保が容易になった。
5 ハイランダー形式のグッドスタッフコントロール。各1枚制限とはいえ単体で優秀なスペルがふんだんに採用されており、呪文追い、ルーツリーによりハンドアドバンテージ、テンポアドバンテージが取り易い。
6 ライオンの瞳のダイアモンドや2マナランドから早いターンで深海の破滅、ジャイルーダをキャストするコンボデッキ。着地を許可するとライブラリー内のクローン系クリーチャーにより6/6クリーチャーとCIPが大量にチェインする。フィニッシャーは全体速攻付与の龍王、コラガン。
7 土地単、アグロローム等の壌土からの生命を主軸にハンドアドバンテージとボードコントロールの確保を得意とするコントロールデッキ。
8 暗黒の深部+吸血鬼の呪詛術師or演劇の舞台により20/20飛行破壊不能のマリッドレイジトークンにより勝利を目指すコンボデッキ。除去が稲妻に寄っている環境では闇の腹心によるアドバンテージを獲得するスローデプスタイプ、剣を鍬にや不毛の大地に寄っている環境であれば真髄の針やこの世界にあらず、更にスピードを加味したElvish Spiritguideが採用されているターボデプスが多い傾向がある。また、死滅都市ホガークを採用したホガークデプス等多数のバリエーションが存在する。
ラマダーン柿沼 MTGエターナルのススメ
ラマダーン柿沼さんの
記事一覧はこちら

よろしければシェアお願いします

PAGE TOP