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KOTOKOs GAME SONG COMPLETE BOX 「The Bible」 ~KOTOKO中心に語るゼロ年代PC美少女ゲーム主題歌回顧録~

公開日: / 更新日:センセイ (べ・一文字)

4月21日に、アニソンシンガー・シンガーソングライターであるKOTOKO(ことこ)がこれまで発表したほぼ全てのゲームソングを網羅したゲームソングコンプリートBOX、『KOTOKO’s GAME SONG COMPLETE BOX 「The Bible」』を発売しました。

CD全10枚に収録された曲は100曲以上、価格は通常版15,000円、ライブBD付き限定版17,000円とこれまでKOTOKOが出してきた商品のなかでも最大級のアイテムですが、この商品がアニソン・PC美少女ゲーム史のみならず現在のエンタメ業界においても非常に大きい存在感を持つことは疑いようの無い事実です。

今回はこのコンプリートBOXについての(いつも通り経験と記憶がベースの脇道に逸れがちな)話をしたいと思います(文中敬称略)。


KOTOKO’s GAME SONG COMPLETE BOX 「The Bible」


「秋葉原中央通り交差点の「The Bible」広告」

 

KOTOKOと、かつて所属し現在も関係があり、今回のコンプリートBOX収録曲の大多数のプロデュース元であるサウンドクリエイター集団「I've Sound」については過去コラムでも触れていますが、1999年発売で当時のPC美少女ゲーム市場の方向性を決定づけたkey『Kanon』の主題歌「Last regret」、エンディング「風の辿り着く場所」を担当することでその名がPC美少女ゲーム市場・ユーザーに知れ渡ります。
また『Kanon』の初回限定版には主題歌収録のサウンドトラック『anemoscope』が同梱されていたのですが、当時フル版の試聴にはこのサントラしか方法がなく、ゲーム本編の評判と併せて中古のプレミア価格がうなぎ上りに上がる原因でもありました。

その年の12月末に、keyも所属しているビジュアルアーツから発売されたI've担当のPC美少女ゲーム主題歌を集めたコンピレーションアルバム『regret』はこの「Last regret」「風の辿り着く場所」が収録され、ようやくサントラ以外でフル版が聴けると言う状況になりました。PCソフト取扱店でのみ発売と言う限定的な流通経路ながらも大ヒットとなり、PC美少女ゲームの主題歌・挿入歌が一つのジャンルとして確立していくターニングポイントでもありました。
またこの『regret』収録のライナーノーツに「Last regret」作曲の折戸伸治が「どさんこPOP」とI'veを称してましたが、これはI'veの所在地が北海道札幌市と言う事以外にも、この初期に収録された曲を主題歌として採用したソフトメーカーの多くが北海道に拠点を置いていた事も挙げられると思います。これらのソフトハウスは後に「北海道えろげー組合」として活動したりもしていました。
さらに「Last regret」「風の辿り着く場所」は後の2002年に東映アニメーション制作のTVアニメ版の最終回に挿入歌・エンディングとして使用され、2006年の京都アニメーション制作のTVアニメ版ではshort版がOP・EDとして使用されました。その認知度は当時から圧倒的です。


I've GIRLS COMPILATION『regret』


key『Kanon』
これはサントラがない通常版です

 

翌2000年9月に発売されたkeyの二作品目『Air』は泣きゲーの大巨頭として後のPC美少女ゲーム界隈に多大な影響を与えた金字塔的作品ですが、このゲーム本編発売前に主題歌『鳥の詩』のショートバージョンが収録されたI'veコンピレーションアルバム2弾『verge』が7月に発売されます。
このアルバムも『Air』の発売前人気も併せてヒット作となり、PC美少女ゲーム界にI'veSoundありと認知づけられ、ゲームソフトにも専用ロゴがつけられるに至ります。

この『verge』収録の「Pure Heart ~世界で一番アナタが好き~」はSAGA PLANETSから発売された同タイトル作品の主題歌で、この作詞がKOTOKOのI'veデビューになります。
KOTOKOがI'veに所属する切っ掛けは、この時に既にI'veにて楽曲を発表していた島みやえい子(当時は“島宮えい子”)が講師を勤めていたボイススクールに生徒として通っていたのがKOTOKOで、島みやえい子へデモテープを渡した事だと言う事をKOTOKOがライブのMCやラジオ等で、島みやえい子もライブMCにて語っています。

その島みやえい子はI've参加の切っ掛けをやはりライブMCにて、ボイススクールにI'veからボーカリスト募集の話があったと言う事を話していますが、最初に生徒と共に向かった先が市街外れの古民家を改造したスタジオで、怪しいビデオの撮影か何かじゃないか何かあったら生徒を守らなくてはと戦々恐々としていたと語っていました。


I've GIRLS COMPILATION 2.『verge』


key『Air』
これも初回盤限定のサントラに主題歌収録でした

 

KOTOKOは、2000年12月発売の裸足少女『effect ~悪魔の仔~』主題歌「Close to me…」のボーカル担当で歌い手としてデビュー、同12月下旬に発売された『とらいあんぐるハート3 ~sweet songs forever~』の主題歌「涙の誓い」を担当、エンディング「See you ~小さな永遠~」を同じくI've所属のMELLとデュオで担当し、この2曲で初期のI'veSoundファンにもボーカリストKOTOKOの存在を印象付けるのでした(過去コラム「『魔法少女リリカルなのは』15周年」もご参照ください)。

その年のコミックマーケットの企業ブース・ビジュアルアーツにて発売されたアルバム『Dear Feeling』にはI've所属の先輩であるAKIとのユニット「KOTOKO TO AKI」で歌唱した「prime」「空より近い夢second track」が収録、「prime」はショートバージョンですがハリウッドで撮影されたミュージックビデオも収録され、映像中にAKIと共に出演しています。
またKOTOKOはこの年にインディーズにて個人製作CD「空を飛べたら…」を発表しています。インディーズな上、KOTOKOの活動拠点は北海道・札幌なので入手する機会はごく限られていましたが、PC美少女ゲームの震源地でもある秋葉原では当時ヤマギワソフトと言うインディーズレーベルに非常に強いCDショップがあり、この店が「空を飛べたら…」を取扱し、PC美少女ゲームも扱っている事もあり大々的な展開で発売していました。
後にI'veがTRANCE系等の『VERVE CIRCLE』シリーズを発売した際もヤマギワソフトは大きく扱い、濃いファン層に行き渡らせるだけの役割を担っていました。ちなみにその店が2004年2月に火災になった店で、現在その建物はソフマップAKIBA①号店サブカル・モバイル館となっています。


『Dear Feeling』『prime prototype』
『prime』は「I've PV COLLECTION」の一作目になります

 

2001年のPC美少女ゲーム市場はもう百花繚乱と言う言葉がぴったりな程華やかで、主なタイトルを挙げると『鬼作』『Only you』『君が望む永遠』『水夏』『Piaキャロットへようこそ!!3』『はじめてのおるすばん』『みずいろ』『秋桜の空に』『最終痴漢電車』『吸血殲鬼ヴェドゴニア』『凌辱看護婦学院』と40代以上のオタクおぢさんは間違いなく反応するモノ凄いタイトル揃い。

前年の冬コミケで『月姫』を頒布したTYPE-MOONが『月姫PLUS-DISC』『歌月十夜』を頒布したのもこの年ですし、『ジサツのための101の方法』『さよならを教えて ~comment te dire adieu~』と言う「三大電波ゲー」(諸説あり)の内2本がこの年、『Theガッツ!』のような後の時代でも語られたりする異色作もあったりでうわあああああああああとなってしまいます。

同年代の方に「来年にはこれらのソフトが発売から20周年ですよ」と耳元で囁くとダメージを与えられますので試してみましょう…ぐはっ(自爆)。


age『君が望む永遠 -DVD specification-』
後年発売のDVD&要素追加版。初回盤は回収騒ぎがあったりしましたね…

 

このPC美少女ゲームの主題歌と言うベクトルから見る2001年の特徴としては、各タイトル共に主題歌だけではなくオープニングムービーに力が入れられてきたと言う事が挙げられます。その代表例として、この年にデビューしたminoriの『BITTERSWEET FOOLS』のオープニングムービー制作は『君の名は。』『天気の子』の新海誠で、以降2008年までのminori作品でオープニングアニメの監督を担当し、当時から新海ワールドをPC美少女ゲームファンに炸裂させていたのです。

10月に発売されたGROOVER『グリーングリーン』のオープニングは当時個人制作のホームページにて二次創作MADムービーを制作していたTsukune.(当時は「捏音たむ」)が担当し、以降PC美少女ゲームのオープニングの大きな潮流となっていきました。Tsukune.は以降、ブランド「Iris motion graphics」を立ち上げ、PC美少女ゲームのオープニングを数多く手がけ、前述のminoriの次回作『Wind -a breath of heart-』のコンシューマー移植版のオープニングに携わり、2011年発売の『すぴぱら』では新海誠の後を継いでオープニングを担当、これまでのminori作品で使われた新海誠ムービーに勝るとも劣らないダイナミックなムービーは一見の価値ありです。
そしてTsukune.がアマチュア時代所属していたのが「神藝工房」と言う二次創作MADムービー製作団体ですが、この神藝工房の代表・神月社が商業作品で初めて手掛けたオープニングムービーが11月に発売されたD.O.(ディーオー)『家族計画』で、主題歌「同じ空の下で」を担当したのがKOTOKOです。

『家族計画』は、流れとしては『Kanon』『Air』の作った「泣きゲー」の系譜で、この年2001年に発売された前述の『みずいろ』『君が望む永遠』等に続き「エロゲーに物語と感動を求めていた層」の心をガッチリと掴み、名作として語り継がれ、数多くの移植版、リメイク版が発売されています。この語り継がれる中で主題歌・オープニングムービーの果たした役割も大きい事は言うまでもありません。
神月社は以降映像制作ブランド「Mju:z」を設立してオープニングムービーを始めとしたゲームの映像制作他、パチスロやアニメにも関わっている映像制作の第一人者です。


『家族計画 information FANBOOK』発売直前のCDROM付プロモ冊子。
原画担当:福永ユミの個人HPでのプレゼント品なのでサイン入り(左上には本名が入ってます)です

 

この百花繚乱な2001年はKOTOKO当人にとっても大きな飛躍の年で、この年に発表されたI'veの楽曲はリミックスやアルバム収録も含め全50曲以上、採用したPC美少女ゲームは25タイトル以上あるのですが、半分以上の主題歌をKOTOKOが歌唱し、ユニットで歌唱したり作詞を手掛けた曲を含めれば40曲以上に関わっておりI'veの中でその存在感を増していったのです。

特に3月発売のSAGA PLANETS『恋愛CHU!』の主題歌「恋愛CHU!」は曲中に「ChuChu!」「ちゅっちゅいえ~い!」と合いの手のようなコールが入ると言う、当時のオタク系テキストサイトでも多々語られたのですが「電波ソング」のハシリとして、そしてI'veが電波ソングの担い手と認知される切っ掛けとして圧倒的な知名度を誇っています。
KOTOKOはこの曲について「ミニモニ。を意識した」「AKIと二人でパラパラ風の振り付けを考えてレコーディングに挑んだら怒られた」と後のトークイベントで語っています。

余談ながらこの年2001年に発売された前述の『君が望む永遠』『みずいろ』にも主題歌があり、『君が望む永遠』は栗林みな実が「Rumblig Heart」を、『みずいろ』では佐藤ひろ美(当時は“佐藤裕美”)が主題歌「みずいろ」を担当し、以降PC美少女ゲームのみならずアニメ主題歌等を次々と担当する契機にもなっています。
佐藤ひろ美は後年のベストアルバムで「みずいろ」を「運命の曲」と一言ズバリで紹介しています。

以前[1]美少女ゲーム界隈と美少女フィギュア市場のカンケイ【3】も語りましたが、この時期の『みずいろ』を輩出したソフトハウス「ねこねこソフト」のWEB連載四コマを手掛けていたのは『ひだまりスケッチ』の蒼樹うめ、『家族計画』のライター山田一の別ペンネーム・田中ロミオは『人類は衰退しました』を発表しアニメ化と、この時代この業界の後年への影響たるや本当に眩暈がするほどです。

逆パターンで著名なシンガーがPC美少女ゲームに参加した例だと、やはりこの年2001年発売のフロントウィング『フーリガン』の主題歌は「ギャバン」「サンバルカン」「富士サファリパーク」の串田アキラが担当しました。またニトロプラス『吸血殲鬼ヴェドゴニア』の主題歌、EDのボーカルは90年代に「You're the Only…」でミリオンセラーを記録し、紅白出場も果たした小野正利です。


「エロゲー文化研究概論 増補改訂版」著・宮本直毅/総合科学出版
この時代を語るには欠かせません

 

2002年1月にWOWOWノンスクランブル枠で放送開始したアニメ『おねがい☆ティーチャー』の主題歌「Shooting Star」をKOTOKOが担当します。
KOTOKO及びI've初のTVアニメ主題歌担当作品になり、前年12月にイメージCD『お*ね*て*ぃ Image Song CD』を発売してTVアニメに関わることは既に発表されていましたが、舞台となった実際の土地に赴く「聖地巡礼」の元祖と言えるこの作品も人気を博しました。

その人気で、翌年には舞台と設定を同じくした続編『おねがい☆ツインズ』が放送、主題歌「Second flight」はKOTOKOと佐藤ひろ美のユニットでの歌唱となり、機しくもPC美少女ゲームで名を馳せた歌姫二人のユニットと言う事でも話題になりました。なお、I'veが他の所属レーベルの歌手とユニットを組んだのはこの曲が初です。


『Second flight』


舞台となった木崎湖

 

2002年6月には2年ぶりとなるI'veコンピレーションアルバム第三弾『Disintegration』が発売されます。
「三たび電波(デジ)れ」と言うキャッチフレーズがネットラジオで流れたこの作品、コンピレーションアルバムにKOTOKO初参加、収録曲は「涙の誓い -Album Mix-」「flow ~水の生まれた場所~」「I can't get over your best smile」「resolution of soul」「Wing my Way -Album Mix-」「君よ、優しい風になれ」と全13曲中6曲がKOTOKO担当曲となり、その存在感はI'veの中でも突出しつつある事が証明されています。

ちなみに過去コラム「なのは15周年」回にも書いたんですが、『とらいあんぐるハート』主題歌「涙の誓い」は2番の歌詞「取り戻した 小さな願いを~」がこの「涙の誓い -Album Mix-」版では「取り戻した 大きな願いを~」と変更されててニュアンスが異なっている上、現在主流の通信カラオケに収録されているのが後者の「大きな願いを~」なので、カラオケで歌う度に原曲・PCゲーム収録版の「小さな願いを」が脳裏に焼き付いている身として若干納得出来ない思いを抱えるのです。


I've GIRLS COMPILATION 3.『Disintegration』

 

PC美少女ゲーム以外のコンシューマーゲームでの主題歌は、Windows版からの移植版で採用されるのが殆どでコンシューマーゲームオリジナルのI've主題歌・KOTOKO歌唱曲はほぼ無い状態でした。
アボカドパワーズ『D+VINE [LUV] 』がドリームキャストに移植された際に、主題歌「resolution of soul」が新規収録で入ったのが数少ない例です。

そんな中2002年5月に発売されたPS2用恋愛アドベンチャー、プリンセスソフト『夏色の砂時計』は移植ではないコンシューマーゲームオリジナルで初のKOTOKO主題歌採用作品となりました。その主題歌「went away」はPC美少女ゲームと同じように初回特典CDに主題歌が収録されていたのがターゲットのユーザー層を連想させます。
ちなみにエンディング曲「未来この星で」はプロデュース志倉千代丸、歌唱は水樹奈々で、KOTOKOと水樹奈々と言うトンでもない組み合わせがこの時代のPS2ギャルゲーで爆誕していた事は歴史に残しておかなければいけないトピックの一つと思います。

ちなみに『夏色の砂時計』は翌年に18禁要素を加えたWindows版が発売されましたが、声優の交代に伴いエンディング担当は水樹奈々ではなくなりました(残当)。このWindows版EDとカップリングになった「went away」主題歌マキシシングルが2002年冬コミケの企業ブースにて限定発売され、一日で完売、現在でもプレミア価格をつけています。


PS2用ソフト プリンセスソフト『夏色の砂時計』

 

また過去コラム「冴えカノ」回で触れた丸戸史明のデビュー作、戯画『Ripple ~ブルーシールへようこそっ~』もこの年で、主題歌「あちちな夏の物語り」は前年の「恋愛CHU!」に続く電波ソングの系譜、まだ数は少ないものの、現在のアイドルソングにも繋がる電波ソングはKOTOKO・I'veの別側面として認知されていきました。

この年2002年は前年にWitch『いちご打』の主題歌「いちごGO!GO!」を歌唱したモモーイこと桃井はるこがユニット「UNDER17」を結成し “萌えソングをきわめるゾ”をコンセプトに活動を開始、PC美少女ゲームを中心に萌えソングを発表しライブも開催していきました。初のライブはPC美少女ゲームメーカーが中心のイベント「DreamParty2002春」のイベントステージにてです。

モモーイは「電波ソング」「萌えソング」等様々な呼ばれ方をしていたこの時代のPC美少女ゲームの主題歌の第一人者として、後に『非公認戦隊アキバレンジャー』の主題歌を担当する等抜群の存在感を放っています。またKOTOKOとモモーイはさらに後年、ライトノベル原作のアニメ『ロウきゅーぶ!』にて主題歌・エンディングの作詞をそれぞれ担当し、この時代のPC美少女ゲームの主題歌が後のエンタメ界隈へ流入している事を実証しています。
 
戯画の作品ではこの年にTGLブランドにて発売された『ファーランドシンフォニー』主題歌「Wing my way」ともう一点、ロボアクションアドベンチャー『BALDR FORCE(バルドフォース)』の主題歌「Face of Fact」をKOTOKOが担当しています。

『BALDR FORCE』の原画担当は菊池政治で、今回の 「The Bible」のBOX&ブックレット描き下ろしに参加した一人です。ムービー制作をMju:zの神月社が担当、やり込み要素の高いロボアクションRPGのゲーム内容も大いに支持され、翌年に『BALDR FORCE EXE(バルドフォースエグゼ)』と完全版が発売、主題歌・ムービー共にKOTOKO・I'veSoundのみならずこの時代のPC美少女ゲームを代表するものになっています。

後年にねこねこソフトが戯画とコラボして自ブランドキャラを登場させた『バルねこフォース』を製作した際は「Face of Fact」を佐藤ひろ美が歌唱しましたし、コンシューマーのPS2に移植時に変更された担当声優は大林隆介に千葉繁に田中敦子に大塚明夫…シュミ判るぞ!PS2版に声優として参加したモモーイこと桃井はるこはPS2版主題歌 『Love.Exe』も担当しています。
そしてこの『BALDR FORCE』には初回限定版特典として「戯画 オープニングサウンドトラック2001-2002」が同梱され、これまでの戯画PC美少女ゲーム主題歌が収録、KOTOKO担当曲も「Face of Fact」「Wing my way」「あちちな夏の物語り」が収録されたこともゲームの前人気を高めた一因です。

この「戯画 オープニングサウンドトラック2001-2002」に収録されている『AQUA BLUE』主題歌で萌えソングのひとつ「げっちゅきっちゅSummer」(歌は佐藤ひろ美)は『シンフォギア』『BanG Dream!』楽曲プロデュースの上松範康が作詞曲をしており、ホントにスゲーなこの時代のPC美少女ゲーム業界(語彙力)。


戯画『BALDR FORCE EXE(バルドフォースエグゼ)通常版』
サントラが封入されてない通常版、この時代こんなんばっかです 

 

2003年は2月に、これも戯画からのリリースされた『カラフルキッス ~12コの胸キュン!~』主題歌「さくらんぼキッス ~爆発だも~ん~」の主題歌を担当します。
「すきすきすkiss すきすkiss キュンキュン!」と言う歌詞と合いの手が耳に残る電波ソングの代表作で、この曲以降I'veでは電波ソングを「キュンキュンソング」とライブのMC等で称する事が多くなりますがこの「さくらんぼキッス」の合いの手が原因です。

昨年7月にNHKで放送された「アニソンプレミアム スペシャルライブ」に出演したKOTOKOは、自身の15周年スペシャルメドレーとして披露した7曲のメドレーにこの曲「さくらんぼキッス」が入っており、「すきすきすkiss すきすkiss キュンキュン!」と言う電波ソングと合いの手は公共の電波に乗ってNHKで放送されているKOTOKOの代表曲です。

この年は翌月に『ショコラ ~maid cafe”curio”~』、年末に『V.G.NEO』と丸戸史明シナリオ作品が続けてリリース(過去コラム「冴えカノ」回もご参照ください)、主題歌「Cream+Mint」「We Survive」は共にKOTOKOが担当し、戯画と言えばI've曲・KOTOKOソングと言う方程式が成り立つぐらいの勢いでした。

この年の電波ソングだと130㎝『プリンセスブライド』主題歌の「Princess Bride!」はKOTOKOが初の作曲を担当した作品になります。サビのフレーズが全て恋愛・結婚にまつわる「~ing」の単語のみで構成されると言う中毒性の高い楽曲で、発表当初から電波ソングとしての知名度も高かったのですが、後年のニコニコ動画において「アイマスMAD」と言われる「アイドルマスター」のゲーム中のダンスシーンを切り貼りした二次創作動画でその存在がブレイク、ニコニコ動画の字幕職人やら周辺界隈を巻き込んでの一大人気楽曲になりました。
サービス開始直後のニコニコ動画界隈を知っているオタクなら一度は見たことがある筈です。

この経緯から『プリンセスブライド』はどうしても「Princess Bride!」に注目が集まるのですが、エンディングの「Sledgehammer Romance」もKOTOKOの作曲で、女性ボーカルの曲なのに「スレッジハンマー」という題名と歌詞のインパクトは凄いので、一聴の価値ありです。 
そして11月にはI'veの「電波ソングのみを収録」したコンピレーションアルバム『ShortCircuit』がリリースされます。KOTOKO TO AKIとしてユニットを組んでいたAKIは既にI'veを離れていたので、詩月カオリとのユニット「KOTOKO to 詩月カオリ」としてコンビ楽曲も多数披露、発売直後にはI've初の対外イベントとしてトークライブが開催されました。会場は秋葉原アソビットシティで、現在のAKB劇場に当たる場所です。


『ShortCircuit』
パッケージイラストは『恋愛CHU!』原画担当の有末つかさ

 

2003年はこの他、前述のアニメ『おねがい☆ツインズ』主題歌「Second flight」を佐藤ひろ美とのユニットで発売した他、I'veSoundコンピレーションアルバムの第4弾『LAMENT』、第5弾『Outflow』が同時発売します。
セットにした初回限定BOXも発売され、この限定BOXに同梱された「I've P.V Collection vol.03」に当時I'veに所属していた歌姫7人による「See you ~小さな永遠~」のミュージックビデオが収録され、このDVDでI'veの歌姫を初めて目にしたという人も多いのではないかと思います。

このアルバム2枚でKOTOKOの担当曲は『LAMENT』にて「Face of Fact」、「遮光 -Album Mix-」、「Feel in tears」、「Lament」、『Outflow』の「Heart of Hearts」、「Close to me…」、「sensitive」が収録され、オリジナルではKOTOKO TO AKIだった二曲「SAVE YOUR HEART -Album Mix-」、「夏草の線路 -Album Mix-」をKOTOKO to 詩月カオリで収録しています。
第3弾『Disintegration』に比べてKOTOKO担当曲は少なくなったのですが、この頃2002年以降KOTOKOのみではなく他のI’ve所属歌姫が楽曲を担当する機会が増え、それらの楽曲が収録されるようになっているからと言うのが大きいのかと。


I've GIRL's COMPILATION Vol.4・5
『LAMENT』『OUT FLOW』初回限定セットBOX

 

それでも新作でF&C(エフアンドシー)『こなたよりかなたまで』の主題歌「Imaginary affair」では優しいバラードを、13cm『ラストオーダー』主題歌「Abyss」、ANIM『私立レ〇〇女学院』(タイトル一部伏せ)エンディング「oblivion」等ではダーク系の楽曲を発表して印象付けています。

初期からロック調、キュンキュンソングと様々な楽曲を送り続けてきたKOTOKOですが、この2003年頃にはその多様性に磨きがかかり、とても一人のシンガーと思えない位に様々な顔をみせるようになっています。
その顔の多さも、それぞれの奥深さもがKOTOKOの魅力の一つとしてPC美少女ゲームファン以外にも浸透していったこの時期を経て、翌年2004年の4月にジェネオン・ユニバーサルより1stアルバム『羽 -hane-』を発売してメジャーデビューを果たします。


KOTOKO 1stアルバム『羽 -hane-』
 
 
今回のコンプリートBOXは、メジャーデビュー前含めた「ほぼ全てのゲームソングを収録」と言う事が商品紹介でも謳われており100%ではないのですが、PC美少女ゲーム業界と言う市場の風土と言うべきか、音源が現存していなかったり権利元が不明となっていたりと言ったケースが多々見受けられている中で、「ほぼ全てを収録」したことが偉業であると同業のクリエイターの発言が多々聞かれます。

「ほぼ全てを収録」出来た要因は、アーカイブとも言える数々の楽曲が発売元もその存在感を見越して初回盤限定サントラ同梱等で商品化されていた事でコンピレーションアルバム、付属サントラ等手が比較的容易(プレミア価格などは考えない)であったことが大きいと思われます。

2001年発表のRadi『Care ~癒すべき不治の狂気~』主題歌「Time heals all sorrow」は、公式サイトで「主題歌CD-R」を発売していたと言うそれって権利的に大丈夫なのかって入手方法しかなかったのですが、ブランドが活動休止の前に音源が残っていたから後にコンピレーションアルバムに収録出来ましたし。そんな理由からも今回のコンプリートBOXは偉業です。
でもここまで書いてもまだ全10枚ディスクの4枚目までしかたどれてないんです!歴史も容量も膨大ですこの時代、という訳で次回に続きます。

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