センセイ(べ・一文字)のメモリが少なくても語りたい

ウルトラ怪獣ソフビ「平成時代で変化したウルトラ怪獣シリーズ」

公開日: / 更新日:センセイ (べ・一文字)

特撮フリークにして日々美少女フィギュアを愛でている業の深いオタクとしては、昨年放送の『SSSS.GRIDMAN』は、魅力的な二人のヒロインに、昭和・平成にまたがった円谷特撮へのリスペクトとオマージュが詰まった怪獣とのアクションシーンと毎週放送が楽しみなアニメでした。

特にヒロイン兼黒幕である新条アカネちゃん。2話で早々に「お前が武士ポジかーい」と正体が露わになった際のインパクトたるや。部屋中床も見えないゴミ袋と、所狭しと陳列されたガラスケース内には怪獣フィギュアがズラリ!その奥でモニタ内のラスボス・アレクシスと会話しながら登場怪獣を文字通り「製作」していると言う属性マシマシ状態でしたから。周囲でも「濃い」人ほどこの作品及び新条アカネちゃんへののめり込み度が高かった気がします。

その新条アカネちゃんの部屋にあるガラスケースと多種多様な怪獣フィギュアたち。はっきりと個体が判別できるものは各個話の副題やテーマに掛けているのが判ってそこがオタク心をくすぐられました。「そこまでやられたら、もう何も言えません」という感じですね。

しかしあれだけの数の怪獣フィギュアはどこから?と思った人、美少女フィギュアやロボフィギュアに比べて収集は容易かもよ?と言うのが今回のテーマ。ハイクオリティでコアターゲット向けかつ高価格ではなく、本来のメインターゲットである子供向けで安価!な「怪獣ソフビ」について語ってみたいと思います。

 

怪獣ソフビは、それこそウルトラシリーズが放送していた半世紀以上前から玩具として存在してました。「ブルマァク」「マルサン」「ポピー」と言った当サイト「たいむましん」でも扱いがあるブランドの商品は少し濃い人なら耳にしたことがあると思います。が、プレミア物として名高いそれらのメーカーは今回は対象外です。

1983年以降にそのポピーがバンダイに吸収合併されて以降、ウルトラシリーズの怪獣はキャラクターとして定着させる為に『ウルトラ怪獣シリーズ』として様々な変遷を経てかつては「街のおもちゃ屋」で、今では量販店や大型店舗、ホームページ上の一覧と言う違いはあれど、実店舗の棚にズラリと吊り下げられています。

 

『ウルトラ怪獣シリーズ』は過去作品から最新作までの定番怪獣が商品化されており、新シリーズが放送される度に新怪獣が商品化され、人気がある新怪獣はそのままラインナップに組み込まれて定番化、その反面人気薄の商品がラインナップから消えるか、なかなか再販もされずレア化すると言う、言わばシリーズ放送毎に怪獣総選挙が行われている状態です。しかも不動のセンター級は半世紀前からの超重鎮揃い。新怪獣が定番化する道のりは想像以上に遠いのです。

そんなことを考えながら実店舗で文字通りタグで吊り下げられている光景は四半世紀前から変わらず、大小の子供たちをワクワクさせるのですが、実際にその棚を目の前にし、お子さんのために20年ぶりにソフビ怪獣を手に取って「あれ、こんなに小さかったっけ?」と思ったお父さん。それはノスタルジィではなく実際に小さくなっているのです。


左からシン・ゴジラ(2016)、ミサイル超獣ベロクロン(2006)、古代怪獣グドン(2015)

『ウルトラ怪獣シリーズ』棚の近くにあるであろう『仮面ライダーシリーズ』や『東宝怪獣シリーズ』のゴジラ達と比べると一目瞭然なのですが、現在の『ウルトラ怪獣シリーズ』は一回り小さいサイズで、その分価格も抑え目になっています。このサイズは2013年『ウルトラマンギンガ』放送時にリニューアルされて以降です。『ギンガ』の変身アイテム「ギンガスパーク」のトイはソフビ足裏の二次元バーコードを読み取ると怪獣の鳴き声が出るというギミックが搭載されていることに伴い、ソフビシリーズの仕様とラインナップも一新が図られたのです。
 

タグにてギンガスパークの説明

そのラインナップで、古くからの怪獣ファンであればあるほどビックリだったのがマイナー怪獣「液汁超獣ハンザギラン(A47話「山椒魚の呪い!」)がラインナップされていたことです。エース終盤の超獣で本放送当時も立体化されていなかったと思われる怪獣です。この超獣もギンガスパークのギミックに関連してのラインナップ化で、人気怪獣の「暴君怪獣タイラント(タロウ40話「ウルトラ兄弟を超えてゆけ!」他)が複数の怪獣の部位が怨念により合体した設定なのですが、このタイラントの背中がハンザギランのものなのです。


液汁超獣ハンザギラン

 
理由を知ると成程と思いはしますが、それでもハンザギランがラインナップに入るのかーと時代の変化を感じたものです。なお、同様の理由で「大蟹超獣キングクラブ(A15話「黒い蟹の呪い」)もラインナップ化されていました。
また新シリーズでの再登場で知名度が高まる等で、放送当時や放送後しばらくしてからの立体化されていなかったものがと言うケースも多く、「奇獣ガンQ(ガイア6話「あざ笑う眼」他)「円盤生物ノーバ(レオ49話「死を呼ぶ赤い暗殺者!」他)はこのウルトラ怪獣シリーズ入りを果たしたことで、それぞれガイアやレオを代表する怪獣になった、と言えるかと思います。
 

「赤てるてる坊主」まんまの円盤生物ノーバ

さらにここ数年では「だだっ子怪獣ザンドリアス(80 4話「大空より愛をこめて」他)が、『ウルトラ怪獣擬人化計画』での登場&メインキャラ化を機に、『怪獣娘』アニメ出演→メインキャラ化→着ぐるみ新造CF(達成)→『ウルトラマンジード』登場→ソフビラインナップ化とシンデレラストーリーを描いているのですが、萌え周辺を追わず特撮のみ注視していると「何故ザンドリアスが?」と頭に疑問符が浮かぶこと受け合いと思います。
 
 
 
現在の『ウルトラ怪獣シリーズ』フォーマットでは足裏のバーコードは廃されており手頃な価格とサイズに収まっていますが、その前にも大きなリニューアルは複数ありました。現在に近い順で言うと、2006年放送の『ウルトラマンメビウス』は実に大きなターニングポイントであったと言えます。昭和のウルトラ兄弟に直接繋がるシリーズ構成で、旧怪獣も現代の技術で新造されたものが多数登場。放送当時のソフビも新怪獣と共に旧怪獣が多数リニューアルされ、そのレベルの上がった造形は本当に目を見張るほどです。

個人的にメビウス登場リニューアルソフビの白眉と位置付けているのが「一角超獣バキシム(A3話「燃えろ!超獣地獄」他)で、ずっしりむっくりして背中側のボリュームがかなり大きい劇中(A&メビウス共に)のイメージ通りなのと、メビウス再登場時のデザインで「青い目の中に照準器が表示」されているのですが、この照準器が目にモールドされていると言うのがあります。元々の超獣デザイン含め傑作と呼んで差し支えないかと。


一角超獣バキシム
 
  
もう一体特筆すべきは「古代怪獣グドン(帰ってきた5話「二大怪獣東京を襲撃」他)です。これはメビウスでのリニューアル前と並べるとよりハッキリするのですが、顔大きすぎ!
 

左から旧版(初版1983年)、2006年版(メビウス版)、2013年版 

メビウス以前は「特徴は拾っているけど犬顔」でコレジャナイ感がどことなく漂う出来だったのに対し、各所各所のモールドを劇中に忠実に再現して、両手の鞭も長くなり禍々しさもアップしているのですが、やっぱり顔大きすぎ! メビウス2話「俺達の翼」に登場し、メビウス怪獣ソフビとしてのラインナップ一弾と言うことで力入りすぎたかなぁ、という印象がぬぐえません。
 
 
現在のシリーズでは小顔に、シュッとしたイメージに近づいているのもあり、大顔が際立ちます。

 

その「メビウス」前でもリニューアルは幾度も行われていました。正確な時期は定かではありませんが2000年前後に、当時の流行を追う形でウルトラマン及びウルトラ怪獣がリニューアルされていました。

ウルトラマンも旧作のものが当時放送されていた平成ウルトラ三部作の「ティガ」「ダイナ」「ガイア」と並んで違和感がないよう調整され、新造されています。
中でも「ゾフィー」はウルトラマン最終話「さらばウルトラマン」登場時のデザインで立体化されていた事が当時のトイ情報誌内の開発インタビューで語られており、「ウルトラを知るマニアが開発側にいる時代になったか…」との思いを強くしたものです。

怪獣側も人気怪獣を中心に複数の新造形・リニューアルが行われており、そのリニューアルの代表例として挙げるのが「宇宙怪獣エレキング(セブン3話「湖のひみつ」他)です。

エレキングと言えば押しも押されぬ人気怪獣で、現在のシリーズラインナップでも№5、当時のラインナップでも10位内に入っていた超メジャー怪獣。
二足歩行のスタンダードな体系ながらも長い尻尾と頭頂部の回転する三日月形のツノが異彩を放ち、白いボディに黒まだらの風貌は「宇宙怪獣」の名にふさわしい地球外生命体の趣を感じさせ、人気怪獣であるのもうなづけます。
そんなエレキングはどのようにリニューアルされていったかと言うと、これは写真を見たほうが早いでしょう。
 
 
どうですかこの変化!
便宜上左から「昭和版」「平成版」「現代版」と呼びますが、平成版の完璧度、誌面等で紹介写真として度々見るやや上からの構図でガニ股に構えた短い脚と長くうねる尻尾、頭頂部の三日月アンテナは回転中の再現か左右互い違いになっており、何といっても白ボディの黒まだら塗装がはみ出し等なくしっかりと塗装されており、劇中のイメージに寸分違わずと言っても良いであろう出来です。
この完成度で常時安価で入手可能になったのですから凄い事です。

現代版もこの平成版を基に造られているのが判り、モールド塗装の一部省略化等があれど現在でも手に取られるに相応しい出来であると言えます。
それに引き換え昭和版は…と腐そうとしてもコレはコレでキチンとエレキングしているので印象は悪くないです。なにぶん昭和の時代から平成の半ばまでこの造型で納得させてきたのですから悪い筈がない。

 
昭和版、平成版の比較

ボディカラーは成形色のクリームイエローですが、劇中のエレキングは「元々は白だったのが、撮影が進行するにつけ土粉塵が染みて黄色っぽくなった」と言われているのでこの色でも間違いではなく、円筒をくっつけたような直立ボディも、対ミクラス・対セブン時の尻尾を巻きつけての電撃攻撃時の素立ちポーズと考えれば再現度は悪くありません。

ただ、もう塗装が、黒マダラのモールドに合わせてスプレーを軽く吹いたようなアバウトな塗装がこの昭和版エレキングの評価を決定づけていると言っても良いでしょう。ちなみにこの黒スプレー塗装は個体差でこうなっている訳ではなく、線も一本だったり二本だったり、ひと筆描きだったり二角だったりと全部こんな感じのアバウトなスプレー塗装なので、複数見ると「コレはコレで味がある」と思うようになるまでさほど時間はかからないかと。
 

この昭和版の背中のスプレー線は二本(三本塗装もあります)
 
しかし平成版が出て以降より強く思うのですが、昭和版エレキングってセブン登場の元祖ではなくタロウ登場の「月光怪獣改造エレキング(タロウ28話「怪獣エレキング満月に吠える!」)が元なんじゃないかなーと子供時代から思っています。

その、ある意味愛おしい昭和版エレキングですが、数年前に予想もしない所で眼にする機会がありました。
美少女フィギュア関係を愛でているのでオタク方面、所謂オタクイベント界隈の話も耳にすることが多いのですが、そのオタクイベント界隈で話題になった、海外でもひと悶着起こした過激露出系コスプレイヤー様が自撮りをSNSにアップしておりまして、その室内で姿見に向けて撮ったと思われる画像に写るコスプレイヤー様の私室、その棚の上にアクセサリ引っ掛け用のオブジェとしてこの昭和版エレキングが鎮座まししていたのです。

複数枚の画像で昭和版エレキングの存在を確認し、写真によってはアクセサリーの引っ掛けの為手足を動かしてポーズを変更した形跡もあり、私物であるのはほぼ間違いないと思われ、「過激露出系コスプレイヤー様の私室にエレキングが…!」と驚愕したと同時に、しばらくの間大笑いしていました。
その過激露出系コスプレイヤー様モチーフの商業立体化企画が本人と連絡取れなくなって企画が止まっているとの原型師様のボヤキと原型画像が流れてきた時に、真っ先にエレキングの件を思い出したので自分の中では相当インパクトがあった出来事だったと再認識したのでした。

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