ボードゲーム遊び方紹介 “スピンオフ” ミステリー・ザ・サード体験記 その1
ボードゲーム遊び方紹介 “スピンオフ” リアル謎解きゲーム(前編)はこちらから。
3月初旬、桜が咲く前のある日曜日。ミステリー・ザ・サード(M3)2018「連想料理人と殺人のレシピ」の東京公演に行ってきました。
ミステリー・ザ・サードとは、劇中で起こる殺人事件の謎を、参加者自身が探偵となって解き明かす宿泊イベント・ミステリーナイトの日帰りバージョンです。
今回の開催場所は、キッチンスタジオPatia市ケ谷です。お料理教室に参加したら、殺人事件に巻き込まれたという設定のようです。
主催のイーピン企画代表取締役・城島和加乃さんとミステリ演劇の構成脚本家かとうだいさんは、私も所属する本格ミステリ作家クラブの会員で、「一度お試しされるのはいかがですか」とご招待をいただきました。ありがとうございます。
一緒に行ったメンバーは、同じく本格ミステリ作家クラブ会員の作家・天祢涼さんと評論家兼編集者の遊井かなめさん。『人狼作家』(原書房)のプレイヤーつながりでもあります。
不定期に集団で飲みに行くことはあっても、この三人だけでお出かけするのは初めてです。そもそも連れ立ってどこかに行く機会すら、めったにありません。気分は、まるで、遠足です。
ミステリーナイトはかなり前から気になっていたので、楽しみにしていました。ですが、家族を置いて宿泊を伴うイベントに参加することはなかなかできず、かといって一緒に行く費用はありません。なので、こういった日帰りイベントは、謎解き・ゲーム好き主婦にとって、とてもありがたいです。
方向音痴なわれわれ。
の「あの通りを左側見ながら歩けば、どのビルか分かるよね」
遊「私、こんなときのために地図をプリントアウトしてまいりました」
天「君らはグーグルマップというものを使わないのかね」
の・遊「そんな文明の利器に頼るわけないじゃん(要は使いこなせない)」
天「『サイバーミステリ宣言!』(KADOKAWA)書いてるのに!」
普段はほとんど仕事の話をしないため、お互いの推理力を把握していません。
遊「私はトンデモ推理を発揮しますので、エレガントな解答はお二人にお任せします」
天「ぼくは伏線回収が苦手」
の「私は嵐の山荘に紛れ込んだら、引きこもって全員死亡するのを待つタイプだよ」
遊「ああ、逆に最初に殺される」
天「もしや、全員ダメダメなんじゃ……」
の「ジッチャンの名にかけて当てようよ」
遊「天祢さん得意そうですよね」
の「おかしなトリックいっぱい書いてるもんね」
天「解くのは苦手なの。千澤さんのが得意そう」
の「たまに野生の勘が働く。裏付けは遊井さんにお任せしよう」
遊「だから、私はトンデモ推理しかできませんからね」
そんな話をしていたら、お目当てのビルが見えてきました。
そのとき、突風が吹き抜けました。遊井さんの持っていたクリアファイルの中身が坂道を飛んでいきます。
「あの中には昨日の取材原稿があああ」
慌てて駆け上がる元サッカー少年の遊井さん。猛ダッシュの末、ようやく全部を回収できました。私と天祢さんは呆然と立ち尽くすだけです。
「大変でしたねえ」と一部始終を見ていたスタッフの方から笑顔で言われ、受付は終了しました。
ボードゲーム遊び方紹介 “スピンオフ” ミステリー・ザ・サード体験記 その2へ続く。
1973年生まれ
作家。2007年に宗形キメラ名義で二階堂黎人との合作『ルームシェア 私立探偵・桐山真紀子』で作家デビュー。2009年には『マーダーゲーム』で単独デビュー。近刊は「少女ティック 下弦の月は謎を照らす」(行舟文化)
ボードゲーム好きで『人狼作家』の編集も手がけ、羽住典子名義でミステリ評論活動も行っている。
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