デバッグ・マジック! vol.30 ~『イクサラン:失われし洞窟』編~
いよいよ11月17日 (金) には新セット『イクサラン:失われし洞窟』が発売となる。
およそ6年前、2017年9月に発売した『イクサラン』は「恐竜」や「海賊」といった独特な種族にフィーチャーした豪快なセットだった。
はたして『イクサラン:失われし洞窟』にはモダンにインパクトを与えるほどの逸材が存在しているのか。直近のモダン環境の動向をチェックしながら、新カードを使ったデッキにチャレンジしていこう。
1.赤黒の支配と連なるTier 2
2023年10月~11月にかけてのモダン環境は、以下のようなメタゲームで展開していた。
Tier God (20%+)
赤黒不死ラガバン
Tier 2
4C続唱豆の木オムナス/4Cオムナス
Yawg-Chord
ティムール続唱/版図続唱
アミュレット
バーン
トロン
装備シュート
鱗親和
死せる生
黒単貴重品室コン
トピックとしては「赤黒不死ラガバン」への一極化とそれに比例するように種類が増えたTier 2という二点が挙げられる。
まず、マジック・オンラインのここ最近のトーナメントではここに載せた1+10、合計11種のデッキ以外はほぼ勝っていない。
11個もデッキがあるなら平和に思えるかもしれないが、それは「何だかんだそれ以外にも色んなアーキタイプがあるんでしょ?」という前提があっての話であって、モダンという2003年の「第8版」から始まった20年にわたる広大なカードプールがありながらも、実際のところはこの11個しか本当にほぼほぼ存在価値がないのだ。
トップに君臨する「赤黒不死ラガバン」の押しつけが強すぎて、これ以外のローグデッキが運ゲーやガンメタを仕掛けて活躍できる余地はほとんどないのが実情である。Tier 1とTier 2との間、そしてTier 2とTier 3以下との間には、それぞれあまりにも大きすぎる隔たりがあるのが現在のモダン環境だ。
また、「赤黒不死ラガバン」の躍進にはおそらく他の要因もあり、《豆の木をのぼれ》の登場で強化された「4Cオムナス」こと「4C豆の木続唱オムナス」に《敏捷なこそ泥、ラガバン》デッキが対抗するには《オークの弓使い》を使わざるをえず、フェアなデッキを使いたい「青赤ラガバン」使いたちがいい加減《オークの弓使い》の強さに折れて「赤黒不死ラガバン」へと転向していったのが大きいのではないかと思われる。
いずれにせよ環境は《オークの弓使い》が定義しており、《オークの弓使い》を無視できるコンボやコントロールで実用的な速度のあるデッキ10種が厳選されてTier 2でしのぎを削っている構図と言えるだろう。
とはいえ、このような現状にあって次の禁止改定の機会で禁止が出るかどうかという話題に関しては、まだノーチェンジに一票というのが私の個人的な予想だ。
現状で最も禁止に近いカードは《悲嘆》 (コラボ製品で登場した《オークの弓使い》を禁止にはしたくないだろうと考えられるため) と思われるが、「死せる生」が悪用している以外は「赤黒不死ラガバン」という (一応の) フェアデッキがアンフェアに対抗する手段として用いられており、20%超えの支配率もここ1ヶ月の出来事で、ここから先どのように推移するかはまだわからない。
《オークの弓使い》で黒いカードのスペックが上がりすぎたことで《悲嘆》の許容値がややオーバーしてきているのは感じるが、半年や1年先はわからないけれども、少なくとも3ヶ月以内に禁止になる可能性は20%以下だろうと予想する (ただし、繰り返すがあくまで私個人の妄想だ)。
またそれはさておき、例によって最近活躍したローグデッキを3つ紹介しておこう。
モダンチャレンジ 2023-11-04、4位、6-0
プレイヤー名:nahuel10
1《繁殖池》
4《溢れかえる岸辺》
1《森》
1《神聖なる泉》
1《島》
4《霧深い雨林》
1《平地》
1《ラウグリンのトライオーム》
1《聖なる鋳造所》
1《蒸気孔》
1《踏み鳴らされる地》
1《寺院の庭》
4《吹きさらしの荒野》
1《ゼイゴスのトライオーム》
4《火》
1《至高の評決》
4《豆の木をのぼれ》
4《力線の束縛》
3《時を解す者、テフェリー》
1《神秘を操る者、ジェイス》
いきなり活躍しすぎてもはやローグではないデッキだが、「続唱」→《豆の木をのぼれ》を100%成功させるために《レンと六番》すら環境から退場させられたというのは半年前には想像もできなかった事態だ。
「4Cオムナス」の進化形とも言えるそのコンセプトはいわば究極の「後の先」、後出し全解答+全除去デッキであり、大量の「想起」エレメンタルと《力線の束縛》でテンポを無視して盤面にあるすべてのカードに干渉できる。性質上手札コンボや土地コンボ、バーンなどは苦手だが、そうしたデッキは「赤黒不死ラガバン」が狩りつくしてくれるという信頼のもと、盤面で勝負するデッキを徹底的に狩りつくせるデッキである。
モダンチャレンジ 2023-10-22、2位、6-1
プレイヤー名:Traft
4《タッサの神託者》
《猿人の指導霊》の禁止によって崩壊した「アドグレイス」の後継デッキ。《天使の嗜み》+《大霊堂の戦利品》+《タッサの神託者》という4マナと3枚で特殊勝利ができるコンボが特徴。「青赤ラガバン」のポジションが下がったことでいよいよ環境のカウンターが続唱デッキ2種の《否定の力》くらいとなり、カードを引かず墓地も使わない手札コンボであるこのデッキが一躍注目を浴びることとなった。
ただ《むかつき》と違って《否定の契約》をそこまで自在には抱えられないために墓地コンボでもなんでもないのに《忍耐》がぶっ刺さるという悲しすぎる弱点を抱えており、また召喚酔いの解けた《ダウスィーの虚空歩き》に立たれると《天使の嗜み》を相手に構えられるので勝ちにいけない (その場合は《ファイレクシアの非生》で代用することになる) など、ネタバレしていると意外な弱点も多いデッキでもある。タイミングを見計らって使用したいところだ。
モダン 予選 2023-11-05、7 位、8-1
プレイヤー名:bobthedog
4《敏捷なこそ泥、ラガバン》
殿堂プレイヤー、Gabriel Nassifがマジック・オンラインの競技トーナメントでトップ8に入賞し、一躍界隈の話題をさらったデッキ。
環境に対するアプローチとしてはvol.18で紹介した「アーティファクトバーン」に近いが、《一つの指輪》でコントロール要素も増しており、《呪文貫き》や《爆裂+破綻》の初見殺しもあって奏功した結果だろう。
反面、リストがバレているとケアされやすいカードも多く、環境への定着という視点では少し厳しいかもしれない。だがそれでも、硬直化した環境にローグデッキでカウンターパンチを食らわせることができた事例として、素直に拍手を送りたい。
2.『イクサラン:失われし洞窟』でバグを探そう
「モダンをじゃんけんにする」……それはある意味でウィザーズ・オブ・ザ・コースト社のR&Dに対する宣戦布告だ。
なぜなら真にモダンがじゃんけんになったとき、彼らは《猿人の指導霊》や《ティボルトの計略》のようにそれらを禁止することができる。
だが当然彼らとて禁止を出したいわけではない。それでも禁止を出さざるをえないとすれば、その際の理由は「じゃんけんすぎてどうしようもないから」なはずなのである。
その一文を、禁止改定で引き出したい。ゆえにこれは私とR&Dとの勝負なのだ。
手札、土地、クリーチャー、墓地、非生物呪文……すべての領域にあるすべての種類のカードが容易に干渉できるようになったこの環境でも、モダンをじゃんけんにするデッキがはたして作れるのか、という。
その勝負に勝つためにも、今日も新セットに眠るバグをデバッグ (発見・解明) していくことにしよう。
《ゾヨワの裁き》
《新生化》や《異界の進化》など、わずかなマナだけで低コストのカードを高コストへと変換できるカードはバグの可能性を常に秘めている。そしてそれは、確定サーチではなくランダムであっても同様だ。
なぜならむしろランダムに負けた方が人は不快感を覚えるからだ。
《ゾヨワの裁き》。モダンで禁止カードにまでなった《ティボルトの計略》を彷彿とさせる効果のカードということで、《ティボルトの計略》が大好きな私が使わないわけにはいかない。
さて《ゾヨワの裁き》の特徴的な部分は「発見」のためにクリーチャーやアーティファクトのマナコストを参照している点だ。
ということは、マナコストがクソ重いのに実際は軽く出せるクリーチャーやアーティファクトと相性が良いということになる。
しかしそんなカードがモダンに存在するはずも……。
あった。
《ドラコの末裔》を使えばいいのでは???
《ドラコの末裔》は2ターン目に出せる12コストのクリーチャーなので、3ターン目に《ゾヨワの裁き》をぶち込めば「発見12」というアバレが可能になる。これなら《全知》だろうと《多元宇宙と共に》だろうと出し放題 (※ただし運命力が必要) だ。
だがこの発想には問題があった。
《ゾヨワの裁き》と《ドラコの末裔》は4枚ずつしか積めないという点だ。
60枚から4枚ずつ2種をマリガンのみで揃える困難さは《ティボルトの計略》のときに十分実感している。このままだと相手の前で謎に4マリして号泣・失禁・のちに秒速で投了するだけの怪物が爆誕してしまう。
ならばどうすればいいか?
答えは簡単だ。
8枚ずつ積めばいいのでは???
《アロサウルス乗り》は0マナで出せる7マナのクリーチャーなので、《ドラコの末裔》の2種類目というだけでなく2ターン目にボールを相手のゴールにシュゥゥゥーッ!!することが可能となる。デッキ内の緑要求がかなり上がる上に「発見7」にはなってしまうが、緑の7マナ以下でゲームに勝てるカードを積みまくれば「発見12」でも変わらずめくれるので問題はない。
《断片無き工作員》はデッキ内の2マナ以下を《ゾヨワの裁き》だけにしておけば確定でめくることができる。8枚ずつのコンボならマリガンを繰り返して初手に揃えることは容易だろう。
ちなみにここまで相手のスタック除去とか《悲嘆》とか《時を解す者、テフェリー》のことは一切考えていないが、そもそもランダムで勝つという暴挙を真面目にやろうとしている時点で現実を見ても仕方がない。頭をカラッポにして夢を詰め込もう。
緑の7マナでゲームに勝てるカードといえば《出現の根本原理》と《発生の根本原理》。「発見7」の精度を上げるために《全知》と《多元宇宙と共に》をあまり多くは積めないので普段より威力は低いが、2ターン目に唱えられるカードとしては言うまでもなく破格だろう。
《偉大なる統一者、アトラクサ》はゲームに勝てるかは怪しいが、緑の7マナの中では《出現の根本原理》《発生の根本原理》《世界呪文》の次に強そうだったのと、確実に勝つためとはいえ「発見」に貢献できず当たりの確率を減らしてしまう《引き裂かれし永劫、エムラクール》をそのサーチ力で1枚差しにまで減らせる可能性を買って採用した。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
デッキビルド:まつがん
3《繁殖池》
2《サヴァイのトライオーム》
3《樹木茂る山麓》
3《新緑の地下墓地》
3《沸騰する小湖》
2《吹きさらしの荒野》
2《溢れかえる岸辺》
2《汚染された三角州》
4《断片無き工作員》
4《アロサウルス乗り》
4《ドラコの末裔》
4《偉大なる統一者、アトラクサ》
1《引き裂かれし永劫、エムラクール》
4《ゾヨワの裁き》
4《出現の根本原理》
4《発生の根本原理》
4《輝く根本原理》
1《多元宇宙の突破》
4《世界呪文》
1《多元宇宙と共に》
1《全知》
IQが低すぎるだろ!!!
一応「発見7」は約58.6%、「発見12」は約59.0%で「当たり」がめくれる計算だが、当たったからといって確実に勝てるわけでもなく、さらにマリガン死、妨害、サイドカードなどを考えれば、予想される勝率はせいぜい15%がいいところである。クソ楽しいデッキであることは間違いないが爆誕したのは結局相手の前で謎にガチャ外して号泣・失禁・脱糞・のちに光速で回転土下座六連投了するだけの怪物なのであった。
《深根の巡礼》
「AをしたらBする」という能力を持つカードのコストが軽い場合には要注意だ。「BをしたらAをする」あるいは「無限にAをする」といったカードとの組み合わせで、容易にコンボが生まれうるからだ。
《深根の巡礼》。トークンでないマーフォークがタップしたらトークンが出るというマーフォーク版の《苦花》のようなカードだが、「1体以上」という制約から、2体以上のマーフォークのアタックではトークンが1体しか出ないため、普通に使うと2マナらしくそこまででもないスケールのカードかもしれない。
だがマーフォークはタップシナジーに長けた種族。こうしたエンチャントが生まれれば、コンボが生まれるのは必然なのだ。
《キオーラの追随者》を2体並べたら無限トークンでは???
《キオーラの追随者》は他のパーマネントをアンタップできるので、《キオーラの追随者》が2体いる状況ではお互いがお互いをアンタップし続けることができる。そのたびに《深根の巡礼》が誘発するので、無限呪禁トークンの完成というわけだ。
とはいえ所詮は3枚コンボ。しかも同じカードを2枚要求するというのはかなりハードルが高く、それなら《サヒーリ・ライ》+《守護フェリダー》の方が簡単じゃねーかというマジレスも予想されるところだが、マーフォークは《玻璃池のミミック》を自然に搭載できるので、1枚目の《キオーラの追随者》を用意することさえできれば2枚目を用意するのは比較的簡単なのだ。
だが、この発想には問題があった。
《キオーラの追随者》も《深根の巡礼》もそれぞれ1種4枚ずつしか積めないという点だ。
《キオーラの追随者》も《深根の巡礼》も、4枚しか入らないともなればどちらかを引かないパターンも起こってしまう。しかしこれらはそれぞれ単体ではゴミカスうんちモダンを舐めすぎ侍とも呼ぶべき性能しかない。
つまりコンボが揃った場合はいいものの、揃わない場合にはデッキ未満の紙束が爆誕してしまうのだ。
この問題を解決するために、《キオーラの追随者》や《深根の巡礼》と相性の良い他のカードを採用するパターンも考えた。
《侵入警報》や《石ころ川の群れ長》などがそれだが、「AとBのコンボ」を補完するのに「AとCのコンボ」や「BとDのコンボ」を入れたとして「AとD」や「BとC」のパターンでもコンボになっていないならば分散が増えるだけで何の意味もなく、いよいよもって紙束がケツ拭きペーパーになっただけという結論に終わってしまった。
つまり必要なのはやはり、《キオーラの追随者》と《深根の巡礼》の両方の代替になるカードなのだ。
もしそのカードが存在すれば、《キオーラの追随者》を引いているときには《深根の巡礼》を、《深根の巡礼》を引いているときには《キオーラの追随者》の役割を果たしてもらえるので、実質8枚ずつ積んでいるのと同義となる。
しかしそんな都合の良いカードがまさか存在するはずも……。
あった。
《召喚の調べ》から《月恵みのクレリック》をサーチすればいいのでは???
《召喚の調べ》は3マナと盤面2体で《キオーラの追随者》をサーチしてこれるので、《キオーラの追随者》を2体並べる必要があるこのデッキにおいてはとても噛み合ったカードと言える。
さらに《月恵みのクレリック》をピン差ししておけば、実質《召喚の調べ》で《深根の巡礼》を探してこれるようになるので、「《キオーラの追随者》と《深根の巡礼》の両方の代替になるカード」という条件を完璧に満たせるというわけだ。
無限コンボとはいっても大量の呪禁トークンを並べたまま一旦ターンを返さなければならない点は弱点だが、《ヴォーデイリアの呪詛抑え》がいれば返しのターンの非クリーチャー呪文はすべてシャットアウトすることができ、逆転の可能性を限りなく排除できる。
《オラーズカの暴君、クメーナ》は単体で《深根の巡礼》とのシナジーがあり、リソースも回復できるので《召喚の調べ》からの選択肢にうってつけだ。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
デッキビルド:まつがん
1《森》
1《繁殖池》
1《神聖なる泉》
1《寺院の庭》
1《ドライアドの東屋》
4《霧深い雨林》
4《吹きさらしの荒野》
2《溢れかえる果樹園》
1《耐え抜くもの、母聖樹》
4《激浪の形成師》
4《キオーラの追随者》
4《不確定な船乗り》
4《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》
4《ヴォーデイリアの呪詛抑え》
1《潮流の先駆け》
1《真珠三叉矛の達人》
4《玻璃池のミミック》
1《オラーズカの暴君、クメーナ》
1《月恵みのクレリック》
4《緻密》
4《召喚の調べ》
4《深根の巡礼》
4《霊気の薬瓶》
全部に対して勝ちたがった結果デッキがぐちゃぐちゃすぎる!!!
土地コンボには《激浪の形成師》を、「想起」エレメンタルには《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》を、バーンには《不確定な船乗り》を……といった具合に環境を見た場合に必要なカードを押さえた結果、ロードも全然いないしこれって本当にマーフォークなのか……???という異形のバケモノが爆誕してしまった。こういうデッキを作るとトロンには《不確定な船乗り》を引いてバーンには《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》を引いて大変な目にあうのがお決まりである。コンボのためだからといってカードパワーやデッキパワーを下げると全体がゴミカスになるというのは覚えておいて欲しい教訓だ。
《迷いし者の魂》
「上限がないこと」はバグの可能性を生む重要な要素だ。全力で寄せれば、環境デッキをも吹き飛ばす出力を生んでくれるかもしれないからだ。
《迷いし者の魂》。自分の墓地のパーマネントの数に等しいパワー・タフネス (タフネスは+1だが) を持つという一見シンプルなテキストだが、召喚に制限のあるバニラとはいえ《タルモゴイフ》と比較しても明らかに異常なスペックのカードだ。
なぜならモダンにおいてはフェッチランドはもちろん《ミシュラのガラクタ》《通りの悪霊》もある。2ターン目に《ドラゴンの怒りの媒介者》が「昂揚」を達成していてもおかしくない環境ということは、2ターン目のサイズは少なくとも4/5、さらにそこからどんどんとデカくなっていく可能性を秘めているということで、《灰色熊》もついにここまで来たかというスペックだからだ。
だが上限がないカードだからこそ、デッキビルダーは夢を見てしまうものだ。
そう、すなわち。
パーマネントだけで墓地を肥やしまくれるデッキを組んだら20/21でワンパンできるのでは???
vol.9で紹介した「バーゲンシュート」では、デッキ内をインスタント・ソーサリーに限界まで寄せることで追放領域にインスタント・ソーサリーが行く確率を高めたコンセプトを使った。そしてその弱点は、土地を抜き切ることができず、60枚すべてを寄せられないという部分にあった。
だが「パーマネント」ならば土地も無理なく許容できる。逆に《不可思の一瞥》などの最大効率での墓地肥やしは使えないが、《縫い師への供給者》や《叫び角笛》などを駆使すれば、パーマネントだけでも十分な量の墓地肥やしが可能なはずだ。また、どちらも場に残ることに特に意味がないパーマネントなので、《迷いし者の魂》の召喚時に手軽に生け贄に捧げられるのも相性的に噛み合っている。
どうせ墓地肥やしをするなら墓地から《迷いし者の魂》を釣れるオプションがあるとサーチも兼ねられて都合が良い。そこで《歓喜する喧嘩屋、タイヴァー》はパーマネント縛りを守りつつ、さりげに墓地を肥やしながら《迷いし者の魂》を釣れるので、デッキコンセプトと非常に噛み合っている。
とはいえ盤面に20/21を用意したとしても攻撃が通らなければ意味がない。そこで《踏み穴のクレーター》は自身で墓地に落とせるパーマネントでありながら《迷いし者の魂》に速攻とトランプルを付与できるので、突然の20/21でボールを相手のゴールにシュゥゥゥーッ!!できるに違いない。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
デッキビルド:まつがん
1《森》
1《山》
1《沼》
1《血の墓所》
1《草むした墓》
1《踏み鳴らされる地》
4《新緑の地下墓地》
3《血染めのぬかるみ》
3《樹木茂る山麓》
1《ボジューカの沼》
1《亡骸のぬかるみ》
1《セジーリのステップ》
4《ウルザの物語》
4《エルフの開墾者》
4《縫い師への供給者》
1《機能不全ダニ》
4《迷いし者の魂》
4《通りの悪霊》
4《踏み穴のクレーター》
4《ミシュラのガラクタ》
4《叫び角笛》
1《黄鉄の呪文爆弾》
1《虚無の呪文爆弾》
1《影槍》
1《バネ葉の太鼓》
4《歓喜する喧嘩屋、タイヴァー》
これもはや墓地を肥やすだけでアド損な《縫い師への供給者》とか《叫び角笛》とか抜いてグッドスタッフで使った方が強くないか???
最速20/21でのワンパンは確かに夢だが、別に《迷いし者の魂》自体はそんなに頑張って墓地を肥やそうとしなくても勝手にデカくなるので、《タルモゴイフ》や《縄張り持ちのカヴー》同様のクソデカミッドレンジ生物として運用した方がどう考えても強いという身も蓋もない結論に落ち着くのであった。あと自分でライブラリーをセルフミルするのに《エルフの開墾者》や《ウルザの物語》でサーチする用のピン差しカードが山ほど入ってるの、どう考えても精神が分裂したデッキビルダーのデッキとしか思えないので皆さんは大人しく2枚ずつ積みましょう (それでも《影槍》が品切れしたら台パンをブラジルまで響かせる自信があるけど)。
3. 終わりに
『イクサラン:失われし洞窟』は軽いカードが多く、様々なデッキの基盤を整えてくれそうなセットだ。
それがモダンのデッキの基盤まで変えてくれるかはわからないが、とにかく軽いことが活躍する最低条件であるモダンにおいては、資格は十分に満たしていると言える。これからどんなアイデアが活躍するかが楽しみだ。
ではまた次回!
クソデッキビルダー。独自のデッキ構築理論と発想力により、コンセプトに特化した尖ったデッキを構築することを得意とする。モダンフォーマットを主戦場とし、代表作は「Super Crazy Zoo」「エターナル・デボーテ」「ステューピッド・グリショール」など。Twitter ID:@matsugan
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