デバッグ・マジック! vol.14 ~もっともっと!!『ニューカペナの街角』編~
『ニューカペナの街角』の発売から早くも2ヶ月が経過した。
そろそろあからさまなバグは既に塞がれてきている頃だろうが、それでもどんな見落としがあるかわからない。最新の環境動向をチェックしつつ、今月もまだまだ新カードを使って様々なアイデアを試していこう。
■ 1. ラガバンVSオムナス、2強時代の到来
2022年5月~6月にかけてのモダン環境のメタゲームは、以下のようなものだった。
Tier 1 |
Tier 2 |
まず印象的なのは「続唱」勢力のTier 1陥落だろう。無論まだまだ上位を目指せるポテンシャルを有していることに変わりはないのだが、さすがにここまで長く環境に定着していると、相対した際の最適なプレイングやマリガン基準、サイドインアウトが解明されつつある。
無論通常のデッキならばさらに対抗する上位戦略でもって状況の打開が図れるところなのだが、続唱側にはマナコスト2以下のカードが採用できないというデッキ構築の制約があり、採用候補のカードがそもそも少ないため、過剰に意識されているような状況からでは、自力での打開は難しい。
かくしてメタゲームは《敏捷なこそ泥、ラガバン》VS《創造の座、オムナス》という2強の頂上決戦の構図に落ち着いたわけだが、こうなった原因の一端は『ニューカペナの街角』でモダンに最も大きな影響を与えたカード、《帳簿裂き》の定着にある。
もともと青赤ラガバンが《ドラゴンの怒りの媒介者》を採用していたところにこのカードが収まったことで、「諜報」だけではなしえなかったシチュエーションに応じた最適な手札構築が可能となった。
これにより多様なデッキが存在するメタゲームにおける当たり運による裏目が消えたことが、最終的なデッキパワーの底上げにつながったのが大きい。
そしてもう一つの注目すべきトピックは、グリクシスシャドウの復権である。
こちらも《帳簿裂き》を採用することにより、かねてより構造的な問題だったゲーム後半における手札破壊の裏目を軽減することに成功した。そして手札破壊+カウンターをコンセプトにしたデッキが浮上したことは、コンボデッキ全般にとっては向かい風を意味する。
《敏捷なこそ泥、ラガバン》+《帳簿裂き》をコンセプトにした妨害アグロの隆盛は、《創造の座、オムナス》+《空を放浪するもの、ヨーリオン》をコンセプトにした消耗コントロールとデッキパワー面で均衡がとれた状態をもたらし、結果として環境内の他のすべてのアーキタイプに対してオールレンジで両側から挟み込む形 (ラガバンに強いデッキはオムナスに弱く、オムナスに強いデッキはラガバンに弱い) を作っている。
したがって、この極めて安定した2強の構図そのものを打ち破るのはかなり難しいと言わざるをえない。だが、土地コンボや墓地コンボ、手札コンボやクリーチャーコンボ・アーティファクトコンボなど、様々な角度のコンボデッキを毎週完璧にメタりきることもまた容易ではないため、わずかなサイドボードの偏りを見逃さずにうまく穴を突けるデッキが選択できれば、一週単位で貫くことは不可能ではないだろう。
Modern Challenge #12420451 7th Place
プレイヤー Xenowan
4《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》
4《帳簿裂き》
4《アカデミーの整備士》
4《湖に潜む者、エムリー》
4《楕円競走の無謀者》
前回私が《財宝発掘》型の《時の篩》デッキに見切りをつけ、《アカデミーの整備士》に着目していたまさしくそのタイミングで、よりスタイリッシュな《時の篩》デッキが実は既にトーナメントで活躍して実績を残していた。
「《発掘》を使おう」というアイデアまでは一緒だったが、何よりこのデッキを成立させているのはやはり《帳簿裂き》だろう。このカードの存在により《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》や《楕円競走の無謀者》の実用性が増しているし、《発掘》で《アカデミーの整備士》のマナコストを踏み倒すルートがとりやすくなっている。
青黒2色でまとめているのもライフ水準を高く保つのに効果的だ。悔しいが、私が作ったのよりも何倍も完成度が高いデッキと言わざるをえない。
Modern Challenge #12424539 6th Place
プレイヤー Xenowan
「ティムール続唱」のバリエーション的な構造だが、ポジションやスケール的には「墓地を使わない《死せる生》コンボ」と呼んだ方が相応しいかもしれない。
4枚ずつ搭載した《魂の洞窟》と《創造の座、オムナス》によるエレメンタル・ミッドレンジ的な要素もあり、《忍耐》《激情》で防げない系統の高速デッキを除いては、フェア・コンボとして意外と幅広い耐性を持っていそうだ。
Modern Challenge #12424539 3rd Place
プレイヤー osmanozguney
1《爆発域》
1《血染めのぬかるみ》
4《陰謀団の貴重品室》
1《大瀑布》
3《ロークスワイン城》
1《湿地の干潟》
1《惑いの迷路》
1《汚染された三角州》
6《沼》
1《見捨てられたぬかるみ、竹沼》
3《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
1《新緑の地下墓地》
1《戦慄の朗詠者、トーラック》
2《不屈の巡礼者、ゴロス》
1《残虐の執政官》
1《約束された終末、エムラクール》
1《塵へのしがみつき》
4《致命的な一押し》
2《不憫な悲哀の行進》
3《不敬な教示者》
2《血の長の渇き》
2《コジレックの審問》
4《思考囲い》
1《滅び》
2《絶望招来》
4《探検の地図》
2《ヴェールのリリアナ》
4《大いなる創造者、カーン》
1《ボーラスの城塞》
1《滅び》
4《ダウスィーの虚空歩き》
1《仕組まれた爆薬》
1《罠の橋》
1《不屈の巡礼者、ゴロス》
1《液鋼の塗膜》
1《真髄の針》
1《隔離するタイタン》
1《トーモッドの墓所》
1《歩行バリスタ》
1《ワームとぐろエンジン》
《陰謀団の貴重品室》と《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》のコンボによるマナ加速要素のある消耗コントロール。
コントロール版のトロンとも言うべきコンセプトであり、「テンポは悪いが状況は必ず解決できる」というようなデッキ構造におけるテンポの部分を上記のマナ加速コンボで補っている。
初速を手札破壊と軽量除去で咎められることが前提のため、それが通用しない相手には厳しい戦いを強いられるだろうが、現状のメタゲーム的には意外と追い風のデッキかもしれない。
■ 2. もっともっと!!『ニューカペナの街角』でバグを探そう
前々回は「秘匿」、そして前回は「無限コンボ」……新カードを使い、モダンフォーマットで遊ぶことのできる6つもの新たなデッキコンセプトを作成したことで、もはや『ニューカペナの街角』に開拓の余地は残されていないようにも思われた。
だが、驚くべきことに『ニューカペナの街角』はまだまだポテンシャルを残していたのだ。
今回のテーマは「ワンパン」。『ニューカペナの街角』に残されたバグを利用し、3つのデッキを用意した。
そう、デッキビルダーの手にかかれば新セットは2ヶ月経ってもまだしゃぶれるのだ。
というわけで、メタゲームが固まりつつあるからと簡単に諦めるようなことはせずに、今回も元気に『ニューカペナの街角』のカードをデバッグ (発見・解明) していこう。
◇《照光の巨匠》
先日スタンダードで開催された日本選手権2022。そのカバレージから、新デッキのインスピレーションが降りてきた。
《照光の巨匠》。呪文で対象にとるたびに「謀議」する能力ということで、『ニューカペナの街角』のカードリストで見た当初はエアプで想像だけして「まあ『英雄的』よりちょっと弱いくらいかな?」と思っていたのだが、実際に動いているのを見た結果、その想像が果てしなく間違っていたことに気づかされた。
「謀議」の強みは、手札交換にこそある。通常のコンセプトならフィニッシュターンに「この手札内でリーサルを組めるか?」という問いを立てるのに対し、《照光の巨匠》を強化するコンセプトであればそれが「この手札とライブラリーの上3~4枚を組み合わせてリーサルを組めるか?」という問いに変貌するのである。リーサルの組みやすさが段違いなことは言うまでもない。
だとしても、所詮2マナで速攻も持たないクリーチャーのやることである。たとえば1ターン目のマナ加速から2ターン目に《照光の巨匠》を召喚し、そのまま《無謀なる突進》を唱えたとしても、これだけでは最大10点しか叩き込むことができない。
しかも、これは相手に除去もブロッカーもない前提での話だ。モダンのスピード感を考えるなら、相手の妨害前提でも3ターン目か遅くとも4ターン目までには相手を殺せなければならない。
となると、2ターン目に《照光の巨匠》を出していたのでは間に合わない。
ならば、どうするか?
1ターン目に出せばいいのでは???
やはりモダンで通用するコンセプトを作りたいなら、限界を超えるしかない。そして限界を超えるには、頭を悪くする必要があるのだ。
《絡み森の大長》があれば、《照光の巨匠》を1ターン目に着地させることができる。それならば、2ターンキルも夢ではない。
もちろんこれだけでは60枚のライブラリーから4枚と4枚を引かなければならないため小学3年生のデッキだが、《血清の粉末》でマリガンを緩和することで、小学6年生のデッキくらいまでは持ち直すことができる。
何よりこのコンセプトの素晴らしい点は、「謀議」が生かされているという点だ。すなわち、「大長」シリーズや《血清の粉末》は初手で手札にあると0マナで効果を発揮できて大きなスタートダッシュが望める反面、その後は不要札として手札にとどまり、カード1枚分としての役割を果たさない (それに加えて後引きも弱い) という問題があった。
だが「謀議」ならば、これらの手札に残ったゴミを新たな手札に変換できる。すなわち、リサイクル。そう、「謀議」とは環境問題に対する解答だった。しかもゴミは土地ではないことによって+1/+1カウンターに変換できるので全く無駄がない。
だがやはり4枚の《照光の巨匠》を必ず引かなければならないというのは確率を冒涜しているので、《照光の巨匠》の2種類目として大体似たようなスペル量で大ダメージを叩きこめる《窯の悪鬼》を採用することとしたい。
《照光の巨匠》も《窯の悪鬼》もトランプルがないと相手のブロッカーにいちいち付き合わなくてはいけなくなるので、《祖先の怒り》を入れてドローを進めながらストレスなく強化していこう。
あとはマナがかからない強化呪文である《変異原性の成長》や、1枚で《照光の巨匠》や《窯の悪鬼》を2回強化できる《溶岩の投げ矢》を採用すれば、2ターン目に相手 (もしくは自分) の顔面を爆発させる準備は万端だ。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
デッキビルド まつがん
以前のデッキと同様、リスト全体から知能指数の低さが漏れ出る結果となってしまった。「相手が《思考囲い》唱えてきたらどうすんの?」とか「《孤独》構えられたらお通夜では???」といった疑問が出るかもしれないが、当然のごとく爆発するだけである。だが、理性があるふりをする必要がどこにあるだろうか?人類は火を発明することによって他の動物との埋まらない差をつけることができた。逆に言えば、それまでは猿と大差なかったということだ。獣になれ。野生を取り戻せ (?)
◇《悪魔的な客室係》
『ニューカペナの街角』には天文学的なダメージを与えられるカードが存在していたのをご存知だろうか?
《悪魔的な客室係》。このカードは3マナのクリーチャーにあるまじきポテンシャルを秘めている。
何せ、他のクリーチャーを出した分だけパワーが倍になっていくため、たとえば10体出したら1024点ダメージを叩きこめるのだ。
1024点は、脳汁であり魅力的だ。しかし簡単には実現できない。では、どんなハードルがあるだろうか?
簡単に考えつくハードルとしては、デッキに4枚しか入れられないというものだ。《悪魔的な客室係》をコンセプトに据えたとして、肝心の《悪魔的な客室係》を引けないと何かゴミみたいなクリーチャーが1ターンにいっぱい出るだけのゴミになってしまう。
また、他にもタフネス3は《稲妻》で一瞬で落ちてしまうというハードルもある。3マナも払って出したクリーチャーが1マナで焼かれてしまったら思わず最凶死刑囚編が開始して毒手で対戦相手の酸素を奪ってしまうかもしれない。
しかし、私は思いついたのだ。
これらのハードルをクリアできる、奇跡のようなシナジーを。
《新生化》でデッキから直接出せばいいのでは???
これならば本来4枚しか入れられないはずの《悪魔的な客室係》をデッキ内からサーチできる上に、タフネスが4になるので《稲妻》の射程圏から逃れることができる。
しかも《新生化》の賢いところはそれだけではない。「通常3マナの《悪魔的な客室係》が2マナで出せる」ことはもちろん、「初期パワーが2になるので致死パワーまで育てるまでに出す必要のあるクリーチャー数が1体減る」のだ。これは地味にありがたい。
あとは1ターンに《悪魔的な客室係》を出した後に複数体のクリーチャーを出す方法だが、せっかく《新生化》で1マナ少なく出せるようになったので余ったマナで《騒鳴の嵐》を唱えるのが良いだろう。
《新生化》を引けなかった場合は、《授業初日》からの《騒鳴の嵐》で一気に相手を轢き殺すサブプランにもなる。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
デッキビルド まつがん
だが、このデッキには一つの問題があった。
それは、いくら《新生化》からの《悪魔的な客室係》という新しい要素があるとはいえ毎回ストームだと芸がないという点だ。
これにはデッキビルダーとして変なプライドがあるとかそういう話だけではなく、そもそもストームに他のコンボを組み込むと下位互換になりやすいという実際上の問題もある。わざわざ単体除去対策に《否定の契約》を積まないと成立しないコンボよりも、《ゴブリンの電術師》か《遵法長、バラル》がいる状態で《けちな贈り物》を通すだけで勝てるコンボの方が簡単に決まっているからだ。
つまり、《新生化》からの《悪魔的な客室係》を決めるならそのコンセプトにはストームにはない利点が存在しなければならない。
では、実際どのような利点があるだろうか?
私が考えたのは、このコンボが緑を含むコンボであるという点だった。
緑が入るということは、1マナのマナクリーチャーを大量に積んでマナ加速する構造が採用できるということだ。
そして1→3のマナカーブを前提とするならば、入れられるカードがある。
《時を解す者、テフェリー》だ。《新生化》は隙が大きいコンボだが、その点これなら相手の除去やカウンターをケアするのにはうってつけと言える。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
デッキビルド まつがん
1《ドライアドの東屋》
4《エルフの神秘家》
4《下賤の教主》
4《ラノワールのエルフ》
4《貴族の教主》
1《クウィリーオン・レインジャー》
1《野生の朗詠者》
1《炎樹族の使者》
1《隠れた薬草医》
2《悪魔的な客室係》
1《茨角》
4《召喚士の契約》
4《騒鳴の嵐》
4《新生化》
4《異界の進化》
4《時を解す者、テフェリー》
《新生化》の代替パーツとして《異界の進化》も採用し、ついに全く隙がないデッキが完成した……かのように思われた。
だが、このデッキにはまだ欠陥があった。それは、《騒鳴の嵐》に側に替えがきかないという点だ。
そこで私は考えた。《騒鳴の嵐》の他に、《悪魔的な客室係》のためのクリーチャーを供給できるカードはないのか?と。
そしてたどり着いたのが《起源室》だった。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
デッキビルド まつがん
《新生化》を8枚。《騒鳴の嵐》を8枚。ここにきて、ついにコンセプトは完成を見た……かのように思われた。
しかし、私はまだ納得していなかった。そもそも《起源室》が《騒鳴の嵐》になるというのはただの都合の良い妄想だ。実際に《悪魔的な客室係》後に4~5体のクリーチャーを出すためには、《悪魔的な客室係》着地時に出るトークンを抜きにしてもさらに2体のクリーチャーを脇に出す必要がある。それでは要求値がかなり高くなってしまう。
つまり、必要なのは要求値を下げること……すなわち純粋な2枚コンボ性なのだ。
だが、《新生化》と何か1枚を手札に揃えるだけで勝てる……そんなカードが存在するとしたら、さすがにモダン環境が既に壊れてしまっているのではないか。
そのように思いつつも、私は《新生化》の相方となるべきコンボパーツを探した。
そしてその果てに、思いついた……否、思い出したのだ
《海門の嵐呼び》からの《新生化》でそのまま勝てるようにデッキを組めばいいのでは???
《海門の嵐呼び》と《新生化》のコンボは、かつてMTGアリーナのヒストリック環境で活躍したことがある。ヒストリックでは《二重詠唱の魔道士》が使えるため、2枚が揃えば瞬殺だった。他方、モダンでは《二重詠唱の魔道士》は使えないが、《悪魔的な客室係》がその代わりを担えるのではないか……という発想だ。
コピーの《新生化》を解決して出した時点で《悪魔的な客室係》はパワーが2なので、たとえばその後に《新生化》本体でサーチした3マナのクリーチャーがさらに脇に3体のクリーチャーを出すことができるなら、2の5乗でパワー32の《悪魔的な客室係》が爆誕することになり、ボールを相手のゴールにシュゥゥゥーッ!!することが可能となる。
カード2枚、しかもたったの4マナが揃っただけで突然死というのは、実質《欠片の双子》コンボと言っても過言ではない。
だが、たったの3マナでクリーチャー4体分になるクリーチャーなどはたして存在するのだろうか?
これについては、私が探した限り3コストのクリーチャーで最も多くのトークンを出せるのは《武器作り狂》だった。これでは残念ながらパワー32には届かないが、それでもパワー16にはなる。フェッチ+ギルラン環境のモダンなら、これだけでも相手によっては十分致死量になりうる。
また、緑ベースのコンボにできるため《貴族の教主》《下賤の教主》の「賛美」で打点を伸ばせるし、その気になれば1マナ多く用意してフェッチランドからの《ドライアドの東屋》でパワー32も実現できる。
残る問題は、《海門の嵐呼び》《新生化》という替えがきかないコンボパーツをどうやって手札に揃えるか。
しかし、これに関してはすぐに答えを思いつくことができた。
コンボパーツ2種がどちらも2マナなので《交錯の混乱》《ディミーアの浸透者》による「変成」で確実にサーチできるのだ。《貴族の教主》《下賤の教主》でマナ加速した2ターン目の3マナに使い道がなかったところ、非常に噛み合った動きが実現した。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
デッキビルド まつがん
長い迷走の果てに、当初の形からは想像もしなかったような美しいデッキが完成した。「《新生化》から《悪魔的な客室係》を出す」という着想一つとっても、無数の着地点が存在しうる。だから肝心なのは、きちんと問題点を言語化し、その解決をなるべく途中で諦めないことだ。「問題発見→言語化→解決→問題発見……」というサイクルを繰り返していけば、いつかは問題点をすべて解決した終着駅にたどり着けるかもしれないのだ。
◇《吸血鬼の公証人》
《照光の巨匠》、そして《悪魔的な客室係》。ここまで作ってきた2つのデッキに共通するのは、「ワンパン」で勝てるという点だ。
そこで私は、せっかくなので記事内で紹介する3つのデッキコンセプトすべてに共通点を持たせるため、「『ニューカペナの街角』の中で『ワンパン』できそうなカード」をもう1枚探すことにした。
そして、一つの可能性に出会ったのだ。
《吸血鬼の公証人》。このカードはモダンで使用できそうなカードの条件である、「上限がないこと」を満たしている。
だが《吸血鬼の公証人》でワンパンするには、「ライフの回復」もしくは「ライフの喪失」というイベントを、任意の回数実行できなければならない。
そして「ライフの回復」が任意回実行できるということはそれすなわち無限ライフが達成できているということだから、そのような状況に《吸血鬼の公証人》は別に必要はない。
つまり求めるべきは、「ライフの喪失」を任意回実行できるカードということになる。
そんな都合の良いカードがまさかモダンに……あったのだ。
《血の壁》で超パンプできるのでは???
《吸血鬼の公証人》は初期からパワーが2あるので、18点ペイすれば20点パンチできるということになる。どうしようもないドMの所業だが、「ワンパン」は一応クリアしている。
《血の壁》も《吸血鬼の公証人》もパワーが2以下なので、《帝国の徴募兵》でサーチできる。また、場に残った1/1を《異界の進化》すると《吸血鬼の公証人》を直接着地させられて都合が良い。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
デッキビルド まつがん
4《極楽鳥》
1《呪詛の寄生虫》
4《下賤の教主》
1《松明の急使》
4《発生器の召使い》
1《裕福な亭主》
1《漁る軟泥》
1《呪文滑り》
1《嘘の神、ヴァルキー》
4《帝国の徴募兵》
4《血の壁》
4《悲嘆》
4《吸血鬼の公証人》
4《異界の進化》
1《飢餓の潮流、グリスト》
土地からダメージを1点でも食らってしまうと安全に18点ペイできる可能性が下がってしまうため、とてもモダンとは思えないドMマナベースになってしまった。おまけにクリーチャーのラインナップもそれ自体が大分マゾである。組んでいる途中で「この《血の壁》ってカード、《敏捷なこそ泥、ラガバン》に強くね???」とか思ってしまった私はたぶん正気ではない。
■ 3. 終わりに
『ニューカペナの街角』だけで3回分の記事を持たせるのはさすがに不可能ではないか、とも思っていた。
モダンで通用する……いや通用はしないまでも、まだしも遊べそうと思えるカードが、そんなに多く存在するはずがないと。
しかし、必死に探せば意外と見つかるものだ。私たちは普段、新セットのカードを意外ときちんと遊びきれていないのかもしれない。
ちなみに、次の新セットの発売がまだ先のため何と来月もまだ『ニューカペナの街角』を扱う予定である。さすがにデッキを組めずにギブアップするのか、それともまだ見ぬコンセプトを発見することができるのか……それは、来月の私にかかっている。頑張って欲しい (他人事)。
ではまた次回!
クソデッキビルダー。独自のデッキ構築理論と発想力により、コンセプトに特化した尖ったデッキを構築することを得意とする。モダンフォーマットを主戦場とし、代表作は「Super Crazy Zoo」「エターナル・デボーテ」「ステューピッド・グリショール」など。Twitter ID:@matsugan
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