ラマダーン柿沼 MTGエターナルのススメ

エターナルのススメ Legacyデッキ紹介 〜テンポデッキの歴史(2004年〜2008年)〜

公開日: / 更新日:ラマダーン柿沼

みなさんこんにちは。

ラマダーン柿沼です。レガシーでは敏捷なこそ泥、ラガバンが禁止になりましたが、レガシーの環境では現在でも禁止前と変わらずURデルバーがトップメタの1角を占めています。新エキスパンションが登場する度に、新しいカードを織り込めて構成されるURデルバーに代表されるテンポデッキですが、今回はレガシー黎明期から現在に至るまでの変遷について振り返っていきたいと思います。

 

 

レガシー制定当時のテンポデッキ

2004年9月にレガシーというフォーマットがこの世に制定されました。制定当時はランドスティル、2ランドベルチャー、ゴブリンといったデッキが頭角を現す中、UGスレッショルドとUGマッドネスはレガシーのテンポデッキの代表格としてメタの中に君臨していきます。

UGスレッショルドは《敏捷なマングース》と《熊人間》、2種類+αの軽量スレッショルド持ちのクリーチャーを採用し、キャントリップとピッチスペル、《不毛の大地》や《もみ消し》に代表される土地破壊を駆使して押し勝つ事を前面に押し出した絵に描いたようなテンポデッキです。

 

 

 

採用されているカードには効率よく墓地を肥やす《留意》や当時では貴重なキャントリップスペルである《血清の幻視》といった現在では目にすることが無いスペルが採用されていました。またシミックカラーで構成されている為盤面に触れる手段が限られるUGスレッショルドにはメインから《急流》が取られることがある点は非常に興味深く、サイドに《水没》の採用率が高かったことから同型を含む緑系デッキにおける《熊人間》以上のサイズのクリーチャーを意識した構成になっています。また2色構成である利点としてデッキ内にフリー枠が多く、そこで各プレイヤーの特色を出すことが可能になっています。

 

 

一方でUGマッドネスですが、これはトーメントで登場したキーワード能力であるマッドネスを使用したテンポデッキになっています。

『UG Madness』
レガシー選手権06 優勝
プレイヤー:Roland Chang
土地(22枚)

2《溢れかえる岸辺》
2《汚染された三角州》
3《冠雪の森》
3《冠雪の島》
4《熱帯の島》
4《不毛の大地》
4《樹木茂る山麓》

クリーチャー(18枚)

4《日を浴びるルートワラ》
4《アクアミーバ》
4《野生の雑種犬》
2《不可思議》
4《尊大なワーム》

呪文(20枚)

4《渦まく知識》
2《もみ消し》
2《目くらまし》
4《堂々巡り》
4《意志の力》
2《綿密な分析》
2《梅澤の十手》

サイドボード(15枚)

3《青霊破》
3《雹の嵐》
3《虚空の杯》
2《トーモッドの墓所》
2《真髄の針》
2《秘儀の研究室》

マッドネスはその能力を持つスペルが捨てられたときに誘発し、マッドネスコストを支払うことで唱えられる置換能力です。その為、能動的にカードを捨てることができるカード(共鳴者)が必須になります。UGマッドネスではスタン当時最強の2マナクリーチャーとして君臨していた《野生の雑種犬》に加えて、優秀なスペックの《アクアミーバ》の2種類の共鳴者を採用し、マッドネスの運用の安定性を高めています。

 

共鳴者。現在ではPauperに主戦場を移している。

 

採用されているマッドネススペルは《尊大なワーム》、《日を浴びるルートワラ》に加えてほぼ確定カウンターとして機能する堂々巡りが採用されています。どのスペルもマッドネスコストで運用することで、テンポ面で非常に優れています。

 

テンポ面で優れているマッドネス。

 

 

またUGスレッショルドにない利点として不可思議が採用されています。不可思議はマッドネスこそ有していないものの墓地にある時、盤面の自軍のクリーチャーに飛行を付与する能力があります。UGスレッショルドがテンポ面で勝てず盤面に横並びされた際に捲る手段が薄いという点に対し、マッドネスでは不可思議の回避能力でゲームを決めることが可能でした。その一方でUGマッドネスの構築はフリー枠が少なくほぼ固定枠になってしまい採用可能なスペルの枠に上限がありました。

 

 

 

タルモゴイフの登場

2007年5月になると《未来予知》が登場しました。テーマである未来はストーリーだけでなく、マジックというゲームそのものの数百年後までの未来を見通すものとなっており、中には登場時点で意味を持たない記述を持つカードもありました。そんなカードの中に1つ、後にローウィンで登場することとなるプレインズウォーカーというパーマネント名の記載がテキスト中にあるクリーチャーがフィーチャーされることになります。それが《タルモゴイフ》です。

 

タルモゴイフ当時の環境最強クリーチャー

 

登場当時は未来枠のテキスト欄にあるプレインズウォーカーの記載にのみ注目されたカスレアとして100円程度で販売されていたクリーチャーですが、墓地のカードの種類を参照としてサイズが決まる為、2マナながらハイスピードで成長するフィニッシャーとして当時のスタンダードのZOO、BGポックス、グルールビートに採用され出すと瞬く間に環境のトップカードとなりました。タルモゴイフ採用の波は、軽いカードが多く採用されているレガシー環境にも当然の如く波及していきました。その中で最も大きな恩恵を受けたのがUGスレッショルドでした。多くのキャントリップとピッチカウンター、フエッチランドや不毛な大地から構成されるUGスレッショルドは長い時間序盤を展開することがコンセプトであり、その中で早いターンからサイズが大きくなるタルモゴイフは最高のフィニシャーとして君臨することとなります。

 

素早く墓地を肥やせる。

 

またこの時期多くデッキの選択として《タルモゴイフ》を採用することがありました。特に部族デッキではこの傾向は顕著で、これは部族クリーチャーの単体のスペックが《タルモゴイフ》より劣っていた為です。何より《タルモゴイフ》のPT値はタフネスがパワーよりも高い点から、対戦相手の《タルモゴイフ》への対策として採用されていました。その為、この時期のスリヴァー、マーフォーク、ゴブリンといった環境屈指の部族デッキだけに限らず、スタンドスティルといったコントロールにおいても《タルモゴイフ》は採用されており、その隆盛具合が伺えます。一方でUGマッドネスに於いては、《タルモゴイフ》は使う側としても使われる側としても歓迎される存在ではありませんでした。なぜなら、同じ2マナ行域に共鳴者である《野生の雑種犬》と《アクアミーバ》がいた為、デッキ内のマナコストのバランスが崩れてしまったことと、固定パーツの多さから、デッキコンセプト自体の破綻に繋がったことが要因でした。何より、マッドネスに採用されているすべてのクリーチャーが《タルモゴイフ》のサイズに劣っており、着地してしまうと盤面から排除できないことからUGマッドネスはレガシーの環境から姿を消していくこととなりました。

 

 

 

スレッショルドの多色化

未来予知の発売と同年の10月にはローウィンが発売しました。ローウィンでは優良キャントリップである思案が登場し、この頃から《敏捷なマングース》と《タルモゴイフ》のみをフィニシャーに添えて除去に《稲妻》を採用したカナディアン・スレッショルドが登場しました。カナディアン・スレッショルドはタッチUG+Rのスレッショルドデッキです。

カナディアン・スレッショルド
グランプリシカゴ09 ベスト8
プレイヤー:David Caplan
土地(18枚)

3《溢れかえる岸辺》
3《汚染された三角州》
4《熱帯の島》
4《火山島》
4《不毛の大地》

クリーチャー(8枚)

4《敏捷なマングース》
4《タルモゴイフ》

呪文(34枚)

4《渦まく知識》
4《稲妻》
4《呪文嵌め》
4《もみ消し》
4《目くらまし》
4《火》
1《急流》
1《拭い捨て》
4《意志の力》
4《思案》

サイドボード(15枚)

4《撹乱》
1《仕組まれた爆薬》
1《クローサの掌握》
2《紅蓮破》
1《紅蓮地獄》
2《赤霊破》
4《水没》

テンポを最重要視したこのデッキは、固定24枚の1マナスペルに加えて8枚のピッチスペル、8枚の2マナスペル、18枚の土地で構成されており、フリー枠はたった2枚しかありません。この為、この時期のカナディアン・スレッショルドは最も美しい構成のデッキとして、その強さと共に称賛されていました。特徴的な点は《呪文嵌め》が4枚採用されている点にあります。これは環境に散見される《タルモゴイフ》への意識と考えられます。赤をタッチカラーとしている為、盤面に着地してしまった《タルモゴイフ》への対処は苦手ですが、氷と共にテンポ面で効率良くダメージを積み重ねる工夫が見て取れます。

 

最小のマナコストで最高のパフォーマンスを!

 

 

またカナディアン・スレッショルドが数を増やしてくると、赤の代わりに黒をタッチカラーとし、スレッショルドを持つクリーチャーを全て不採用にしたチームアメリカが登場します。

チームアメリカ
世界選手権08 団体戦 ベスト4
プレイヤー:Justin Cheung
土地(20枚)

1《バイユー》
3《血染めのぬかるみ》
2《溢れかえる岸辺》
4《汚染された三角州》
2《熱帯の島》
4《地底海》
4《不毛の大地》

クリーチャー(8枚)

4《タルモゴイフ》
4《墓忍び》

呪文(32枚)

4《渦まく知識》
4《もみ消し》
4《目くらまし》
4《殺し》
4《意志の力》
4《思案》
4《思考囲い》
4《陥没孔》

サイドボード(15枚)

1《青霊破》
3《悪魔の布告》
1《強迫》
2《水流破》
3《クローサの掌握》
1《不忠の糸》
4《トーモッドの墓所》

チームアメリカは、対カナディアン・スレッショルドを強く意識した構成になっています。思考囲いや陥没孔といった能動的に動くカードを多く採用している点はテンポ面でいえばカナディアン・スレッショルドに劣っていますが、ピッチスペルの除去で目くらましをケアしながら《タルモゴイフ》を破壊できる殺しの採用に加えて、《タルモゴイフ》と同じく未来予知で登場した《墓忍び》をフィニシャーに採用し、大型クリーチャーでゲームを決めることができる点がストロングポイントとなっています。

 

墓忍び環境最大級のフィニッシャー

 

チームアメリカのフィニシャーである墓忍びはカナディアン・スレッショルドに対して非常に有効です。その理由はこのマッチアップでは《タルモゴイ》フが4/5までしか育たないことと、汎用除去である《稲《妻圏外である点が挙げられます。飛行クリーチャーであるためダメージを通しやすい点も優秀で、相手の盤面に《タルモゴイフ》と《マングース》が並んでいてもダメージを与えに行けることはこのマッチアップでは重要でした。またその他のデッキとのマッチアップについては《思考囲い》でゲームプランの組み立てが容易な点と《不毛の大地》をケアで持ってきた基本地形を《陥没孔》で破壊することで相手のゲームプランを崩壊させイージーウィンを狙える点はカナディアン・スレッショルドと区別化が図れる特徴です。

 

黒を採用するメリット

 

更に国内ではカナディアン・スレッショルド、チームアメリカの台頭から、それらに有利を付けられるように構成されたWUGスレッショルドも登場しました。こちらは除去に《剣を鍬にを採用し、《タルモゴイフ》や《墓忍び》を除去できるようにした点に加え、フィニッシャーに《秘教の処罰者》を採用しています。《秘境の神秘家》はジャッジメントで収録されたセレズニアカラーの4マナ3/3クリーチャーです。テンポデッキとしては重めですが、スレッショルドで+3/+3飛行の修正が加わり、プロテクション黒を有しているため、《稲妻》や《殺し》に対して除去体制があるだけではなく、《墓忍び》のブロックすら許さない大型クリーチャーです。

 

環境最善の選択を突き詰めてきた

 

対チームアメリカ戦では、《敏捷なマングース》が採用されていないため、《剣を鍬に》は非常に有効な除去であり、クリーチャーさえ捌ければロングゲームに持ち込むことができます。その為、《秘教の処罰者》は重いコストながらも環境で活躍することが可能でした。このようにこの時期のレガシーのメタは常にスレッショルドが中心にあり、そのスレッショルドの中でもメタが回っているという稀に見るメタゲームが展開されていました。

 

あとがき

いかがでしたでしょうか?

今回は黎明期のスレッショルドを当時の変遷と交えつつ紹介させていただきました。現在でも多くの愛好者がいるテンポデッキですが制定当時からずっとメタの中心になっていることを考えると感慨深いですね。次回は2008年アラーラブロックよりお話していきたいと思います。それでは

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