2020年下半期レガシー環境の総括 ~レガシー環境の変遷について~

公開日:ラマダーン柿沼

みなさんあけましておめでとうございます。ラマダーン柿沼です。
年も明けて新たな1年がはじまろうとしています。Mtg界隈でも本年は『カルドハイム』『ストリクスヘイヴン』『Adventures in the Forgotten Realms』と新しいエキスパンションの発売が次々に控えており、環境に新しい風が吹くことが期待されます。
また、『時のらせんリマスター』や『モダンホライゾン2』も発売されることもあり、モダン以下のプレイヤーにとっても一瞬たりとも目が離せない1年になると思います。

今回は昨年度の下半期のレガシー環境の変遷についてお話していきたいと思います。

 

 7月から9月

『基本セット2021』が発売されました。
テフェリーにフォーカスされたこのエキスパンションですが、リリース直後こそ各ターンにインスタントタイミングで能力を起動できる初のプレインズウォーカー《時の支配者、テフェリー》の採用がコントロール系デッキで散見されましたが、それも一過性のブームに過ぎず殆ど見られなくなりました。
その理由は各ターンに能力を起動できるメリットよりも、4マナプレインズウォーカーにして単体でアドバンテージを取れなかった点にあると思われます。
テンポアドバンテージの面では-3能力で相手のパーマネントから自衛が可能ですが、連打ができない為使いにくい上にフェイズアウトという特性上、一時凌ぎにしかならない点でも評価され辛いものでした。

 

一方でほぼ同時に発売された、部族にフォーカスされたリミテッド系エキスパンションである『Jump&Start』ですがこちらはレガシー環境に多大な変革をもたらすカードが登場することになります。そのカードが《アロサウルス飼い/Allosaurus Shepherd》です。

1マナ1/1と貧弱なこの緑のクリーチャーは、自身とコントロール下で唱える緑の呪文を打ち消されなくなる常在型能力に加え、6マナで全てのエルフを5/5にする起動型能力を有しています。自身がエルフのクリーチャータイプであることもあり、レガシーのエルフ1)エルフの部族にフィーチャーした部族デッキ。マナエルフを素早く並べ、《自然の秩序》から《孔蹄のビヒモス》で致死ダメージを与えることで勝利する。また、《緑の太陽の頂点》によるシルバーバレットや《ワイアウッドの共生虫》+《エルフの幻想家》のアドバンテージ戦略等、細かい立ち回りも可能。ではすんなり採用されることになりました。
リリース直後こそ1枚から2枚の採用でしたが、強力なカードであると周知されていく中で現在では3枚から4枚の採用が定石となったカードです。

生産の遅れから発売日が遅れてしまった為、初動こそ12000円程度でしたが、出回りの少なさと需要の高さから一時は価格が30000円前後まで上がりました。

 

それだけ青に対して強力な《アロサウルス飼い/Allosaurus Shepherd》は環境からとあるカードの枚数を減少させる要因になりました。そのカードが《虚空の杯》です。
虚空の杯は上に置かれているカウンターと同数のマナコストを打ち消すアーティファクトですが、1マナでありながら後続のスペルを含め、打ち消しを無効にする能力を有したアロサウルス飼いというアンサーにより虚空の杯を妨害の要に据えている、エルドラージ2)エルドラージの部族にフィーチャーした部族デッキ。《虚空の杯》と《難題の予見者》によるコンボ対策に加えて、多く採用されたソルランドから《現実を砕くもの》等のハイクロックで手早く勝利を目指す。最近では《雲上の座》によるマナランプ戦略も可能なエルドラージポストが主流になりつつある。や赤単プリズン3)《血染めの月》、《虚空の杯》、《罠の橋》といった置物によるロック戦略を主軸としたデッキ。強力なロックは長らくレガシー界を戒めてきたが、《王冠泥棒、オーコ》と《アーカムの天測儀》の登場以降は、ロックしきれず押し切られる場面が多々見受けられることが増えてきたこともあり、数が減ってきている。といったデッキ達を見る機会は減ることとなりました。

 

 

 9月から11月

9月には『ゼンディカーの夜明け』がリリースされました。
『ゼンディカーの夜明け』ではゲーム展開によって使用を選べる裏面が土地であるスペルが初登場しました。これらの両面カードは土地事故におけるゲームへのフラストレーションの緩和を目的に開発されましたが、プレイヤーはこれらのカードを開発陣と異なる考え方でデッキに使用していくことになります。
そのデッキがベルチャー4)土地が1枚のコンボデッキ。《ゴブリンの放火砲》か、致死量の《巣穴からの総出》による圧殺を目指す。デッキの大半がマナ加速により構成されているため1~2ターンキルも可能で、カウンターがないデッキは非常に苦戦を強いられる。とスパイ5)ベルチャーに似たコンボデッキだがこちらは土地の採用枚数が0枚。《地底街の密告人》の起動型能力か《欄干のスパイ》の誘発型能力によりライブラリーをすべて墓地に落とし、《ナルコメーバ》、《戦慄の復活》から《タッサの神託者》で勝利を目指す。です。
どちらのデッキもデッキ内の土地が0枚であることを利用したコンボデッキですが、登場した両面カードの表面は全てスペル、裏面は土地であるためこれらのコンボに流用することが可能でした。

 

特にスパイは初動に黒マナを必要とする為、《類人猿の指導霊》や《Elvish Spirit guide》単体から動けないといったシーンが多々見受けられました。
しかし、両面カードの登場は安定したマナ供給を可能とし、特に3点を支払いアンタップインが可能な《アガディームの覚醒》は1ターン目の黒マナ供給源として特に優秀なカードでした。

どちらのデッキも強化されましたが、モダン、パイオニアに於いてもこれらのデッキが構築可能になったという点ではそれらのフォーマットの方に大きなインパクトをもたらしたと言えます。

また、国内では同エキスパンションに収録された《アクームの怒り、モラウグ》や『jump&sGsG』によりミノタウロスの部族にスポットライトが当たり出したのもこの時期になります。
国内から単を発し、1年前には600円前後の価格だったミノタウルスストンピィにおけるキーパーツである《Didgeridoo》は現在9000円前後の大高騰を見せました。
『ゼンディカーの夜明け』によりレガシーに参入したミノタウルスという部族デッキは2020年のニューフェイスともいえるデッキです。

 

そして『ゼンディカーの夜明け』に於いて最大の恩恵を受けたデッキががデス&タックス6)白単色のヘイトベアーデッキ。《霊気の薬瓶》を利用してインスタントタイミングでのヘイトベアーの展開も可能。また《ちらつき鬼火》はこのデッキの最大の武器であり、パーマネントへの除去避け、クリーチャーのCIP能力の再活用、相手のトークン除去等枚挙にいとまがない。です。
《王冠泥棒、オーコ》の登場以来、最大の強みである《霊気の薬瓶》によるテンポ戦略と装備品によるアドバンテージ戦略を否定され続け、解答を持たないデス&タックスにとっては冬の時代とも言える期間が続きましたが、とうとう光明がもたらされることになりました。その光明こそが、《スカイクレイブの亡霊》です。

 

《スカイクレイブの亡霊》はCip能力で4マナ以下のパーマネントを追放する能力を有した3マナ2/2クリーチャーです。
ナイトメア能力に似た追放能力ですが、《スカイクレイブの亡霊》は本体が盤面を離れても追放したパーマネントは戻って来ません。代わりに追放したコストと同じパワーとタフネスを有した青のスピリットトークンが場にでるだけです。
《スカイクレイブの亡霊》は《王冠泥棒オーコ》に対してパーフェクトな回答であり、同時にレガシー環境において殆どのパーマネントに対抗できる為、《スカイクレイブの亡霊》を得たデス&タックスは一躍、メタの上位に上り詰めることになりました。
元来のナイトメア能力であれば、本体を除去することで追放したパーマネントが盤面に戻るので除去する価値を見出せますが、除去をしても追放したパーマネント以上のリターンが期待できない為、《スカイクレイブの亡霊》は盤面に着地しただけで仕事の殆どを終えている点で優秀といえます。
また、《ちらつき鬼火》等のブリンクと相性が非常に良く、《スカイクレイブの亡霊》のCIP能力にスタックしてブリンクすることで、相手にトークンを渡すことなく2つのパーマネントを追放することが可能です。その為、《ちらつき鬼火》に加えて1マナ軽い《魅力的な王子》を採用するレシピが増えました。

 

また、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》や《森の知恵》に代表されるドローアドバンテージが環境に溢れる背景から《迷宮の霊魂》の採用も増えてきました。
『神々の軍勢』発売直後にデス&タックスでの採用が散見されていたクリーチャーですが、時代背景から他のクリーチャーにシフトチェンジしていった歴史があります。メタの変化からまた同クリーチャーが台頭してきたことはレガシーのメタの変遷の面白さを感じとることができます。

 

 

 12月

発売セットこそありませんでしたが、レガシー環境ではメタが成熟した期間になりました。
当月は国内で「エターナルフェスティバル2020東京・大阪」「TheLastSun」といった年末の大型大会が行われる予定でした。しかし12月初旬の新型コロナ感染症の増加と重なってしまい、当初300人で予定されていた「東京大会」ではプレイヤーが多数キャンセルしたため約200人に、また12月6日以降はイベントの開催を禁止するというWotC社の意向により「大阪大会」と「TheLastSun」は延期の運びとなってしまったことはとても残念に思われます。

そんな中で「エターナルフェスティバル2020」ではElvesが優勝しました。

大会名:Eternal Party 2020 東京 優勝
プレイヤー名:シマダヒロユキ
土地(19枚)

3:《森》
2:《Bayou》
2:《ドライアドの東屋》
3:《樹木茂る山麓》
2:《新緑の地下墓地》
1:《霧深い雨林》
1:《吹きさらしの荒野》
4:《ガイアの揺籃の地》
1:《育成泥炭地》

クリーチャー(28枚)

4:《アロサウルス飼い》
4:《遺産のドルイド》
4:《イラクサの歩哨》
4:《クウィリーオン・レインジャー》
4:《ワイアウッドの共生虫》
1:《樺の知識のレインジャー》
4:《エルフの幻想家》
1:《漁る軟泥》
1:《威厳の魔力》
1:《孔蹄のビヒモス》

呪文(14枚)

4:《垣間見る自然》
4:《緑の太陽の頂点》
3:《むかしむかし》
3:《自然の秩序》

サイドボード(15枚)

3:《思考囲い》
3:《突然の衰微》
2:《外科的摘出》
2:《精神壊しの罠》
1:《溜め込み屋のアウフ》
1:《フェアリーの忌み者》
1:《大祖始》
1:《陰謀団式療法》
1:《暗殺者の戦利品》

 特に印象的だったのがサイドボードの《外科的摘出》と《フェアリーの忌み者》です。

 

昨今ではBUGホガーク7)墓地利用系ビートダウン。素早く墓地を肥やすことで、《蘇る死滅都市ホガーク》や《復讐蔦》による高速ビートダウンが持ち味。クロックにより勝利を目指せない場合も、《狂気の祭壇》+《黄泉からの橋》を利用したライブラリーアウト戦略でコンボデッキのように振舞うこともできる。の隆盛でサイドボードの墓地対策は《虚空の力線》をはじめとする、面で対応できる置物が多く採用されています。
しかし、シマダ氏のリストでは墓地対策はピンポイントで強い上記の二種が採用されています。
これは、エルフというデッキが、現環境の墓地利用の雄であるBUGホガークにスピードで対抗できる点と、《虚空の力線》のデメリットである「3枚以上デッキに投入しないと有効に働かない」「ゲーム中2枚目以降の《虚空の力線》は完全に無駄牌になってしまう」ことに起因していると思われます。

特に無駄牌という点では、エルフはメインから既に2枚(《孔蹄のビヒモス》《威厳の魔力》)あることから、それらと合わせるとドローの質が大幅に下げてしまう要因になります。
また、《外科的摘出》と《フェアリーの忌み者》は現環境では見る機会が少なくなったため、相手からしてみると予想しにくいカードとなっています。

事実、決勝戦の2本目では不利と言われていたマルヤマ氏が操るANT8)マナ加速から《むかつき》や《炎の中の過去》を利用し、大量のスペルキャストから《苦悶の触手》でフィニッシュを決めるコンボデッキ。時代と共に進化してきているデッキで古くは《不正利得》や《天使の嗜み》を利用したタイプも存在した。が相手でしたが、このチョイスが功を奏しました。
《思考囲い》+《外科的摘出》の予想がなかったため、《思考囲い》でカードを抜かれることを見越して1ターン目にキャントリップで仕込み、2ターンキルを見込んだマルヤマ氏に対して、シマダ氏は1t目:《思考囲い》→《苦悶の触手》、返しの相手のターンの《思考囲い》にスタックして《外科的摘出》→《苦悶の触手》で相手の勝ち筋を潰して勝利するという見事な実質1ターンキルを披露してくれました。

 

マルヤマ氏も初手に《思考囲い》を抱えていたため、初手から《思考囲い》をプレイしていれば結果はまた違うものになっていたと考えられます。
またここからは余談と推察になりますが、マルヤマ氏が初手《思考囲い》をプレイしなかったのは3つの理由があると考えられます。

1つ目はマルヤマ氏の初手ハンドが早いターンでゲームを決めに行ける比較的強いハンドだったという点、2つ目はサイドボード後のエルフのキルターンは早くても3~4ターン後と想定した点、3つ目はおそらくここ数か月の試合の中で《外科的摘出》によって負けたゲームがなかった、もしくは当たらなかったという点にあります。

特に2点目はマルヤマ氏にとって大きな誤算になったと思われます。エルフのサイドボード後はハンデス4枚確定+αであることがほとんどであるため、デッキ内に不純物が大幅に増えてしまうためキルターンはメインボードより大幅に遅れてしまうのです。
これらの理由により1ターン目のマルヤマ氏の思案のプレイングは順当だと思われますし、シマダ氏の《外科的摘出》のサイドボーディングには光るものを筆者は感じ取ることができました。今年度のラストを飾るのにふさわしい名試合でした。

 

いかがでしたでしょうか?
2020年のMTGはコロナ禍中もあり紙媒体での大会が大幅に縮小してしまいました。しかし、MTGアリーナやMOでの盛り上がりは留まるところを知らず、今年はスマートフォン対応のMTGアリーナもリリースされる予定になっています。
また、一般大会の減少に伴い、EDHの人気にも拍車がかかっております。

こんな時代ではありますが、今年度もMTGライフをエンジョイしていきましょう!

(画像転載元:マジック・ザ・ギャザリング公式サイト

脚注   [ + ]

1.エルフの部族にフィーチャーした部族デッキ。マナエルフを素早く並べ、《自然の秩序》から《孔蹄のビヒモス》で致死ダメージを与えることで勝利する。また、《緑の太陽の頂点》によるシルバーバレットや《ワイアウッドの共生虫》+《エルフの幻想家》のアドバンテージ戦略等、細かい立ち回りも可能。
2.エルドラージの部族にフィーチャーした部族デッキ。《虚空の杯》と《難題の予見者》によるコンボ対策に加えて、多く採用されたソルランドから《現実を砕くもの》等のハイクロックで手早く勝利を目指す。最近では《雲上の座》によるマナランプ戦略も可能なエルドラージポストが主流になりつつある。
3.《血染めの月》、《虚空の杯》、《罠の橋》といった置物によるロック戦略を主軸としたデッキ。強力なロックは長らくレガシー界を戒めてきたが、《王冠泥棒、オーコ》と《アーカムの天測儀》の登場以降は、ロックしきれず押し切られる場面が多々見受けられることが増えてきたこともあり、数が減ってきている。
4.土地が1枚のコンボデッキ。《ゴブリンの放火砲》か、致死量の《巣穴からの総出》による圧殺を目指す。デッキの大半がマナ加速により構成されているため1~2ターンキルも可能で、カウンターがないデッキは非常に苦戦を強いられる。
5.ベルチャーに似たコンボデッキだがこちらは土地の採用枚数が0枚。《地底街の密告人》の起動型能力か《欄干のスパイ》の誘発型能力によりライブラリーをすべて墓地に落とし、《ナルコメーバ》、《戦慄の復活》から《タッサの神託者》で勝利を目指す。
6.白単色のヘイトベアーデッキ。《霊気の薬瓶》を利用してインスタントタイミングでのヘイトベアーの展開も可能。また《ちらつき鬼火》はこのデッキの最大の武器であり、パーマネントへの除去避け、クリーチャーのCIP能力の再活用、相手のトークン除去等枚挙にいとまがない。
7.墓地利用系ビートダウン。素早く墓地を肥やすことで、《蘇る死滅都市ホガーク》や《復讐蔦》による高速ビートダウンが持ち味。クロックにより勝利を目指せない場合も、《狂気の祭壇》+《黄泉からの橋》を利用したライブラリーアウト戦略でコンボデッキのように振舞うこともできる。
8.マナ加速から《むかつき》や《炎の中の過去》を利用し、大量のスペルキャストから《苦悶の触手》でフィニッシュを決めるコンボデッキ。時代と共に進化してきているデッキで古くは《不正利得》や《天使の嗜み》を利用したタイプも存在した。

北関東の僻地で活動してるMagic: the Gatheringプレイヤー。好きなフォーマットはレガシー。好きなカードをずっと使い続けられるこの環境とプレイを共にする友人が大好き。あと痩せたいです。

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