【MtGエターナルのススメ】 私は7枚貴方は1枚!? 「ナーセットエコーコンボ」
目次
36人のプレインズウォーカーが参戦『灯争大戦』
こんにちはラマダーン柿沼です。
2019年はモダン以下のフォーマットに於いて強力なカードを収録したエキスパンションが次々に発売され、環境は数ヶ月ごとに一変する様相を呈しました。
単を発したのは5月に発売された『灯争大戦』です。
ゲートウォッチのプレインズウォーカーと巨悪であるニコル・ボーラスとの最終決戦を背景にした『灯争大戦』は今まで登場したプレインズウォーカー達を含む36枚ものプレインズウォーカーがカード化されました。
これまでに無い試みとして昨今スタンダードで禁止になった《時を解す者、テフェリー》を始めとした常在型能力を有したプレインズウォーカーが登場した事で環境に存在していたあらゆるデッキが常在型能力を持ったプレインズウォーカーの選択肢を得ることになりました。
また、それから1ヶ月後の6月に発売された『モダンホライズン』ではモダン環境以下にて使用が可能な新規のカードに加え、それまでモダンに於いて使用することができなかったカードが一部収録されることになりました。
その中には《レンと六番》や《死滅都市、ホガーク》、《アーカムの天則儀》といったレガシー以下の環境でもオーバーパワーを有するカードが多数収録されており、昨今のエキスパンションに於けるカードパワーのインフレを強く感じたセットの1つとなりました。
また、ユニークで独創的であり組み合わせ次第で強力なカードとなり得るものも少なくありません。
今回はその中から、《覆いを割く者、ナーセット》と《永劫のこだま》を使用したナーセットエコーコンボについて紹介したいと思います。
《覆いを割く者、ナーセット》に寄せられた期待
『灯争大戦』のスポイラー公開時点で多くのプレイヤーは1枚のプレインズウォーカーに注目していました。それが今回紹介するコンボのパーツの一端を担う、《覆いを割く者、ナーセット》です。
対戦相手のドロー制限の常在型能力を有するこのプレインズウォーカーは、同等の常在型能力を有するクリーチャーである、《トレストの使者、レオヴォルト》のプレインズウォーカー版としてレガシーでは公開直後から期待されました。
青単色での運用が可能な為、特にミラクルコントロール[1] … Continue readingにおけるアドバンテージ兼ロック要素として期待された《覆いを割く者、ナーセット》ではありますが、リリース直後はミラクルコントロールに限らず多くのデッキに採用されていました。
しかし、次第にプレイヤーに認知されていくことで、このプレインズウォーカーが自身で自衛できる手段と忠誠度を上げる能力が無いことから瞬速持ちのクリーチャーからのコンバットで落ちやすかったり、クリーチャーが並んでいる盤面ではコストの重い衝動程度の働きしかできなかったりと《トレストの使者、レオヴォルト》程簡易な運用が叶わず、環境に定着するまでには至りませんでした。
現在では多くの青系のデッキのサイドボードの選択肢の1枚として見られることが殆どになりました。
モダン新コンボの誕生 《一日のやり直し》
プレイヤー名:Jeffrey Fernandes
9:《島》
1:《爆発域》
1:《氷河の城砦》
1:《神聖なる泉》
2:《汚染された三角州》
1:《沸騰する小湖》
1:《ガイアー岬の療養所》
1:《宝石の洞窟》
1:《海の中心、御心》
2:《ヴェンディリオン三人衆》
4:《覆いを割く者、ナーセット》
2:《ドミナリアの英雄、テフェリー》
2:《時を解す者、テフェリー》
4:《原霧の境界石》
4:《ブーメラン》
1:《徴用》
2:《謎めいた命令》
4:《撹乱する群れ》
2:《万の眠り》
1:《流刑への道》
1:《差し戻し》
1:《応じ返し》
2:《呪文貫き》
1:《呪文嵌め》
1:《蒸気の絡みつき》
4:《一日のやり直し》
4:《血清の幻視》
1:《殴打頭蓋》
3:《氷の中の存在》
1:《天界の粛清》
2:《儀礼的拒否》
1:《徴用》
1:《岸の飲み込み》
1:《否認》
1:《流刑への道》
1:《外科的摘出》
1:《アズカンタの探索》
2:《至高の評決》
そんな《覆いを割く者、ナーセット》ですが1枚のカードとの相性に着目した新しいコンボデッキがモダンで開発されました。そのカードが《一日のやり直し》です。
『マジック・オリジン』[2]2014年7月発売に収録されたこのカードは各プレイヤーの手札と墓地を修復し新たに7枚引き直す、手札と墓地のリセットスペルでマナコストと効果、共にかつてのパワー9の内の1枚である《Time Twister》と同等の効果を有しますが、強制的に自分のターンが終了してしまうというデメリットが付いています。
このデメリットの為、新たな7枚のカードの恩恵を最初に相手プレイヤーが受けることになります。
《一日のやり直し》を単体で使用する場合返しの相手のターン次第では大きなリスクとなる為、単体での運用が難しく長い間使用するデッキは環境に存在しない状態でした。
しかし、『灯争大戦』で収録された、《覆いを割く者、ナーセット》は《一日のやり直し》を一線級に押し上げる能力を有していました。
各ターンに相手のドローを1枚に制限する常在型能力を有する、《覆いを割くもの、ナーセット》が盤面に出ている状態で《一日のやり直し》をキャストすると、相手が引く筈のカードを1枚だけに抑えつつこちらは7枚カードを引ける為、6枚ものハンドアドバンテージ差で相手をコントロールすることをゴールに置いたコントロールコンボデッキが誕生することになりました。
上記のレシピでは多くの優秀なバウンススペルを採用することで盤面のコントロールを行います。
《ブーメラン》は土地にも触れることができる為、エンド時に相手の土地を戻すことで構えたスペルのマナを不足させテンポを稼ぐことも可能です。
バウンスは《一日のやり直し》との相性が良く、手札に戻したカードを《一日のやり直し》で混ぜ直すことで確定除去の様な振る舞いも可能です。
また、《時を解す者、テフェリー》の+1能力を使用後に相手のターンに《一日のやり直し》を唱える事でこちらのターンを終了するというデメリットを帳消しにする事が可能です。
単体で弱い《一日のやり直し》ですが、可能な限り使いやすく有効に唱える為の工夫が施されています。
レガシーでも登場したナーセットエコーコンボ 「ストーム型」
《覆いを割くもの、ナーセット》が世に出てから1ヶ月後、『モダンホライゾン』が発売されました。これまでに無かった一線級のカードの収録でモダン、レガシー、ヴィンテージは過去に類を見ない変換期が訪れることになります。そんな環境下でナーセットエコーコンボはレガシーにて産声を上げることになります。そのキーとなったカードが『モダンホライゾン』にて収録された《永劫のこだま》です。
《永劫のこだま》は《一日のやり直し》と同様に、手札と墓地のリセットスペルです。
しかも、デメリットが付いておらず代わりにフラッシュバック付きの6マナに調整されています。
単体で見た《永劫のこだま》は6マナとコストが重い為単純に唱えた場合、そのまま相手にターンをパスするケースが殆どだと思われます。
それを踏まえると《一日のやり直し》よりマナコストが重く使用し辛いと思われますが、重要な点はフラッシュバックの3マナコストでキャストできる点にあります。
墓地からキャスト可能なフラッシュバックは2回のキャストチャンスにより確実なアドバンテージの獲得、カウンターに強いというだけに留まりません。このフラッシュバックを最大限にまで利用できるのが、《ライオンの瞳のダイアモンド/Lion’s Eye Diamond》の存在です。
0マナで生贄に捧げると手札を捨てる代わりに好きな色3マナが発生するこのアーティファクトは手札にある《永劫のこだま》を墓地に置くこととフラッシュバックにかかる3マナを捻出することを同時にクリアする事が可能です。
《覆いを割くもの、ナーセット》と《永劫のこだま》、《ライオンの瞳のダイアモンド》とキーパーツを組み合わせたデッキが以下になります。
プレイヤー名:BiggestBird
2:《島》
4:《汚染された三角州》
4:《沸騰する小湖》
1:《沼》
1:《Tundra》
2:《Underground Sea》
2:《僧院の導師》
4:《覆いを割く者、ナーセット》
4:《永劫のこだま》
1:《冥府の教示者》
4:《思案》
2:《苦悶の触手》
4:《思考囲い》
4:《渦まく知識》
4:《暗黒の儀式》
2:《目くらまし》
3:《納墓》
4:《金属モックス》
4:《ライオンの瞳のダイアモンド》
4:《水蓮の花びら》
1:《蒸気の連鎖》
4:《防御の光網》
2:《残響する真実》
2:《虐殺》
2:《裏切りの対価》
1:《沈黙の墓石 》
3:《外科的摘出》
上記は『モダンホライゾン』登場直後に開発されたナーセットエコーコンボです。
ベースのデッキはANT[3] … Continue readingやTES[4] … Continue readingの様なストーム系デッキから派生しました。
ナーセットエコーコンボだけではなく、マナファクトからの《永劫のこだま》で繋ぎ十分なストームからの《苦悶の触手/Tendrils of Agony》でゲームを決めます。
特徴としては他ストームと比較して多めのマナアーティファクトと2枚の《苦悶の触手》、そしてメインに投入されている《僧院の導師》です。
軽いマナアーティファクトはコンボ始動時や《永劫のこだま》キャスト後のキャントリップやフィニッシュに重宝します。また、《むかつき》が採用されていない為、デッキ内のマナコストを気にする必要が少なく、《苦悶の触手》や《永劫のこだま》といったコンボパーツに枠を多めに割いています。その為、コンボ成立が容易で安定性に優れていると言えます。
また、《ライオンの瞳のダイアモンド》との相性が良い《冥府の教示者》は1枚までに減らされている理由としては、《ライオンの瞳のダイアモンド》から《永劫のこだま》をキャストする想定の方が重要だと考えられている為です。
そしてメインに2枚採用されている《僧院の導師》は他ストームデッキであればサイド枠に候補が挙がるカードですが本レシピではメインの勝ち筋の一つとして採用されています。
本レシピでは大量のマナアーティファクトと《永劫のこだま》からの引き増しやキャントリップから大量のトークン精製が期待でき、ナーセットエコーコンボや《苦悶の触手》ルートに到達できない場合でもゲームを決めることが可能である為採用されています。また、対コンボ戦では《僧院の導師》からのクロックの方がゲームを決めるスピードが速い点でメリットになります。
レガシーでも登場したナーセットエコーコンボ 「ウルザ型」
プレイヤー名:LeMasters
4:《古えの墳墓》
2:《裏切り者の都》
4:《教議会の座席》
7:《冠雪の島》
4:《湖に潜む者、エムリー》
2:《練達飛行機械職人、サイ》
4:《最高工匠卿、ウルザ》
4:《大いなる創造者、カーン》
4:《覆いを割く者、ナーセット》
4:《永劫のこだま》
4:《虚空の杯》
3:《ライオンの瞳のダイアモンド》
4:《水蓮の花びら》
2:《ミシュラのガラクタ》
4:《オパールのモックス》
4:《ウルザのガラクタ》
1:《ライオンの瞳のダイアモンド》
1:《仕組まれた爆薬》
1:《罠の橋》
4:《意志の力》
1:《液鋼の塗》
1:《マイコシンスの格子》
1:《神秘の炉》
1:《魔術遠眼鏡》
1:《トーモッドの墓所》
3:《歩行バリスタ》
同時期にナーセットエコーコンボを取り入れたデッキがもう一つ誕生しました。それが上記のウルザズレガシーと呼ばれるデッキです。
ウルザズレガシーは名前の通り『モダンホライゾン』で登場した《最高工廠卿、ウルザ》をキーカードに軽量のアーティファクトから構成されるストンピィ系デッキの1つです。
最も近い派生デッキの1つであるボンバーマン[5] … Continue readingから白を抜き、代わりに《最高工廠卿、ウルザ》やナーセットエコーパーツを投入して構築されています。
《永劫のこだま》の弱点であるマナコストの重さを軽量アーティファクトと《最高工廠卿、ウルザ》のマナ能力により補うことでキャストを容易なものにします。
また、同時に採用されている《湖に潜むもの、エムリー》は墓地の軽量アーティファクトの再キャストによるアドバンテージの確保とCIP能力でコンボパーツである《永劫のこだま》や《ライオンの瞳のダイアモンド》を墓地に落とすことを目的として4枚投入されています。
基本的な動きの1つとして、《最高工廠卿、ウルザ》の潤沢なマナを使用してツールボックスである《大いなる創造者、カーン》からその都度必要なアーティファクトを持ってくることで相手をコントロールするプランもあります。
その際、《大いなる創造者、カーン》は自身でサイドボードから持ってこれる《マイコシンスの格子》や《液状の塗膜》とロックコンボを成立させます。
特に全てのパーマネントがアーティファクトになる《マイコシンスの格子》は《大いなる創造者、カーン》の常在型能力とあわせると相手の土地のマナ能力を含む起動型能力の一切を封じる強力なロックを形成する為、ナーセットエコーコンボに留まらず勝利手段が豊富なデッキと言えます。
いかがでしたでしょうか?今回は《覆いを割くもの、ナーセット》と手札リセットからなるナーセットコンボの紹介をさせていただきました。
近年のカードパワーが上昇していく中で誕生した2枚コンボですが、特に《永劫のこだま》を使うナーセットエコーコンボはどちらのカードも単体で非常に強力で、コンボ特化のカードではない為、あらゆるデッキで採用できるチャンスがある点も魅力です。
皆様もナーセットエコーコンボを組み込んだデッキを使用してみては如何でしょうか!
最後までご覧いただきありがとうございました!
(画像出典:マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト)
脚注
↑1 | キーワード能力である奇跡を用い、大量のキャントリップから任意のタイミングで奇跡スペルをキャストすることでボードコントロールを行う青白αのコントロールデッキ。 レガシーでは渦まく知識他優秀なキャントリップが使用できる為安定性は高いが、モダン環境ではそれらがない為安定性はやや低い。 |
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↑2 | 2014年7月発売 |
↑3 | むかつきや炎の中の過去を駆使し致死量の苦悶の触手を打ち込むことで勝利するコンボデッキ。多数のドロースペルにより勝ちに到達するまで様々なルートが存在する。 |
↑4 | ANTに似ているが、こちらはメインに燃え立つ願いを採用したタイプのストームデッキ。燃え立つ願いにより、対応力とコンボ成立の安定性が増しているがキルターンは遅くなっている。また、赤がらみのデュアルランドのサーチを優先させなければならないため、不毛の大地に弱い。 |
↑5 | 白単色のコンボデッキ。オーリオックの廃品回収者とライオンの瞳のダイアモンドから無限マナを生成し、歩行バリスタの無限ダメージで勝利を目指す。虚空の盃を採用しているが、相手の虚空の盃x=0に弱い。 |
北関東の僻地で活動してるMagic: the Gatheringプレイヤー。好きなフォーマットはレガシー。好きなカードをずっと使い続けられるこの環境とプレイを共にする友人が大好き。あと痩せたいです。
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