平成仮面ライダー オン・ザ・ロード 第1回 仮面ライダークウガが塗り替えた伝説

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こんにちは、結騎了と申します。普段は『ジゴワットレポート』というブログを運営しておりまして、特撮や映画に関する感想を気ままに綴っています。ただの場末のブロガーです。

この度、この「WEB文芸」のコーナーで、「平成仮面ライダー」と「平成スーパー戦隊」に関する記事を執筆することになりました。題して、『特撮ブロガー結騎了の平成特撮ヒーロー探訪』。それぞれ、『平成仮面ライダー オン・ザ・ロード』『平成スーパー戦隊 レッツ・ゴー!レッツ!』とタイトルを分けまして、今回はまず、仮面ライダーの第1回をお送りします。

『平成仮面ライダー オン・ザ・ロード』は、全4回(予定)で、シリーズ第1作目の『仮面ライダークウガ』から最終作『仮面ライダージオウ』までを追っていく内容になります。とはいえ、全てを取り上げるとあまりに膨大なので、シリーズの歴史で特に重要だったものや転換点となった作品について、ピックアップしていく計画です。

2000年から2019年まで、全20作の仮面ライダーは、果たしてどのように歴史を紡いできたのか。「新しいヒーロー像」「他ジャンルを取り込んで進化していく過程」「イケメンヒーローブーム」「玩具との密接な関係」……。それらを、主に「平成仮面ライダーを知らない人」に向けて綴ってみたいと思います。というよりむしろ、知らない人にこそ知ってほしいので、流行りの表現での「推し」のプレゼンですね。

 

平成仮面ライダーの夜明け

さて、今これを読んでくださっている貴方は、仮面ライダーについてどれほどご存知でしょうか。

仮面ライダーといえば、藤岡弘、さん演じる本郷猛が変身するバッタのヒーロー(改造人間)で、バイクに乗り、ライダーキックを放ち、全身黒ずくめの「イーッ」と叫ぶ集団を倒していく……。もちろん、それが仮面ライダーの原点、今で言う「昭和仮面ライダー」の第1作目『仮面ライダー』です。放送開始は1971年。今から約50年前になります。人気を博した同作は、『仮面ライダーV3』『仮面ライダーX』『仮面ライダーアマゾン』と、続々とシリーズを発展させていきました。

その栄光の初代ライダーから約30年が経過した、2000年。「平成仮面ライダー」の記念すべきスタート、『仮面ライダークウガ』の放送が始まります。1988年に放送された『仮面ライダーBLACK RX』の終了から、約10年ぶりのテレビシリーズ新作です。

実は私は、このテレビシリーズでの新作が途絶えていた約10年間に幼少期を過ごした子どもでした。これがどういうことを意味するかというと、「仮面ライダーなんて、昔の人が観ていた番組でしょ」と、そういうイメージが養われてしまったのです。アラサーになった今でこそ「10年なんてあっという間だ」と愚痴をこぼしながらビールを飲んでいますが、子どもにとっての10年は、生半可な年月ではありません。

仮面ライダーなんていう番組は、当時の私にとって、はるか昔に放送されていた「古い番組」だったのです。

 

『クウガ』、時代をゼロからはじめる

「新番組!仮面ライダークウガ!」。それを知った時は、本当に驚きました。仮面ライダーという「古い番組」が、現代に蘇るというのです。当時、小学生高学年だった私は、第1話の放送を心待ちにしていました。周囲では、「ヒーローもの」から卒業していく同級生が後を絶ちません。『クウガ』がもし自分の琴線に触れなかったら、私も同じ道を辿っていたかもしれません。

そう、『クウガ』は、目ん玉が飛び出るほど面白かったのです!

「なんだこれは!」「こんな番組があるのか!」「あまりにも面白すぎる!」。第1話で心をガッシリと掴まれた私は、毎週日曜朝の放送を心待ちにし、録画したVHSをテープが擦り切れるまで鑑賞していました。そこから約20年の月日が経過した今、日曜の朝に『仮面ライダージオウ』を観ては、HDDに録画した同番組を繰り返し復習しています。なにもかも、『クウガ』のせいです。

 

さて、そんな『仮面ライダークウガ』の概要をご紹介しましょう。

主演は、今や超有名俳優となったオダギリジョー。彼が演じる「五代雄介」という冒険家の青年が、この物語の主人公・仮面ライダークウガです。

敵は、グロンギという古代の種族。グロンギは、長野県で発掘された遺跡から現代に蘇り、ゲームと称して人間を殺害していきます。「制限時間の中で何人を殺害できるか」という、世にも恐ろしい、背筋の凍るゲーム。グロンギは「未確認生命体」と呼ばれ、世間を混乱に陥れます。

しかし、同じ遺跡に眠っていた「クウガのベルト」が、偶然にも五代雄介の体に宿ります。ただの冒険家だった五代は、ひょんなことから、未確認生命体と戦う力を手に入れる……。暴力でしか事態を解決できないジレンマを抱えながら、彼は、皆の笑顔を守るために、仮面ライダークウガに変身するのです。

とはいえ、世間からすれば、仮面ライダーもまた「異形の怪人」。いきなり現れて未確認生命体と戦うクウガは、「正義のヒーロー」ではなく、「仲間割れした怪人」に見えてしまう。そのため、クウガもまた未確認生命体と呼ばれ、パトカーに囲まれて銃撃まで受けてしまうのであった……。

ここが、『クウガ』の最高に面白いポイントです。つまりは、「ヒーロー番組としてのお約束」といったものを徹底的に排することで、作品のリアリティを追求していったのです。

この「リアリティの追求」が、『クウガ』の、そして後の「平成仮面ライダーシリーズ」の、大きな礎になっていきます。

 

リアリティの追求が「反証」となる

『クウガ』は、どのようにリアリティを追求していったのか。

何よりまずは、前述のように、仮面ライダーがヒーローとして認識される前提を取っ払うことで、「仮面ライダーも怪人も世間にとっては等しく脅威である」という点から物語をスタートさせていきます。そして、後にクウガと共に戦っていく警察組織についても、取材に取材を重ねることで、「刑事ドラマ」のような質感を追求していったのです。

例えば、クウガに変身する五代雄介の相棒となる、一条薫という刑事。彼は、長野県警の警備部所属という設定です。これには、スタッフが放送前に行ったという、埼玉県警広報課へのインタビューが反映されています。

怪人が現れて人を殺した場合、やはり殺人課などの部署が対応するのだろうか。答えは、NO。殺人課はあくまで人が起こした事件に対して動くため、人ではない「怪人」に対しては、野生の熊や猿の処理にあたる警備部が動くのが妥当だろう、と。

このように、ともすれば「そこまでこだわったところで誰が気付くのか」とツッコミたくなるような設定についても、『クウガ』はとことん作り込まれました。パトカーのドアの左右どちらを開くかまで、実際に決まっているルールを採用したそうです。他にも、画面が切り替わると、毎回のように「現在時刻」「現在地」のテロップが表示されます。移動時間を考慮してシナリオに盛り込むなど、「作劇上の嘘」をつかないスタイルが徹底されたのでした。

もちろん、ここまで病的なまでにこだわったからといって、それがすなわち「面白い仮面ライダー」になるとは限りません。『クウガ』は、これらの設定や舞台をリアルに作り込むことで、仮面ライダーというフィクションの存在に、果てしない説得力を与えることに成功したのです。

「フィクション」を、可能な限り「リアル」に寄せる。こうすることで、『クウガ』の持つテーマは、ともすればテレビ画面という境界線を越えてくるような、そんな説得力を持つようになりました。

劇中では、クウガが怪人を倒した際の爆風による被害が社会問題のように取り上げられたり、未確認生命体がはびこる世の中で子を産むことに悩む妊婦さんが登場したりします。「仮面ライダーは、敵が現れて、それを倒す物語」。そういった世間一般が持つ安易な「イメージ」に、リアリティ追求による説得力を使って、真っ向から反証を突きつける。仮面ライダーというコンテンツが持つ底力や可能性を、2000年という新しい時代に向けて、どのように主張するのか。

『クウガ』は、作り手の飽くなき「反証の精神」が最大の魅力なのです。

 

ちなみに、『仮面ライダークウガ』は、現在「東映特撮YouTube Official」にて2話までが無料公開されています。

 

受け継がれ、発展していく平成仮面ライダー

『クウガ』は人気を博し、翌年の2001年には、『仮面ライダーアギト』が制作されました。

この『アギト』は、当時流行していた海外ドラマの「連続性の高さ」を輸入することで、謎解きミステリーと複数の仮面ライダーの群像劇を両立させることに成功します。更に2002年には、『仮面ライダー龍騎』が放送を開始。こちらは、「仮面ライダー同士が殺し合うバトルロイヤル」という驚きの物語を打ち出し、話題となりました。

「仮面ライダーは、敵が現れて、それを倒す物語」。子どもをメインターゲットとした番組に向けられる、世間の安易なイメージ。平成仮面ライダーは、そういったものに対して、あの手この手で「反証」を積み上げていったのです。神話の世界観が絡む謎解きのドラマや、仮面ライダーを殺してしまう悪の仮面ライダーの登場。既存の価値観をぶち壊すその根底には、『クウガ』が確立させた「リアリティの追求」が常に生きていました。

「仮面ライダーはこういうもの」という固定概念にとらわれず、作品個々のリアリティを描き込む。これこそが、平成仮面ライダーの大きな原動力と言えるでしょう。

その後、『仮面ライダーファイズ』『仮面ライダー剣(ブレイド)』と、次々と作品数を重ねていく平成仮面ライダーシリーズ。その「反証」の歴史は、2007年の大きなブレイクスルーに繋がっていくのですが、その話はまた次回。『平成仮面ライダー オン・ザ・ロード』、第2回をお楽しみに!

 

 

結騎 了

映画・特撮好きのブロガー。『別冊映画秘宝 特撮秘宝』『リアルサウンド映画部』『週刊はてなブログ』等に寄稿。
ブログ『ジゴワットレポート』 https://www.jigowatt121.com/
Twitter https://twitter.com/slinky_dog_s11

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