ボードゲーム遊び方紹介 “スピンオフ”「竜の夜からの脱出」に行ってきました(後編)
魔法兵士になった私たちは、園内の奥にある大きなホールに集められました。コラボレーションのSEKAI NO OWARIの音楽が流れる中で、まずはルール説明です。
目的は、ミッションを解いて魔法を使い、最終的に竜を倒すこと。制限時間は1時間。すぐに複数の問題が提示されました。
「こっちの半分を解くから。のりりん(私のあだ名)とSさんはこっちを解いて」
Mさんが指示を出してくれます。
5分も経っていないのに、周囲の人たちは次々に移動していきます。なかなか解けずにいたら、ヒントが提示されました。時間オーバーにならないための配慮なのでしょう。
一問だけ分かりませんでしたが、後回しにしても大丈夫とのことで、私たちも出発。外には誰もおらず、ダウンライトが点いていても、道は真っ暗です。
地図を手がかりに、私たちは園内にある複数のスポットに向かいました。大事な場所にはライトが照らされ、問題は写真に撮れるので、場所を移動してから考えても構いません。Mさんの言っていたとおり、分かれて行動したほうが効率はよさそうでした。
スタッフたちは世界観にあわせた特殊衣装を着ているので、すぐに分かります。「この道であっていますか」という質問には丁寧に答えてくださいました。
第2段階をクリアするまでに時間がかかったので、座ってゆっくり解く暇はありません。いつしか、Mさんが論理と先導、Sさんは行動しやすいように補佐、私は解き残しに役割が分かれました。
この問題を解いたら次の場所と進むので、ゲームは園内の一部だけで展開されるのではなく、全体を歩くようになります。走ってはいけません。一方通行になるように誘導されているので、別のパーティーとかち合うことなく、移動はスムーズにできます。「大声で答えを言うな」という注意事項もありましたが、周囲の声を聴く余裕もないまま、ただひたすら目的地に向かって歩いていました。
中盤以降はだいぶ取り返しましたが、残り時間は迫ってきています。おそらくこれが最終問題かもしれないというところで、やっと私たちは近くにあったベンチに座りました。工作のようなことをするために資料を触っていたら、急に感が働きました。
「分かった! 最終地はここかも」
「どうやって解いた?」
Mさんが顔をあげました。いきなり結論だけ言っているので、確かに謎です。
「せ、説明ができないっ」
私たちは、その場所のすぐ近くにいました。
カウントダウンも始まっています。
「行ってみましょう!」
Sさんも立ち上がりました。
3人の魔法兵士が一丸となったと同時に、終了のアナウンスが鳴り響きました。
結局、私たちは、竜を倒せませんでした……。
最初と同じ場所に集められ、答え合わせが始まりました。
どうやら、ミスリードにはまっていたみたいです。
たとえ時間があったとしても、私だけなら、真実には辿り着けそうにありませんでした。
反省会をする時間もないまま、臨時バスの時間がきました。全員ぐったりしていましたが、よく考えたら。
「われわれ、ご飯を食べていなかった」
フィールド型脱出ゲームに参加する際には、必ず食事は取っておきましょう。
1973年生まれ
作家。2007年に宗形キメラ名義で二階堂黎人との合作『ルームシェア 私立探偵・桐山真紀子』で作家デビュー。2009年には『マーダーゲーム』で単独デビュー。近刊は「少女ティック 下弦の月は謎を照らす」(行舟文化)
ボードゲーム好きで『人狼作家』の編集も手がけ、羽住典子名義でミステリ評論活動も行っている。
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