【買取実績】元祖世界線？『宇宙戦艦ヤマト２』DVDメモリアルボックス

公開日：2024年4月25日

1978年10月よりテレビ放送を開始した『宇宙戦艦ヤマト２』のDVD-BOXをお譲りいただきました、ありがとうございます！　

本作および本作放映開始直前に公開された『さらば宇宙戦艦ヤマト-愛の戦士たち-』のストーリー上の違いは、アニメ史においても転換点になる作品だと考えます。少なくとも当時８歳だった自分には大きく混乱したことを覚えています。

『さらば宇宙戦艦ヤマト愛の戦士たち』は1978年８月公開。復興した地球に迫る新たな敵・彗星帝国とヤマトの戦いを描きます。その激しい戦いでヤマトの乗組員は次々と斃れていきます。絶望的状況の中で唯一残った手段として、古代進はヤマトと反物質の身体を持つテレサと共に、超巨大戦艦と相討ちとなります。

その２か月後に始まった『宇宙戦艦ヤマト２』では、彗星帝国との闘いなどの大筋や基本的な骨子は同じでしたが、テレサの設定が超能力を持つ異星人という設定へと変更されます。そしてラストではヤマトおよび古代は特攻せず、テレサが自らの能力を開放して超巨大戦艦を破壊します。この変更によってヤマトは残存、結果として以後も続編が製作されるようになったわけです。古代や雪だけでなく、主要キャラである真田さんも『さらば』では戦死していますが、『２』では生き延びています。

やはり『さらば』で感動の涙を流したファンは、『２』の展開には唖然としましたし、商業主義が見え隠れする以後のシリーズ展開に至っては揶揄の対象となっていきました。とはいえ、もともと『さらば』の後に『２』が放映されたのは、マーチャンダイジング展開などの事情もあります。映画のみでは玩具展開がそこで終わってしまうことになるため、映画公開からのテレビシリーズ展開が必要でした。

第１作は再放送で盛り上がっていったため、玩具を集中して売り出す機会がなかったんですね。もちろんテレビ版と劇場版の小変更は、第１作劇場版でもありましたし、映像化の際には何らかのアレンジがつきものではあります。今なら「劇場版とテレビ版は世界線が異なる」のひとことでああなるほどとなってしまうかもしれません。しかし物語の根幹にかかわるラストの変更は、純粋な子供や純粋なファンにはやはり驚愕の出来事でした。

『さらば』の結末が特攻エンドとなったのは、およそ２時間という限られた枠内で物語を盛り上げる必要性があったという事情がありました。そして当時はまだ戦後30年ちょっと、特攻を賛美することにはスタッフ内でも反発があり、結果としてテレビシリーズでは生存エンドとなりました。たまに洋画などでも、上映中は盛り上がりで気づかなかったけど「ラストの特攻必要あった？」みたいな展開あるじゃないですか。

実際『さらば』のラストにはみんな感動しましたけど、次第に「テレサだけでよかったんじゃない？」というツッコミが入るようになっていきます。超巨大戦艦を倒すにはテレサの反物質の身体（こちら側の物質と接触すると対消滅を起こす）だけで足りますし、ヤマトのエネルギーは特に必要ないんですよね。

とはいえ無事シリーズ化していくことに成功した『宇宙戦艦ヤマト』。結論としては乗組員の世代交代が図られなかったため、人々にも飽きられていくようになります。もちろん本シリーズが人々に与えた影響は大きく、現在もリメイク版がシリーズを重ねています。すでに『さらば』と『２』をモチーフとした『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』が2016年より劇場公開のかたちで展開しており、テレビ放映などを経て2024年３月からは配信サービスも始まっています。『さらば』のラストの意外なかたちでリメイクした結末など、ぜひ両作品を見比べて観てほしいですね。

今回お譲りいただいたDVDメモリアルボックスは2001年の発売。何度か書いていますが、1990年代のLD隆盛期からDVDへとメディアが移行した2010年頭くらいまでは、付属の解説書にかなりの力が入っていました。

本ボックス付属の「DVDメモリアルボックス保完ファイル」も多聞にもれず充実した内容で、前年に発売されたテレビシリーズ第１作のメモリアルボックス付属の「保完ファイル」の続編として作成されています。伊藤秀明による当時の背景を踏まえた編集・解説や、プラモデル記事など、見どころ満載の冊子といえるでしょう。現在本編だけなら配信サイトなどで視聴することも可能となっており、本編から時間を置いてじっくり検証された付属解説書ここそ、今後貴重となっていくかもしれません。