デバッグ・マジック! vol.21 ~『ファイレクシア:完全なる統一』編~
いよいよ今週末に新セット『ファイレクシア:完全なる統一』が世界中で発売 (※日本だけは先週発売だったようだが) となる。
前回ファイレクシアをテーマにした2011年発売の『新たなるファイレクシア』はモダン環境を激変させたほどのカードパワーを持っていた。『ファイレクシア:完全なる統一』も、はたして同様のポテンシャルを有しているのか。
モダン環境の最新情報を追いかけながら、今回も新デッキの開発に勤しんでいくとしよう。
1. 絞り込まれた精鋭たち
2022年12月~2023年1月にかけてのモダン環境は、以下のようなメタゲームで展開していた。
Tier 1 |
Tier 2 |
あらゆる角度から襲いかかるTier上位やローグの脅威を跳ね除け、事実上の一強状態 (※「ジェスカイブリーチラガバン」は「青赤ラガバン」のバリエーションと見なせるため) となった「青赤ラガバン」を、直接対決での相性上少しでも有利なアーキタイプや、速度や強度の面で対抗できるその他の骨太なアーキタイプたちが追いかける構図となった。
これら以外のデッキでは一週だけ活躍することはあれども長期でメタゲームに食い込むのは難しい状況にあり、「ラガバン (フェアミッドレンジ/コンボミッドレンジ)」「装備シュート (コンボアグロ)」「続唱 (コンボミッドレンジ)」の三つ巴が引き続きローグデッキの活躍を抑制する構造となっている。
このような長期停滞環境では「マリガンの精度」「プレイングの精度」「コンバットの精度」「サイドインアウトの精度」といった細部の精度がより重要となるため、とにかく地道な反復練習によって自身の使用デッキへの習熟度を高めていく作業が求められる。
どのデッキを選ぶにせよ100マッチを超える程度の対戦経験を経てからが本番なので、1つのデッキを突き詰めたいという方には (そのデッキが最低限の水準をクリアしている限りにおいては) 向いている環境と言えそうだ。
Modern Challenge 2023-01-14, 1st Place, 7-0
プレイヤー名:LuisMJ
4《ドラゴンの怒りの媒介者》
4《敏捷なこそ泥、ラガバン》
4《帳簿裂き》
「青赤ラガバン」を中心としたフェアな環境に対し、革新的なアプローチをとった「青赤ラガバン」のバリエーションがこの形である。コンセプトのキーになっているのは《死の国からの脱出》で、「青赤ラガバン」では《濁浪の執政》になっている部分が差し替わっている。
《死の国からの脱出》のおかげで主に《ドラゴンの怒りの媒介者》との組み合わせにより、消耗戦の後に《ミシュラのガラクタ》を何度も再利用して手札を補充したり、相手のライフが詰まっていれば《稲妻》を連打したりと、状況に応じた器用かつインパクトの大きなムーブが可能となっており、言わばスケールの大きな《瞬唱の魔道士》のような活躍をする。
Tier上位に対するメタデッキ的なコンセプトとなるため、Tier3以下のデッキに当たると「青赤ラガバン」ほどの安定性は持てないのが難点だが、逆に少人数でのガチ大会などでは要警戒のアーキタイプとなりそうだ。
Modern Challenge 2023-01-28, 2nd Place, 6-1
プレイヤー名:DillanR
1《スラーグ牙》
3《ワームとぐろエンジン》
2《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
『モダンホライゾン2』で新戦力を得たわけではないため、最近では長らくメタゲームの大外に追いやられていた往年の名アーキタイプ「トロン」だが、ここにきてテンプレートに大きく手を加えて環境に適応した形が登場した。
特筆すべきは《大いなる創造者、カーン》の不採用で、上位メタに対して安定して5~60点のアクションではあれどもそれほど決定的なアーティファクトがあるわけでもなく、代わりにサイドボードのスロットを食ってしまうこのカードは、ガチ環境で通用するデッキが絞られてきた現在のモダンのメタゲームでは総合的には足を引っ張る材料になるという判断なのだろう。
特に後手番の勝率改善という課題があったことはサイドボードを見れば明らかであり、メインボードの《歪める嘆き》に加えて0マナの干渉材をしっかりと採用することで「トロンを揃えたけれども追いつかずに負ける」というゲームを減らしたい意思が窺える。固定観念を打ち破り、今この瞬間のメタゲームに必要なカードだけを精度高くきっちり取捨選択した調整力には脱帽の一言だ。
Modern Challenge 32 2023-01-28, 7th Place, 5-2
プレイヤー名:Sandile
『モダンホライゾン2』で登場したインカーネーションのサイクルの「想起」に《儚い存在》を合わせることでETB能力を2回も再利用しつつクロックも残せるというシナジーは早くから注目されていたが、その後それに《発現する浅瀬》が組み合わさったことで、できあがった《孤独》軸の《創造の座、オムナス》コントロールはモダンのメタゲームの上位Tierに長らく君臨していた。
それも《空を放浪するもの、ヨーリオン》の禁止後は勢力を落としていたが、ここにきて《炎族の先触れ》で再現性を担保した超絶ボードコントロールとして再出発を果たしたようだ。
《孤独》と《激情》の両採用によって特に対クリーチャーデッキでは無類の強さを誇る。アンフェアが少ない現在の上位メタならば、活躍を見る機会も増えそうだ。
2. 『ファイレクシア:完全なる統一』でバグを探そう
『ファイレクシア:完全なる統一』は、久しぶりに軽くてしかも強力なカードが多数収録されているセットだ。
既に0マナのアクションがどのデッキにも当たり前のように搭載されているモダンにおいては、とにかくマナコストが軽いことが採用のための絶対条件となる。その点からすると、少なくとも現時点においてはかなり有望と言えるだろう。
とはいえ、油断はできない。どんなにポテンシャルを持つカードであっても、誰かがデッキを組むまでは単なる可能性に過ぎないからだ。
ゆえに、新セットに眠るバグの可能性をデッキという形で結実させることこそがデッキビルダーの仕事となる。
今回も無限大の組み合わせの中から最適な解を求めて、新カードたちをデバッグ (発見・解明) していこう。
◇《完全なる統一》
モダンにおいて「3枚で無限コンボ」はありふれているが、「2枚で無限コンボ」は特にそれが実用レベルとなると貴重な存在と言える。
それでもカードプールが広いだけあって「《サヒーリ・ライ》+《守護フェリダー》」「《詐欺師の総督》+《鏡割りのキキジキ》」「《スパイクの飼育係》+《太陽冠のヘリオッド》」など例をいくつか挙げることはできるだろうが、さらに「クリーチャーが絡まない」という条件が付いたならば、該当するものはなかなか思いつかないのではないだろうか?
《完全なる統一》。自分か自分のパーマネントにカウンターが乗るたびにダメージを飛ばすこのエンチャントは、実はモダンリーガルなとあるカードとの無限コンボが存在するということで、発表時に大きく話題となった。
そのカードとは、《純なる炎の探索》。相手にダメージが与えられるたびにカウンターが乗るこのエンチャントと《完全なる統一》が場に揃えば、ダメージが飛ぶ→カウンターが乗る→ダメージが飛ぶ→カウンターが乗る……と「永久機関が完成しちまったなァァ~!!これでノーベル賞は俺んモンだぜ~!!」の状態になることができるというのである。
ただでさえコンボデッキは脳汁で人の知能指数を溶かすことができるというのに、たった2枚のエンチャントを揃えるだけで脳みそ0グラムでも勝てるイージーウィンデッキが爆誕しそうな気配があるということで、これはデッキを作らないわけにはいくまい。
だがしかし、冷静に考えてみるとこのコンボには大きな欠陥が存在した。それはエンチャント2枚を場に揃えただけでは別に勝たないという点だ。
なぜなら、永久機関が開始するためには「あなたがコントロールする発生源1つが対戦相手1人にダメージを与え」ることで《純なる炎の探索》の上にカウンターを乗せるか、もしくは「パーマネントやプレイヤーのうち1つの上に1個以上のカウンターを置く」ことで《完全なる統一》の誘発条件を満たすかという、そのどちらかを実現しなければならないからである。これではいくらクリーチャー除去が効かない無限コンボとはいっても実用にはほど遠いと言わざるをえない。
けれども、脳汁ダンスパーティーを開催するという子供の頃からの夢をそう簡単に手放せるはずがない。
そこで私は考えたのだ。「2枚のエンチャントを場に揃える」という行動そのものに、必然的に条件達成が付随するようにすればいいのだと。
そう、すなわち。
《信仰の復活》で英雄譚ごとリアニすればいいのでは???
《信仰の復活》は古の名カードである《補充》と同様の効果を持つ「待機」呪文で、2ターン目に「待機」しても4ターン目と早めに唱えられる上に墓地の《純なる炎の探索》と《完全なる統一》を同時に場に出すことができる唯一無二の能力を持っている。
ここで同時に墓地に何らかの英雄譚を落としておけば、「パーマネントやプレイヤーのうち1つの上に1個以上のカウンターを置く」という《完全なる統一》の誘発条件を満たせるので、脳汁確変ゴッドフィーバーが開幕となる。
さらには《当世》のようにその英雄譚自身が墓地肥やし可能なものを採用しておくことで、《信仰の復活》を唱える前段階のアクションにあてることができる。
このような英雄譚としては他に《第三の道の創設》があり、惜しくも《信仰の復活》は唱えることができないものの、モダンにおける《納墓》である《無名の墓》などの呪文をテンポ良く唱えながら墓地を肥やすことができる。
仮に《信仰の復活》を「待機」できなくともこうした墓地肥やしの過程で《信仰の復活》が墓地に落ちれば、前回も活躍した《秘儀の代理者》で墓地から唱えられるので、安心して墓地肥やしに専念できる。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
デッキビルド:まつがん
4《真鍮の都》
1《闇滑りの岸》
1《宝石の洞窟》
4《宝石鉱山》
4《マナの合流点》
2《反射池》
2《氷の橋、天戸》
1《ウルザの物語》
1《湿った墓》
4《秘儀の代理者》
4《絡み森の大長》
4《忌まわしい回収》
4《信仰の復活》
4《無名の墓》
4《叫び角笛》
4《純なる炎の探索》
4《第三の道の創設》
4《完全なる統一》
4《当世》
明らかにコンボパーツ増えてるけど脳みそ溶けちゃったのかな???
《完全なる統一》の強みは「2枚で無限コンボ」にあった。だがモダンの速度感に合わせるためにコンボパーツを墓地から一気に踏み倒すことにして大量の墓地肥やし材が必要となった時点で、その強みは綺麗さっぱりなくなってしまっていたのである。脳汁への欲求が強すぎて知性がミジンコになってしまった例として、読者諸賢には反面教師にしていただきたい。
◇《敬慕される腐敗僧》
『ファイレクシア:完全なる統一』の中で、私が第一感でモダン環境に対して最も大きなインパクトを与えうると思った1枚があった。
《敬慕される腐敗僧》。自分のクリーチャーが呪文の対象になるたびに相手に毒1個を与えるこのカードは、1マナのクリーチャーということも相まってモダン環境での活躍という観点においては極めて有望な1枚である。
何せ自分の呪文で10回対象にとったら相手が死ぬと書いてあるからだ。
とはいえ、「《巨大化》にせよ何にせよ10回も対象にとれるほどの手札とマナがあるならその時点で毒とか関係なく相手は死んでるだろ」と思われるかもしれない。
しかしモダンの広いカードプールには、たった1枚で同じクリーチャーを何度も対象に取れる呪文が存在しているのだ。
「ストーム」呪文で対象に取りまくればいいのでは???
《大地の裂け目》や《ぶどう弾》などの「ストーム」呪文はスタック上にコピーを生成するため、1枚で《敬慕される腐敗僧》の能力を何度も誘発させることが可能となる。
つまり呪文を9回唱えた状態で唱えるだけで即勝利ということで、クリーチャーによる攻撃を一切挟まずに勝てる快感たるや、これならノージル生物学賞受賞間違いなしだ。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
デッキビルド:まつがん
1《森》
1《山》
4《踏み鳴らされる地》
4《血染めのぬかるみ》
4《新緑の地下墓地》
4《樹木茂る山麓》
クリーチャー(10枚)
4《敬慕される腐敗僧》
2《炎樹族の使者》
4《通りの悪霊》
4《敬慕される腐敗僧》
2《炎樹族の使者》
4《通りの悪霊》
4《召喚士の契約》
4《否定の契約》
4《豊穣な収穫》
4《溶岩の投げ矢》
4《大地の裂け目》
4《魔力変》
4《ぶどう弾》
4《ミシュラのガラクタ》
こんなんで呪文9回も唱えられるわけねーだろ!!!
そう、忘れがちだが「ストーム」はマナも手札も必要なため、モダンにおいては《遵法長、バラル》や《ゴブリンの電術師》による呪文軽減のもと《けちな贈り物》で《炎の中の過去》と儀式系呪文をサーチするという手順が発見されたことでようやく成立したくらいのコンセプトである。ゆえに、《召喚士の契約》や《溶岩の投げ矢》が1枚で「ストーム」2回分になりはすれども、それだけで9回も10回も呪文を唱えることは到底不可能なのだ。
だが、手札だけで完結する脳汁マシマシデスティニーコンボをみすみす見逃す手はない。
そこで私は考えた。「ストーム」の数が足りないならば、要求される「ストーム」の値を下げればいいと。
そう、すなわち。
《敬慕される腐敗僧》を2体出せばいいのでは???
《敬慕される腐敗僧》の効果は重複するので、2体出せば必要な「ストーム」の数は半減する。自身が1マナと軽いので、「《敬慕される腐敗僧》+《敬慕される腐敗僧》+《大地の裂け目》」と動いても3マナで十分現実的だ。
ただ《敬慕される腐敗僧》を手札に2枚揃える前提だと、《召喚士の契約》と合わせての8枚体制では心もとない。そこで《エラダムリーの呼び声》は追加の《敬慕される腐敗僧》になりつつ、《大地の裂け目》がないときは《通りの悪霊》をサーチして探しにいけるオプションもある。
また、《目くらましの呪文》は最速プランには貢献しないが、「変成」で《敬慕される腐敗僧》と《大地の裂け目》の両方にアクセスが可能なので、実質両方の増量になる縁の下の力持ちだ。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
デッキビルド:まつがん
1《寺院の庭》
4《宝石鉱山》
4《真鍮の都》
4《マナの合流点》
4《反射池》
1《霊気拠点》
4《敬慕される腐敗僧》
1《炎樹族の使者》
4《通りの悪霊》
4《召喚士の契約》
4《否定の契約》
4《豊穣な収穫》
4《大地の裂け目》
4《目くらましの呪文》
1《沈黙》
4《魔力変》
4《エラダムリーの呼び声》
4《ミシュラのガラクタ》
正直なところ、この形にたどり着いた時点で私としては満足で、あとは記事に載せれば『ファイレクシア:完全なる統一』の発売後に誰かがより洗練させるだろう……と、そう考えていた。
だが、ふとした気まぐれでこのデッキの一人回しをしてみたとき、脳汁どころか強烈な違和感を覚えたことで、「このデッキはまだ完成形に至っていない」と感じるようになったのである。
違和感の正体は、《ミシュラのガラクタ》と《通りの悪霊》が弱いという部分にあった。
それも当然だ。いかに3キルコンボデッキが3ターン目までにマナが余っていないからといって、ランダムな1ドローを多少積み重ねただけでコンボパーツが集まるはずがない。
しかしだからといって、《召喚士の契約》《エラダムリーの呼び声》《目くらましの呪文》に次ぐサーチとなると、あとは《帝国の徴募兵》や《破滅の終焉》などがせいぜいとなってしまう。
他にも《ドライアドの東屋》からの《新生化》や、《トレイリア西部》の「変成」による《召喚士の契約》サーチも考えた。
だが結論としてはマナがかかるサーチはもはや十分で、むしろ問題なのはサーチがかさばってコンボ始動が4ターン目になってしまった場合のコンボ完遂の確実性の方にあった。
《否定の契約》に頼るのもいいが、それも結局手札1枚を使って相手の妨害1枚と交換しているだけで、コンボ自体の要求値は上がってしまう。
ならば、サーチが妨害を兼ねることができれば、コンボ始動が遅れても問題がなくなるのではないだろうか?
そう、つまり。
《イーオスのレインジャー長》だ。
これならば3ターン目に出して《敬慕される腐敗僧》をサーチしつつ、相手の妨害を牽制できる。また、モダンのメタゲームにおいて強力な続唱系アーキタイプ相手にナチュラルに強いのも魅力的だ。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
デッキビルド:まつがん
1《繁殖池》
4《宝石鉱山》
4《真鍮の都》
4《マナの合流点》
3《反射池》
1《燃え柳の木立ち》
1《地平線の梢》
4《敬慕される腐敗僧》
1《野生の朗詠者》
1《繁栄の狐》
4《イーオスのレインジャー長》
1《通りの悪霊》
1《孤独》
4《召喚士の契約》
2《否定の契約》
4《豊穣な収穫》
4《大地の裂け目》
4《目くらましの呪文》
1《はらわた撃ち》
1《沈黙》
4《魔力変》
4《エラダムリーの呼び声》
1《商人の巻物》
大興奮脳汁ストームデッキついに爆誕か!!!???
「Super Crazy Zoo」「エターナル・デボーテ」「ネオブランド」という私の個人的なお気に入りデッキたちの系譜に加えてもいいくらいの、ほとんど0と1だけで構成されつつもきちんと勝利を目指せそうな美しいデッキがここに誕生した。
《虚空の杯》とか《血染めの月》を置かれただけで顔面が爆発しそうという弱点もあるが、たたき台としては十分なデッキに仕上がったのではないかと思う。『ファイレクシア:完全なる統一』で私が最も注目しているカード、《敬慕される腐敗僧》。そのポテンシャルをぜひあなた自身の手で確かめてみて欲しい。
◇《騒音の悪獣》
人が脳汁を分泌するのはどんなときか?
そう、それは圧倒的な速度を体感したときだ。
《騒音の悪獣》。このカードを初めて見たときの私の興奮が伝わるだろうか?
何せこのカードには大量に分泌された脳汁による発電で地球のエネルギー問題を解決できるほどの可能性が秘められている。気分はさながら脳汁の海を2つに割ったモーセだ。
だがしかし、効果を読んだだけでは何がそんなにすごいのか伝わらないかもしれない。
そこで、このカードの効果を私の脳汁フィルターを通して翻訳すると以下のようになる。
「パワー10の《騒音の悪獣》で殴ったら優勝では???」
そう、すなわち。
うおおおおお!!!《ぎらつかせのエルフ》が8枚になったぞ!!!!!
これまでに当連載で作成した「絶対2キルするマン」も「絶対2キルするマン2」も、確かに2キルの可能性はあるものの《強き者の下僕》は手札にもう1枚ドラゴンが必要だったり《絡み森の大長》が絡んだりと要求値が高かった。
だがついに「8枚の1マナクリーチャーをパワー10にして攻撃が通ったら勝ち」という超絶シンプルなコンセプトが成立するようになったのである。これにより、《血清の粉末》とかいう脳内お花畑なご都合カードに頼る必要はもはやなくなったのだ。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
デッキビルド:まつがん
1《森》
1《踏み鳴らされる地》
4《新緑の地下墓地》
4《樹木茂る山麓》
3《霧深い雨林》
3《吹きさらしの荒野》
4《騒音の悪獣》
4《ぎらつかせのエルフ》
4《通りの悪霊》
4《殺戮の契約》
4《否定の契約》
4《変異原性の成長》
4《古きクローサの力》
4《地うねり》
4《厚鱗化》
4《強大化》
4《ミシュラのガラクタ》
命が短すぎるのでは???
だが逆に考えよう。普通のマジックの対戦で得られる脳汁の総量をnとすると、ゲーム終了までにmターンかかったならば、ターンごとの平均脳汁はn/mとなる。この値は分母mが小さければ小さいほど大きくなるので、つまりマジックを2ターンしかプレイしなければ脳汁が凝縮されてお得なのだ。
そう、マジックに3ターン目は必要なかったのである。ぜひ3ターン目を迎えたら心臓が爆発する気概で回してみて欲しい。最高の脳汁体験が待っているはずだ (ただし3ゲームくらいで飽きそう)。
3. 終わりに
『ファイレクシア:完全なる統一』はモダンにおいて面白い新アーキタイプがいくつも生み出せそうな、かなり可能性に満ちたセットとなっている。
『モダンホライゾン2』以降のモダンでは理論上あらゆるターンのあらゆるアクションに対してインタラクション (干渉) を挟むことが可能 (例:クリーチャーに対する《緻密》と非クリーチャーに対する《否定の力》など) となっているため、仮に新デッキができたとしても環境に食い込むレベルにまで達するかは未知数だが、少なくとも挑戦する価値は十分にありそうだ。
将来もし『モダンホライゾン3』が出たときにそこから有望なカードをいち早く見出すためにも、モダンのカードプールに今から習熟しておくに越したことはない。将来への投資と思って、気軽にデッキ作りに挑戦してみて欲しい。
ではまた次回!
クソデッキビルダー。独自のデッキ構築理論と発想力により、コンセプトに特化した尖ったデッキを構築することを得意とする。モダンフォーマットを主戦場とし、代表作は「Super Crazy Zoo」「エターナル・デボーテ」「ステューピッド・グリショール」など。Twitter ID:@matsugan
記事一覧はこちら