新デッキ台頭の兆しも!?『兄弟戦争』リリース後のスタンダードをチェック!!
おっすおっす。
かーむです。
前回の記事では、『団結のドミナリア』発売&ローテーションで大変動したスタンダードの様子をお届けしましたが、今回も新セット発売後のスタンダードの様子をチェックしていきたいと思います。
今回新たに発売された新セットは『兄弟戦争』。
『団結のドミナリア』に引き続き、物語の舞台は多元宇宙の中心であるドミナリアになりますが、現在ではなく約4500年前の過去のお話になります。
1994年に発売されたセット『アンティキティー』の主人公だった工匠ウルザと、その弟ミシュラの間に勃発した大戦争が起こっていた頃のドミナリアが舞台ということで、ストーリー的にも引き続きMTGおじ歓喜のセットとなっております。
さて、ストーリーの話をしていると記事が10万文字じゃすまなくなりそうなのでスタンダードの話に戻りましょう。
いつも通り、新セット後の大会結果をチェック!!
…の前に、前環境の終盤のメタゲームからおさらいしていきましょう。
前環境終期のおさらい
前回の記事では『団結のドミナリア』発売直後の9月上旬までのスタンダードの様子を紹介し、エスパーミッドレンジやグリクシスミッドレンジ、黒単アグロなどとにかく黒いデッキが環境を支配しているところまでをチェックしていきました。
しかし10月10日には黒系ミッドレンジ必携の超高性能除去《食肉鉤虐殺事件》が禁止カードに指定され、環境もテコ入れされたはず。
その後のスタンダードの環境はどのように変化していったのでしょうか。
まずはそこからおさらいしていきましょう。
前回の記事以降、10月~11月ごろのスタンダードイベントの結果をまとめたものがこちらです。
相変わらず黒いミッドレンジが環境を支配しているのだった。(終)
いやいや、上記はあくまでも一般イベントの話。
10月下旬には世界選手権もありました。
世界の強豪たちなら、この環境をブチ破るソリューションとなるデッキを開発してくれていることでしょう。
…11月14日のThe Pizza Box Openの結果見て察してましたけどね。
(TOP8にエスパーとグリクが4人ずつ)
一応決勝ラウンドのメンツも見てみましょうか。
…なるほどっすね~^^
MTG最高峰のイベントである世界選手権でも黒いデッキが環境を支配しているという結果でした。
優勝はグリクシスでしたが、エスパーが32人中22人で支配率は68%強と驚異的な数字。
しかしデッキリストには画一的ではなく、それぞれの使い手によるカスタイマイズやメタゲームに合わせた調整が施されています。
個人的には、カードプールが狭いスタンダードにおいて、この微妙なカスタイマイズや調整にこそ面白さがあると思っています。
たとえば、環境初期のグリクシスミッドレンジでは12~15枚ほどのクリーチャーを採用していましたが、《食肉鉤虐殺事件》の禁止以降はクリーチャー枠を10~11枚にしぼり、《絶望招来》を採用するようになりました。
メインのクリーチャーは《税血の収穫者》4枚、《死体鑑定士》4枚、《黙示録、シェオルドレッド》2~3枚でほぼ固定され、10月16日のThe Pizza Box Openの優勝デッキのような型が主流になったように思います。
サイドは仮想敵により変動がありますが、世界選手権を制したリストでは、エスパーの《夜明けの空、猗旺》を処理できる《ローナの渦》や、追放除去が減ったグリクシスミラーで脅威となる《燃え立つ空、軋賜》などが採用されていますね。
トップメタのエスパーミッドレンジにもリストに違いがあり、以下の3つのタイプに大別されていますね。
1.バランス型
2.クリーチャー増量型
3.脳筋型
1つはクリーチャーが13~15枚ほどに、《かき消し》や《冥府の掌握》といった妨害呪文などの非クリーチャー呪文が20枚前後搭載されたバランス型。
9月末や10月上旬のリストにこのタイプが多いですが、世界選手権決勝ラウンドではKarl Sarap選手もこのタイプを使用しています。
10月中旬あたりからのリストではクリーチャーが17~20枚ほどに増量されたクリーチャー増量型が出回り始め、10月末のスタンダード神決定戦でもこのタイプが複数入賞しています。
世界選手権決勝ラウンドでは、Eli Kassis選手とJakub Tóth選手がともにこのタイプのリストを使用しています。
除去やカウンターは最低限におさえ、相手の回答が尽きるまで豊富に採用されたクリーチャーを展開しつづける攻撃的な構成になっています。
そして11月14日に行われたThe Pizza BOX Openではついに超脳筋エスパーミッドレンジが爆誕。
なんとメインに非クリーチャースペル0枚の肉超大盛りの構成で見事TOP8入賞を果たしています。
《放浪皇》すら入らないとは驚きですね。
全てのクリーチャーが伝説なので《英雄の公有地》を最大限に運用でき、《アーボーグのラタドラビック》までもが採用され「エスパーレジェンド」ともいうべき構成になっています。
非クリーチャー呪文は0ですが、呪文としても運用可能な魂力持ちの土地を8枚採用しています。
いずれも自軍の伝説クリーチャーの数だけコストが軽くなる点もこのリストにマッチしており、手札から捨てる都合上、《賢明な車掌、トルーズ》とも相性が良いですね。
一見すると脳筋のようですが、エスパーらしい嫌らしさはしっかり残されています。
グリクシスやエスパーをはじめとした黒系ミッドレンジが依然として環境を支配しつつも、各アーキタイプのリストもメタゲームに合わせて少しずつ変化していますね。
そしていよいよ、『兄弟戦争』の発売とともに新環境の幕開けです。
そして迎えた『兄弟戦争』
新セット『兄弟戦争』はデジタル(MO、アリーナ)では11月15日に、テーブルトップでは11月18日に発売されました。
『兄弟戦争』の内容をざっくり拾っていくと、まず触れたいのがアーティファクトの多さ。
新メカニズムの「試作」もアーティファクトに関連するもので、試作持ちのアーティファクトクリーチャーは、サイズが小さくなる代わりに本来よりも軽いコストで唱えることができます。
能力はそのままですが、「試作段階のアーティファクトクリーチャーを唱える」ようなイメージでしょうか。
再録メカニズムとしては「蘇生」と「合体」が復活しました。
「蘇生」は蘇生コストを払うことで1ターン限りで墓地からそのカードを場に戻す能力で、『兄弟戦争』ではアーティファクトに割り振られています。
蘇生は起動型能力であり唱えているわけではないので、打消すことはできないので注意です。
「合体」は2016年発売の『異界月』以来約6年ぶりの復活ですね。
以前は合体のハードルのわりに、合体後に除去されたりするとアドバンテージを失ったりするデメリットもあってあまり活躍してなかった印象ですが、今回は構築で活躍するでしょうか。
(個人的にはロマンあって好きなので頑張ってほしい)
新メカニズム、再録メカニズムを携えてスタンダードのカードプールに新たなカードが多数追加されたスタンダード。
これまで環境を支配していた黒系ミッドレンジの牙城は崩されるのか?
それではいよいよ大会の結果を見ていきましょう。
新環境1~2週目
まずは1週目~2週目のイベント結果から。
依然エスパーミッドレンジ、グリクシスミッドレンジ、黒単と前環境の3強が目立ちますね。
グリクシスサクリファイス
一方で新しいデッキもちらほら現れています。
1つ目は11月19日のStandard Challengeでも優勝しているグリクシスサクリファイス。
ラクドスサクリファイスで横展開の要になっていた《鬼流の金床》に、新カード《第三の道の偶像破壊者》が加わり、展開力が大きく向上しました。
似た役割のカードが2種類になったことも大きいですが、《第三の道の偶像破壊者》が生成するトークンもアーティファクトなので、両方揃った時にシナジーがあるのも良いですね。
トークンをずらっと展開したあと、ダメ押しになるのは新プレインズウォーカー《金線使い、サヒーリ》。
プラスから入って次のターンにはー4でアーティファクトクリーチャーを全体強化して打点を倍増させます。
他の能力もプラスで血トークンなどを使ってアドバンテージを稼ぎ、ー2で飛行速攻の1/1トークンを2体生成することもでき、1枚でフィニッシャー、アド源、横展開を担う中核パーツです。
他の新カードとしては、《喉首狙い》や《ミシュラの研究机》などの優秀なアンコモンが脇を固めます。
《兄弟仲の終焉》がクリティカルに刺さるので注意が必要ですが、非常に可能性を感じますし、意外と構築の自由度も高くて個人的にもかなり好みのデッキです。
STANDARD CHALLENGEのものとは違う構築になりますが、僕のチームメイトの茂里選手もグリクシスサクリファイスを紹介していたので、こちらもぜひチェックしてみてください。
二本目の記事が出ました!
兄弟戦争でスタンダードは断然面白くなったのでやってみてください。
イベントがなくてとても残念。
The English version will be posted soon. https://t.co/w2EOQ2nzga— Noriyuki Mori (@kushiro_mtg) November 28, 2022
アゾリウス兵士
続いて目に止まるのはアゾリウス兵士。
『兄弟戦争』で多くの優秀な兵士クリーチャーが追加されたことで成立した部族デッキです。
長く黒系ミッドレンジの天下が続き、アグロなめられ過ぎている感があるスタンダードにおいて、1,2ターン目から次々とアタッカーを出していけるのは良いですね。
ラダーでも当たることがありますが、ミッドレンジミラーだろうと高をくくったキープをして何度かボコられるなどしました。
《先兵の飛行士、ハービン》の全体強化&飛行付与の能力はリーサルにもよく絡みまし、《包囲の古参兵》は打点強化&戦線維持と各マナ域に優秀なクリーチャーが揃っています。
もちろん以前からいる先輩兵士たちも強力。
先手2ターン目《スレイベンの守護者、サリア》からのハメ殺しは相変わらず強力です。
優秀な兵士はまだまだいます。
《天空射の士官》は3/2/3飛行に加えて、殴るたびに1/1兵士トークンを生成するという時点で既に強いですが、展開しながらアドバンテージまで取れるとあって、定着を許せば一瞬でゲームが終わります。
マナフラが負けに直結するアグロデッキで重要なマナフラ受けも十分。
しかもマナフラ受けが打点に直結しているのが良いですね。
展開しながらアドが取れてマナフラ受けも用意されているということで、「強いアグロデッキ」の条件をしっかり満たしています。
色も構成も違いますが、なんだか往年のグルールアグロを思い出しますね。
今後も環境に食い込んできそうな良いデッキだと思います。
新環境3週目
3週目の結果はグリクシスミッドレンジが大暴れ。
めちゃくちゃ流行ってますね。
The Pizza Box: Standard Sliceのメタゲームを見ても数、勝率ともにグリクシスミッドレンジが圧倒的で、エスパーミッドレンジと黒単アグロはトップメタ争いから一歩出遅れてしまった印象。
他のイベントも含めて見てみると、マルドゥミッドレンジや青単、赤単など前環境でも見かけたデッキも顔を出しています。
グリクシスミッドレンジ
それでは新環境でアップデートされたグリクシスミッドレンジのリストを見ていきましょう。
サンプルリストとして、The Pizza Box: Standard Sliceの優勝デッキを載せておきます。
The Pizza Box: Standard Slice 1st Place
プレイヤー:Felipe Rodrigues
4《税血の収穫者》
4《死体鑑定士》
4《黙示録、シェオルドレッド》
各リストを見ると、構成は前環境のものと大きく変わってはいませんがちょっとずつアップデートされています。
エスパーミッドレンジでも同様ですが、例えば2マナの確定除去枠は《冥府の掌握》から《喉首狙い》になっていますね。
特にグリクシスミッドレンジでは黒黒黒黒①を要求する《絶望招来》を唱えるためにダメージランドを大量に搭載しており、土地からのダメージが勝敗に影響してしまうこともあるのでこのアップデートは地味に大きいですね。
《喉首狙い》はライフを気にせず打てる一方でアーティファクトクリーチャーに触ることはできません。
《勢団の銀行破り》は各デッキで使用されていますし、『兄弟戦争』で登場したアーティファクトクリーチャーたちも活躍し始めているので、これからもデッキから《削剥》が抜けることはなさそうです。
クリーチャー枠を見ると、グリクシス自身もアーティファクトクリーチャーを採用しているリストがあり、《黙示録、シェオルドレッド》や《強迫》などの枠を調整して1~2枚試してみている感じですね。
《刃とぐろの蛇》は莫大なアドバンテージを稼ぎだすインパクトがあり、《ファイレクシアの肉体喰らい》はマナ事情に合わせてマナカーブを埋めつつ絆魂と護法でライフレースに貢献してくれます。いずれもこれまでのグリクシスミッドレンジにはなかったオプションですね。
その他の新カードとしては上の方で紹介した軽量全体除去の《兄弟仲の終焉》や、盤面に合わせて器用な働きをしてくれる《ギックスの命令》などが試されていますね。
まだまだリストはバラバラで各自ベストな構成を模索している段階のようなので、これから研究が進んでどのようにリストが変化していくか楽しみです。
白単ミッドレンジ
新環境で台頭しつつあるデッキとしては白単ミッドレンジもあります。
前環境から存在していましたが、今週はグリクシスミッドレンジへの勝率が高かったようで個人的にも注目しています。
The Pizza Box: Standard Slice 3rd Place
プレイヤー:Marco Kollmer
エンチャントとクリーチャーを同時に展開することで、グリクシスミッドレンジの《絶望招来》を有効に使わせないような戦い方ができるのは魅力的ですね。
ボードコントロールが得意な白ということで、クリーチャーデッキ相手でも良い戦いができます。
新カードはふんだんに採用されているわけではありませんが、《軍備放棄》を手に入れたのは大きいですね。
このデッキであれば中盤以降はほぼ1マナでなんでも除去できるようになるうえ、追放なのであとから《死体鑑定士》や《見捨てられたぬかるみ、竹沼》で利用されることもありませんし、《夜明けの空、猗旺》などの死亡誘発持ちのクリーチャーもなんなく処理できます。
定番の《勢団の銀行破り》のほか、《聖域の番人》や《道路脇の聖遺》も採用されており、ロングゲームにもバッチリ対応。
フィニッシャー兼アドバンテージ源の《聖域の番人》は盾カウンターが載って場に出てくるので、グリクシスミッドレンジにも睨みが利きますね。
グリクシス戦は体制がイーブンな状態で中盤戦に入ることができれば有利にゲームを進めやすいのですが、低マナ域に《鏡割りの寓話》のトークンと相打ち以上ができる壁がいないため、3ターン目の《鏡割りの寓話》からペースを持っていかれることもあるので過信は禁物です。
さっそくグリクシス一強になりそうにも見える新スタンダードですが、白単ミッドレンジ以外にもジャンドサクリファイスや赤単アグロなどほかのデッキもメタゲームに食い込める隙を伺っています。
そろそろ始まるチャンピオンズカップのエリア予選サイクル2はスタンダードで行われるということでテーブルトップのスタンダードも盛り上がってきますので、今後のスタンダードのメタゲームがどう転ぶかは注目が集まりますね。
個人的には、このところミッドレンジが暴れているのでアグロやコンボデッキがトップメタになったら面白いなと思い、自分でも色々とオリジナルデッキの構築を試しているところです。
手ごたえのあるデッキができたら、次回の記事やTwitterの方で紹介したいと思います。
それではまた、次回の記事でお会いしましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました!
MTGアリーナの情報を発信する「かーむブログ(https://www.calm-blog.com/)」の管理人。 競技勢でもあり、主な実績は日本選手権2021 SEASON2 7位、BIG MAGIC Summer Challenge5位など。 プレイヤーズツアーへの参加を夢見て日々研鑽中。Twitter ID:@calm_blog