デバッグ・マジック! Byまつがん

デバッグ・マジック! vol.12 ~『ニューカペナの街角』編~

公開日: / 更新日:まつがん

By まつがん

『ニューカペナの街角』、目前に迫る。

今週末の4月29日 (金) には新セット『ニューカペナの街角』が発売となる。

発売前の最新のモダン環境の状況をチェックしながら、モダンで活躍できそうな新カードをしっかりとチェックしていこう。

 

 

■ 1. 再び3強に収束するメタゲーム

 

2022年3月~2022年4月にかけてのモダン環境の様子は、以下のようなものだった。

 

Tier 1
青赤ラガバン
死せる生/ティムール続唱
4Cブリンク/4Cオムナス/エレメンタル

Tier 2
装備シュート
Yawg-Chord
アミュレット

 

Tier 1に関しては、《夢の巣のルールス》禁止前の「グリクシスラガバン/装備シュート/4Cブリンク系」という3強体制とパラレルなものとなっている。すなわち、最優のクロックパーミッション=青赤ラガバン、最害のコンボ=続唱2種、最堅のコントロール=4Cブリンク系といった具合である。

これら3強のマッチアップ相性は高いレベルで拮抗しており、なおかつTier 2以外にはどれも安定した勝率を誇るため、《虚空の杯》の増加などで続唱系が一時的に沈む週があったりすることは考えられても、環境のこの構図自体が崩れることは考えづらい。よって、新セットのカードによって唐突に上位アーキタイプが生み出されたりしない限りは、3強による安定期がしばらく続くと見るのが自然な解釈だろう。

特筆すべきは、Tier 2以下の雑多なアーキタイプについては禁止前と比べてフェアよりもかなりコンボ色が強くなったという点だ。

《夢の巣のルールス》を失ったことによるグリクシスシャドウの後退は、環境における《思考囲い》と《コジレックの審問》の使用率を激減させた。シナジーを分断する性質を持つ手札破壊に対する最も効果的な対策は、単体のカードパワーで勝負すること……すなわちカードパワーの高いミッドレンジの総合力で制圧することだ。だから禁止前の環境においてはコンボよりもフェアが圧倒的に優勢だった。それが禁止によって反転したことで、様々なコンボデッキの地位が相対的に上昇してきているのだろう。

環境が多様なコンボで溢れていることは、コントロールにとっては向かい風となる。鉄壁に見える3強体制に陥穽があるとすれば、一見して脆い続唱2種の部分ではなく、4Cブリンクの対応力の限界こそが意外とそれにあたるのかもしれない。

ともあれ、Tier 1やTier 2に属するアーキタイプのデッキ構造の大要はこの連載でこれまで紹介したリストとそう大差はないため、以下では上記期間に活躍したローグ寄りのデッキタイプを3つほど紹介しておこう。

 

デッキリスト001a

デッキリスト001b

《現実の設計者、タメシ》と《睡蓮の花》によるコンボ。具体的には、《睡蓮の花》が墓地にある状態で白マナ浮きで《現実の設計者、タメシ》を出すと、その時出ている土地の枚数をn枚とした場合2n+1マナを生成できるので、《エラダムリーの呼び声》や《戦争門》から《耕作する巨躯》を出して土地を再設置し、《時を解す者、テフェリー》で再利用するなどして土地を出し入れしながら爆発的にマナを増やしていくことで、最終的には膨大な数がXに代入された《破滅の終焉》でクリーチャーたちを超強化&走らせて勝利する、という手順となる。

サーチカードが大量に入っているためコンボの安定感も高く、除去を構えてくる相手には《時を解す者、テフェリー》《創造の座、オムナス》《不屈の追跡者》などでミッドレンジ然とした振る舞いをするので、見た目のどうにも拭いきれないネタデッキ感とは裏腹に意外にもポテンシャルのあるデッキであり、今後活躍を見る機会が増えてもおかしくないかもしれない。

 

 

デッキリスト002

とにかくありとあらゆる行動がアドバンテージに結びつくようになっており、付き合いきれない相手を《空の遺跡、エメリア》と《太陽のタイタン》による永久リソースによって磨り潰す消耗戦強要型のコントロール。

 《至高の評決》をしっかり4枚搭載している上に《冥途灯りの行進》と《孤独》という8枚のピッチスペルの存在によってどんな角度からでも盤面に干渉できるので、クリーチャーベースのコンセプトでこのデッキの防御を貫くのはかなり難しい。メタゲームを見極めてここぞという舞台で使用デッキに選ぶことができれば大きなリターンが見込めそうだ。

 

 

マルドゥブリンクリアニ
Modern Challenge #12401489 1st Place
プレイヤー:XlperTxT
クリーチャー(23枚)

4《縫い師への供給者
4《不吉な儀式の僧侶
4《歴戦の紅蓮術士
4《悲嘆
1《激情
1《アゴナスの雄牛
2《孤独
3《残虐の執政官

デッキリスト003

カードAとカードB、カードBとカードC、カードCとカードDとでそれぞれ成立するアンフェアなシナジーを搭載し、AとDを一緒に引いた場合などの手札のバラつきについては《歴戦の紅蓮術士》と《鏡割りの寓話》による手札交換でケアをするという、ブリンクシナジーとリアニメイトシナジーとの合成コンセプトデッキ。

《悲嘆》+《儚い存在》のムーブはそれ自体はモダンにおいてトップクラスに強力なものの、ミッドレンジとして運用したときにはデッキに十分なポテンシャルを確保するのが難しかったところがあった。そのジレンマを赤を混ぜ込むことで解消しにかかった形とも言える。こうした合成コンセプトのデッキがメタ上位に長く定着した実績は少ないが、逆に言えば研究が進んでいないアーキタイプと言えるため、まだまだ伸びしろがありそうだ。

 

 

 

■ 2. 『ニューカペナの街角』でバグを探そう

 

今週末に発売となる『ニューカペナの街角』は、いわゆる「弧の3色」、すなわち友好3色をテーマにしたカードセットだ。

だがそれは、《血染めの月》が使えるモダンでは活躍の可能性にそもそもデバフがかかるということをも意味している。現状3色以上のカードでモダンの上位デッキに採用されているのは《創造の座、オムナス》くらいだからだ。

しかしだからといって、『ニューカペナの街角』がモダンに全く影響を及ぼさないかというと、そんなことは考えられない。友好2色のカードもあるし、単色で強力なカードがあるかもしれない。

それに何より、誰も知らないようなカードとまだ見ぬシナジーを形成するようなバグが、どこに眠っているかもわからない。

どのようなカードも、活躍できるかどうかはバグを見出すデッキビルダー次第である……そのことを肝に銘じつつ、新セットをデバッグ (発見・解明) していくことにしよう。

 

◇《墓所細工》

 

『ニューカペナの街角』の新キーワードは「謀議」「犠牲」「奇襲」「団結」と多岐にわたるが、これらの能力はどちらかといえばリミテッド向きで、モダンで即座に通用するものとは言えなかった。

一方それに対し、過去とはいえ既にモダンで通用した実績のあるキーワード能力を持つカードも、『ニューカペナの街角』には含まれていた。

それが「秘匿」だ。

「秘匿」はそのカードの登場時に追放したカードを、条件をクリアすることによってコストを支払わずに唱えてもよいという能力である。その条件はカードによって異なるが一般的にかなり厳しく設定されており、他方でその追放するカードには制限がないため、《引き裂かれし永劫、エムラクール》であってもプレイ可能という凄まじいリターンが得られる点が魅力である。

 

 

『ニューカペナの街角』の5色それぞれに1枚ずつ存在する計5種のサイクル、「秘匿」エンチャントたち。

 このうち白の《大衆蜂起》と青の《盗聴》はそれ自体のマナコストが5マナということもあり、モダンの速度感的にはなかなかに厳しいものがあるが、黒・赤・緑はいずれも3マナのエンチャントであるため、4ターン目に《引き裂かれし永劫、エムラクール》がプレイ可能となる可能性があるということで、これはデッキを作らないわけにはいかないだろう。

 

墓所細工

 

さて、そんなわけで黒の「秘匿」サイクルが《墓所細工》である。

色々書いてあるが3枚削った後に20枚以上あればいいので、要するに「アップキープの開始時、この能力の解決時に墓地が17枚以上」という条件を満たせばいいということになる。インスタントタイミングで墓地を肥やせる手段があるなら誘発にスタックして墓地を肥やすといった小技も使える。

しかし冷静に考えると17枚というのはなかなかに多く、しかも3ターン目の《墓所細工》の設置から4ターン目の開始時に即発動させることを考えるなら、1ターン目の1マナと2ターン目の2マナだけで17枚を削らなければならないことになる。フェッチランドや《通りの悪霊》《ミシュラのガラクタ》などで多少の誤魔化しはきくが、いずれにせよかなり豪快な墓地肥やし能力が必要とされることは間違いない。

では、それほどの墓地肥やしが可能なカードといえば何だろうか?

 

 

私が考えたのは、《面晶体のカニ》《不可思の一瞥》といった正攻法の墓地肥やし手段だった。

「発掘」を活用するという手もあったが、ドローが飛ぶので《墓所細工》自体を引き込みづらくなる。

1ターン目に《面晶体のカニ》を出し、2ターン目にフェッチランドを起動しながら《不可思の一瞥》を唱えれば、それだけで17枚は達成できる。とはいえこれらは4枚ずつしか積めないので、あとはこの動きをベースに代替性のあるパーツでデッキを埋めればいい。

が「秘匿」解除の条件はこれで満たせるとしても、今度は「秘匿」で何を追放するべきか?が問題となってくる。

「秘匿」の強みは《引き裂かれし永劫、エムラクール》でさえ踏み倒せることだ。しかし「秘匿」解除のために墓地肥やしが必須となる《墓所細工》の場合、墓地肥やしで《引き裂かれし永劫、エムラクール》が墓地に落ちるとせっかく肥やした墓地がライブラリーへと舞い戻ってしまいバイツァ・ダストが発動した川尻早人くらい絶望的な状況となってしまう。

つまり《墓所細工》は《引き裂かれし永劫、エムラクール》と共存できないのだ。とはいえ3キルすら当たり前のモダンでは最速4ターン目の《墓所細工》でヌルいカードを踏み倒している暇はない。「秘匿」が解除されたならば、相手がその場でカードを片付けはじめるくらいのインパクトが欲しい。

そのような条件を満たす確実なフィニッシャーといえば何が挙げられるだろうか?

 

 

私が最初に考えたのは《無限への突入》だった。

ターンの開始時に《無限への突入》を唱えると、効果でライブラリーに戻したカードを通常ドローでそのまま引いてライブラリーが0枚になるので、《タッサの神託者》で確実に勝利することができる。

 

 

もちろん《無限への突入》4枚だけだと「秘匿」できる確率が少ないところ、《全知》《輝く根本原理》も合わせて採用することで、より確実に《無限への突入》につなげることが可能となる。

というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!

 

『無限墓所細工』
デッキビルド:まつがん
土地(18枚)

3《島》
2《湿った墓》
4《汚染された三角州》
3《溢れかえる岸辺》
3《霧深い雨林》
3《沸騰する小湖》

クリーチャー(14枚)

4《面晶体のカニ》
4《査問長官》
2《タッサの神託者》
4《通りの悪霊》

呪文(28枚)

4《異世界の凝視》
4《不可思の一瞥》
4《輝く根本原理》
4《無限への突入》
4《墓所細工》
4《全知》
4《ミシュラのガラクタ》

無限墓所細工

※《悪性の疫病》は《墓所細工》

 

 

 

《墓所細工》引くまでマリガンじゃねーか!!!

 

しかも序盤の墓地肥やしで《タッサの神託者》がすべて墓地に落ちてしまったり、《輝く根本原理》で《タッサの神託者》が追放されたりしてしまうとFXですべてを溶かした人の顔になってしまうという致命的な欠陥のおまけ付きであった。

これにより発覚したのは、「秘匿」エンチャントに共通する課題であった。すなわちこれらの「秘匿」エンチャントは3マナのエンチャントと微妙にサーチしづらいカードタイプな上に「秘匿」解放に全力を注ぐ必要があるため、サーチを挟んでいる暇がないという点に特徴がある。

したがって「秘匿」エンチャントでデッキを作る際には、「秘匿」エンチャントを引けなかった場合のサブプランがどうしても必要となるのだ。

だが、このデッキで《墓所細工》を引けない場合のサブプランを搭載するということは、そのサブプランは《墓所細工》と同様に《無限への突入》《全知》《輝く根本原理》のスロットに積んだカードを踏み倒せる必要がある。そんなことができるなら《墓所細工》がなくても既にデッキになっているはずではないか……と、そう思われた。

けれども、違ったのだ。

最初に《無限への突入》を積んでしまったから他のカードによる踏み倒しが不可能に思えただけで、この踏み倒し先のスロットを別の性質のカードに差し替えることで、全く新たな道が容易に切り拓かれたのである。

そう、すなわち。

 

頑強

 

 

高速で肥やした墓地から《頑強》でつよつよクリーチャーを釣ればいいのでは???

 

 

そもそも3ターン目までに17枚の墓地を肥やすエンジンを搭載したデッキなのだから、踏み倒し先を12枚の非伝説クリーチャーにすることで、《頑強》の釣り先をいとも簡単に用意することができるはずなのだ。

 

 

肝心の非伝説クリーチャーの選定だが、《残虐の執政官》《セラの使者》のように既に《不屈の独創力》デッキでタダ出し用として活躍した実績のあるクリーチャーならば、-1/-1カウンターが1個乗ったくらいで支障が出ることはないだろう。

というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!

『墓所細工リアニ』
デッキビルド:まつがん
土地(18枚)

3《島》
2《湿った墓》
4《汚染された三角州》
3《溢れかえる岸辺》
3《霧深い雨林》
3《沸騰する小湖》

クリーチャー(22枚)

4《面晶体のカニ》
2《査問長官》
4《通りの悪霊》
4《セラの使者》
4《残虐の執政官》
4《虚空の選別者》

呪文(20枚)

4《異世界の凝視》
4《頑強》
4《不可思の一瞥》
4《墓所細工》
4《ミシュラのガラクタ》

墓所細工リアニ

※《悪性の疫病》は《墓所細工》

 

《ミシュラのガラクタ》《通りの悪霊》とフェッチランドとのシナジーや《異世界の凝視》により、8枚の《頑強》《墓所細工》を墓地を肥やしながら探すことが可能となる。頭のてっぺんからつま先まで墓地に依存しきっているためサイド後に墓地対策を置かれると「ひんっ」と情けない声を出して投了する羽目になるのが玉にキズだが、サイドに《書庫の罠》と《正気破砕》をフル搭載してサイドからライブラリーアウトにしたら何とかなったりするかもしれない (ならない)。

 

 

 

◇《蔓延する窃盗》

 

さて、お次は赤の「秘匿」エンチャントである。本当は2種以上の「秘匿」エンチャントを同時に搭載してそれぞれがサブプランとして機能すると美しいのだが、「秘匿」の解除条件があまりに違いすぎて2種を同時に満たすデッキが組めないので一個ずつ専用デッキを組んでいくしかない。

 

蔓延する窃盗

 

《蔓延する窃盗》。多色カードを唱えると誘発し、宝物トークン一個を生成した上で5マナ払えば「秘匿」解除と、一見かなり緩い解除条件に見える。

 

魔力変

 

これを見て最初は「3ターン目に設置して4ターン目に《魔力変》唱えたら一発では???天才か???」とも思ったのだが、ここで冷静に《蔓延する窃盗》のテキストを読み直してみよう。

 

蔓延する窃盗

 

 「あなたが多色の呪文を唱えるたび」

 

 「あなたが多色の呪文を唱えるたび」

 

 ……。

 

 …………。

 

 

《蔓延する窃盗》の能力が先に解決しちゃうじゃねーか!!!

 

 

そう、スタックには《魔力変》→《蔓延する窃盗》の誘発型能力という順序で乗るので、解決はその逆順となり、結果《魔力変》からのマナは5マナの支払いにはあてられないことに気が付いてしまったのである。

 

 

そうなると最も軽い「秘匿」解除のためには《野生の朗詠者》や《孵化+不和》などの1マナの多色カードを唱えてから5マナを支払うのが簡便ということになるので、宝物トークンが生成されるにしても5マナある状態からしか仕掛けられないことになってしまう。

さらにその5マナは4色が出せている必要があるため、土地を揃える要求値も地味に高い。これでは《蔓延する窃盗》を設置した次のターンに「秘匿」解除を目指すことは実は見た目以上に難しいと言わざるをえない。

だが、本当にそうだろうか?

5マナを出すのに5ターン目まで待つ必要は必ずしもない。マナ加速をすればいいからだ。

けれどもここで「4色を出す」という条件が邪魔をする。《捨て身の儀式》《発熱の儀式》といったモダンで定番のマナ加速では赤1色しか出せず、間に《魔力変》を噛ませる必要が出てきてしまう。

しかし、私は思い至ったのだ。

「マナ加速をする」「4色を出す」……この2つの条件を一発で満たす、奇跡のようなカードの存在に。

 

 

太陽との交感

 

 

《太陽との交感》でマナ加速すればいいのでは???

 

 

 

《太陽との交感》はマナ加速しながら5色のマナを生み出すので、《蔓延する窃盗》を設置→次ターンに《太陽との交感》から《野生の朗詠者》→浮いた4マナと宝物からのマナで「秘匿」解除という動きが実現できるのだ。

 

 

問題はサブプランだが、《墓所細工》の場合と違って墓地を肥やさないデッキなので踏み倒し先は《引き裂かれし永劫、エムラクール》で構わないことを考えると、「秘匿」による踏み倒し先としても機能する《裂け目の突破》が最適だろう。

また、同じくサブプランとして《太陽の拳》は《太陽との交感》との相性も良く、《蔓延する窃盗》よりも簡単に《引き裂かれし永劫、エムラクール》を唱えることができるじゃあもうそっちだけでいーじゃねーかというのは禁句

というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!

『窃盗エムラ』
デッキビルド:まつがん
土地(20枚)

1《森》
1《島》
1《山》
1《繁殖池》
1《草むした墓》
1《聖なる鋳造所》
1《蒸気孔》
1《踏み鳴らされる地》
1《寺院の庭》
4《霧深い雨林》
4《樹木茂る山麓》
3《沸騰する小湖》

クリーチャー(16枚)

4《極楽鳥》
4《野生の朗詠者》
4《無限に廻るもの、ウラモグ》
4《引き裂かれし永劫、エムラクール》

呪文(24枚)

4《孵化+不和》
4《太陽との交感》
4《裂け目の突破》
4《楽園の拡散》
4《蔓延する窃盗》
4《太陽の拳》

窃盗エムラ

※《ヴァラクートの探検》は《蔓延する窃盗》

《裂け目の突破》があるおかげで《引き裂かれし永劫、エムラクール》が手札に来てしまった場合でも怒りのあまり金剛力士像の顔真似をしなくて済むのが良い点だが、その代わり単体でゴミになるカードが多すぎて手札破壊を撃たれるとケツの裂け目が突破する (?) ことになるかもしれない。お大事に。

 

 

 

◇《八百長試合》

黒赤緑の3種の「秘匿」エンチャントの中でも、最もポテンシャルが高いのが緑の「秘匿」エンチャントだ。

 

 

《八百長試合》。このカードは《墓所細工》《蔓延する窃盗》とは異なり、設置したターンにすぐ「秘匿」解除が目指せるという点に特徴がある。

とはいえ3ターン目に《八百長試合》を設置して即「秘匿」を解除するためには2ターン目までにパワー6のクリーチャーを用意する必要があるため、一見無謀にも思える。

 

狩り立てられた恐怖

 

試しにモダンの2マナ以下のクリーチャーでパワー6以上であって場に残るものを検索すると、やはり《狩り立てられた恐怖》しか出てこない。そもそも2ターン目にパワー6以上のクリーチャーが出せるならそいつで殴れば済むじゃねーかという話であって、わざわざ《八百長試合》を出す必要はどこにもない。

だが、それでも私は諦めたくなかった。《タルモゴイフ》なら頑張れば6/7を目指せるかも……?と、考え始めたそのとき。

私は気が付いたのである。

何も2ターン目に出した時点でパワーが6である必要はないということに。

そう、すなわち。

 

死の影

 

 

《死の影》でいいのでは???

 

 

 

私にとってはSuper Crazy Zoo以来のお馴染みの相棒でもあるこいつならば、1ターン目フェッチギルラン3点ペイ+《思考囲い》 or 《通りの悪霊》2点→2ターン目フェッチギルラン3点ペイだけで1/1で着地させることができる。

だがこれだけでは、仮に3ターン目のセットランドでさらに3点を支払ったとしてもまだ4/4サイズにしかならない。しかも3ターン目のアクションは《八百長試合》で固定されているので、もうこれ以上他にライフを支払える余地はない……と、そう思われるかもしれない。

 

変異原性の成長

 

しかしそこで《変異原性の成長》があれば、《八百長試合》を設置しつつ8/8サイズの《死の影》を盤面に用意することが可能となるのだ。

 

 

《八百長試合》がとにかくパワーの大きいクリーチャーを盤面に定着させることを求めてるので、このデッキのサブプランとしては《苔汁の橋》が最適だろう。土地のスロットでサブプランが作れるというのは限りなく偉い。

また、《エルフの開墾者》は《苔汁の橋》をサーチできる上にすぐにパワーが3となるので《狩り立てられた恐怖》や《死の影》と合わせて《苔汁の橋》の「秘匿」を解除できる。クリーチャーと土地によって即死コンボが完成するさまは、実質レガシーのダークデプスコンボの再来と言っても過言ではない (?)

というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!

『八百長試合』
デッキビルド:まつがん
土地(18枚)

2《沼》
2《草むした墓》
4《新緑の地下墓地》
2《血染めのぬかるみ》
2《湿地の干潟》
1《汚染された三角州》
4《苔汁の橋》
1《ドライアドの東屋》

クリーチャー(24枚)

4《エルフの開墾者》
4《死の影》
4《狩り立てられた恐怖》
4《通りの悪霊》
4《約束された終末、エムラクール》
4《引き裂かれし永劫、エムラクール》

呪文(18枚)

4《変異原性の成長》
4《思考囲い》
2《コジレックの審問》
4《変わり樹の共生》
4《八百長試合》

八百長試合

※《蟻走感》は《八百長試合》

「秘匿」の初出となった『ローウィン』土地と最新の「秘匿」カードが同居する大変にエモいデッキとなったのだが、はたして現代モダンが《狩り立てられた恐怖》とかいう大きすぎるデメリットを抱えた舐めたカードを許してくれるのかは定かではない。そもそもそれ以前に《引き裂かれし永劫、エムラクール》の「滅殺6」で相手のパーマネントを吹き飛ばそうとしているのに先んじて相手に2個もパーマネントを献上する必要があるという究極に頭の悪い矛盾が存在しているのだが……そんな正気のツッコミをしているようでは狂気の一歩手前にあるはずの誰も見たことのない素晴らしい着想には至ることはできない。そう、新しいデッキを作る際には頭は悪くなり得なのである。

 

 

 

■ 3. 終わりに

 

『ニューカペナの街角』は一つ前の『神河:輝ける世界』に比べると一見地味だが、磨けば光る可能性のあるカードもちらほら見受けられ、噛めば噛むほど味が出るスルメのようなセットだ。

発売直後に大衆が決めたカードの評価が、セット終盤でのそれと必ずしも一致するわけではない。まずはデッキを作ってみて、自らスペックを確かめてみるといった作業が肝心なのだ。

ではまた次回!

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