エターナルのススメ Legacyデッキ紹介 〜ハイタイド(High tide)の魅力〜
みなさんこんにちは。ラマダーン柿沼です。
2月も終盤になり、『神河:輝ける世界』の新カードを使用したデッキも目にする機会も増えてきました。特に統率者デッキに入っている《河童の砲手》は発売と同時に注目を集め、サルベイジャーコンボ、8cast、親和といったアーティファクトを多用するデッキにとってクロックの華と言っても過言ではない働きを見せています。
今回紹介するお話はそんな《河童の砲手》を使用したデッキ…では無く、筆者の最も好きなレガシーのコンボデッキであるHigh tideについて紹介したいと思います。
High tideの歴史
《High tide》は1994年11月に発売されたフォールンエンパイアにおいて収録された青の1マナのインスタントのカードです。フォールンエンパイアのレアリティはアンコモン1、アンコモン3、コモン1に分けられており、《High tide》はその中でコモン1に分類されておりこれは現在のコモンに当たるレアリティになります。
当時はまだ色ごとの役割が曖昧なことが多く、《High tide》も青でありながらターン終了時まで島から出るマナを青1マナ追加して加えるという、現在の緑の役割であるマナ加速を青のインスタントで表現したヘンテコなカードとして登場しました。登場した当時は《High tide》と相性の良いカードが少なく、出したマナから勝利に繋がるようなデッキが構築されなかった為《High tide》自体見向きもされることがありませんでした。
そんな《High tide》ですが、1998年になるとエクステンデッドのデッキで注目を集めることになります。それがハイタイドモマです。
プロツアーローマ98 ベスト4
プレイヤー:Frederico Dato
フォーマット:エクステンデッド
(リバイズド・エディション~第5版、ザ・ダーク~ウルザズ・サーガ)
22 《島/Island》
4 《時のらせん/Time Spiral》
4 《天才のひらめき/Stroke of Genius》
4 《転換/Turnabout》
4 《High Tide》
4 《衝動/Impulse》
4 《直観/Intuition》
4 《意志の力/Force of Will》
4 《秘儀の否定/Arcane Denial》
3 《精神力/Mind Over Matter》
2 《商人の巻物/Merchant Scroll》
1 《撤回/Rescind》
3 《撹乱/Disrupt》
3 《対抗呪文/Counterspell》
3 《水流破/Hydroblast》
2 《マナの網/Mana Web》
2 《幻視の魔除け/Vision Charm》
2 《撤回/Rescind》
当時隆盛を奮っていた環境最大勢力のデッキであるMoMaはエクソダスに収録された《精神力》とウルザズサーガに収録された《トレイリアのアカデミー》を主軸に、《水蓮の花びら》や《魔力の櫃》といった軽量アーティファクトから大量のマナを展開し、《天才のひらめき》のドローに変換することで勝利まで繋ぐコンボデッキです。
しかし、安定性の高さとゲームスピードの速さからスタンダードからは禁止が相次ぎ、同時にそれはエクステンデットでのMoMaに於いても同様に波及しました。当時のエクステンデットでは《トレイリアのアカデミー》や《魔力の櫃》といったマナ加速の源が禁止されたことで《精神力》のキャスト&コンボを担うスペルとして《High tide》に白羽の矢が立ちました。また、1999年のグランプリウィーンでは現在のレガシーで使われているSolidarityの前身となるデッキをKai Buddeが使用して優勝しています。こちらのデッキではレガシーで禁止カードに指定されている《大あわての捜索》をマナ加速兼ドローとして採用しています。
プレイヤー:Kai Budde
フォーマット:エクステンデッド
(リバイズド・エディション~第5版、ザ・ダーク~ウルザズ・レガシー)
22 《島/Island》
4 《時のらせん/Time Spiral》
4 《天才のひらめき/Stroke of Genius》
4 《転換/Turnabout》
4 《High Tide》
4 《衝動/Impulse》
4 《直観/Intuition》
4 《意志の力/Force of Will》
4 《秘儀の否定/Arcane Denial》
3 《精神力/Mind Over Matter》
2 《商人の巻物/Merchant Scroll》
1 《撤回/Rescind》
3 《撹乱/Disrupt》
3 《対抗呪文/Counterspell》
3 《水流破/Hydroblast》
2 《マナの網/Mana Web》
2 《幻視の魔除け/Vision Charm》
2 《撤回/Rescind》
レガシーでのHigh tide
2004年にレガシーが公式より制定されるとHigt tideを用いたデッキも環境に現れはじめました。
しかし、1998年当時の様に制定と同時に《トレイリアのアカデミー》や《魔力の櫃》は禁止リストに挙がっており、ハイタイドモマのデッキの根幹を成す《精神力》自体も禁止されていた為、完全なチェインコンボとして登場しています。限られたカードの中、レガシーの「High tideデッキ」が成立できたのは、スカージで登場した《思考停止》によるところが大きく、このカードのお陰で《精神力》+《天才のひらめき》をキャストする為の大仕掛けが不要となりました。
そんな黎明期レガシーの《High tide》を用いたデッキですが構築の差異こそあるものの、2種類のデッキに大分することができます。それが”Spring tide”とその派生である”Solidarity”です。
プレイヤー:Oliver Oks
フォーマット:レガシー
12 《島/Island》
4 《汚染された三角州/Polluted Delta》
2 《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》
2 《思考停止/Brain Freeze》
4 《渦まく知識/Brainstorm》
2 《狡猾な願い/Cunning Wish》
1 《残響する真実/Echoing Truth》
2 《洞察のひらめき/Flash of Insight》
4 《意志の力/Force of Will》
4 《High Tide》
4 《衝動/Impulse》
4 《瞑想/Meditate》
2 《選択/Opt》
2 《のぞき見/Peek》
4 《差し戻し/Remand》
4 《Reset》
3 《転換/Turnabout》
4 《青霊破/Blue Elemental Blast》
3 《撹乱/Disrupt》
1 《もみ消し/Stifle》
1 《蒸気の連鎖/Chain of Vapor》
1 《天才のひらめき/Stroke of Genius》
1 《ガイアの祝福/Gaea’s Blessing》
1 《転換/Turnabout》
1 《誤った指図/Misdirection》
1 《金言/Words of Wisdom》
1 《思考停止/Brain Freeze》
この2つのデッキの違いはフィニッシュのタイミングに違いがあります。主に《フェアリーの大群》や《断絶》を用いてマナ加速し、《思案》や《血清の幻視》といった掘り下げられる枚数の多いキャントリップを多く採用している関係でソーサリータイミングでのフィニッシュを目指す”Spring tide”に対して、”Solidarity”は相手のドロー後にフィニッシュを決める必要があります。このフィニッシュタイミングの違いは”Solidarity”が採用しているスペルである《Reset》に関係してきます。
《Reset》はLegendの青ダブルシンボルのインスタントで相手のアップキープの後にしか唱えらません。効果は自分の土地を全てアンタップ状態にします。同様の効果である《転換》が4マナなのを考えると破格のマナコストで同様の効果を得られますが、相手のアップキープの後という表現は通常であればドローステップであり通常ドローはスタックを用いない関係で相手のドロー後に初めて《Reset》を唱えられる優先権が回ってきます。
即ち、2マナ少ない代わりに相手の手札が1枚増えた状態でコンボスタートを開始しなければならない転換と要約できます。しかしながら、《Reset》のコストパフォーマンスは破格であり同じターンにキャストする2枚目以降の《Reset》にデメリットは全く無く、島3枚からでも安定してフィニッシュを迎えられる点で《転換》より優れていると言えます。
そんな”Solidarty”と”Spring tide”ですが、2011年1月の禁止改訂で《時のらせん》が解禁されたことで構築が大きく変わることになります。
《時のらせん》は6マナのソーサリーで《time twister》と同等の効果を得ることができます。またその後土地を6つアンタップする効果も付いている為、フルタップで動いても、フレッシュな7枚の手札をそのまま使用することが出来るので、チェインコンボである「High tideデッキ」にとって最高の相性を発揮します。
その一方ソーサリーである為、”Solidarity”には時のらせんを採用することが出来ず、安定性と強力な効果を持つ時のらせんを得た”Spring tide”の方が、今後のレガシーでのハイタイドデッキの主流となっていきます。またこの頃より《時のらせん》を採用した”Spring tide”の事を”Spiral tide”と呼ぶ様になりました。
そんな時のらせんを得た”Spiral tide”ですが、2012年頃よりSCG Legacy Open等で活躍したFeline Longmoreによって更に脚光を浴びることになります。生粋の”Spiral tide”プレイヤーである彼女は幾度となくLegacy Openに入賞したことで”Spiral tide”は一線級のデッキとして認知されました。彼女のプレイングは現在でもyoutubeやニコニコ動画に残っているので参考にしてみるのもいいと思います。その後もHigh tideを用いたデッキは《炎の中の過去》を搭載したPast型や、《Candelabra of Tawnos》をフル投入したカンデラ型等様々なバリエーションを得て今日に至ります。
バリエーションも様々
Spiral tideの回し方
プレイヤー:Iwouldliketorespond
フォーマット:レガシー
12 《島》
1《溢れかえる岸辺》
1 《霧深い雨林》
1 《汚染された三角州》
2 《虹色の眺望》
1 《沸騰する小湖》
4 《商人の巻物》
4 《思案》
4 《定業》
4 《時のらせん》
4 《渦まく知識》
3 《狡猾な願い》
3 《狼狽の嵐》
4 《意志の力》
4 《High Tide》
1 《直観》
1 《否定の契約》
3 《予報》
3 《転換》
1 《否定の契約》
1 《転換》
1 《青の太陽の頂点》
1 《思考停止》
2 《相殺》
2 《激しい叱責》
1 《否定の力》
1 《墓掘りの檻》
1 《断絶》
1 《外科的摘出》
2 《テフェリーの世界》
1 《拭い捨て》
現在に於いて最もポピュラーな「High tideデッキ」が先に登場した”Spiral tide”です。”Spiral tide”の立ち上がりは非常にゆっくりとしたものになります。1ターン目〜3ターン目までは《渦まく知識》や《思案》、《商人の巻き物》等でハンドを整えていきます。
序盤は手札を整えて…
最速3ターン目にコンボを始動できるのですが、必須パーツは3枚の《島》と《High tide》、《転換》、《時のらせん》の3枚になります。
基本の3枚セット
1マナから《High tide》、2つの《島》から4マナを捻出して転換、アンタップした3枚の《島》から6マナを捻出して《時のらせん》の流れがSpiral tideの動きの基本形になります。注意する点は《時のらせん》が通ってしまうと、相手の手札も7枚に補充されてしまう点です。相手が新たに引いた7枚の中に妨害があることも加味して、アンタップ後にキャントリップで足りないパーツを探しに行ったり、《狼狽の嵐》を構えるマナを考慮した上で仕掛けに行きましょう。
時のらせんキャスト後も考えて
また《High tide》の効果は重複するので紙でプレイする際は《High tide》のキャスト回数を《島》の上にサイコロを乗せてカウントすることをお勧めします。《時のらせん》を撃つたび墓地がリセットされるので墓地の《High tide》の枚数を参照できす何回《High tide》を撃ったか分からなくなることがあります。マナ計算、ストームカウント、ハイタイドカウントを明確にしてジャッジからの警告を避けるよう心がけましょう。
気を付ける事で重要な点で言えばやり直しコンボの《船殻破り》には注意が必要です。ソーサリータイミングで登場する《覆いを割くもの、ナーセット》とは異なり、インスタントタイミングで着地する《船殻破り》はケアが難しく、相手の盤面に3マナ立っていたら容易にコンボに走らない様にしましょう。
ドロー妨害は天敵!
あからさまに3マナ立ててプレイしてくるコントロール相手には《狡猾な願い》で《断絶》をサーチしてくることも考慮に入れておくと良いかも知れません。
サイドボードの《テフェリーの世界》は”piral tide”ではメジャーなサイドボードプランの1つです。各アップキープ毎に選ばれたパーマネントタイプ(土地とプレインズウォーカーは選べない)のパーマネントをフェイズアウトします。デス&タックスであればクリーチャー、エンチャントレスであればエンチャントをコンボ開始ターンに指定することで妨害パーマネントを一掃することができます。
いかがでしたでしょうか?現在では2018年頃からMO内で活躍している「Iwouldliketorespond」氏が”Spiral tide”を使用し幾度と無く入賞していることで知られていますが、そのデッキの元を辿ると幾度となく変遷を経て今日に至る形に仕上がっていることが分ります。そんな歴史のある”Spiral tide”を貴方も回してみませんか?
今回は以上になります。ありがとうございました。
北関東の僻地で活動してるMagic: the Gatheringプレイヤー。好きなフォーマットはレガシー。好きなカードをずっと使い続けられるこの環境とプレイを共にする友人が大好き。あと痩せたいです。
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