環境大変動!禁止改定後のスタンダード環境をチェック!!
おっすおっす。
かーむです。
今回もスタンダードのメタゲームを探っていきたいと思います。
ここ最近のスタンダードの大きなトピックと言えば?
そう、先日1月27日に発効となった禁止改定ですね。
これまで環境を支配していたイゼット天啓のフィニッシャーだった《アールンドの天啓》、潤滑油であり万能の妨害手段だった《ゼロ除算》に加え、単色アグロに採用されていた《不詳の安息地》の3つが禁止となりました。
《感電の反復》で《アールンドの天啓》をコピーして、相手にターンを渡さずにフィニッシュするイゼット天啓に対して、打消しを持たない非青のデッキは「やられる前に倒す」以外の対処手段がなく、特にミッドレンジ系のデッキを駆逐してしまっていました。
前回の記事でもそのやらかしっぷりに触れていましたね。
一方で、イゼット天啓に次いで人気だった白単アグロや緑単アグロで採用されていた《不詳の安息地》も禁止になりました。
ソーサリー除去が効かず、起動3マナでパワー4と単色アグロの強さを支える優秀なアタッカーでしたが、こちらも禁止となりました。
メタゲームの上位3デッキにそれぞれ禁止が出るという大きい禁止改定でしたが、早速、1月30日にスタンダードのセットチャンピオンシップ[1]公式プロと、厳しい予選を勝ち抜いた猛者だけが参加できる最高峰の競技イベント。※1予選(PTQ)が開催されました。
今回の記事では、本イベントを通して禁止改定直後のスタンダードの様子をチェックしていきたいと思います。
目次
メタゲーム:オルゾフ大暴れ
まずは、今回のイベント「$1,000 Cash GGtoor M:TG Arena Cup#1」のメタゲームから見ていきましょう。
禁止改定後、1発目となるセットチャンピオンシップ予選ではオルゾフコントロールが最大勢力。
MTG meleeの表記ゆれでオルゾフコントロールとオルゾフミッドレンジと2つに分かれていますがほぼ中身は同じ。
トップメタであるにもかかわらず、いずれも勝率は60%越えのハイパフォーマンス。
《消失の詩句》を始めとした優秀な除去に、《魅せられた花婿、エドガー》やプレインズウォーカーなどの強力な脅威を搭載し、さらに履修&講義や《婚礼の発表》といったアドバンテージソースも併せ持つ非常にバランスの取れたデッキとなっており、高い勝率も頷けます。
その他のミッドレンジとしては宝物トークンによるマナ加速から強力なカードを繰り出すトレジャーデッキも人気。
ティムールトレジャーは優秀なクリーチャーを擁する赤緑のグルールベースのデッキに、青をタッチしてカウンターを採用した形。
脅威を展開してカウンターを構えてフタをする動きはティムールカラーならでは。
一方でジャンドトレジャーは赤黒のラクドスベースに緑のパワーカードを足した形。
《黄金架のドラゴン》や《ヴォルダーレンの末裔、フロリアン》といった優秀なクリーチャーに加え、《エシカの戦車》や《結ばれた者、ハラナとアレイナ》といった緑絡みのパワーカードを採用しています。
ティムールと比較すると、カウンターがない代わりに黒の確定除去やハンデスカードを採用できるのが利点。
禁止改定により《ゼロ除算》を失いましたが、青系コントロールも健在。
これまで青系デッキは対処がしにくい《感電の反復》&《アールンドの天啓》のコンボをフィニッシャーに据えたイゼット天啓が最高の形とされており、他の青系デッキを選択する必要性が薄まっていました。
しかし《アールンドの天啓》が禁止されたことで、今までつぶれていた選択肢が復活してきたように思います。
上でも触れた通り、感電&天啓コンボに対して非青のデッキは「撃たれる前に倒す」しか対抗手段がなかったため、一方的にタイムリミットを突き付けられていました。
そのためイゼット天啓以外のデッキは高速化を迫られ、ミッドレンジが組みにくくなった結果、クリーチャーデッキとしては単色アグロが主流になっていました。
ところが禁止改定でイゼット天啓がメタゲームを去ったことでゲームを急ぐ必要がなくなり、メタゲームが少し遅くなりミッドレンジ環境に向かっている印象です。
TOP8デッキリスト
それでは本イベントのTOP8のデッキリストを見ていきましょう。
まずはTOP8のメンツからチェック。
今回の優勝はオルゾフミッドレンジ。
使用者は日本人プレイヤーのくろき選手。
優勝おめでとうございます!
他のメンツを見るとアグロデッキはボロスアグロが1名入賞している以外は中速以降のデッキが結果を出していますね。
それではそれぞれのデッキリストを詳しく見ていきましょう。
優勝:オルゾフミッドレンジ
$1,000 Cash GGtoor M:TG Arena Cup#1 1位
プレイヤー:Kondo Koki
4《光輝王の野心家》
2《穢れた敵対者》
2《嘘の神、ヴァルキー》
2《輝かしい聖戦士、エーデリン》
2《精鋭呪文縛り》
2《魅せられた花婿、エドガー》
2《ヘンリカ・ダムナティ》
まずは優勝のオルゾフミッドレンジ。
参加者の多くが使っていたオルゾフの型とは異なり、白単アグロで活躍していたクリーチャー陣が目立ちます。
現スタンダードの黒カードの中でも屈指のパワーカードである《蜘蛛の女王、ロルス》は当然採用されていますが、他のオルゾフでは珍しい《ヘンリカ・ダムナティ》も採用されています。
4マナ1/3飛行と控えめなスタッツですが、盤面次第では除去とアドバンテージと中堅アタッカーを1枚で兼ねる活躍をすることもあり、上手く使うことができれば様々な活躍をしてくれる1枚。
全体的な構成を見ると、昨年末ごろに開催された日本選手権 SEASON3でTeamUNITEの森山選手が使用してTOP8に入賞していたオルゾフミッドレンジに似ているような印象を受けます。
サイドボードにもカードの選択が光ります。
まずはミラーマッチで輝く《情け無用のケイヤ》。初期忠誠値5と非常に堅く、《消失の詩句》で除去されないマルチカラー。
そして潜在的なアドバンテージを稼ぐプラス能力に、《魅せられた花婿、エドガー》を始めとした除去耐性のある相手の脅威を追放するマイナス能力と非常に優秀なカードです。
全体除去には2枚の《招待制》と《ドゥームスカール》を採用。
《招待制》は「破壊」ではなく「生け贄に捧げる」なので、《イマースタームの捕食者》などの破壊不能を持つクリーチャーも問答無用で墓地に叩き落とします。
こちらのデッキの詳しい解説や調整過程については、使用者のくろきさんがnoteにまとめてくれているので、こちらもチェックしてみてください。
2位:イゼットコントロール
$1,000 Cash GGtoor M:TG Arena Cup#1 2位
プレイヤー:Roope Metsä
3《船砕きの怪物》
準優勝はイゼットコントロール。
《ゼロ除算》と《アールンドの天啓》を失ったとはいえ、《感電の反復》&《予想外の授かり物》の組み合わせは依然強力。
手札を増やしつつマナを伸ばした先に据えるフィニッシャーは、《アールンドの天啓》に代わって《船砕きの怪物》が務めます。
禁止改定前は「打ち消されない」能力がすこ~し印象が薄かったですが、《ゼロ除算》がいなくなったことで着地がほぼ確実になったという意味では、単体で見るとカードの信頼性は上がったように思います。
《ゼロ除算》の穴を埋めるのは《中略》ですが、さすがにここは弱体化を感じてしまうところですね。。。
これまでも使われてきた《家の焼き払い》ですが、オルゾフがクリーチャーとプレインズウォーカーで固めた盤面も1枚でひっくり返せるということで、今後はより重要は1枚になりそうです。
ベスト4:イゼットドラゴン
$1,000 Cash GGtoor M:TG Arena Cup#1 ベスト4
プレイヤー:Iyanaga Junya
こちらはイゼットドラゴン。
《くすぶる卵/灰口のドラゴン》と《黄金架のドラゴン》の2種のドラゴンを採用しており、イゼットコントロールに比べるとミッドレンジ寄りな構成のデッキです。
メインの2マナカウンター呪文は公開制のイベントらしく《才能の試験》、《軽蔑的な一撃》、《否認》と散らした採用になっていますね。
サイドボードも青いカードが多めになっており、「ミッドレンジ環境→コントロールがミッドレンジを喰いに来る」という読みからか、コントロール戦の意識が高めのリストに仕上がっています。
ベスト4:セレズニアランプ
$1,000 Cash GGtoor M:TG Arena Cup#1 ベスト4
プレイヤー:Noé Alessandro Rivera Carvallo
2《ドーンハルトの主導者、カティルダ》
4《裕福な亭主》
4《絡みつく花面晶体》
4《粗暴な聖戦士》
2《スカイクレイブの亡霊》
2《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》
2《精鋭呪文縛り》
2《傑士の神、レーデイン》
2《スカイクレイブの亡霊》
2《秘密を知るもの、トスキ》
1《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》
2《勇敢な姿勢》
2《ポータブル・ホール》
2《フェリダーの撤退》
こちらはトークンとランプを足して2で割ったようなセレズニアデッキ。
使用者1名ということで、オリジナルデッキでの入賞となりました。
《婚礼の発表》、《フェリダーの撤退》、《シュタルンハイムの解放》といった1枚で複数体のトークンを並べるカードが多く採用されています。
《ドーンハルトの殉教者、カティルダ》はマナ加速と全体強化を兼ねる1枚。
人間クリーチャーはカティルダを含めてメインには6枚だけですが、実は《婚礼の発表》で生成されるトークンが人間なのがちょっとテクいですね。
スタンダードのセレズニアカラーといえばやはりこの1枚。
4/4/4と標準サイズでありながら、4枚目5枚目の土地を供給してくれるナイスなカード。
《フェリダーの撤退》の能力誘発の助けにもなります。
生け贄を禁止する能力は生け贄が必要なオルゾフの《命取りの論争》や、トレジャー系デッキの宝物トークンを止めてくれるため、環境的にもマッチしています。
マルチカラーということで、トップメタのオルゾフのメイン除去である《消失の詩句》の対象にならないのも嬉しいですね。
イゼット天啓がはびこるスタンダードでは日を見る機会がなかったであろうデッキですが、天啓なき環境では、サイズと数でミッドレンジを踏みつぶして見事入賞となりました。
ただし重いカードをカウンターで撃ち落としてくる青系コントロールは少し苦しいか。
2敗した相手はイゼットコントロールとアゾリウスコントロールとなっています。
ベスト8:アゾリウスコントロール
$1,000 Cash GGtoor M:TG Arena Cup#1 ベスト8
プレイヤー:Florian Trotte
4《象徴学の教授》
カウンターとドローソースと全体除去、そしてごく少量のフィニッシャーで構成されたクラシカルなアゾリウスコントロール。
勝ち手段は《シュタルンハイムの解放》と履修で引っ張ってくる《マスコット展示会》、あとは《ストーム・ジャイアントの聖堂》の限られたカードのみ。
全体除去は2種8枚を採用。
《壊滅の熟達》はイゼットの《家の焼き払い》以上のリセット力で、死亡して棺になった《魅せられた花婿、エドガー》も吹っ飛ばし、文字通り盤面を更地にします。
手札が尽きてくれれば…!と思いたいところですが、4マナのアドバンテージカードも2種8枚採用されており、中盤以降の息切れをしっかり防ぎます。
さらにこれらを《未来の目撃》でデッキに戻して再利用。
終盤には2枚目の《未来の目撃》で1枚目の《未来の目撃》をデッキに戻すことでデッキの中身がどんどん濃くなっていき、半永久的に全体除去とドローとカウンターを撃ち続けます。
このような構成から、カウンターを持たないミッドレンジには滅法強く、メタゲームの読みはばっちり。
かく言う僕も4ラウンドでこのデッキに粉砕されました。
しかしさすがにコントロール戦では少々穴があり、イゼットコントロールに2度敗れています。
ベスト8:オルゾフコントロール
$1,000 Cash GGtoor M:TG Arena Cup#1 ベスト8
プレイヤー:Tim Schaufert
6位はオルゾフコントロール(ミッドレンジ)。
除去あり、アドあり、フィニッシャーありの本大会のトップメタ。
こちらのリストはメジャーなオルゾフに近い構成ですね。
メジャーなリストと違う部分としては、オルゾフの主要カードの1つ《魅せられた花婿、エドガー》ではなく、追加のアドバンテージ源の《歓迎する吸血鬼》を採用している点です。
小粒クリーチャーが多く並ぶオルゾフミッドレンジであれば、毎ターン誘発させることも難しくなさそうです。
自身もパワー2のため、2枚目以降の《歓迎する吸血鬼》でアドバンテージが加速していくということで4枚フル投入となっています。
《消失の詩句》の対象になる点は《魅せられた花婿、エドガー》に劣りますが、それ以外の脅威も多く搭載しているため、除去されても後続が生き残りやすいならそれでOKといったところでしょうか。
さらにアドバンテージ&フィニッシャーとして《軍団の天使》を採用。
4/4/3飛行は《魅せられた花婿、エドガー》不在の穴を埋めるにも十分なサイズです。
また、ミラーでは地上は小粒クリーチャーが並んで攻撃が通りにくいため、《歓迎する吸血鬼》も含めて空から攻める戦略も有効そうです。
白を含むデッキがオルゾフ対策に採用している《神聖なる一撃》は《魅せられた花婿、エドガー》に最も打ちたいカードなので、そこをスカせるのもポイントですね。
ベスト8:オルゾフコントロール
$1,000 Cash GGtoor M:TG Arena Cup#1 ベスト8
プレイヤー:André Santos
こちらもオルゾフミッドレンジですが、構成はサイドボードも含めてほぼ上のものと同じ。
《よろめく怪異》や《野心的な農場労働者》、《象徴学の教授》などの低マナ域のクリーチャーの枚数が多少違いますが、恐らくシェアデッキかと思われます。
ベスト8:ボロスアグロ
$1,000 Cash GGtoor M:TG Arena Cup#1 ベスト8
プレイヤー:krowz
4《光輝王の野心家》
2《日金の歩哨》
4《スレイベンの守護者、サリア》
4《粗暴な聖戦士》
4《精鋭呪文縛り》
3《傑士の神、レーデイン》
4《黄金架のドラゴン》
2《剛胆な敵対者》
1《ガーディアン・オヴ・フェイス》
2《無謀な嵐探し》
4《スカイクレイブの亡霊》
1《移り気な放火魔》
3《勇敢な姿勢》
2《パラディン・クラス》
最後はTOP8唯一のアグロデッキ。
アグロデッキと言えばこれまで白単アグロや緑単アグロといった単色のものが主流でしたが、今回の禁止改定では《不詳の安息地》も禁止になりました。
全体除去などのビッグアクションの返しや最後の一撃に絡むことが多かった《不詳の安息地》を失った影響は大きく、単色で組むメリットがほぼなくなってしまいました。
一方、イゼット天啓がいなくなったことで多少デッキの速度を落とす余裕も生まれており、このデッキでは白単アグロから1マナ域を排し、代わりに赤の強力なカードを取り入れてデッキパワーを底上げした構成になっています。
しかし1マナ域を排したとはいえ、ベースは白単。
2ターン目からしっかり圧のあるクリーチャーを展開してきます。
3マナ域には《精鋭呪文縛り》や《傑士の神、レーデイン》などおなじみのカードが並びますが、赤を足すメリットは何と言っても5マナ域に搭載した《黄金架のドラゴン》。
残していく宝物トークンも次ターン以降のミシュラランドの起動や、大量に採用された両面カードのプレイに使ったりと無駄になりません。
特に《セジーリの防護》とは相性抜群です。
他の赤絡みのカードとしては《天使火の覚醒》や《スカルドの決戦》を採用しています。
《天使火の覚醒》はブロッカーをブチ抜いてリーサルダメージを叩き込み、《スカルドの決戦》は息切れを防ぎつつ打点を上げてくれます。
どちらも白単の時にはなかったムーブですね。
本イベントではティムールトレジャーなどのミッドレンジを降しての入賞となりましたが、オルゾフミッドレンジとの相性は少し厳し目か。
今後のメタゲーム
というわけで大変動を迎えたスタンダードのメタゲームの様子を、禁止改定直後のセットチャンピオンシップ予選を通してチェックしてみました。
いま時点ではオルゾフミッドレンジが頭一つ抜けている印象ですが、ミッドレンジが流行ればアゾリウスコントロールのような低速デッキを狩るコントロールが台頭してきます。
そうかと思えば、今度はコントロールを狩るボロスアグロのような速いデッキが狙ってくるでしょう。
今後のメタゲームが楽しみ……と言いたいところですが、そうこうしているうちに2月18日には、次の新セット『神河:輝ける世界』がリリースされます。(MTGアリーナでは2月10日に実装)
今回のセットはかなりカードパワーが高そうですが、新環境でもやはり最初にベースになるのは前環境の強デッキたち。
オルゾフに加わりそうなカード、青系コントロールに採用されそうなカード、アグロデッキのメインアタッカーになりそうなカード…といった視点でカードギャラリーを眺めれば、次環境の大きなヒントになるかもしれません。
僕も2月26日の日本選手権Finalに向けて、新カードたちをばっちりチェックしていきたいと思います。
それではまた、新環境のスタンダードでお会いしましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました!
(※デッキリスト画像の表示はMTG-Decklist Viewerを使用しています。)
(※各デッキのマッチング、戦績の画像はMTG Meleeイベントページより引用しています。)
(※記事内のデッキリストは「Study hall of M:TG」のデッキエディタを使用しています。)
脚注
↑1 | 公式プロと、厳しい予選を勝ち抜いた猛者だけが参加できる最高峰の競技イベント。 |
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MTGアリーナの情報を発信する「かーむブログ(https://www.calm-blog.com/)」の管理人。 競技勢でもあり、主な実績は日本選手権2021 SEASON2 7位、BIG MAGIC Summer Challenge5位など。 プレイヤーズツアーへの参加を夢見て日々研鑽中。Twitter ID:@calm_blog