ボードゲーム遊び方紹介 “スピンオフ” ミステリ・ザ・サード体験記 その2
ボードゲーム遊び方紹介 “スピンオフ” ミステリー・ザ・サード体験記 その1はこちらから。
前回の続きです。
受付を済ませた私たちは、重い鉄扉を開けて室内に入りました。
キッチンスタジオに入るのは初めてです。正面にはホワイトボードと広いカウンターがあり、水場は壁際。洗いものをするときは、こちらに背を向けるようです。柱には架空のお料理教室のポスターが貼ってありました。
10人くらい座れそうな長テーブルがカウンターと垂直になるように4つ並んでいて、ほぼ満席です。私たちの席は入口近くの端っこにあり、3人横並びに座りました。全体がよく見渡せます。
内装は白が基調。実際に簡単な調理も行うということで、エプロンを付けている人もちらほらいました。
天「僕も持ってきたんだけど」
初めてエプロンを着けるという天袮さん。とっさにスマフォを構えましたが、撮影は禁止なので断念しました。
事前に配られた資料を読んだり、トイレを済ませたりしていたら、あっという間に開始時間になりました。
イチゴ柄エプロンのあたたかそうな雰囲気の女性がカウンターの前に立ち、今日の主旨の説明をしました。この方はお料理教室の先生で、連想料理人でもあるそうです。
連想料理人とは、過去の文献や写真などから料理を再現し、その料理に関わった人々の想いを想像する仕事です。
今回は、「10年前に不審死した人物が、死の直前に口にした料理を再現し、その事件を紐解いて欲しい」という依頼がきているそうです。
私たちは、その謎を解くために集められた料理が得意な探偵という設定になっていました。料理は得意です。毎日のように家族のお弁当を作って、その写真をツイッターに投稿しています。謎解きは、直感でこの人が犯人かもと思い、それから論理的な筋道を立てる性格です。当たれば最強ですが、たいてい外します。
どんな背景だったのだろうと、資料にメモを取っていたら、次々に亡くなった人の関係者たちが登場してきました。
人間関係を把握して、それから再現に入りました。「最期の晩餐」で何を食べたか、時間の流れはどうだったかをこの場で演じてみるそうです。
そのためには助っ人が必要とのことでした。探偵たちからも選ぶそうです。
先生「今日、◯◯線に乗ってきた方」
自分の乗ってきた路線を言われました。手を挙げたら、該当者はほかにも1名いらっしゃいます。「どうぞ、どうぞ」とお互い譲り合いましたが、「メガネをかけていない人」とのことで、私が選ばれてしまいました。探偵役からは合計4人が選ばれ、カウンター前に出ていきました。
小学校の学芸会ではナレーターしかしたことがなかったので、演技はまったくの初めてです。大丈夫かなあと思っていたら、台本を渡されました。さらに、セリフを言うタイミングも指示してくれます。
自分の番がきて、勇気を出して読み上げたら、席からは軽く笑いが起きました。実は、私、中学生に間違えられるほど、声が幼いのです。
恥ずかしい、もう帰りたい、と思う間もなく即興は終了し、いよいよ全員で簡単なお料理を作るという時間になりました。
ボードゲーム遊び方紹介 “スピンオフ” ミステリー・ザ・サード体験記 その3へ続く。
1973年生まれ
作家。2007年に宗形キメラ名義で二階堂黎人との合作『ルームシェア 私立探偵・桐山真紀子』で作家デビュー。2009年には『マーダーゲーム』で単独デビュー。近刊は「少女ティック 下弦の月は謎を照らす」(行舟文化)
ボードゲーム好きで『人狼作家』の編集も手がけ、羽住典子名義でミステリ評論活動も行っている。
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