デバッグ・マジック! vol.16 ~『団結のドミナリア』編~
ついに。
ついに来たるべき2022年9月9日、『団結のドミナリア』が発売となる。
スタンダードで主に遊んでいるユーザーにとっては待ちに待ったローテーションが行われるセットであるわけだが、モダン民の私としても待ちわびた新セットだった……ここ4ヶ月にわたる『ニューカペナの街角』との私の苦闘に関してはアーカイブをご参照いただきたい。
さて、背景ストーリー上も盛り上がりを見せている『団結のドミナリア』は、どのような新しいマジック体験をさせてくれるのか。発売前時点での最新のモダン環境をチェックするとともに、判明したカードリストから早速新たなデッキを制作していくとしよう。
■ 1. ラガバン vs. ハンマーの戦いに独創力が殴り込み
2022年7月~8月にかけてのモダン環境は、以下のようなメタゲームで展開していた。
Tier 1 |
Tier 2 |
Tier 1勢力の2つに動きはないが、Tier 2には2つの新顔が登場した。それが前回紹介した「執政官独創力」と、後ほど紹介する「赤黒不死ラガバン」だ。
《不屈の独創力》の強みは実質1枚コンボであるという点にある。近しい例を挙げれば、なんでもいいから7枚の土地があれば18点飛ぶ《風景の変容》のようなものと言えば伝わるだろうか。ただ《不屈の独創力》の場合は、フェッチランドを要求する代わりに土地4枚で決まるというのが圧倒的な強みだ。コンボパーツが少ないということは、余ったスロットは加速パーツやコントロールパーツに割けるということでもあるからだ。
土地4枚というのも絶妙で、実質《創造の座、オムナス》1枚コンボとも言える4Cオムナス系が《創造の座、オムナス》+フェッチランドと動いて爆発的なマナを獲得できるようになるのは (《敏捷なこそ泥、ラガバン》が絡まない限り) 5ターン目なので、コンボコントロールとしては丸々1ターン分早いことになる。
さらに《探検》が絡むと最速3ターン目に《残虐の執政官》が着地する。この3ターン目というのがキモで、Tier 1の「青赤ラガバン」であろうと「装備シュート」であろうと、いや環境に存在するどんなデッキでも少なくとも2ターン目までは自分の動きをしたいのが通常である。それなのに相手に先攻を取られて2ターン目に《探検》を打たれると、《不屈の独創力》のケアをせざるをえない。
この「上位デッキに対しても先手後手次第でケアを強いることができる」という点で、最速3ターン目《残虐の執政官》着地のオプションが「執政官独創力」をTier上位たらしめていると言うことができる。マイナーチェンジである青黒赤の「頑強独創力」も、同様の事情 (《染みついた耽溺》→《頑強》による3ターン目《残虐の執政官》のオプション) で最近活躍が見られている。
Modern Challenge #12464061 1st Place
プレイヤー:YungDingo
4《敏捷なこそ泥、ラガバン》
4《ダウスィーの虚空歩き》
2《死の飢えのタイタン、クロクサ》
3《歴戦の紅蓮術士》
4《悲嘆》
4《激情》
一方、「赤黒不死ラガバン」に関しては「4Cが少なく、装備シュートが多い」≒「《激情》が強いメタゲーム」が台頭の背景にあると思われる。
特に「青赤ラガバン」の視点では、ライバルが「装備シュート」になった時点で微不利かそこまで明確に不利とまでは言えないにせよかなり際どい戦いを強いられるマッチアップのため、「赤黒ラガバン」対「青赤ラガバン」のマッチアップにおける勝率の下がり具合よりも「赤黒ラガバン」対「装備シュート」のマッチアップにおける勝率の上がり具合の方が明確に上だと判断できるなら、デッキを乗り換えるインセンティブが働く。
もちろんこれには「Tier 3以下の《激情》の効かないローグデッキがほとんど無視できる」という前提があるし、そもそも赤黒が増えれば4Cも復権してくるとも考えられるので「青赤ラガバン」ほど長期間上位メタに居座れるデッキではないと思われるが、4Cが少ないメタゲームにおけるソリューションの一つとして覚えておいて損はなさそうだ。
Modern Premier 1st Place
プレイヤー:NicolasGEM
2《乾燥台地》
4《爆発域》
4《血の墓所》
4《血染めのぬかるみ》
3《バグベアの居住地》
2《山》
1《血に染まりし城砦、真火》
1《反逆のるつぼ、霜剣山》
1《沼》
4《敏捷なこそ泥、ラガバン》
4《砕骨の巨人》
4《歴戦の紅蓮術士》
4《激情》
1《叫び大口》
他方で、同じ「赤黒ラガバン」のように見えて全く異なる戦略によってMagic OnlineのRegional Championship Qualifierを突破したのがこちらの「赤黒オボシュ」で、MOモダンリーグの常連であるMHayashiが調整していた「赤単ラガバン」の派生形である。
原型である赤単では《激情》《爆発域》によってクリーチャー主体のデッキに対して優位が築けても、環境に存在する多様なその他のアーキタイプに対しては先手後手差を覆すプランを持たなかった。そこで「赤黒ラガバン」同様の手札破壊をタッチすることにより、デッキの強みを殺さないままにデッキの弱点だけを綺麗に補うという発想に思い至ったのはまさしく脱帽だ。
また、メインでは手札破壊以外の黒を欲張って採用しない代わり、サイドには《碑出告が全てを貪る》を3枚も採用し、「装備シュート」への殺意を見せている。総じて、環境の登場人物が少なくなったタイミングを見越してアジャストされた見事なメタデッキと言えるだろう。
Modern Premier 7th Place
プレイヤー:Elbegast
2《メムナイト》
2《羽ばたき飛行機械》
4《エスパーの歩哨》
2《巧妙な鍛冶》
1《練達飛行機械職人、サイ》
4《最高工匠卿、ウルザ》
4《思考の監視者》
4《エーテル宣誓会のスフィンクス》
2《夢を引き裂く者、アショク》
1《虚空の杯》
3《急送》
2《狼狽の嵐》
2《金属の叱責》
1《真髄の針》
1《魂標ランタン》
3《時を解す者、テフェリー》
モダンにおける青白カラーのアーティファクトデッキには実は「高速」「中速」「中速コンボ」の3種類が存在する。「高速」が「親和」 (《頭蓋囲い》《滞留者の相棒》などが特徴) であり、「中速コンボ」が「ウルザソプターソード」 (《飛行機械の鋳造所》《弱者の剣》コンボが特徴) とするなら、「中速」にあたるのがこの「8 cast」である。
「8 cast」の特徴は、「とにかく通したら勝ち」というようなわかりやすい勝ち手段が存在しないことにある。だがそれは、特に環境の王者であるラガバン系のデッキを相手にする際にはむしろプラスの材料に働く。除去やカウンターでシナジーを断絶し、1枚1枚のカードパワーの勝負に持ち込んで《表現の反復》などで微差をつけて勝つのが彼らの戦略なところ、「8 cast」の場合は断絶されて困るほどのシナジーは最初から持ち合わせていないからだ。
逆にアンフェアに対しては脆くなってしまうものの、サイドから十分に補える範囲ではあるし、現状のメタゲームではコンボの割合はそこまで高くないので、アーティファクト系のデッキの中では実は最も実戦的なデッキかもしれない。
■ 2. 『団結のドミナリア』でバグを探そう
新セットが出ようと、デッキビルダーのやるべきことに変わりはない。
モダンで使えそうなカードの基準については、これまで過去の連載でいくつも提示してきた。あとはそれを、実際にあてはめてみるだけだ。
どうせあとから誰かが新しいデッキを作って入賞させるのだからその結果を待てばいい……そんな弱い思考で誰もが二の足を踏んでいるうちに、新セットに眠っているバグを一足早くデバッグ (発見・解明) していくとしよう (注:以下、食事中の方は読まれない方が良い表現が多数あります)。
◇《古代学者、メリア》
『団結のドミナリア』のカードの中で、基準がどうこう以前に「これはモダンで何かやらかしそうだぞ」と一目でわかるヤバそうな気配が漂っているカードが存在した。
《古代学者、メリア》だ。
「トークンではないアーティファクトがすべて《ラノワールのエルフ》になる」というのはテンポ要素だし、「トークンでないアーティファクト2つで衝動的ドローができる」というのはアドバンテージ要素となる。それらの能力がしかも上限なしにこの1枚のクリーチャーに詰まっているというのだから、何かをやらかす予感しかしない。
だが問題は、こいつが何をやらかすのか、だ。
アーティファクトと相性が良いことはわかっている。だが「トークンではない」という指定は少々面倒だった。トークンを使わないなら、次々と新しいアーティファクトの展開を連鎖させていくようなアプローチはとれないことになる。
そうなると考えられるのは、同じアーティファクトを使いまわし続けるアプローチだ。
ではそのようなアプローチをとるとして、さすがに《古代学者、メリア》が何らかのアーティファクトと2枚コンボで無限コンボを形成するといったようなことはないであろう。となると、「《古代学者、メリア》は何らかのカードAとまた別の何らかのアーティファクトBと3枚でコンボする」と仮定するしかない。
そうした場合、Aにはどんなカードが当てはまるだろうか?
私が考えたのは、「《古代学者、メリア》の効果を増幅するカード」だった。
そう、すなわち。
《眷者の神童、キナン》と組み合わせればいいのでは???
《眷者の神童、キナン》を使えば、《古代学者、メリア》で生み出せるマナが倍量になる (※勘の良い方はこの段階で何か気づいているかもしれないが、ひとまず口をつぐんで先を読んでみて欲しい) 。
そして1つのアーティファクトをタップするだけで2マナ出るようになるなら、「何らかのアーティファクトB」もかなり緩い条件で見つかるはずだ。
私はモダン中のアーティファクトを検索し、そして……解答にたどり着いた。
《威圧の杖》だ。
このカードならば、「《眷者の神童、キナン》《古代学者、メリア》がある状態で《威圧の杖》をタップして2マナ生成→1マナで自己をアンタップ→タップして2マナ生成……」を繰り返すだけで緑の無限マナが発生する。
しかも《威圧の杖》が素晴らしいところは、このカード自体が生み出した無限マナの使い道にもなるという点だ。無限マナが出るということは、《威圧の杖》によって無限ライフ&無限ドローができるということを意味している。
あとはデッキ内に《大いなる創造者、カーン》とサイドボードに《歩行バリスタ》でも入れておけば、《眷者の神童、キナン》《古代学者、メリア》《威圧の杖》の3枚が場に揃った時点で勝ち確だ。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
デッキビルド:まつがん
4《金のガチョウ》
4《敏捷なこそ泥、ラガバン》
4《眷者の神童、キナン》
4《呪文滑り》
4《古代学者、メリア》
完璧だ……完璧なファンデッキだ。こんなにあっさりと1つ目のデッキが作れるなんて、これは今回の『団結のドミナリア』は思ったより早く記事が書けるかもしれん。あと《威圧の杖》は高騰する前に4枚揃えておこう。
……と、そう思っていた。
だが、似たようなことを誰かが考えていないかとググってみたとき……私は偶然にも、私は偶然にも、その文言に行き当たってしまったのである。
起動コストに{T}シンボルを含むマナ能力
{T}シンボルを含む
ルール間違えて破綻してるじゃねーか!!!!!
そう、《眷者の神童、キナン》の能力では《古代学者、メリア》のマナ生成は倍量にならないらしいのである。
成立すると思っていたコンボが成立しないとわかったときほど空しいものはない……ルールを知り、私の心は一瞬折れかけた。具体的には、何の脈絡もなく「うんち!!!!!!!!!!!」というツイートをする一歩手前まで行った。
だがそこで、勇み足で《威圧の杖》を既に4枚買ってしまっていたことを思い出したのである。
そう、《威圧の杖》という発想は悪くなかった。なぜなら《古代学者、メリア》と並ぶだけで、《威圧の杖》は無限にタップアンタップを繰り返すことができるからだ。
もちろんそれ自体は何の意味もない。だがもし、「アーティファクトのタップ」や「アンタップ」に反応するカードがあるとしたならば……?
そう。
《催眠の宝珠》だ。
このカードならば、《古代学者、メリア》がいる状態で《威圧の杖》のタップアンタップを繰り返しているだけで自分のライブラリーをすべて墓地に落とすことが可能となる。
あとはライブラリーがない状態での勝ち手段を用意しておくだけだ。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
デッキビルド:まつがん
4《緊急時》
1《掘葬の儀式》
2《ジャック・オー・ランタン》
3《催眠の宝珠》
3《弱者の剣》
3《威圧の杖》
4《楽園の拡散》
4《大いなる創造者、カーン》
こんなんスパイでいいじゃねーか!!!!!
わざわざ3枚コンボを揃える必要があるというだけでなく、デッキに余分なパーツを抱えるリスクを負ってまでやっていることは、1枚コンボの《欄干のスパイ》と大して変わらなかった……これはもう、今度こそ「うんちツイート」しかないのではないかとも思われた。
しかし、私にもデッキビルダーとしてのプライドがあった。うんちは最後の手段にとっておくとして、まだ《古代学者、メリア》のポテンシャルを引き出せる可能性は残されていた。
そう……コンボではなく、《古代学者、メリア》が既存のカードの5~8枚目として扱うことができないか。
《古代学者、メリア》はトークンでないアーティファクトをマナとして運用できるカードである。そして、似たような機能を持つカードがモダン環境に既に存在していることに、私は気づいていた。
それは、すなわち。
《鼓舞する彫像》だ。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
デッキビルド:まつがん
4《羽ばたき飛行機械》
4《古代学者、メリア》
4《練達飛行機械職人、サイ》
ほとんどパイオニアで組めるじゃねーか!!!
実際このデッキのメインボードは、土地と《楽園の拡散》以外はパイオニアリーガルで組めてしまう。もちろんそれが一概に悪いというわけではないが、このコンセプトがパイオニアで通用するかしないかは別にして、モダンで通用するかと問われるとやはり微妙に思われた。
モダンで活躍させたいならば、やはりモダンらしいバグを取り入れる必要がある。
だが、《古代学者、メリア》と相性の良いバグがはたしてモダンに存在するのだろうか?
私はこれまで作ってきたデッキやモダンのアーティファクトデッキのリストを見直し……そして、一つの到達点に至った。
《飛行機械の鋳造所》と《弱者の剣》とのコンボだ。
このコンボは成立すると「1マナにつき1/1飛行トークンを1体生成して1点のライフを得る」というものになるので、「トークン生成量がマナの総量によって規定される」という点がネックだった。ビートダウンは封殺できるにしても、コンボやコントロール相手には逆転のための時間を与えてしまうからだ。
だがそこに《古代学者、メリア》が加われば、《弱者の剣》をタップしたマナで《飛行機械の鋳造所》の能力を起動できるので、無限トークン&無限ライフになる。
つまり《古代学者、メリア》は、ソプターコンボの弱点を補うラストピースだったのだ!
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
デッキビルド:まつがん
4《金のガチョウ》
4《敏捷なこそ泥、ラガバン》
4《湖に潜む者、エムリー》
4《古代学者、メリア》
理性の声「相手を妨害する要素がほぼゼロなんですけどそれにしては3枚コンボでキルターンも遅そうだしこんなんでモダンで勝てると思ってます???あと《湖に潜む者、エムリー》《大いなる創造者、カーン》でソプターコンボは探せるけど《古代学者、メリア》は探せない構造、どう考えても美しくないですよね???それって《古代学者、メリア》が不要だっていう証拠じゃないんですか???それにアーティファクトデッキなのに《ウルザの物語》が積めないの、恥ずかしいと思わないんですか?????」
……。
…………。
うんち!!!!!!!!!!!
◇《本能を穢すもの》
『団結のドミナリア』には、ある一つの「サイクル」があった。
《本能を穢すもの》。このカードを含む5種の「穢すもの」サイクルは、マナシンボルに含まれる色マナのうち1つを疑似的なファイレクシアマナのように扱い、2点のライフ支払いで代用できるようにする効果を持っている。
だが、これらは赤と黒が4マナ、白・青・緑が5マナと、モダンで運用するには少し重いコストとなっている。しかも除去耐性があるわけでもなく、普通に考えればこれらがまともにデッキになるとは考えづらい。
ただそれでも唯一赤の《本能を穢すもの》だけは、これ自体がフィニッシュ手段になりうる能力を持っていることもあり、検討のしがいがあるように思えた。
さて、《本能を穢すもの》を使ってゲームに勝ちたいならば、「《本能を穢すもの》と一緒に揃えたら勝ち」と言えるような相方となりうるカードを見つける必要がある。
どんなカードが相方になりうるか……それは、《本能を穢すもの》を出してゲームに勝つための条件を具体的に想像してみればいい。
赤のパーマネントを出すたびに1点飛ぶということは、20回赤のパーマネントを出したら勝利ということだ。
ではここでもし仮に、「手札と場で出し入れが可能な赤のパーマネント」が存在したならばどうだろうか?
そう、たとえば。
《にやにや笑いのイグナス》と相性が良いのでは???
《にやにや笑いのイグナス》はこれ単体だと出し入れするたびに赤1マナが減っていくカードだが、《本能を穢すもの》がいる状況ならその赤1マナはライフで支払うことができる。しかも《本能を穢すもの》は赤のパーマネント・呪文を唱えるたびに相手に1点飛ばせるので、《にやにや笑いのイグナス》を出し入れしているだけで相手のライフを1点ずつ削っていくことが可能となる。
ただこれだと自分のライフが相手の倍以上あるときしかゲームに勝てないので、《にやにや笑いのイグナス》をサポートできるまた別のカードが必要となる。
《遁走する蒸気族》や《語りの神、ビルギ》は《にやにや笑いのイグナス》を戻すためのマナを供給してくれるので、《にやにや笑いのイグナス》の出し入れをしやすくしてくれる。
ただこれだけだと、《本能を穢すもの》がいない限り先ほどの《威圧の杖》のタップアンタップと同様、ただ《にやにや笑いのイグナス》が出て戻ってを繰り返すだけでうんちの二の舞になってしまう。
そこで《ハゾレトの碑》があれば、《にやにや笑いのイグナス》の出し入れのたびに手札交換ができるので、フィニッシャーを引き込みにいくことが可能だ。
《アゴナスの雄牛》は《ハゾレトの碑》との相性も良く、アドバンテージが取りづらい赤単気味のデッキにおいて貴重なドローソースとなる。またMagic Onlineで挙動確認したが、「脱出」コストのうち色マナの支払い分1つはライフで賄えるようなので、その点でも若干相性が良い。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
デッキビルド:まつがん
4《下賤の教主》
4《敏捷なこそ泥、ラガバン》
4《遁走する蒸気族》
4《語りの神、ビルギ》
4《にやにや笑いのイグナス》
4《帝国の徴募兵》
4《本能を穢すもの》
4《アゴナスの雄牛》
よくわからないカードをたくさん出して相手がテキストを読んでいる間にコンボを決めて勝つしかないデッキになってしまった。ただし相手が《レンと六番》を出してきたら脱糞です。諦めましょう。
◇《老いざる革新者、ジョイラ》
『団結のドミナリア』は、アーティファクトシナジーが充実したセットだ。
そんな中で、私が「こいつはうまいことやれば何とかなるかも……?」と思ったカードが存在した。
《老いざる革新者、ジョイラ》。1ターン経過するごとに2マナ、4マナと手札からどんどんアーティファクトを踏み倒せるクリーチャーとなっている。
ただ、モダンという視点で見るとこのカードには大きすぎる欠陥があった。それは召喚酔いによるラグがあるという点だ。
ラグのあるクリーチャーは、対戦相手に除去する隙を与えてしまう。それでは気持ちよくなれない。
ではどうすればいいか?
速攻を持たせればいいのでは???
《集団恐慌》は1ターン目に先置きしておけば《老いざる革新者、ジョイラ》が着地して即能力を起動できるようになる。同様のことは《血に飢えた振起者》や《ゴブリンの激励者》でも可能だが、特に《レンと六番》も存在するモダン環境で、それ自体が除去されるリスクがあるというのは許容しかねた。
ちなみに《集団恐慌》も1ターン目に設置して返しで《敏捷なこそ泥、ラガバン》が走ってきたら憤死確定というとんでもないリスクがあるので、相手の顔を見て「こいつラガバン出してきそうだな」と思ったら設置するのはやめよう (不可能)。
それはともかく、《老いざる革新者、ジョイラ》に速攻を与えてもそれだけではゲームに勝つことはできない。2マナのアーティファクトならば《老いざる革新者、ジョイラ》を噛ませずに普通に手札から出せばいいだけだからだ。
ゲームに勝つには、4マナ、6マナといった重いアーティファクトをできれば2ターン目に踏み倒す必要がある。しかしそれには《老いざる革新者、ジョイラ》のタップシンボルが邪魔になる。
ならばどうするか?
クリーチャーをアンタップするアーティファクトを使えばいいのだ。《千年霊薬》は1度目の起動では出せないものの、《老いざる革新者、ジョイラ》の能力との関係では疑似的な《集団恐慌》のように働く。
さらに誰しもが今の今までこんなカードの存在はすっかり忘れていたであろう《教術師の石》は、《老いざる革新者、ジョイラ》の1度目の起動で設置できて《老いざる革新者、ジョイラ》を即アンタップできるという貴重なスペックを持ったカードだ。
1度目の起動をすっ飛ばせたら、2度目の起動では《練達の変成者》が着地できる。これでどんなに重いマナコストのアーティファクトだろうと踏み倒し放題だ。
踏み倒し先は《荒廃鋼の巨像》が最適だろう。《集団恐慌》が貼ってあれば速攻になるので、あとはボールを相手のゴールにシュゥゥゥーッ!!するだけだ。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
デッキビルド:まつがん
4《通路の監視者》
4《老いざる革新者、ジョイラ》
4《練達の変成者》
4《スフィンクスの召喚士》
1《隔離するタイタン》
4《荒廃鋼の巨像》
一見楽しそうなデッキだが、一人回ししたところあまりに要求値が高すぎて「♪ジョイラの要求値高すぎだろ!」と例の節で歌いだしかねない有り様であった。「ソプター・メリア」の「うんち度」を100とするなら、ゆうに200は突破していそうでありもはやベストうんちニストオブザイヤー受賞である。受賞スピーチでは世界中のクソデッキビルダーたちの思いを代弁してくれることだろう。おあとがよろしいようで (よろしくない)
■ 3. 終わりに
団結のドミナリア』はモダン視点で見ると、「とりあえず《敏捷なこそ泥、ラガバン》入れたらデッキになる」というようなあからさまなパワーカードはそこまで多くなさそうなセットだった。
だがそれは、新デッキの作り甲斐があるということだ。
失敗デッキを作って「うんちツイート」で終わるのも将来の成功デッキ作りのための良い経験になる。「カードの知識がないから……」と臆することなく、どこまでも自由なデッキ作りに、ぜひ自分自身の尻で手で挑戦してみて欲しい。
ではまた次回!
クソデッキビルダー。独自のデッキ構築理論と発想力により、コンセプトに特化した尖ったデッキを構築することを得意とする。モダンフォーマットを主戦場とし、代表作は「Super Crazy Zoo」「エターナル・デボーテ」「ステューピッド・グリショール」など。Twitter ID:@matsugan
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