デバッグ・マジック! vol.2 ~『モダンホライゾン2』編~
『モダンホライゾン2』、襲来。
カードリストが出た段階で既に各所で話題にのぼっていたこのセットだが、実際モダンというフォーマットに与えるであろうインパクトは計り知れない。膨大な数のパワーカードが収録されたこのセットから「バグ」を解明するためには、ここから膨大なデバッグ作業が必要になることだろう。
そこで今回は、『モダンホライゾン2』の新カードを使ったデッキアイデアをいくつか用意してきたので、そちらを紹介していこうと思う。
ただし、どれもまだ「こういうデッキが組めるんじゃないか?」というアイデアの段階にとどまっているので、もし気に入ったコンセプトがあったなら自身でブラッシュアップを重ねていってみて欲しい。
1. ハイパー親和
『モダンホライゾン2』では「親和」というキーワードがフィーチャーされている。そして「親和」といえば、『ミラディン』を知る時代のプレイヤーからすればバグの象徴として心躍らせずにはいられないキーワードなのだ。
禁止改定によって《オパールのモックス》を失ったとはいえ、ほとんどマナを支払わずに超速度で対処不能な数のクリーチャーを展開するというそのコンセプトは、いつの時代も魅力的なものだからだ。
そして、《滞留者の相棒》と《思考の監視者》の登場……これが意味するところは一つ。
《マイアの処罰者》と《物読み》が実質8枚入れられるようになったということだ。
「だから何?」と思われるかもしれないが、当時は8枚入れるのが夢だったのである。なんなら《金属ガエル》と合わせて勝手に8枚ずつ入れたドッキリ対戦を友達に仕掛けた人もいたかもしれないくらいだ。
それが合法的に8枚入れられるようになったというのだから、これはもうこれらすべてをぶち込んだデッキを組むしかないだろう。
さらに既に『モダンホライゾン2』で一番のバグと一部で噂されている《ウルザの物語》は、第3章でデッキ内の軽量アーティファクトをサーチできるため、追加の《ダークスティールの城塞》のようなイメージで活用できる。第2章で生成できるトークンも、すべてがアーティファクトで構成された「親和」デッキで運用するなら《マイアの処罰者》のサイズなど軽く超えられるはずだ。
また、レガシーでは使用できていた《ミシュラの工廠》がモダンリーガルになったことも追い風となっている。アタッカーとしての性能もさることながら、2マナ立っているだけで3/3のブロッカーになれるこのカードは、長期戦を戦い抜く上で戦場の確かなサポートとなってくれることだろう。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
4《ウルザの物語》
4《ミシュラの工廠》
4《ダークスティールの城塞》
4《ちらつき蛾の生息地》
1《墨蛾の生息地》
1《湧き出る源、ジェガンサ》
どこまで行っても「《オパールのモックス》があったら……」「この土地がすべてアンタップインのアーティファクト土地だったら……」という不毛な嘆きから逃れられないデッキだが、年々地味に強化を積み重ねていければいつかまた表舞台に返り咲ける日が来るかもしれないという淡い期待を抱いて日々を過ごしています (日記)。
2. ハルクフラッシュ
『モダンホライゾン2』で強化されたのはアーティファクトだけではない。墓地を使った戦略もまた、大幅なアップデートを施されている。
その一翼を担うのが《無名の墓》と《頑強》。これらはレガシーにおける《納墓》と《動く死体》に近い関係性で、ただ《グリセルブランド》にハチャメチャにされた実績を考慮してか、伝説のクリーチャーは対象外という点で少し大人しめにデザインされている。
それでも、モダンほどのカードプールの広さがあればこれらのカードを駆使してバグを作ることなど造作もない。
そう、《変幻の大男》コンボだ。
詳しい説明は省くが、モダンにおいて《変幻の大男》の能力を起動するということは、《影武者》を経由して《臓物の予見者》+《不浄なる者、ミケウス》+《歩行バリスタ》を盤面にセットで揃えるなど、とりもなおさずいくつかパターンのある無限コンボに入れるということを意味しているのだ。
ただ、《納墓》→《動く死体》という動きができたり《暗黒の儀式》があるレガシーとは異なり、《無名の墓》→《頑強》では (釣り上げた後何らかの手段で《変幻の大男》を破壊することは前提として)最速3ターン目にしかコンボが決まらないというのがネックになる。
昔のモダンならばいざ知らず、高速化した今のモダンなら瞬殺コンボを名乗るならばやはり2ターン目に勝ちたいところだ。
ならばどうするか?
そう、1ターン目に2マナ出せばいいのだ。
《猿人の指導霊》の禁止によって、1ターン目の2マナを実現できる手段は《絡み森の大長》と《宝石の洞窟》くらいしかなくなってしまった。しかしそれでも、可能性が残されているならば全力で追求するのがデッキビルダーというものなのである。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
ここまで妨害一撃即死の前のめりな構成にするなら他の墓地を使わないオールインコンボでいい気もするが、確実性をさらに高める方向や、他のクリーチャーを蘇生対象にするプランも考えられるので、《無名の墓》+《頑強》セットの研究の余地はまだまだありそうだ。
3. エンチャントレス
アーティファクト、墓地と来たらお次はエンチャントだろう。少しマイナーなコンセプトだが、『モダンホライゾン2』はしっかりサポートしてくれている。
それが《セラの聖域》の代わりになる《聖域の織り手》と、《アルゴスの女魔術師》の代替となる新たな「エンチャントレス」こと《収穫の手、サイシス》だ。
だが、元ネタのとおりに土地であることや被覆といった除去耐性があるわけではないので、クリーチャー戦闘が主になりがちで除去もそれなりに飛んでくるモダンだと、これらが《稲妻》や《致命的な一押し》によってイージーに除去されてしまわないよう優しく介護してあげる必要がある。
そこで役に立つのが今回の再録でモダンリーガルとなった《真の木立ち》で、《偉大なるオーラ術》と合わせての8枚体制で《聖域の織り手》や《収穫の手、サイシス》を単体除去の魔の手からガードすることが可能となる。
追加の「エンチャントレス」こと《女魔術師の存在》と、ありとあらゆる攻撃をシャットアウトできる鉄壁のバリアーとなる《独房監禁》もモダンリーガルとなったので、あとはエンチャントを並べて引きこもりつつもゲームに勝てるような算段を作るだけだ。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
1《湧き出る源、ジェガンサ》
ロックが決まってしまえば《聖域の織り手》からハチャメチャな量のマナが出ているはずなので、《らせんの円錐》は2~3ターンあれば特殊勝利を達成できることだろう。モダンではトロンが幅を利かせているのがこのデッキにとってのネックだが、「パーマネントを並べるデッキが活躍できなくなるため《ウルザの塔》は禁止となります」という公式アナウンスが流れるのを待つしかない (無力)。
4. ハイパーストーム
『モダンホライゾン2』は様々な既存のコンセプトを強化したが、その中でも元から壊れたコンセプトを強化しているとすれば、それは「バグ」に最も近い存在と言えるのではないだろうか。
そう、「ストーム」だ。
《騒鳴の嵐》は既にPauper (コモン限定構築) 環境を荒らしまくっていると聞くが、モダンにおいても活躍できるポテンシャルがある。
なぜなら、これによって《巣穴からの総出》が8枚になったからだ。
これなら《ぶどう弾》と《巣穴からの総出》という、本体ダメージとクリーチャーによるアタックという同じ「ストーム」というコンセプトでありながら微妙に噛み合わなかった重なり合いから脱却して、明確にアタックを勝ち手段に据えることができる。
とはいえこれだけだと2マナと4マナというマナの差が気になるところ、さらに新カードの《ゴブリンの壊乱術師》は追加の《ゴブリンの電術師》として機能するので、呪文コストを軽減することで安定した「ストーム」の連鎖をつなげることが可能となる。
《騒鳴の嵐》のトークン生成量は《巣穴からの総出》の半分なので、《授業初日》と《ゴブリンの奇襲隊》も合計8枚搭載して一気呵成のワンショットを叩きこもう。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
モダンでは《オパールのモックス》や《猿人の指導霊》といった「0→1」ができるカードは軒並み禁止されてしまったが、今回の『モダンホライゾン2』で《豊穣な収穫》や《一攫千金》という「1→2」につなげられるカードが新たに追加されたので、このデッキのように土地を絞った構築がさらに肯定されやすくなった可能性がある。他のデッキを組む際も、限界まで土地を切り詰める方法を模索することで、新たな領域が開けるかもしれない。
5. ターボエルフ
『モダンホライゾン2』では新カードのみならず、レガシーのカードプールから再録したカードも、モダンに大きな影響を与えている。
そんな1枚が《クウィリーオン・レインジャー》で、まさかこのカードがモダンで使える日が来るとは夢にも思わなかった。
その理由は、あまり共感されないかもしれないが、何せこのカードはメチャメチャにキモい動きをするからだ。
能力起動にタップすら必要としないので出してすぐ起動できるし、各ターン1回なので相手ターンにも起動できたりするし、とにかく動きがことごとく直感に反するのである。
だが挙動が少しキモいとしてもゲームに勝てなければ「バグ」とは言えない。そして《緑の太陽の頂点》が使えないモダンなら、《クウィリーオン・レインジャー》は大した悪さをしないだろう……と、思われるかもしれない。
だが、キューブドラフトをやったことがある方なら既にお気づきかもしれないが、このカードは《ジョラーガの樹語り》と物凄いシナジーを形成するのだ。
1体で2マナを生み出せるマナクリーチャーが《森》を手札に戻すだけでさらにもう1回能力が使えるというのだから、その爆発力は言うに及ばない。
そしてこの爆発力は、明らかに以前のモダンにはなかったものである。ならば、それを生かしたデッキが組めないだろうか。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
4《ラノワールのエルフ》
4《エルフの神秘家》
4《ジョラーガの樹語り》
4《ヤスペラの歩哨》
4《クウィリーオン・レインジャー》
4《遺産のドルイド》
4《イラクサの歩哨》
4《眷者の神童、キナン》
4《孔蹄のビヒモス》
4《イトリモクの成長儀式》
4《豊穣の力線》
《ジョラーガの樹語り》《遺産のドルイド》《眷者の神童、キナン》とマナが爆発する要素が多岐にわたる構成になっており、「どうあっても《孔蹄のビヒモス》につなごう」というある種開き直ったデッキとなっている。《樺の知識のレインジャー》《アロサウルス飼い》《ワイアウッドの共生虫》《緑の太陽の頂点》《垣間見る自然》《自然の秩序》と重要なパーツがことごとく使用できないのでこれでもまだレガシーのエルフの爆発力には遠く及ばないが、少しずつ近づいてきている感もしなくもないので今後のセットでの強化に期待だ。
6. ホロウヴァイン
『モダンホライゾン2』では「マッドネス」も強化を受けている。だが、「マッドネス」は通常マナがかかるギミックであり、手札を捨てるのにも当然マナがかかるのが通常であるため、「マナがかかる×マナがかかる」で最低2マナかかるということでモダンにおいてはあまり活躍していないギミックだった。
だが、もしそれがマナがかからない「マッドネス」であったならばどうだろう?
《猛火のルートワラ》はレガシーで使用可能な《日を浴びるルートワラ》のマイナーチェンジで、同じく0マナで「マッドネス」を発動させることができる。
そして手札を捨てつつも0マナでクリーチャーを召喚できるというならば、組み合わせるべきコンセプトは一つしかないだろう。
そう、《虚ろな者》と《復讐蔦》だ。
「ルートワラは《復讐蔦》とセットで活用せよ」という古来からの格言 (?) にもあるように、0マナの「マッドネス」で1ターン目から《復讐蔦》を走らせる上振れクソ運ゲーを見せつけて対戦相手をブチギレさせよう。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
とはいえこのデッキは誰でも3秒くらいで作れるような形なので、面白味には欠けるかもしれない。
だが、世間では「絶対正式名称言わせないマン」こと《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》と組み合わせる形も研究されているようなので、興味がわいた方はそっちの方面も深掘りしてみることをオススメする。
7. エムラ爆発
これまで「既存コンセプトの強化」を追ってきたが、『モダンホライゾン2』は新規アーキタイプを作れるだけのカードももちろん供給してくれている。
《計算された爆発》は「ドラコ爆発」という古のデッキのキーカード《うつろう爆発》の強化版で、「フラッシュバック」を持っているので対戦相手を仕留め漏らしても2発目で決めきれる点が親切なデザインとなっている。
このカードでデッキを作るなら、やはり先人に倣って最高マナコストのカードをぶちかますしかないだろう。
そう、すなわち。
マジックって初期ライフ15点じゃなかったっけ???
デッキ作りというのは自分を騙すところから始まる。安定した成績を残したいだけなら、ポテンシャルが証明された既存のデッキをコピーすればいい。そうではなく、未知の大海に漕ぎ出そうというのなら、理を捨てて情に任せることも時には必要なのだ。
もちろんただ《計算された爆発》を素打ちするだけだと《予想外の結果》と何も変わらないので、《石なる知識》や《占いフクロウ》を使って15マナのカードをトップに積み込んであげよう。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
3マナ15点というロマン砲に目が眩みすぎていて手札に《土着のワーム》が来てしまうとどうなってしまうのかを全く考えていない頭の悪さが透けて見えるデッキだが、まあモダンだしなんだかんだフェッチギルランアンタップインするでしょ (雑)
8. リビングエンド
最後に、私がはじめて『モダンホライゾン2』のリストを見たとき、最もガチだと感じていた5種の「想起」シリーズの登場である。
なかでも《緻密》に関しては一瞬にして就職先が思いついた。「リビングエンド」だ。
もともと「リビングエンド」というデッキは、前環境のトップメタだった「ヘリオッドカンパニー」が採用する《イーオスのレインジャー長》を極めて苦手としていた。「続唱」の関係上2マナ以下の除去などは積めないのに、マナ加速から2ターン目に《イーオスのレインジャー長》が出てきただけで「続唱」が1枚無効化されてしまうことが確定してしまうからだ。
だが《緻密》がいれば、もはや《イーオスのレインジャー長》に悩まされることもない。《否定の力》で既に非クリーチャーに耐性があることもあって、《翻弄する魔道士》や《スレイベンの守護者、サリア》といった「《死せる生》そのものに対するメタクリーチャー」だけが課題だったが、それらへの対処は《緻密》が一手に引き受けてくれるというわけだ。
なら8枚に増やしたらもっと最強なのでは???
《悲嘆》もまた、そうした「《否定の力》の穴」を埋めるに足る能力を持っている。相手のデッキにこちらにとって致命的なクリーチャーがいるなら、先んじて「想起」してしまえばいいからだ。
とはいっても、これだと「《悲嘆》を『想起』できるほど黒いカードをデッキに積めるのか?」という問題が生じてしまうが、もともと《通りの悪霊》を採用していることに加え、サイクリング枠として《意思切る者》を増量することで黒いカードは水増しできるし、今まではどうしようもなかった「手札に来てしまった《死せる生》」を有効活用することもできるようになるので一石二鳥だ。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
このデッキは新カードの中でも注目株の2種を取り入れることに成功しているため、「理論上最強」だと信じて疑わなかった。
そこで、私の脳内理論を確かめるべく、Magic Onlineの週末大会である「モダンチャレンジ」に出場してみることにしたのである。
Modern Challenge
R1 Equip 🏆🏆
R2 Burn ❌🏆🏆
R3 Miracles 🏆❌🏆
R4 Mirror ❌❌
R5 Equip 🏆❌❌
R6 Lantern ❌❌
R7 RUG Cascade ❌❌久しぶりのモダンチャレンジ。青想起・黒想起は「相手の妨害をしながら」「マナがかからず」「墓地に落とせる」のでリビエン最強カードという脳内妄想。pic.twitter.com/pZiJg8bxmc
— Atsushi Ito (@matsugan) June 5, 2021
そして結果は、惨敗であった。
その理由としては《悲嘆》が思ったより活躍しなかったというのもあるが、やはり一番の原因は《緻密》に加えて《悲嘆》まで採用したことで「サイクリング」の枚数が減りすぎてしまい、デッキコンセプトが破綻していた部分にあったように思う。
かくなる上はやはり当初の思いつきどおり、《緻密》の採用のみでとどめた方が無難だろう。
というわけで、改めてできあがったのがこちらのデッキだ!
《断片無き工作員》の加入によって《暴力的な突発》と《献身的な嘆願》による「 (赤)(緑)(青)(白) の同時要求問題」もなくなり、「リビングエンド」がいま非常に強力であることは疑いようもない。ただ今後は《ウルザの物語》経由で《否定の力》をかわしながら《トーモッドの墓所》をライブラリーから直接サーチされるケースが増えてくることが想定されるため、墓地を活用したコンセプト自体が逆風にありそうだという流れは知っておいて損はないだろう。
9. 終わりに
ハシャギまくって8個もデッキを載せてしまった (しかも載せていないデッキもまだ無数にある) 私の様子から見ても伝わるだろうが、今回の『モダンホライゾン2』は非常にデバッグしがいのあるセットとなっている。
強力なカードやシナジーが多すぎて、どこかにまだ気づかれていないバグが眠っているかもわからない。普段はあまり自分でデッキを作らないという方も、ぜひデバッグに挑戦してみて欲しい。
ではまた次回!
クソデッキビルダー。独自のデッキ構築理論と発想力により、コンセプトに特化した尖ったデッキを構築することを得意とする。モダンフォーマットを主戦場とし、代表作は「Super Crazy Zoo」「エターナル・デボーテ」「ステューピッド・グリショール」など。Twitter ID:@matsugan

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