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機甲虫隊ビートラス アラフィフのための昭和マイナー玩具コレクション 第2回

公開日: / 更新日:Tg

 

ビートラスとは、「Battle Expert Emergency Task Ranger Anthromobile System(戦闘用昆虫体型車輛緊急特殊攻撃部隊)」の略。地底都市コムンよりやって来た5人の昆虫戦士と、彼らの搭乗する5体のインセクター(昆虫型機動メカ)の部隊名称である。
(アートミックデザインワークスより)

 

 うっかりすると忘れられてしまう、昭和マイナー玩具の魅力をお伝えするシリーズ第2弾。今回は1984年にてれびくんにコミック連載され、タカトクトイスからは変形トイが、今井科学からはプラモデル、そして栄光社からはぬりえも発売された『機甲虫隊ビートラス』とその系譜にあたる作品をご紹介します。

第1章:トランスフォーマー前夜~80年代前半変形トイ史~

『機甲虫隊ビートラス』は第1回で紹介した『龍虎巨人ゴーカイザー』以来の、タカトクトイスの玩具オリジナル作品です。当時の男の子向けのロボット玩具は、82年~83年にかけて大ヒットした同社のバルキリーの影響で、変形ロボのムーブメントが吹き荒れていました。


▲タカトクトイスから発売された1/55可変バルキリーは当時の大ヒットとなりました。(写真は復刻仕様のオリジン・オブ・バルキリーと当時品のアーマードパーツを使用しています)

 ポピーはすでに1982年より『マシンロボ』で数多くの変形ロボをリリースしていましたが、架空車輛から実在のメカモチーフへと変化、商品名が実在メカのものとなっていきます。さらにより実車の再現性を高めた高価格帯のマシンロボDXもリリースします。
 ライバルとなるタカラの『ミクロマン』はカメラやラジカセ、銃などの1/1ガジェットがロボットに変化する「ミクロチェンジ」シリーズを展開。「カーロボット」で実車を次々にリリースした同社の『ダイアクロン』は、「リアル&ロボ」シリーズと銘打ち、スケールモデルをヒントに電車・戦闘機・建設車両など次々とモチーフを拡大していきました。なお、ダイアクロンではリアル&ロボシリーズが盛り上がるにれ、同シリーズのセールスポイントであった統一スケールのコンセプトが薄れ、3cmの隊員が搭乗する機能も省かれていきます。「ミクロチェンジ」と「リアル&ロボ」シリーズは後に『トランスフォーマー』へと組み込まれていくのはご存知の通り。ある意味変形ロボの爆発的増加と収束の時代といえるかもしれません。


▲82~83年頃に発売されたミクロチェンジシリーズの一部(ラジカセロボはトランスフォーマー版サウンドウェーブを使用しています……社内に転がっていたので……)。

 そして当のタカトクトイス自身も『マクロス』以降は変形モチーフを色々と模索していたようです。SFメカ(『オーガス』)、蒸気機関車(『サスライガー』)、ジープ、ヘリ、戦車などの軍用車両(『ドルバック』)、スーパーカー(『ガルビオン』)などを1~2年のうちに続々リリースしていきました。そうした流れの中でさえも、まだまだ昆虫モチーフは冒険的であり、まずは玩具オリジナルで試みようとしたのが『機甲虫隊ビートラス』だったのではないでしょうか。


▲ビートラスに同梱されたカタログより。

 

 現在では動物や昆虫モチーフの変形ロボというのは珍しくありませんが、『ビートラス』登場までは、まず動物モチーフというのが主に悪役に用いられることが多かったんですね。当時の変形ロボはあくまで機械が人型のロボになるのが主流で、別の生命体から変化するのは少数派でした。これはあくまで個人的な意見ですが、合体や変形するロボットに生物を使用するのは、時代的にある種の忌避に似た感覚があったように思っています。私自身も頭や胴体、腕や足などブロック単位のブツ切りは平気なのですが、胴体がさらにタテや前後に裂かれたり(ガ・キーンやVF-1、足だとロボットベースやアイアンギアなど)するのが苦手なんですよね。同じ感覚で動物や虫などの生命体が変形するのも、一つのパーツが分割されたり中身をえぐられたりするロボに感情移入して「いてて……」と思ってしまうんですね。このへんホント私見ではあるのですが、当時少なからぬ人が同様に感じていたのではないでしょうか。そして当然この手の描写には、時間が経ち同様のケースが多くなるにつれ慣れていってしまうのですが。……少し脱線しました。

 

ロボットが昆虫に変形! その発案者は現在アニメ業界で活躍するあの人!!


 さて、そんな昆虫が変形するというアイデアは、アニメーションその他の企画やデザインを行うスタジオ「アートミック」から提案されたものだったようです。1987年発行の「アートミック デザインワークス」によりますと、ビートラスのデザインは『APPLESEED』『ULTRAMAN』『攻殻機動隊 SAC_2045など、多くのアニメーションの監督を務めている荒牧伸志氏。1983年頃、当時はまだ社員ではなかった荒牧氏が、『ダイアクロン』の敵役・昆虫ロボに触発されてアートミックの鈴木利充社長に提案したことが発端でした。
 荒牧氏は昆虫そのものへの愛着もあったようで、当初の昆虫モードのデザインも実物そのままの生物的なラインでした。玩具化が進むにつれ、メカニカルな外観に変更されたようです。


▲ビートラスの発想のもととなった『ダイアクロン』昆虫ロボ(前列)。後列はトランスフォーマー版インセクトロン(インセクティコン)。

 キャラクターの初期デザインは、当時アートミックに所属していた漫画家の来留間慎一氏によるもの。「デザインワークス」にはそのラフも掲載されており、地上人との差別化のためか触覚が生えているのはいいとして、なぜか全員がマッシュルームカットでした。ビートルズとかけていたことに気づくまで少しかかりましたね。最終的にキャラクターデザインは当時アートミック社員で、現在は漫画家として活躍する宮尾岳氏となりました。宮尾氏は商品のキャラクタービジュアルに加え、「てれびくん」誌上でのコミカライズの作画も担当しています。

 おもちゃの原型はタカトクトイス側(同社内もしくは当時の協力会社)で可変バルキリーを担当した人の手によるものとのことです。個人名は不明ですが、「デザインワークス」内で荒牧氏は「天才変形師」と呼んでいました。


▲1990年代にアニメ、コミック、ゲームなどでマルチメディア展開した『魔物ハンター妖子』シリーズのLDジャケット(弊社買取品)。イラストおよび本作のキャラクター原案を担当したのが宮尾岳氏である。現在も『アオバ自転車店』シリーズや『二度目の人生アニメーター』を連載中。

 こうして列挙すると座組にもかなり恵まれていたように思えます。しかしビートラス発表後まもなくタカトクトイスが倒産。メイン4体のうちビート・バダムは未発売となりました。しかしバダムの金型は完成していたようで、他の3体と共にバンダイを経てハスブロに渡り『トランスフォーマー』の一部隊「デラックスインセクティコン」として再デビューします。タカトクトイスのスーパーバルキリーがスカイファイヤーに転用されたのと同じ経緯ですね。開発のきっかけとなったインセクトロン(もと昆虫ロボ)の上位シリーズという位置づけでした。なお、イマイからリリースされていたプラモデル版では、ビート・グガルが未発売でした。

 タカトク倒産については当時の印象と後々知った諸々をあわせて語りたいところですが、それはまた別の機会といたしましょう。

ビート・バダム補足
 タカトクトイス版ビート・バダムについては一部での目撃談もあり、絶対に未発売とは断言できません。事実タカトクトイス倒産後にガルビオンなどの未発売在庫が流通しているケースもあります。ただし現状品物が写真などで確認されていないことと、先の目撃談も正規流通上での話ではないため未発売としています。もし情報および商品がありましたらたいむましん宛にご連絡ください。

 なお、イマイ版のグガルは現時点では目撃談などもないようです。

 

天才メカニック集団・アートミックとは?


 アートミックとは、1977年、元タツノコプロスタッフの鈴木利充氏や村上豊氏が中心となって設立した、SE・メカニック作品を中心に企画・制作・プロデュース・デザインを行う集団です。
 90年代後半に倒産してしまうものの、そのスタッフは現在もアニメ界や漫画家・ライターなど多方面で活躍しています。

代表作:『テクノポリス21C』『機甲創世記モスピーダ』『ロボダッチ』『銀河の鷲メガロ・ザマック』『メガゾーン23』『ガルフォース』『バブルガムクライシス』ほか

主なスタッフ(敬称略):鈴木利充、村上豊、柿沼秀樹、荒牧伸志、園田健一、小泉聡、山根公利、夢野れい、平野靖子、小柳幸子、来留間慎一、宮尾岳、窪田正義

(参考「アートミックデザインワークス」およびWikipedia)

 

 

 

第2章:地球をすくえ! これが『機甲虫隊ビートラス』だ!

『ビートラス』の世界設定は、地球空洞説と多元世界を組み合わせたものとなっています。本来交わることのなかった地底世界と我々地上人(地表人)ですが、地上人による資源の濫獲がきっかけで、地底人の中でも強硬派のガイム族の怒りを買ってしまうようです。エネルギー問題や公害・自然破壊への警鐘は、60~80年代の重要なキーワードの一つです。経済の発展が一段落したとき、それまでのなりふり構わず行ってきた開発を振り返り、未来へ残すべきものを考えようとしていた時代でした。

 ※もう少しかみ砕いていうと、この頃の地球を侵略しようという連中の言い分はたいがいそのへん(エネルギーや環境にケチをつけていくスタイル)でした。

 

STORY1(玩具版パンフより)


▲タカトクトイスの同梱カタログ

 1984年、地球のいたる所で謎の地殻変動が起きていた。それは地中の奥深くにある未知の世界コムンにおけるエキム族とガイム族の戦いによるものであった。
 地底都市コムンとは、地表の1/10の面積と5倍の重力を持つパラレルワールドで、その高度な文明と豊かな自然は、その2種の部族の力のバランスで保たれていた。しかし、地上人の自然破壊がそのバランスを崩してしまい、コムン大戦がはじまったのである。
 その大戦の影響で、地上は壊滅状態へおちいり、その事態を重視したエキム族のリーダー、カリムは5期の昆虫型メカとオペレーターのカルマ、キルロ、トルモ、ラミルと共に、機甲虫隊ビートラスとして地上に出たガイム族と戦うために出動した。そして、運命的に出会った地上人。守と共に地球を守るべく、地底都市コムンの中でふたたびガイムとの闘いが今、始まろうとしている。

(※補足:エキムとガイムのネーミングは恐らく「益虫」と「害虫」から)

 

STORY2(キット版パンフより)


▲イマイのキット版同梱カタログ

<設定&物語>
●地底都市コムン
 コムンとは、地上より約100キロのところに位置する地底都市で、地球(地表)との1/10程度の面積と約5倍の重力をもつ第二の地球である。だが、現在我々が住む地球とは、次元が異なり、数十パーセントの位相をもつパラレルワールドである。従って、現地球の地底内では存在しない次元位相の空間である。そして地上とよく似たその気候風土は、豊かな自然と知的生物の生息を可能にし、尚且つその知的生物(地底人)によって高度な文明が築かれていた。

●地底人エキムとガイム
 地底には思想的な違いにより、別れ住む二種の知的生物が存在していた。そのひとつはエキムと呼ばれ、平和を好み地底に安住を求める種族であり、もうひとつをガイムと呼び、好戦的で残虐な修正をもつ、地上侵略を企む種族であった。だが、ガイム族も地底ではエキムの支配下にあり、その魔手を地上に伸ばすことはできず、力による武力の均衡が保たれ地底、地上とも平和な日々が続いていた。
 しかし、地上で起きた必要以上の地中資源の開発や鉱物資材の発掘によって自然のバランスが崩れた。その影響は地底奥深くのエキム族たちにもおよび、遂にはガイムの地上侵略をも誘発してしまうことになる。

●エキム族


 エキムとは今をさる数千年前、地底に移り住んだといわれる謎の民族マヤのまつえい。知力、体力、精神力ともひじょうにすぐれた民族であったが、突如として地上から姿を消した為、今ではまったくその手掛かりがつかめなくなっている。
 しかし、そのマヤ文明の遺跡あとから発掘された「黄金のかぶと虫」は有名で、彼等は神の使いとして甲虫を崇めたという。(これは本当の話で、エジプトにもこのような物があり、ツタンカーメンの「ルビーのこがね虫」などがある)

 

●ガイム族


 もともとガイムはエキム族と同じであったが、その性格が地上人に近いため(私利私欲の為に公道すること)対立するようになった。このような事から仮令るならば、地球をりんごに見立てた場合、ガイムはそこに巣くう寄生虫であり、最後には地球を破滅させてしまう悪魔なのだ。

 

●物語の発端
 1984年、地球のいたるところで地殻変動が起きていた。しかしその実体はいっこうにつかめず、科学者たちは単なる自然現象としてしか扱わざるをえなかった。だが、その被害規模は読象以上に大きく、地震や津波などによって一瞬にして壊滅した都市も数多くあった。被害のあった年の多くは、軍事施設(アメリカのペンタゴンなど)を中心とし、その為に各国家間に不安な雰囲気が漂っていた……。
 世界的な大事件にもかかわらず、まだ日本にはその被害はおよんではいなかった。そしてそんなある日のことである。巨大なビルの建ち並ぶ新宿副都心、そこには勤務中のサラリーマンや学校帰りの学生たち、はたまたショッピングをしている主婦たちで、いつもどおりに賑わっていた。そして、その人ごみのなかに主人公(大地 守)の姿があった。突如、アスファルトで舗装された路面が、低く鳴りわたる地響きとともに亀裂がはしり地中から二体の巨大なメカ昆虫(ガイム側のメカ)が現れ、次々と地上を破壊していった。逃げ惑う人々、炎上する大都市、そして遂に東京にも最後の時が来るかと思われたその瞬間、主人公の前に新手の巨大ロボットが出現した。なんとそのロボットは危機に陥った守を助け、都市を破壊する二体のメカを高出力のビーム砲により退治してしまったのである。目の前で起きる数々の異変は守の想像をはるかに越えたものであった。しかし、それ以上の出来事が今、お器用としていたのだ。……それは、12メートルもあろうかと思われる巨大な人型ロボットが機械音とともに変形し、ついにはカブト虫の形体になってしまったのである。……鋭くのびた角、頑丈そうな甲羅、そして6本の脚、それは正しく日本に生息する巨大なカブト虫の中から人陰が現れるのを目撃した。そして、その人陰は守の存在にきづいたかのようにちかづいてのだった。そして、その男は自らを機甲虫隊ビートラスのリーダー、カリムと名乗り地底王国コムンからきたことを説明した。守とカリム、何か運命によって、めぐり逢ったような二人、そして巨大メカ昆虫と可変ロボットの関係はどうなっているのか、謎のままにこの物語はすすんでいく。

 

 

オリジン・オブ・ビートラス:玩具版ビートラス徹底研究!!


 エキム族の進んだ科学力によって開発された昆虫型機動メカ(インセクター)に搭乗することのできる選ばれた戦士たちのことである。また、昆虫型機動メカとは作戦上、3タイプの機動体型をとることのできる可変メカニズムであり、戦闘体型用のビート・アタッカー、偵察体型ビート・ホバー、地底走行用のビート・モービルに変形する。このように地球のいかなる場所においても、その性能の真価を発揮できるように設計された兵器なのである。

 

●昆虫の王者カブトムシがモチーフの主役ロボ ビート・ガドル

 BEETRAS-01 かぶと型インセクター 重装備白兵戦闘用 

全高:12.68[vaclam]
全備重量:18.50[vacrm]
エンジン推力:11.50[vacrm]×2
最大速度:3.30[vacz]
武装:55[vac]ロケットランチャーポッドA
武器:ガドルソード、ガドルショット

※機体スペックについて
イマイ版カタログでは単位が地上のものに変更されており、vaclamはm、vacrmはtとなっています。vacは表示がなくなっていますが、mmと思われます。問題は速度をあらわすvaczで、カタログではkm/hとなっているものの、時速3kmから4kmはほぼ人間の歩く速さですので、何らかの補正が必要と思われます。マッハでしょうか?

 

 カブトムシに変形する昆虫型機動メカ。玩具版、キット版ともに1番手に発売され、まさに主役ロボといった面持ちがあります。
 ビートラス隊のリーダーだったビート・カリムの乗機でした。地上での戦闘でカリムは命を落とし、地上人・大地守が替わって操縦します。なお、コミカライズ版では守は地下世界に移って戦闘に参加すると同時にヘラクレス・ガドルに移乗します。その後若干の間をおいてビートラス隊の創設者、ビート・アロンが搭乗するようになります(ガドルは修理中?)。パワーアップ後も主人公機が引き続き活躍するパターン。Wガドルというだけで燃えてきますね。

 

タカトクトイス玩具版


▲ビート・アタッカー


▲ビート・ホバー


▲ビート・モービル

 主役ロボであるためか可動部が多く、ポージングの自由度も高くなっています。ふくらはぎのカバーを開けば正座も可能。金属パーツは外装ではなく、関節軸などにのみ使用されています。トイ版の特徴として、ランサックを含む4体とも手首がスプリングで自動展開します。ただしその機能が変形の邪魔となることも……。


▲通常でも立膝姿勢が可能。


▲パッケージ

 

 世界最大クラスの甲虫にパワーアップ! ヘラクレス・ガドル


 パワーアップ形態のヘラクレス・ガドルの変更点は、大型化された頭部と胸部。胸部は頭角が二つに割れて胸飾りになります。頭部は胸角(ややこしい)がスライド短縮した状態。モチーフとなったのは南米などに棲息するヘラクレスオオカブトムシ。1980年代当時は検疫の関係で日本で飼うことは不可能な昆虫でした。ボディカラーはグリーンとイエロー。

 

大地 守(17歳)

 正義感の強い地上人。地上でのエキムとガイムの戦闘の中で、カリムの遺志を継ぎガドルのパイロットとなる。

 

ビート・カリム(地上年齢17歳)


 エキム族の選ばれた者だけに与えられる称号「ビート」を持つ有能な兵士で、ガドルに搭乗するビートラス隊リーダー。

 守とカリムは瓜二つという設定で、実際のところヘルメットをかぶったカリムと守の区別がつきません……。コミカライズ版では瓜二つの設定はなく、カリムの顔はバイザーで隠されたままでした。

 

●カブトムシに並び立つ人気甲虫・クワガタムシに変形! ビート グガル

 BEETRAS-03 くわがた型インセクター 重武装突撃戦闘用 

全高:12.57[vaclam]
全備重量:19.60[vacrm]
エンジン推力:12.50[vacrm]×2
最大速度:2.80[vacz]
武装:55[vac]ロケットランチャーポッドC
武器:グガルダガー、グガルショット

 カブトムシとはライバル的なイメージのあるクワガタムシに変形。本作でもそのお約束は踏襲しており、ビートラス隊のNo.2的な立ち位置、サブリーダー的立場であるビート・カルマが搭乗します。
 設定デザインでは肩から張り出した大あごのパーツや脚部のエンジンなど全体的にボリューム感のある、まさに重武装型っぽいのですが、それらのパーツのボリュームをとられたためか、本体の頭頂高は一番低くなっています。ビート・モビル形態では胸部カバーと一体化した大あごが可動します

 

タカトクトイス玩具版


▲ビート・アタッカー


▲ビート・モービル(ビート・ホバー形態はなし)

 巨大なハサミのおかげで、ガドルと遜色ないボリュームのビート・グガル。しかし実際にはロボットの腕や昆虫の脚部がほとんど動かないなど、パーツ数の制限を感じる仕様になっています。パッケージなどのイラストではボディカラーはブルー系ですが、実際の製品は黒に近い色となっており、後述のビート・バダムとあわせてカラーリング決定までの苦労がうかがえます。

 なおイマイのキットは未発売のまま終わりました。


▲パッケージ

 

 主役級の扱い、ハイパー・グガルへの強化案も存在!


 ヘラクレス・ガドルと同様にパワーアップ案も早くから公開されていました。頭部と胸部、胸部から生えた大あごのデザインが異なります。ノーマルのグガルはミヤマクワガタをモチーフにスタートしたとのことですが、そうなるとハイパー・グガルはオオクワガタでしょうか。あいにくコミカライズ未登場のため、カルマが乗るのか全くの新機体なのかは不明です。ボディカラーは明るめのグリーン。
 なお、左の線画は塗り絵から流用していますが、胸部のフィンや大あごのスラスターなどは塗りつぶされています。おそらく塗り絵としての遊びやすさを優先したものと思われます。

 

ビート・カルマ(地上年齢17歳)


 カリムのサブを務める勇敢な兵士。性格はクールだが戦いぶりは激しく、ガイムを父の仇と復讐を誓っている。

 画像はやはり塗り絵より。普段は愛嬌もある戦士のようですね。カリムや守がかなりガチガチの正義感ぽいので、サブである彼が色々気をまわしているのかもしれません。

 

●不運の戦士? 正規カラーも不明のまま終わった ビート バダム

BEETRAS-02 ばった型インセクター 機動迎撃戦闘用 


※国内版未発売のため写真はトランスフォーマー版を使用しています。


▲おもちゃ版カタログのデザイン画と試作写真。

全高:13.74[vaclam]
全備重量:15.30[vacrm]
エンジン推力:9.80[vacrm]×2
最大速度:4.60[vacz]
武装:55[vac]ロケットランチャーポッドB
武器:バダムシールド、バダムショット

 

 ビートラス隊最年少のビート・キルロが搭乗する昆虫型機動メカ。軽量タイプのイメージ通り、機動性の高いインターセプターとして活躍するようです。銃ともう一つの武器はシールドとなっているのも、装甲の薄さをカバーするためかと想像をかきたててくれます。また、股関節がボールジョイントです。設定デザインやイマイのキット版ではグリーンでしたが、おもちゃのカタログに載っていた試作は茶色になっていました。グガルが青から黒に変更されたり、試作版のほうが後に決定しているので、もしも順調に発売された場合茶色になっていた可能性もあります。ヘラクレス・ガドルが緑、ハイパーグガルも緑基調だったため、色のかぶりを避けたのかもしれませんが、それはそれで改造前の機体が茶系なのでやっぱりかぶっているというオチでした。
 カブトムシ、クワガタ、バッタの3つまでがダイアクロンの昆虫ロボと共通のモチーフとなります。

 

玩具版(トランスフォーマー版)


▲ビート・アタッカー


▲ビート・モービル(※写真はTF版です・ビート・ホバー形態はなし)

 国内版は未発売なので何とも言えないのですが、他のマシンの例を見る限りでは、バッタの触覚先端や羽のカドなどが丸められていると思われます。

 

ビート・キルロ(地上年齢13歳)


 隊の最年少で根っからのひょうきんもののマスコット的存在。しかしその頭脳は天才でいかなる難問も解いてしまう。

 

 

●ビートラス隊の目にして耳・ビート ゼグナ

BEETRAS-04 せみ型インセクター 偵察電子戦闘用 

全高:10.24[vaclam]10.24
全備重量:15.70[vacrm]
エンジン推力:9.30[vacrm]×2
最大速度:3.60[vacz]
武装:55[vac]ロケットランチャーポッドD(キット版カタログではΔ)
武器:ゼグナショット、ゼグナトマホーク

 ビート・トルモが搭乗する昆虫型機動メカです。ビートモービル形態はセミ型。偵察電子戦闘用という設定で、高性能なセンサーを持っていたり強力なジャミングを発信できるのでしょうか。頭部は口吻がアンテナ状にも見え、昆虫時の目もセンサーに見えてきますね。パイロットのトルモの体格に合わせてか、武器は斧型のゼグナアックスとゼグナショットです。

 

タカトクトイス版


▲ビート・アタッカー


▲ビート・ホバー


▲ビート・モービル

 ロボット(ビート・アタッカー)のバランスは実は一番良い? むしろトルモが搭乗する割にはスリムにも見える印象です(偵察型なのでスピードも重要なのでしょう)。そのためか玩具版のビート・ゼグナのパッケージ側面では、なぜかトルモをさしおいてキルロがパイロット扱いになっています。


▲パッケージ

 

ビート・トルモ(地上年齢17歳)


巨漢で力持ちだが、気は小さくてお人よし。メカの修理に関してはエキスパートである。(お人よし過ぎてトイ版のパッケージをキルロに譲ったのか……)

 

 

●ビート パピル

BEETRAS-05 てんとうむし型インセクター 小型情報処理用 

※性能設定なし

 カリムの妹ラミルが搭乗するテントウムシ型インセクター。アタッカーモードではスカートのように展開している前羽が特徴です。詳細な設定は存在しませんが、テントウムシモチーフだけあって小柄なのかもしれません。準備稿ではより頭身の低いバージョンが存在し、姉妹とも呼ばれていたようです。デザインワークスの解説では「変形しないのでは?」と言われていましたが、のちの『ビーストウォーズ』のようにロボットモードがどんな形態でも外皮を象った装甲内に収めてしまう、いわゆる「ガワ変形」であればおよそ不可能な変形はないので、変形は可能でしょう。

ビート・ラミル(地上年齢15歳) 
エキム族の長老の孫娘で、カリムの妹。美しく心優しい少女だが、おてんばで口うるさい紅一点。兄のカリムによく似た守が好きになり、掟をやぶって地上に移住する。

パッケージ側面


▲昆虫モード(ビート・モービル)が描かれた左側面。メカニカルなディテールとはいえ、遠目には十分リアル感のあるビジュアルだ。


▲こちらの面を並べると非常に「惜しい」感が強まるパッケージ右側面。バダムのパッケージに描かれるはずであっただろう「AS」が揃えば……。

 

 

●海を越えての4体集結!! トランスフォーマー版

 先述通りタカトクトイス倒産後、海外版『トランスフォーマー』にてデラックスインセクティコン(インセクトロン)として発売されました。国内版に比べて、安全対策や耐久性向上のため一部金型が変更されています。国内未発売だったビート・バダム型も商品化され、唯一4種類が同じフォーマットで揃うブランドです。入手したのはすべて本体のみ(一部武器つき)といった状態だったのですが、パッケージにはアートミックの証紙も貼られていたようです。


▲海外版にはアートミックとバンダイのコピーライトがモールドされています。

▲国内仕様はタカトクトイス>アートミックの順。

 

●インセクティコン心理戦闘兵ヴェノム

 デラックスインセクティコンのリーダーで、その口吻から有機的であろうと機械であろうと生命を台無しにする化学物質が詰め込まれているという設定です。各部の金型が変更されており、頭部の口吻や昆虫の足先のシャープさをなくす変更が行われているほか、腕を固定するコの字型のパーツの空洞が埋められ、耐久性が増しています。

 

●インセクティコン射撃手 バラージ

 ソニックライフルを持ち、さらに角からは光子を発射、残酷で無慈悲に相手を撃ち果たしていきます。
 どことなくヘラクレス・ガドルを連想させるカラーリングが特徴のバラージ。昆虫の頭角や足の先端が丸められています。

 

●インセクティコン盗賊 チョップショップ

 貪欲な盗賊で、そのハサミは鋼鉄をも切り裂きます。そのハサミ(大あご)の先端のトゲやロボット頭部のアンテナ先端、昆虫の足の側面のトゲなどが丸まった形状に変更されています。ちなみに2013年頃にレジェンズクラスメガトロンのパートナーとして、武器にもなるマイクロマスター仕様で商品化されました。茶褐色のチョップショップのほか、クリアブルーの限定品ビートチョップも配布されています。ビートチョップはビート・グガルをイメージしたカラーと思われます。

 

●インセクティコン戦士 ランサック

 争いだけを求める性格。電流を放つ触覚が武器という設定。黒と黄色のカラーリングで精悍な印象です。バダムが触覚を下に向けているのに対して、ランサックは上向きになっています。国内版が存在しないため金型変更の比較はできませんが、他の3体の例を見るにつれ、昆虫の足先はもっとシャープだったのではないかと想像できます。触覚先端ももっとシャープだったのではないでしょうか。グガルのアンテナの例を見るとよく先端に球をつけられなかったものだと感心します。

 

 

変形プラモへの技術を惜しみなく投入! 今井科学版キット

ビートラスシリーズ

 タカトクトイス倒産後もイマイは存続するのですが、残念ながらビート・グガルは未発売になったキット版。開発も遅れ気味だったのか、キット版カタログでもグガルの扱いが小さくなっています。トイ版より一回りほど小さいのですが、変形・可動に関するギミックは、一部簡略化されつつほぼそのまま置き換えられています。

 キットはいずれも関節部や昆虫形態の足などの細いパーツが軟質樹脂製となっており、破損しにくくなっていました。これらは『マクロス』『オーガス』などの可変モデルで培った技術を投入できたものと思われます。当時バルキリーなどは可変タイプと非可変のプロポーションタイプの同時展開が定番化していました。そのためかパッケージでも「可変」の文字が強調されています。

 

ライトに生まれ変わった昆虫ロボシリーズ

 

 ビートラスシリーズと基本的な内容は同じですが、一部成型色の変更、シールの省略、取説は塗装指示がないなど簡略化されています。カブト虫ロボの成型色はほぼ同じですが、バッタロボはバダムよりも明るい緑に。セミロボも黄土色から黄色になったほか、軟質パーツが茶色から黒に変更されています。

 

 


 

てれびくんコミカライズ

 小学館の「てれびくん」誌上で、1984年春先より約半年間、コミカライズ版が連載されています。 ストーリーはトイ版ストーリーを踏襲していますが、連載中にスポンサーであり企画元であるタカトクトイスが倒産してしまいました。
 作画は現在『アオバ自転車店』シリーズと『二度目の人生アニメーター』を連載している漫画家の宮尾岳先生。当時アートミックに勤めており、ビートラスのキャラクターデザインや版権イラストも担当していました。宮尾氏はアートミック独立後もフックトイのパッケージイラストや『魔物ハンター妖子』『電光超特急ヒカリアン』などのキャラクターデザインを手がけています。あくまで『ビートラス』はコミカライズであり、マンガ家としてのデビュー作は『七味撫子うのん』とのことです。

 

栄光社の塗り絵

 「てれびくん」の漫画連載のほかに塗り絵を2冊確認しています。どちらが先なのかわからないのですが、通常のノート型のほうがヘラクレス・ガドルやハイパー・グガル(本文ではグレート・グガル)など後期メカが出ている点、ノート型の表紙の図版のほとんどがひもとじ型の絵柄の流用であることから、ひも綴じ版が先行と思われます。作画はおそらく宮尾岳先生。2タイプ共にビート・ラミルのカットが多いです。


▲キャラクター紹介のアイコンは栄光社版塗り絵より。設定画を塗り絵向けに簡略化したビジュアルのほか、「てれびくん」連載時のコマをベースにした絵も多い。

 

ショウワノート『ビートセブン』

塗り絵
 発売時期は不明ですが、パピルを含むビートラス5戦士に、蝶と蛍を加えた7人の昆虫戦士の活躍を描いています。内容は正義の昆虫7戦士と悪の巨大虫ガイム軍団の戦いのみで、パイロットは登場しません。そのため『トランスフォーマー』のように意思を持つロボットが自ら戦っている可能性があります。なお、テントウムシ型のビート・パピルは、レディバードをもじったと思われるビートレイデへと名称を変更。パピヨン(蝶)を連想させるパピルの名は、新しい蝶型の女戦士に譲られています。もう一体の新メカは蛍型のビートビガル。ビートパピル、ビートビガルとも基本デザインは従来のビートラスの延長戦上にありますが、クリンナップのタッチが異なる印象です。だれが設定したのか気になりますね。そのほかビートガドルとグガルのボディカラーも変更され、ガドルはブルー系、グガルはチョップショップを思わせるブラウン系と、ちょうどタカトク版のイラストのビジュアルを交換したような形になっています。

 なお、ガイム軍団はすべて昆虫形態のままであるため、差別化なのかビートセブン側の昆虫モードは描かれませんでした。



▲表4に全メカの色見本が掲載されています。

 

ジグソーパズル
 塗り絵と同じくショウワノートから発売された100ピースのパズル。ビート・ガドル、グガル、ゼグナ、パピルと敵メカ3体が描かれています。なぜか合計でちょうど7体……。アートミックのコピーライトつき。ガドルのカラーリングは塗り絵版より青が強く、よりヒーローらしい印象です。

 

 


 終章:『機甲虫隊ビートラス7つの謎』

 それでは今回のビートラスの謎を列挙しておきます。真相をご存知の方はツイッターアカウント(@Time_Machine_Go)など宛にご連絡ください。

1:本当にタカトク版ビート・バダムは発売されなかったのか?
  タカトクアイテムは倒産後様々なかたちで流出していますので気になるところです。

2:タカトク版ビート・バダムの色は緑?茶?どちらになる予定だったのか?
  1が確認されれば解決する問題でもあるのですが、未発売なら未発売でどちらの色が正式だったのか気になります。

3:イマイ版ビート・グガルはどのレベルまで開発が進んでいたのか?
  それなりにいいペースで出ていたので、最後の1種が金型の欠片もないということもなさそうなのですが……

4:フックトイとの関連性は?
  JAMの最強バトル昆虫など、ビートラスの影響下にあるアイテムは全く関連がないのか? (設計者かデザイナーがビートラスに近い方なのでは?)

5:ビート・パピル(新)とビート・ビカルのデザイナーは誰?

6:なぜ塗り絵のロゴはアスペクト比を変更されてしまったのか

7:募集中です

 


おまけ:虫に願いを

 変形ロボットブームのピークに颯爽と現れるも、メーカーの倒産によって志半ばに消えていってしまった不遇なシリーズですが、各メカごとに昆虫の特徴を反映したまとまりのあるデザインだったと思います。それぞれそのデザインから、こいつはこんなシーンで活躍する……というのが想像できるんですよね。複数のキャラクターが並び立つ場合「シルエットやデザインを見ただけでその職業(役割・得意技)がわかるようにする」ことを心がけるときいたことがあります。90年代の格闘ゲームなんかもそうですよね。
 虫をモチーフにしたからというわけでもないのでしょうが、トランスフォーマーとして国内未発売アイテムがリリースされるなど、意外にしぶとい一面もあります。個人的な希望を言えるなら、やはりもう一段階、進化したビートラスが見てみたいですね。バルキリーモチーフのスカイファイヤー(ジェットファイア)や、ドルバックのキャリバーやガゼットをベースとしたロードバスターやホワールがリメイクされているので、いっそ現代の技術でメカニカルな昆虫に変形するデラックスインセクティコンをリメイクしてほしいなと常々考えています。
 金型の権利を持っているバンダイグループでも、トランスフォーマーを展開しているタカラトミーでも、どちらから出てもアリですよね?

 


 

参考資料
●B-CLUB SPECIAL アートミックデザインワークス(発行:バンダイ)

●トランスフォーマージェネレーション(発行:ケイブンシャ)

※補足 「アートミックデザインワークス」は現在入手困難ですが、「トランスフォーマージェネレーション(TFG)」は、「TFGデラックス」(ミリオン出版)、「TFGデラックス ザ・リバース:35周年バージョン」(メディアボーイ)などの改訂版が近年まで発行されています。

 

 

 

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