サンリオとりぼんとファンシーと
間口一間ほどの小さなお店は、今のような雑貨屋さんなどない当時にはとても珍しく、友達へのプレゼントや特別にご褒美で買ってもらえる文具を吟味する場所として、足繁く通ったものだ。 記憶をたどると、最初はそれほどキャラクターの種類が多かったわけではなく、ハローキティやパティ&ジミー、スヌーピー(サンリオのキャラクターではないが、ライセンスを取得していたため、スヌーピーグッズ販売したのは国内ではサンリオが最初。)ぐらいで、キティより後発組のマイメロやキキララのキャラクターを幼く感じていたのを考えると、そのお店(「ギフトショップさかもと」だったと思う。)はサンリオグッズが普及し始めてすぐの1970年中ごろに開店したと思われる。 サンリオが出現する前はキャラクターものと言えばアイドルかアニメ柄か亜土ちゃん(水森亜土はサンリオの外注デザイナー。)ぐらいで、その後続々と学研のタイニーポエムやソニーのレッツチャットなどのキャラクターが乱立される。 そしてこのあとペパーミントグリーンをはじめとする中間色が基調の1980年代ファンシーブームへ突入するのである。 いつも使うものがどうせなら可愛ければいいな、から、可愛いからあれもこれも集めたい。に変化する時代でもあった。 時を同じくして1970年代中ごろ、少女漫画雑誌のりぼんやなかよしのふろくが、スター(≠アイドル)のピンナップやブロマイド一辺倒から漫画作家のイラスト入り小物に変わり出す。 ふろくの雑貨化だ。 中でも、陸奥A子先生のイラスト入りのりぼんの付録は、デザインセンスが良く、現在でもコレクションする方が多い。 陸奥A子と言えば「たそがれどきに見つけたの」をはじめとする、乙女ちっくなストーリー展開で少女たちの心を魅了した漫画家だが、りぼん本誌でのデビューはふろくのイラストが最初である。 その軽やかなタッチのイラストは、紙でできたふろくの雑貨という一見幼稚なものを、一気に垢抜けさせた。 流行のアイビールックの男の子と女の子が、レターセットや筆箱、小物入れなどにあしらわれ、使うのがもったいないくらいお洒落なもの(に感じたの)だった。 りぼんのそれは、キャンディキャンディというキャラクターとして成立している絵が施されているなかよしの付録より、はるかに「お姉さん」ぽかったのである。(実際、キャンディキャンディがのちにアニメ化され、未就学児向けに商品が発売されると、小学校高学年になった自分たちは大きい声でキャンディキャンディを好んで読んでいると言いづらくなった。) 他にも萩岩睦美、小椋冬美と洗練された画風の作家さんのイラストが描かれた付録の数々は、どれも宝物となり、実際に使うことなく、机の引き出しから眺めてはしまい、未だに倉庫の中で眠っている。 それは、サンリオのグッズも同じである。 先日、倉庫の端に追いやられていたクッキーの缶を開けると、サンリオのミニチュアシリーズが出てきた。 それと、包装紙の右上角にリボンの代わりについてくる、あの、おまけもたくさん。 思わず頬がほころぶ。 大人になりたてのころは、「かわゆいもの」を選ぶことが、自分の未熟さを露呈しているような気がして気恥ずかしく、更には忌まわしいものとして、意図的に遠ざけていたのだけど、21世紀もだいぶなじんだ今、一周まわって、相変わらずのファンシー好きな私なのである。 余談だがA子先生の描く、長髪の(時に眼鏡をかけている)男の子は、 どことなく現在の「草食男子」とカテゴライズされる若者を 彷彿させられるのは私だけだろうか。 (nippi)