デバッグ・マジック! vol.34 ~もっと!『カルロフ邸殺人事件』編~
さて、『カルロフ邸殺人事件』の発売から1ヶ月が経過した。
《ギルドパクトの力線》や「諜報」土地の加入によりモダンは確かに激変したが、それ以上の出来事が起こったことで、一から仕切り直しにも近い形となった。
一体何が起こったのか。最新情報をチェックしながら、新カードを使ったアイデアにチャレンジしていこう。
1. 禁止改定とその後の環境予想
3月11日の禁止制限告知で、《暴力的な突発》が新たに禁止となった。前回の《激情》《豆の木をのぼれ》の禁止から約3ヶ月ほどしか間を空けていないにもかかわらずのこの事態ということで、世界中で開催された地域予選の結果として「ティムール続唱」が支配的なポジションに立ち過ぎたことがその原因とみられる。
想起エレメンタルや《否定の力》によってリアクションの権利が担保されている現代モダンにおいては、「対処不能な不健全さ」による禁止というのは起こりづらい。逆に想起エレメンタルや《否定の力》をこれ以上なく使えるからこその「支配的地位の確立」による禁止の方が現代的であり、長い間問題にならなかったものの「諜報」土地の加入によって大幅な強化を受けた《暴力的な突発》も、コップの縁から水が溢れるように許容ラインを越えたものと考えられるからだ。
いずれにせよ、これにより「ティムール続唱」「死せる生」の2デッキを中心とする「続唱」戦略は大幅なパワーダウンを余儀なくされると予想される。また、《虚空の杯》《仕組まれた爆薬》といったサイドカードの採用率は少し落ち着くことになるだろう。
さて、禁止改定後に予想される環境の主な登場人物と目されるのは以下の10個のデッキタイプだ。
Tier 1予想
トライバルズー
赤黒不死ラガバン
Yawg-Chord
Tier 2予想
アミュレット
トロン
鱗親和
青赤ラガバン
御霊アトラクサ
黒単貴重品室コン
4Cオムナス
依然として環境における最もぶっ壊れたムーブは「《悲嘆》+不死スペル」であり、それを最も上手く使える「赤黒不死ラガバン」は、変わらずメタ上位に残り続けることだろう。
また、《ギルドパクトの力線》によりデッキパワーが大幅に引き上げられた「トライバルズー」も、高速かつ万能な押しつけミッドレンジとして「赤黒不死ラガバン」と近いポジションにあり続けるという予想だ。
ほか、「Yawg-Chord」は高いデッキポテンシャルと明確な不利が少ない全方位性により、コンボの最右翼に収まるものと思われる。
またそれはさておき、例によって最近活躍したローグデッキを3つ紹介しておこう。
(チャレンジ7位)
プレイヤー名:BWG
1《耐え抜くもの、母聖樹》
1《繁殖池》
1《優雅な談話室》
3《溢れかえる岸辺》
2《森》
1《ヘリオッドの高潔の聖堂》
1《迷路庭園》
1《平地》
1《聖なる鋳造所》
1《サヴァイのトライオーム》
1《寺院の庭》
4《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》
3《吹きさらしの荒野》
4《樹木茂る山麓》
1《ゼイゴスのトライオーム》
4《イリーシア木立のドライアド》
4《ドラコの末裔》
4《虹色の終焉》
2《約束の刻》
1《オルサンクのパランティール》
4《一つの指輪》
4《ギルドパクトの力線》
4《力線の束縛》
4《レンと六番》
3《時を解す者、テフェリー》
2《耐え抜くもの、母聖樹》
2《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》
3《忍耐》
2《ティシャーナの潮縛り》
1《湧き出る源、ジェガンサ》
1《天界の粛清》
2《活性の力》
2《虚空の杯》
《ギルドパクトの力線》を使ったアグロは「トライバルズー」、《ギルドパクトの力線》を使ったコンボは「力線続唱」が生まれた。ならば《ギルドパクトの力線》を使ったコントロールは組めないのか?ということで紹介するのがこちらの「力線ヴァラクート」だ。
《風景の変容》のような一発技を持たなくても良くなったのは、《ギルドパクトの力線》によって初手からフェッチランドを起動しないまま展開し続けることが可能となったからだ。温存したフェッチランドは後半に《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を追加で噴火させるための種火となる。コントロール復権の狼煙を上げられるかに注目だ。
(チャレンジ8位)
プレイヤー名:Cachorrowo
4《メムナイト》
4《羽ばたき飛行機械》
4《エスパーの歩哨》
4《ゴブリンの奇襲隊》
2《ひよっこ捜査員》
2《スレイベンの検査官》
4《ヴォルダーレンの美食家》
4《イーオスの遍歴の騎士》
4《敬慕されるロクソドン》
2《ブレンタンの炉の世話人》
3《封じ込める僧侶》
3《ドラニスの判事》
4《レオニンの遺物囲い》
3《沈黙》
スタンダードやパイオニアで活躍している「召集」のコンセプトをモダンに持ち込んだのがこちらのデッキだ。
《美徳の力》はモダンで使用可能なピッチスペルの中でまだそのポテンシャルを十分に発揮できていないカードのうちの1つであり、《上機嫌の解体》が8枚使えるこのデッキこそそのポテンシャルをフルに発揮できるアーキタイプである可能性がある。
クリーチャー単体への干渉力が極めて高いモダンでは、逆に横並びへの警戒は薄い。《激情》亡き今こそ、小粒クリーチャーたちの怨念を晴らすべきときなのだ。
(チャレンジ2位)
プレイヤー名:Xenowan
4《ティシャーナの潮縛り》
4《緻密》
1《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
1《約束された終末、エムラクール》
vol.23で紹介した形に大規模な改造を施し、現在進行形で注目を集めているのがこちらの「青単トロン」だ。
『モダンホライゾン2』以降のモダンは結局のところ、「想起エレメンタルと《否定の力》をいかにうまく使い、またそれらに対していかにうまく立ち回るか」が問われた環境だった。ならば「青単トロン」であろうとその例外ではなく、従来の「青単トロン」らしさが詰まった《卑下》や《撤廃》から脱却してたっぷり4枚ずつの《否定の力》と《緻密》から構築を始めるというのはむしろ王道と言えるだろう。メタゲームの硬直感を打破できるポテンシャルを持つ伏兵は、意外と身近なところに潜んでいたのかもしれない。
2.もっと!『カルロフ邸殺人事件』でバグを探そう
デッキを作るコツは、「些細な違いに意味を見出すようにすること」だ。
「諜報」土地も、ドロー操作という観点では「占術」土地と同等の効果しかない。それが「基本地形タイプを持っていること」と「カードを墓地に落とせること」の2点でここまで評価が違ってしまうのだ。
無論すべてが明らかになった今では「それが大きすぎる違いなんだろ!」と思われるかもしれない。だが、本当にそれを発売前に予想できていただろうか?《暴力的な突発》が禁止になるほどにまで「続唱」というコンセプトを強化するものだと、きちんと見極められていただろうか?
少なくとも私は (余ったフェッチがドロー操作になるという点で強いとは思っていたが) ここまで環境を大きく変えるとは思っていなかったし、おそらく大部分の読者の方々もそうなのではないかと思う。
ことほど左様に、些細なテキストの違い、マナコストやパワーの違い、能力の発動タイミングの違いが、カードの評価を大きく変えてしまうことが起こりうるのだ。
だから我々にできることは、たとえ新カードが一見既存のカードと似たようなスケールしか持っていないとしても、そこにあるわずかな違いが何らかの変化をデッキにもたらすことが本当にないのかを、逐一真摯に検討することだけなのだ。
ゆえに今回も、新セットに眠るバグをデバッグ (発見・解明) していくとしよう。
◇《人道に対する膿》
あらゆるゲームが健全に保たれているのは、ルールがあるからだ。
ならば健全ではないバグを見つけようとする場合、最初からルールを逸脱したカードをその突破口にするというのは、あながち的外れな発想とは言えないだろう。
《人道に対する膿》。同一カードの4枚制限を超えてデッキに何枚でも入れられるいわゆる《執拗なネズミ》系カードだが、歴代のそれらと比較してもかなり殺意高めのカードとなっている。
何せこのカードを18枚墓地か追放領域に置いた状態で唱えられれば、3ターン目に20/20トランプルを出すことも夢ではないからだ。
あの《ファイレクシアン・ドレッドノート》をも上回る20点パンチともなればまさしくスラムダンク。マジックをバスケにするのに必要不可欠な人材、いや膿材と言えるだろう。
だが、3ターン目に20/20を出すためには、1ターン目の1マナと2ターン目の2マナだけで《人道に対する膿》を18枚も追放しなければならない。そんなことがはたして可能なのだろうか?
これについて私がまず考えたのは、非常に素直な回答だった。
《大霊堂の戦利品》と《暗黒への突入》を使えばいいのでは???
《Demonic Consultation》からの派生であるこれらのカードならば、1マナや2マナで一度に大量のカードを追放できる。これなら3ターン目までにかなりの枚数の《人道に対する膿》を追放領域に送り込めるはずだ。
《血清の粉末》は初手に引けば引くだけ《人道に対する膿》をあらかじめ追放領域に送り込んでおけるので、このコンセプトにおいては普段以上に強力だ。
また、《人道に対する膿》は実はこのカード以外にも「ウーズ」もカウントするので、最低限1枚は引き込めるだけの《人道に対する膿》の枚数だけ維持しつつ、残りを《実験体》や《漁る軟泥》といった軽量ウーズに差し替えることで、1~2ターン目の追加のダメージソースとして機能してくれることだろう。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
デッキビルド:まつがん
こんなんで18枚も追放できるわけねーだろ!!!
そう、それは一人回しを始めて1秒で判明した残酷な現実であった。
ざっくりとした期待値で考えて、《血清の粉末》による追放が毎ゲーム平均1枚、《大霊堂の戦利品》もしくは《暗黒への突入》による追放が多く見積もっても毎ゲーム平均6~8枚程度なので、異常なぶん回りをしない限り3ターン目に出せるのはせいぜい10/10トランプル程度となってしまうのだ。
さすがに実質初動3ターン目のデッキで10/10トランプルのバニラを出して喜んでいるようでは修羅の国・モダンではまるでお話にならない。
かといって、今回の《人道に対する膿》に関しては採用できるカードの制約が大きすぎるため、これ以上のブレイクスルーがあまり望めないことが問題となった。
追放の効率まで考えるとデッキ内にはおおよそ最低24枚以上の「《人道に対する膿》 or ウーズ」が必要だし、20枚程度の土地はどちらにせよ不可欠とすると、入れ替えられるスロットはせいぜい4スロット16枚程度しか存在しないからだ。
それに「発掘」が存在するモダンにおいては墓地肥やしより追放の方が難易度が低い。だからこそこんなに軽くて大量のカードを追放できるカードが存在できているわけだが、さすがに《大霊堂の戦利品》を超える効率のカードなど存在するはずもないし、それに匹敵するカードが仮に見つかったとしても、追加で入れられそうなスロットがもはや見当たらないというのが実情であった。
ならば《人道に対する膿》をモダンで実用的なコンセプトに仕上げるのは不可能なのだろうか……と、そう思われた。
しかし。
私はこの一見解決不能に思えた難題に関して、ソリューションを見出したのだ。
《外科的摘出》か《根絶》で一気に全部追放すれば解決では???
そう、必要なのは「《人道に対する膿》の枚数を極限まで減らしながら軽くて大量の追放アクションを重ねる」という無理難題の実現方法ではなく、「限界まで大量に積んだ《人道に対する膿》をワンアクションでこの世から消滅させればいい」という発想の転換だったのだ。
このアイデアの根幹を支えているのはもちろん『カルロフ邸殺人事件』から加入した「諜報土地」だ。
《人道に対する膿》の枚数を多く入れれば入れるほど、「諜報」で《人道に対する膿》自体が墓地に落ちる確率が上がる。そしてフェッチランドだけで毎ゲーム《人道に対する膿》を墓地に落とせるのなら、8枚積んだ《外科的摘出》《根絶》で手札の《人道に対する膿》だけは残しながらライブラリー内の20枚以上の《人道に対する膿》をすべて殺菌することが可能となるからだ。
さて3ターン目の20/20の実現性が高まったところで、あとはそのパワー20で即勝利できれば脳天ダンクシュートで気持ち良く話を終われたのだが、さすがに0マナでクリーチャーを《投げ飛ばし》たり速攻を付与できるカードはモダンのカードプール広しといえど見当たらなかった。
そこで《集団恐慌》ならば先置きで20/20に速攻を付与できる。1ターン目は確定でタップイン「諜報」、3ターン目は《人道に対する膿》なので設置できるターンは2ターン目しかなく、できれば2ターン目も「諜報」したいことを考えると、《根絶》とは干渉するものの、マナがかからない《外科的摘出》とならばスムーズにすべてのアクションを実現できるはずだ。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
デッキビルド:まつがん
別に10/10トランプルが20/20トランプル速攻になったところで《力線の束縛》されるのは一緒だろ!!!
そう、それがどこまでもデッキ内のスロットを圧迫する《人道に対する膿》の限界であった。通常オールインコンボでは《否定の契約》《悲嘆》《思考囲い》などコンボを通せるバックアップのうちそのデッキに合ったものを採用するのだが、《人道に対する膿》を2回以内の「諜報」で墓地に落とすというコンセプト上、余計なカードを積む隙間がこれっぽっちも存在しないのである。
このデッキを作っていて思ったことはひたすら「何の能力もなくてマナが出るだけの土地、何で存在してるの???全部抜きてぇ~」だった(たぶんマジックに向いてないと思う)。というか《集団恐慌》を設置だけしてエンドするターンが存在するデッキ、返しでサイ2体に走られたりするけど冷静に考えて正気ではなくないか???……無色マナが出てセットするとそのターン出すクリーチャーが全部速攻を持つ土地、『モダンホライゾン3』で期待してます(無法エンド)。
◇《花粉の分析》
既存のカードに似た効果だからといって、新デッキができる可能性が全くないわけではない。わずかなりとも効果に違いがあるならば、その差別化点こそがデッキ作りにおいて枢要な鍵となるかもしれないからだ。
《花粉の分析》。新能力「証拠収集」によって効果が格段に強くなる《地勢》系列のカードだが、このカードには一つ問題があった。
それは《ウルヴェンワルド横断》の存在だ。
《ウルヴェンワルド横断》は「昂揚」によって《花粉の分析》の「証拠収集」時と全く同等の効果を発揮できる。「昂揚」と「証拠収集」はどちらも墓地を条件とする能力で、内容は違えど問うているのは「十分に墓地を肥やしたか?」という部分であることに変わりはない。
ならば《花粉の分析》でできることは、既に《ウルヴェンワルド横断》でもできていたはずではないのか?……という風にも思える。
だが、これらの2枚の効用が異なる瞬間がある。それが《ミシュラのガラクタ》と同居させた場合だ。
「証拠収集」の足しに1ミリもならない《ミシュラのガラクタ》は、《花粉の分析》にとっては無用の長物だ。だが《ウルヴェンワルド横断》にとっては、墓地に落としづらいアーティファクトを0マナでしかも手札損失なく落として「昂揚」に近づけられる唯一無二のカードである。
これがどんな意味を持つかというと、「《ミシュラのガラクタ》が自然には入りえないデッキならば《花粉の分析》を採用する余地がある」ということだ。
では「《ミシュラのガラクタ》が自然には入りえないデッキ」には、たとえばどのようなものがあるだろうか?
私が思いついたのは、これだ。
「腐敗僧ストーム」では???
vol.21で作った「ポイゾナス・ストーム」は今でも私のお気に入りのコンセプトの一つだが、《敬慕される腐敗僧》へのアクセス力を高めるために《エラダムリーの呼び声》や《イーオスのレインジャー長》まで採用している部分が、マナベースに負担をかけていたことはもちろん、速度面でも大きな負担となっていた。
だが《花粉の分析》で安定して「証拠収集」できるならば、これらのサーチカードからの脱却を図れる。さらにこれ自体が2枚目以降の土地へのアクセスも可能にしてくれるので、大胆に土地をカットした構成も目指せるに違いない。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
デッキビルド:まつがん
探したいのはストーム呪文の側なんだよ!!!
《花粉の分析》を強く使うために土地サイクリング2種まで入れて「証拠収集」の安定化を目指したものの、ここまで大幅にデッキに負担をかけてやっと《エラダムリーの呼び声》と同等というのではあまりにも情けない。デッキがものすごく弱くなったとまでは言わないが、《花粉の分析》を採用してみたところで根本的な問題点は解決されていないというのがこのアーキタイプに関する私の結論だった。
では、他に「《ミシュラのガラクタ》が自然には入りえないデッキ」はないのだろうか?
ここで私は《通りの悪霊》《オリファント》などと同じく「サイクリング」というギミックに改めて着目することにした。
「証拠収集」と最も相性が良いカードは間違いなく《通りの悪霊》だ。
しかし「証拠収集8」のためにはあと3マナ分が足りない。とはいえこの3マナ分を《オリファント》のような「もともとそのデッキ自体は必要としていないけど『証拠収集』のために無理矢理採用するカード」で埋めることにしてしまうと、不自然なデッキ構築となってしまう。
では《通りの悪霊》と「証拠収集8」との間を埋められる、自然な「サイクリング」カードはないのだろうか?
そう考えて私がたどり着いたのが、これだ。
「ぐるぐるロータス」では???
vol.19でも紹介した「ぐるぐるロータス」は《睡蓮の原野》をキーカードにしたコンボデッキだ。そこで最近のテンプレートに《森の占術》が採用されている部分を《花粉の分析》に差し替えることで、大幅なパワーアップが見込めるのではないか。
この発想にたどり着いたのは、《砂時計の侍臣》に着目したからだ。実質1マナサイクリングであり《睡蓮の原野》をアンタップできるコンボパーツでもあるこのカードは、《通りの悪霊》と合わせてピッタリ「証拠収集8」を満たしてくれる。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
デッキビルド:まつがん
あんま変わらねーじゃねーか!!!
もともと《森の占術》が入っていた部分を《花粉の分析》に差し替えるのはともかく、「証拠収集」を安定させるための《通りの悪霊》はライフ水準も下がるしデッキも薄まるしで正直デッキに全く合っていない。かといって《通りの悪霊》を抜いたらビジュアルが弱くなりすぎてわざわざ記事で紹介するほどのアイデアとは呼べなくなってしまう。
かくして2つのアイデアを無為に通過した私は、《花粉の分析》を記事で使うのを諦めかけていた。
もともと《ウルヴェンワルド横断》と差別化が難しいカードだし、唯一無二の使い道など見つからなくても仕方がない……そう思った。
だが。
ここまでの旅路が、すべてのピースをつないだ。ここまでの発想が、すべてのアイデアをもたらした。
《通りの悪霊》と《砂時計の侍臣》を「サイクリング」するだけで、《花粉の分析》でデッキ内から特定の土地をサーチできるならば。
最初から土地を1枚しか入れなければいいのだ。
そう、すなわち。
「1ランドベルチャー」では???
モダンにおいては最初から土地を1枚も入れないタイプの《ゴブリンの放火砲》デッキの方がメジャーだが、モダンでは瞬間的なマナ加速が《アイレンクラッグの妙技》以外ほとんど1マナしか増えないため、即勝利の条件である7マナを捻出するのが難しいという問題点があった。
そこで《睡蓮の原野》を1枚だけ入れることで、《豊穣な収穫》などでそれをサーチし、《ぐるぐる》系の土地アンタップスペルを実質的な2マナ加速呪文として活用できるようにしたのが派生型の「1ランドベルチャー」である。
このデッキならば「証拠収集」した《花粉の分析》を追加の《豊穣な収穫》として扱えるので、《ウルヴェンワルド横断》にはできない独自のポジションを主張できるはずだ。
《孵化+不和》は「証拠収集」に対する《通りの悪霊》以外の解答だ。分割カードのマナコストはスタック上以外では両方のマナコストの合計になるため、これから《通りの悪霊》を引き込むだけで「証拠収集8」を達成できる。
《白日の下に》は追加の《ゴブリンの放火砲》だが、4色出すのはかなり難しいことを考えると、どうにかして《鏡に願いを》を運用する方法を考えた方が良いかもしれない。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
《花粉の分析》の使い方は唯一無二かもしれないがデッキが弱そうすぎる!!!
《花粉の分析》がオンリーワンでフィットするデッキを探したいあまり、モダン環境で通用するデッキパワーを著しく逸脱した領域に踏み込んでしまっていたのだった。世界中の《血染めの月》を全部燃やしてからじゃないと通用しなさそう。
◇《詮索的探求》
よく似たカードが既に存在している場合には、差別化点を探せばいい。だが、上位互換も下位互換も既に存在しているというような場合にはどうすればいいか?
答えは簡単だ。
《詮索的探求》。毎度おなじみの《好奇心》系のオーラだが、この系統の最上位である《執着的探訪》と比べると、攻撃しなくても剥がれない代わりにドローにマナがかかるようになってしまっており、さすがに実用的ではないようにも思える。
だが、こんなカードにも独自の存在意義があることを私は見出したのだ。
《羽ばたき飛行機械》に付けられる《好奇心》なのでは???
vol.17で作った「ハイパー好奇心」の例を見てもわかるように、《好奇心》系オーラは回避能力を持つクリーチャーに付けるのが鉄則だ。
だが回避能力持ちの中で最軽量の《羽ばたき飛行機械》はパワーがゼロのため、《好奇心》との相性が悪いというのが問題だった。
しかしそこで《詮索的探求》があれば、《執着的探訪》と合わせてしっかり8枚のバックアップで《羽ばたき飛行機械》にパワーを持たせた上で《好奇心》能力を誘発させられるようになるのだ。
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!
デッキビルド:まつがん
4《ストーム・ジャイアントの聖堂》
7《島》
1《天上都市、大田原》
いつゲームに勝てるんだよ!!!
毎ターン無限にカードは引けるけど毎ターン2点とかで小突くしかできないし何気に確定カウンターが少ないので相手にも無限に逆転のチャンスを与えてしまうという、無駄にリスキーな構成をしただけのデッキとなってしまった。あと《オークの弓使い》を通すと地球が滅亡するので気を付けよう (※気を付けようがない)。
3.終わりに
来月4月19日 (金) には『サンダー・ジャンクションの無法者』が発売となるほか、6月には『モダンホライゾン3』、7月に『アサシンクリード』と直近半年でさらなる激動が予想されるモダン環境。
ぜひ今のうちからメタゲームにキャッチアップして、時代の節目をその目で見届けて欲しい。
ではまた次回!
クソデッキビルダー。独自のデッキ構築理論と発想力により、コンセプトに特化した尖ったデッキを構築することを得意とする。モダンフォーマットを主戦場とし、代表作は「Super Crazy Zoo」「エターナル・デボーテ」「ステューピッド・グリショール」など。Twitter ID:@matsugan
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