デバッグ・マジック! Byまつがん

デバッグ・マジック! vol.31 ~もっと!『イクサラン:失われし洞窟』編~

公開日:まつがん

イクサラン まつがん

『イクサラン:失われし洞窟』が発売して1ヶ月が経過した。

だが新セットによる影響以上に、モダンには地殻変動が起きたばかりである。

はたして、メタゲームはどのような姿となっているのか。最新の状況をチェックしながら、新カードを使ったアイデアを紹介していこう。

1.禁止改定と新環境

直近のモダンに関して何よりも大きなトピックは、やはり《激情》と《豆の木をのぼれ》の禁止だろう。

「あくまで個人的な予想」と前おきしたとはいえ、前回「禁止になるとしたら《悲嘆》、それですら直近3ヶ月以内では20%以下」と予想していた身としては大変申し訳ない事態となってしまった。

そこで次回以降の精度を高めるため、ひとまずこの禁止の意図について考えておこう。「赤黒不死ラガバン」については20%超えという支配率の問題もあり《激情》禁止の必要性も理解できるが、《豆の木をのぼれ》を使った「4Cオムナス」系統のデッキは、支配率だけで見ればそこまででもない。では、何が理由で禁止となったか。

これについては発表時に公式側からざっくり「もっとクリーチャーを使わせるため」と述べられているが、おそらくそれ以上にプロアクティブな戦略の優位性を維持し、トーナメント進行を健全に保つためというのがあるように思う。

《激情》はクリーチャーとプレインズウォーカーに対してはほぼ常に後出しで対処できるため、《若き狼》《レンと六番》や《時を解す者、テフェリー》のようにアドバンテージがとれたり生き残れるものくらいしか使用価値がない。そしてこれに加えて《豆の木をのぼれ》もある状態では、クリーチャーとプレインズウォーカーに関しては《孤独》と合わせて実質ほぼ永続的な全カウンターが可能となってしまっていた。

ただ、これはタイマーがあるMagic Onlineならばいざ知らず、フェッチランドの起動のたびにシャッフルが挟まるリアルマジックでは引き分けが量産されかねないコンセプトである。まして、同型戦での引き分け防止のために《神秘を操る者、ジェイス》が入っているような状況は健全ではない。そのような事情から、《豆の木をのぼれ》に関しては単純な支配率とは無関係に、「トーナメント進行の阻害」という《師範の占い独楽》と近いロジックでの加点が大幅にあったのではないかと推察される。

……さて妄想はこれくらいにして、ではマジック・オンライン上で禁止改定を経たモダン環境は現在どのような姿となっているのか。

Tier 1
Yawg-Chord
ティムール続唱/版図続唱
青赤ラガバン
アミュレット
トロン

Tier 2
死せる生
何らかの悲嘆不死弓使いデッキ
装備シュート
鱗親和
バーン

基本的には、「赤黒不死ラガバン」と「4Cオムナス」が一旦消滅し、Tier 2にいた「10強」がほぼそのままスライドしてきた形となる。その中でも比較的新しいカードの恩恵を受けており相対的にデッキのポテンシャルが高いものがTier 1に収まった格好だ。

ただ、まだTier 1とTier 2の差はそれほど大きいわけでもなく、プレイヤーたちもひとまず前環境でデッキパワーが保証されたデッキをそのまま使っている段階にあり、これをベースにまた新たな《悲嘆》デッキや《創造の座、オムナス》デッキ、あるいはR&Dが意図したとおりに「人間」や「マーフォーク」といった部族系のデッキがメタ上位に食い込んでくる可能性もある。

しばらくはメタゲームの激変期が続くと目されるので、安定期に入るまでは様々な大会結果を頻度高くチェックしておいた方が良いだろう。

またそれはさておき、例によって最近活躍したローグデッキを3つ紹介しておこう。

青黒不死ストーカー
モダン 予選 2023-12-11、3 位、3-1
プレイヤー名:xfile
クリーチャー(26枚)

4《死の影
3《鍾乳石の追跡者
3《ダウスィーの虚空歩き
4《オークの弓使い
4《悲嘆
4《緻密
4《通りの悪霊

青黒不死ストーカー

現在「赤黒不死ラガバン」の後継として様々な《悲嘆》ミッドレンジが研究されはじめているわけだが、《激情》の穴を埋められるのは同じくクリーチャーを対処可能な《緻密》か《孤独》だろう。そして攻撃的な戦略をとるならば相手にライフを与える《孤独》は採用しづらいことから《緻密》を選んだと思われるのがこちらの形である。

赤が入っていないので《敏捷なこそ泥、ラガバン》は採用できないが、代わりに採用されている《鍾乳石の追跡者》はアドバンテージは取れないものの1ターン目に召喚すれば毎ターンフェッチを起動しているだけで再現なくサイズアップしていくポテンシャルを秘めており、対戦相手にしてみれば無視できないことに変わりはない。

後継デッキとして定着していくかはまだわからないが、多くのプレイヤーが気になるであろうアーキタイプについて、洗練された75枚として練り上げた上できちんと最速で結果を残したことについては素直に賞賛したい。

白黒ブリンク石鍛冶
モダン チャレンジ 64 2023-12-09、8 位、5-1
プレイヤー名:tbenson80
クリーチャー(21枚)

4《ダウスィーの虚空歩き
1《獅子の飾緒
4《オークの弓使い
4《石鍛冶の神秘家
4《悲嘆
4《孤独

ブリンク石鍛冶

一方、《激情》の後釜を《孤独》に据えたのがこちらの形である。《儚い存在》は黒の不死系スペルよりも1枚多くアドバンテージが取れるため、対戦相手を強制的に中盤戦にまで引きずり込むことができる。

1年半ほど前に紹介した形と比べると、《ダウスィーの虚空歩き》の採用で洗練されていたり《オークの弓使い》の採用でデッキパワーが向上していたりと、再び見直す価値は十分にある。はたして「赤黒不死ラガバン」のポジションを受け継げるのか、今後の展開に注目だ。

4Cシャドウ
モダン チャレンジ 96 2023-12-03、3 位、7-0
プレイヤー名:Magic_Tim

4C死の影

一方、不死ギミックを廃して《敏捷なこそ泥、ラガバン》+《オークの弓使い》のパッケージを最も強く使えるミッドレンジとして名乗りを上げたのがこちらのデッキである。

カードの交換とアドバンテージ補充というカードゲームの基礎に忠実に従った戦略をとっており、いわゆる「ズル」とか「バグ」の要素が少ないのが悩みの種ではあるものの、《頑固な否認》を抜いたことでフェアな戦いにおいては後出しでの状況解決能力が高くなっており、かなり「太い」戦い方が可能である。ミッドレンジやコントロールなどフェアに寄った環境なら検討したいアレンジだ。

2.もっと!『イクサラン:失われし洞窟』でバグを探そう

新セットの発売や禁止改定で環境が激変した時期は、新デッキを作るチャンスだ。

なぜなら、環境の変化は前提の変化を意味している。これまで通用しなかった戦略も、前提が違えば通用するようになるかもしれないからだ。

今回の禁止改定では、私が見出したアイデアたちを禁止させることはできなかった。

だがデッキを作り続けていれば、いつかは必ずたどり着けるはずなのだ。

特に来年、2024年には『モダンホライゾン3』が控えている。『モダンホライゾン2』の環境での暴れっぷりを見るに、『モダンホライゾン3』も環境をかなりぶち壊してくる可能性が高い。

となればそのときに禁止レベルのデッキを最速で組めるよう、今からデッキ作りに励むことでカードプールを身体に馴染ませておく必要がある。

そのためにも、今回も新セットに眠るバグをデバッグ (発見・解明) していくことにしよう。

◇《エターリの好意》

前回、《ゾヨワの裁き》については新デッキを披露した。そして、《地質鑑定士》についてはパイオニアで既に活躍し、禁止カードに指定されるまでに至った。

ならば、残る軽量の「発見」カードについても可能性を見出したくなるのは当然だろう。

エターリの好意

《エターリの好意》。《地質鑑定士》が4マナなのに対し、わずか3マナで「発見3」が行えるという破格のコストパフォーマンスを誇るカードである。

だが問題はエンチャント (クリーチャー) であり、しかも自分のクリーチャー限定という強烈な縛りにある。この縛りにより、通常のエンチャント (クリーチャー) と違って《禁忌の果樹園》で出したトークンにはエンチャントできないことにもなるからだ。

さらには「続唱」との差別化も問題となる。

モダンにおいては既に《暴力的な突発》《断片無き工作員》といった3マナの「続唱」カードが絶賛活躍中であるところ、これらのカードは特に盤面の状態を要求しないので、単純な比較だと《エターリの好意》は実質的に《悪魔の戦慄》程度のスペックしかないことになる。

したがって、それを乗り越えて《エターリの好意》でデッキを作るなら、「続唱」にはできないことを成し遂げるデッキである必要があるのだ。

では、《エターリの好意》にできて「続唱」にできないこととは何か?

私が出した答えは、これだ。

聖トラフトの霊

3マナで《聖トラフトの霊》を確定で出せたら強いのでは???

「ヒストリック」という、MTGアリーナ専用のフォーマットがある。そこでは「力線トラフト」という、MTGアリーナのオリカ《現実の断片化》を使って1ターン目に《聖トラフトの霊》を着地させるデッキが猛威を振るったという話を聞き及んだ。

そして《エターリの好意》と《暴力的な突発》の差は3マナのカードを唱えられるか否かにある。

となると最強の3マナカードを探す必要があるわけだが、他のフォーマットで「力線」を変換して1ターン目に出せる最強の3マナクリーチャーの結論が《聖トラフトの霊》というのだから、《エターリの好意》の結論となる最強の3マナカードも《聖トラフトの霊》となる可能性はそれなりに高いだろう。

《聖トラフトの霊》といえば現在に至るまで唯一無二のスペックを誇るカードだが、4枚しか積めないために安定して2~3ターン目に出せないのが弱点だった。

そこに《エターリの好意》が加わったことで、毎ゲーム《聖トラフトの霊》を決まったターンに安定して着地させられるようになったに違いないのだ。

《溶鉱炉の大長》は「発見3」に引っかからない上に0マナで《エターリの好意》のエンチャント先を用意できる。

とはいえさすがの《聖トラフトの霊》でも1ターン目に出ないとなると殴りきれるか怪しくなってくるが、《大群の怒り》を使えばコンバット回数を増やすことで着地ターンを早めたのと同様の効果を得ることができる。

というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!

トラフト発見
デッキビルド:まつがん
土地(17枚)

4《乾燥台地
4《宝石の洞窟
1《
1《聖なる鋳造所
2《蒸気孔
1《踏み鳴らされる地
4《樹木茂る山麓

呪文(28枚)

4《死亡
4《完全
4《
4《鉱山の崩壊
4《轟く怒り
4《大群の怒り
4《エターリの好意

トラフト発見

結局3マナ払って《聖トラフトの霊》出すんだったら意味ねーだろ!!!

そう、それはIQ3のデッキであった。

「ヒストリック」の「力線トラフト」の強みは「《聖トラフトの霊》を出すのに1マナしか使わない」部分にあるのであって、確定サーチとはいえ3マナのカードを3マナ払って唱えてたら「3=3」の数式のごとく全く意味をなさないのである。

となると、3マナのカードで「続唱」と差別化する方針は挫折したことになる。

ならば、他の手段で「続唱」と差別化することはできないか。

そう、たとえば……。

明日への瞥見

《明日の瞥見》を唱えればいいのでは???

「それこそ『続唱』でいいだろ」と思われるかもしれないが、「続唱」ではなく《エターリの好意》を使うメリットも実は存在する。

「発見」はプレイ時ではなく場に出てから誘発するので、《エターリの好意》自体もパーマネント数にカウントされる上に、《エターリの好意》がめくれ続ける限りさらにパーマネント数が増えるからだ。

そう、パーマネント数をカウントする《明日の瞥見》こそ、「続唱」を押しのけて「発見」を使う価値がある唯一無二のアーキタイプなのだ。

というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!

瞥見発見
デッキビルド:まつがん
土地(20枚)

4《宝石の洞窟
4《カルニの庭
11《
1《反逆のるつぼ、霜剣山

呪文(18枚)

2《明日の瞥見
4《エターリの好意
4《世界呪文
4《多元宇宙と共に
4《全知

瞥見発見

やっぱり「続唱」が脆くなっただけでは???

そう、それは期待値マイナス稼働のデッキであった。

確かに《エターリの好意》が2枚、3枚とうっかり重なったときの興奮度は高い。だが「続唱」と違って2種8枚積もうとすると2種類目が《地質鑑定士》になって始動ターンがズレてしまうとか、そもそも《エターリの好意》にスタックで除去を当てられたら憤死確定というどうしようもなさを何一つ克服できていないといった問題を抱えているため、やはり「続唱」の方が期待値としては安定という結論になってしまうのだ。

ここまで見てきたとおり、「続唱」と「発見」とではほとんどの場合「続唱」の方が勝っている。

となればやはり当初の発想どおり「発見」にしかできないパターン、すなわち最強の3マナカードを見つける方向で考えるしかない。

そうだ、先ほどは《聖トラフトの霊》とかいうヌルいカードを「発見」しようとしたから失敗したのだ。

ならば、唱えた時点で勝てる3マナカードを使えばいいのではないか。

そう、すなわち。

《嵐の伝令》コンボでは???

墓地に《著大化》《燃え盛る怒り》の2枚を用意した状態で《嵐の伝令》を出せば本体に23点ダンクが飛ばせるこのコンボは、とにかく《嵐の伝令》を4枚しか積めないことが弱点だった。

もちろんどうせ《著大化》《燃え盛る怒り》のセットを墓地に落とす必要があるため必然的に大量に入る墓地肥やしから《発掘》で釣り上げるという手段もあるが、4枚しかないカードが必ず墓地に落ちるという保証はない。

だが、「発見」ならば確実に《嵐の伝令》にアクセスすることができる。冷静に考えれば《エラダムリーの呼び声》や《破滅の終焉》でも追加で2マナかかるのに、「デッキ内から特定の3マナのクリーチャーを同じ3マナで場に出す」というのは、《エターリの好意》でなければなしえない芸当だ。

また、《嵐の伝令》の弱点は着地時に能力誘発にスタックしての除去だが、これは実は《カルニの庭》や《溶鉱炉の大長》で出したトークンが召喚酔いしていなければ解決時にそちらにエンチャントできるので、《エターリの好意》のためにトークン生成材が元から必要なのとデッキ構造的に噛み合っている。

さらに《エターリの好意》のために相手が除去を構えたとしても、《嵐の伝令》を素引きして脇にトークンがいればかわせるという裏目も作ることができる。

ただ《嵐の伝令》が4枚しか入れられないという問題を解決できたとしても、《著大化》《燃え盛る怒り》がそれぞれ4枚ずつではどの道一緒である。そこで《エルドラージの徴兵》は、2枚落ちれば《著大化》と同様の機能を果たすし、《燃え盛る怒り》がなくても勝てるルートを作ることができる。

もちろん同じカードを2枚落とすのはハードルが高いが、「発見3」に引っかからない唯一無二の二段攻撃エンチャントである《大神のルーン》ならば、《燃え盛る怒り》が落ちない場合に2枚目の《エルドラージの徴兵》として機能してくれる。

そう、やはりマジックはバスケットボールだった。普段からありとあらゆる手段で一撃20点ダンクを決めようとしている私だからこそ、「発見」と《嵐の伝令》という奇跡のマリアージュにたどり着くことができたのだ。

というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!

伝令発見
デッキビルド:まつがん
土地(20枚)

2《黒割れの崖
1《真鍮の都
2《闇滑りの岸
4《宝石鉱山
1《
4《カルニの庭
4《マナの合流点
2《尖塔断の運河

クリーチャー(16枚)

4《嵐の伝令
4《大嵐の雄鹿
4《通りの悪霊
4《溶鉱炉の大長

伝令発見

4マナ以上縛りのせいで墓地肥やしが大変すぎる!!!

そう、それはもはや前提が崩壊した祈りのデッキであった。

《嵐の伝令》も《著大化》も《燃え盛る怒り》も8枚になり、すわ完璧と思われたこのコンセプトだったが、実は「発見」とどうやっても両立しづらいアクションの一つが墓地肥やしで、マナコストの重い分割カードや当事者カードだけで効率の良い墓地肥やしなどできるはずもなく、《大嵐の雄鹿》でどうにか必死こいてルーターするしかないのであった。最後に余ったスロットがやむをえず《通りの悪霊》で埋まっているのも哀愁を誘う。この枠が「2マナ以下でプレイできる4マナ以上の墓地肥やしカード」の3種類目だったらもう少しまともだった。でも、そうはならなかった。ならなかったんだよ、ロック。だから、この話はここでお終いなんだ。

◇コモン「発見」土地サイクル

「発見」というのはそれ自体が「続唱」に匹敵しうるほどに強力なメカニズムだ。ならば、他とは違う「発見」のやり方を実現するカードについては、また新たな使い方が生まれてくる可能性があるに違いない。

「発見」土地。起動コストが5マナ+タップということで実質6マナ必要ということもあり、一見ブースタードラフトにおいてマナフラッドをケアすること以外に使い道はないようにも思える。

だが、『イクサラン:失われし洞窟』にはこのサイクルを実戦級に変えられる奇跡のカードが存在していたのだ。

《沈んだ城塞》。《雲を守る山、雲帯岳》《エルドラージの寺院》など、モダンにおいて1枚で2マナが出せる土地は厳しい制限があるものばかりだが、このカードも例外ではなく、土地の起動型能力にしか使えないという点に大きな特徴がある。

だが、「発見」土地との関係では単に無制限で2マナ出せる土地である。さらに2ターン目に《ヴェズーヴァ》でコピーすれば、実に4ターン目に「発見4」を土地だけで起動可能となるのだ (ちなみに《演劇の舞台》も使おうとしたが、出てからのコピーだと指定した色まではコピーできない上に再度指定することもできないので、結果として指定した色がなく何のマナも出ない無の土地、無ーアランドが爆誕するだけなので諦めた) 。

とはいえ、「発見4」がしたいだけなら《勇敢な発見》や《祖先との同行》を使えばいいだけなので特に価値はない。

つまりもし仮にこのアクションに価値があるとするならば、「土地だけで」の部分にあるということになる。

では、土地のみによって「発見4」が可能だと何が起こるというのか?

私が導き出した答えは、これだ。

ほとんどが土地のデッキで《計算された爆発》を1枚だけ入れてあと全部15マナにしたら確定で15点飛ぶのでは???

《計算された爆発》デッキの弱点は、《計算された爆発》というカードそのものが抱えるジレンマにある。

言うまでもなく最強の動きは3ターン目《計算された爆発》素打ち15点だ。だがそれを実現するためには《計算された爆発》を4枚入れる必要がある。そうなると3マナという低いコストのカードが4枚入っているため、《計算された爆発》の期待値が下がってしまうのだ。

だが「発見」土地によって《計算された爆発》を唱える構造にすれば、《計算された爆発》で決してめくれないカードを《計算された爆発》として扱うことができるので、実質8枚や12枚の《計算された爆発》をデッキに入れながらも《計算された爆発》の期待値を下げずに済むのだ。

《トレイリア西部》は《沈んだ城塞》からのマナで支払い可能な「変成」によってデッキ内のすべての土地にアクセス可能なので、実質《悪魔の教示者》と言っても過言ではない (?)

「変成」するまでもなく必要な土地をすべて引けているならば、《天上都市、大田原》《皇国の地、永岩城》《反逆のるつぼ、霜剣山》という3種の「魂力」土地で3ターン目を耐えることができる。「魂力」も《沈んだ城塞》からのマナで支払い可能なので、《沈んだ城塞》2枚ですべて使用可能だ。

そう、もはや《敏捷なこそ泥、ラガバン》に呪文を奪われたり、1ターン目の《悲嘆》にキーカードを抜かれたりするのに悩まされることはない。

自分自身が99%土地になることで、相手の妨害をほぼすべてかいくぐれる無敵のデッキがここに爆誕したのだ。

というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!

57LANDS

いや、マジックは初期ライフが15点とか16点のゲームじゃないんだが???

そう、それはマジックを勝手に別ゲーにしようとする無法のデッキであった。

確かに「4ターン目に確定で15点火力が飛ぶ」というのは圧があるものの、本当にそれだけ (あとはせいぜい1~2点追加で入れるくらい) しかできないので、相手がフェッチギルランアンタップインしてくれないとどうやっても勝てない始末。しかも3ターン目までは「魂力」以外ほぼ無抵抗な上に、普通に《計算された爆発》を《否定の力》されただけで憤死不可避という、平たく言うとデッキではなくストレージから取り出した土地の束そのものであった。

◇《千番目の月、アニム・パカル》

クソデッキを作るのは何も今現在の環境で活躍させるためという理由に限られるわけではない。

今クソデッキを作ることが、将来のクソデッキの糧になるということも十分考えられるからだ。

太陽の執事長、インティ

《太陽の執事長、インティ》 (段落タイトルを間違えているわけではない、念のため)。パイオニアでは既に結果を残しはじめているカードだが、モダンの範囲ではとあるカードとのコンボが話題となった。

そう、すなわち。

《謎鍛冶》と《楕円競走の無謀者》と組み合わせたら楽しいのでは???

《太陽の執事長、インティ》と《謎鍛冶》が揃っている状況でアーティファクトを唱えると、《謎鍛冶》のドローと《太陽の執事長、インティ》の追放を合わせて2枚先が見れるので、その2枚のうち1枚が0マナアーティファクトなら連鎖することになる。

それだけだと手札が減ってしまうが、《謎鍛冶》のディスカードを《楕円競走の無謀者》にすればチェインが続く限り山札を掘れることになり、あとはお決まりの《タッサの神託者》でフィニッシュできるというわけだ。

というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!

インティ謎鍛冶
デッキビルド:まつがん

インティ謎鍛冶

《オークの弓使い》出されただけで投了じゃねーか!!!

《謎鍛冶》はタフネス1だしコンボがドローチェインでもあるので先出しも後出しも全部ダメという、《オークの弓使い》が支配する環境なのに「お前何しに来たん?」と言われてしまいそうなコンセプトとなってしまった。

だが、これは《謎鍛冶》が2/1というサイズである以上かわしようがない。解決できない問題だ。

そして私は行き詰まった。この連載では毎回3つのクソデッキを載せることを目標にしている。だが、3つ目のデッキに相応しいクソデッキがどうしても組めなかったのだ。

何か、何かアイデアはないのか。

そう考えたとき、私は《太陽の執事長、インティ》とは別の可能性に至った。

千番目の月、アニム・パカル

《千番目の月、アニム・パカル》。このカードが持つ可能性については、実は《太陽の執事長、インティ》よりも先に思いついていた。

というのも1年半ほど前、私が作った「ネオ客室係」というデッキをアップデートしうるポテンシャルを持っていたからだ。

《海門の嵐呼び》で《新生化》をコピーするだけで勝てる2枚コンボ。それが「ネオ客室係」のコンセプトだ。

だが、《千番目の月、アニム・パカル》が「ネオ客室係」をアップデートできるというのは、《千番目の月、アニム・パカル》のトークンの生成量が+1/+1カウンターの個数ではなくパワー分であると勘違いしたことが原因だった。

「クリーチャーを4体出せる3マナ域」が求めるスペックであるところ、+1/+1カウンターの個数では《新生化》から出したとしても2体しかトークンを生成できず、《悪魔的な客室係》のパワーは結局《武器作り狂》と同等となってしまう。速攻のトークンが出る分だけ2点ダメージは増えるが、「1枚で《悪魔的な客室係》のパワーを20以上にできる3マナ域」という到達目標には、最終的には至らないものと思われた。

しかし。

私はやはり勘違いしていたのだ。

《千番目の月、アニム・パカル》には確かなポテンシャルがあった。なぜなら。

「賛美」を使えばいいのでは???

《武器作り狂》と《千番目の月、アニム・パカル》との最大の違いは、トークンの生成タイミングにあった。

《武器作り狂》の場合、2体のトークンは《武器作り狂》の着地時に生成される。《悪魔的な客室係》への「賛美」の解決はその後になるので、パワー16の《悪魔的な客室係》に「賛美」が乗る形となる。

それに対し《千番目の月、アニム・パカル》の場合、2体のトークンは《悪魔的な客室係》の攻撃時に生成される。そうなると「賛美」と同時にスタックに乗り、「賛美」から先に解決できるため、パワー5の《悪魔的な客室係》のパワーが4倍される=20点ダンク (+2点アタック) になるのだ。

そう、クソデッキ作りの日々は無駄ではなかった。

「《海門の嵐呼び》と《新生化》から《悪魔的な客室係》をサーチする」というコンセプトをあらかじめ研究していたからこそ、《千番目の月、アニム・パカル》の可能性に気づくことができた。

そしてその結果、ついに4マナ2枚コンボで20点という最強デッキが爆誕したのだ。

というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ!

スーパーネオ客室係
デッキビルド:まつがん
呪文(13枚)

4《否定の契約
1《使徒の祝福
4《交錯の混乱
4《新生化

スーパーネオ客室係

《オークの弓使い》だけで死ぬのはさっきと一緒じゃねーか!!!

そう、それは完成が遅すぎた時代遅れのデッキであった。

1年半の間に、《オークの弓使い》のせいで前提は全く変わってしまっていた。「賛美」を与える2種の教主も、スタックで除去されてしまうところがお茶目なコンボパーツの《海門の嵐呼び》も、タフネス1の時点で全くアンプレイアブルなカードになってしまっていたのである。

たとえ勝ち手段が未完成であっても、先にコンセプトを突き詰めたクソデッキを作っておくことが将来の種になることは間違いない。ただしそれが完成したときに、その当時前提にしていた物事が変わっていないなどとは……誰にも保証できないのだ。

3.終わりに

久しぶりの禁止で、モダン環境には新たな刺激が加わった。モダンを始めるなら、今が絶好の機会ということだ。

しばらくは群雄割拠が続くだろう。その隙にポジションが上がったクリーチャーデッキやローグコンボなどを持ち込んでみてもいい。

ぜひあなた自身の手で、メタゲームの針を動かしてみて欲しい。

ではまた次回!2023年もお世話になりました、良いお年を!!

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