スーツアクターというお仕事。
スーツアクターという職業の方が、います。 いわゆるアクション俳優さんですが、特撮の「着ぐるみ」の中に入っている人の事をそう呼びます。 「着ぐるみ」の事を「スーツ」と呼称するのです。 基本的に、私が好きなスーツアクターは日曜の朝に地球を守っている人たちの事を指しますが、東京タワーに上るゴリラとか新宿ビル群を破壊する恐竜とか遠い星からやってきて3分だけフルバーストするナントカマンとかそれらも含まれます。 有名どころでいえば、唐沢寿明さんがかつてウルトラマンのスーツアクターを務めていたとか。 ここでは押川さんの引退に伴い、ちょっとだけスーツアクターさんの事を語りたいと思います。 スーツアクターオタクあるあるで 「特撮好きなんです」 「最近カッコイイ俳優さんいっぱい出てますもんね!」 「中の人が好きなんです。変身した後の人です。」 「私も好きですよ!水嶋ヒロカッコいいですよね!」 …(^v^) 水嶋!ヒロは!中の人じゃ!ない!!!!!KAGEROU!!!!!!!!! 結構勘違いされてる人が多いようなのですが、変身した後のヒーローも変身前の俳優さんが演じていると思ってらっしゃる方がいるようです。 違います。 変身後は専門のスーツアクターさんが演じているのです。 演じてるのです。大事な事なのでもう一回記します。 演じているのです。 別にパンチやキックだけしてるわけではないのです。 変身前を演じている俳優さんと入念な打ち合わせを重ね、2人で1人のキャラクターをつくりあげているのです。 ちょっとした仕草などを共通させる事で、変身後も同じ人間が演じている、いや、同じ人間であるかのように仕上げているのです。 かくいう私も同じ人間だと思っていました。 幼い頃、私の初恋は仮面ライダーBLACKの倉田てつを氏でしたが、変身後のBLACKというか変身後の南光太郎が好きだったので、私の初恋は正確に言うと倉田てつを氏ではなく、BLACKを演じていた岡元次郎氏になるのです。 余談ですが、後に岡元次郎氏にとあるイベントでサイン入りクッションを頂いた時にはそれを思い出して一人で赤面していました。恥ずかしい。 2007年に「仮面ライダー電王」という仮面ライダーがいました。 佐藤健くんが演じる野上良太郎はイマジンという怪人に憑依され多重人格になります(すごく乱暴な表現) その際の演じ分けが非常に素晴らしく、後の佐藤健くんの評価は特撮ヲタからすると「そうだろうそうだろう」という気持ちですが、野上良太郎が変身する仮面ライダーも憑依するイマジンによってまったく異なる人格となるのです。 それを、一人のスーツアクターは完璧に演じ分けました。 それが、高岩成二氏です。 仮面ライダー電王というシリーズは、いつも変身後にしか出番のないスーツアクターがいわゆる「味方の怪人」のイマジンとして出演し、タイムパラドックスを用いたストーリーで人気を博した作品です。 主人公の変身後を演じる高岩成二氏は、野上良太郎の人格のままのプラットフォーム、自身が演じるモモタロスが憑依した際のソードフォーム、永徳氏が演じるウラタロスが憑依した際のロッドフォーム、岡元次郎氏が演じるキンタロスが憑依した際のアックスフォーム、おぐらとしひろ氏が演じるリュウタロスが憑依した際のガンフォーム、永瀬尚希氏が演じるジークが憑依した際のウイングフォームと作中で実に6種類の人格のアクションを見事に演じ分けていました。 プラットフォームなどは、細身の佐藤健くんが変身したにしてはやたらといい体をしています。 それでも気が弱そうに丸まった背中やオドオドと動くそのさまは、そのまま野上良太郎にしか見えないのです。 むしろ、そうでないとテレビの前の子供は混乱してしまいます。 侍戦隊シンケンジャーにて、かなりの細身の相馬圭祐くん演じる梅盛源太が変身した後の岡元次郎氏演じるシンケンゴールドがやたらと恰幅が良かった事は色々言われましたが(Twitterによる国民総ツッコミの弊害ですね!)それでも動きは源太そのものなのです。それが!スーツアクターなのです。 特筆すべきなのは、高岩成二氏は、現在16作目の仮面ライダードライブに至るまで1作目の仮面ライダークウガと6作目の仮面ライダー響鬼以外の14人の主人公ライダーを全て演じているのです。 オダギリジョーと細川茂樹以外の、賀集利樹も須賀貴匡も半田健人も椿隆之も水嶋ヒロも佐藤健も瀬戸康史も井上正大も桐山蓮も渡部秀も福士蒼汰も白石隼也も佐野岳も、現仮面ライダードライブを演じる竹内涼真も、みーーーーんな高岩成二なのです。 変身した後のキレのあるアクションも、カメラワークによりちゃんと本当に戦っているように見せる工夫が色々されているようです。 たとえば、パンチ一つにしても向かって正面で撮る際には、パンチは横に流します。そして殴られ役はヒーローに対して左右に広がり倒れます。 また、横からのカメラワークの際にはパンチは向かって正面に突き出し、殴られ役は後ろに倒れます。 そうすると実際には当たっていないパンチが本当にあたっている威力のあるパンチに見えるのです。 ライダーキックも、本当にあの姿勢で跳び蹴りをすると、顔は蹴る対象に対してあのような角度にはなりません。 ですがそれを足の裏から撮っても顔が見える角度に首をキープしているのです。 何故か。 そ れ は カ ッ コ い い か ら で す ! ! ヒーローは強くなくてはいけませんが、同時にカッコ良くないといけないのです! 魅せるアクションが出来ないと、メインのスーツアクターにはなれないのです。 しかし、高岩成二氏が初めてメインのヒーローを演じたのは1994年の忍者戦隊カクレンジャーのニンジャレッドだったので、実に21年も前の事です。 それから21年もの間、常に主役級の役を演じ続けてきました。 今日、引退のニュースを聞いた押川義文氏は2001年の仮面ライダーアギトの仮面ライダーギルスからメインヒーローを務め、2012年の特命戦隊ゴーバスターズから2014年の烈車戦隊トッキュウジャーまでレッドのスーツを着てきました。 その昔、ゴレンジャーのアカレンジャーから間で別の方が務める事がありつつも鳥人戦隊ジェットマンのレッドホークまで長くに渡りメインのレッドを演じていたスーアクヲタからはミスターレッドと呼ばれた新堀和男氏は自分のアクションを見て、足が真っ直ぐに上に伸びていない姿を見てご自身でメインヒーローから退くことを決めたという逸話を聞いた事があります。 仮面ライダー電王以来、特撮ヲタの一部からも注目されるようになってきたスーツアクターにも世代交代の時期が来たのかもしれません。 新堀氏以降長くレッドを演じていた福沢博文氏は現在は戦隊シリーズのアクション監督を務めてらっしゃいます。 私が愛していた岡元次郎氏も、メインのヒーローではなく悪の幹部側のスーツを着る事が多くなってきました。 そろそろ若手がメインヒーローのスーツを着る時期になってきたのかもしれません。 今月より始まる新しい戦隊シリーズの手裏剣戦隊ニンニンジャーでは、獣電戦隊キョウリュウジャーでキョウリュウバイオレットを演じた藤井祐伍氏がメインのアカニンジャーを演じるそうです。 若手がベテランを追い越してこそ、歴史は紡がれるものです。 でも、でもやっぱり高岩さんにはずっとライダーでいて欲しいよ~~~!と毎年新しい仮面ライダーの時期になると胃が痛くなるのもヲタとしては楽しいのです。 酒を飲みながら、本当は子供がいてもいい歳なのに「あのケツな!見ろよ!!」と友達を楽しむのもオツなものです。 余談ですが、ニンニンジャーのメインビジュアルが出た時「赤がオッシー(押川氏の愛称)じゃない気がする…」と言ったのを思い出しました。 ここまで来れば、もう立派なものです。 肩や腿、お尻のパーツだけで中に誰が入っているのかわかるようになります。 ちなみに私のマイフェイバリットライダーは仮面ライダー555ですが、マイフェイバリットスーツは仮面ライダーキバです。 地のスーツ(MIZUNO製)は、黒に限るよ!! 押川さん、長い間お疲れ様でした。 最後のお仕事が、映画での電王のデネブだと聞いて、少しだけ泣きました。 過去のヒーローが大挙して出る夏の映画の時とか、ちょっとだけ戻って来てくれると、ヲタは嬉しいです。 手裏剣戦隊ニンニンジャーのアカニンジャーを演じている藤井氏は8話までの代役との事でした。 元々、浅井宏輔氏が赤のスーツを着る事に決まっていましたが怪我をしてしまい急遽の代役だったそうです。 9話以降は、浅井宏輔氏がレッドとして演じるそうです。 浅井氏は、後楽園ゆうえんちのGロッソの侍戦隊シンケンジャーショーでレッドを演じていたいわばJAE(ジャパンアクションエンタープライズ)の順当出世のエリート! メインヒーローデビューおめでとうございます!! (もーりー)