松田聖子入門 中級編

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松田聖子の歌詞といえば、松本隆が有名ですが、デビュー曲『裸足の季節』から『夏の扉』までのシングル5曲は三浦徳子の作詞でした。 6 今回は「初期の5作に関係性はあるのか?」というテーマで、妄想の旅に出てみましょう。

ふだん音楽を聴くとき、歌詞毎の関係性など考えたこともありませんでした。

実際に調べてみても、例えば松本隆作詞の1作目『白いパラソル』と2作目『風立ちぬ』の主人公の状況は特に繋がっていません。 ではなぜ関係性があると考えたのでしょうか。

理由は3つあります。

1つは『チェリーブラッサム』でロック調の楽曲に同調するように、過去に決別するような、真っ直ぐ迷いのない女性像を描いていること。 これは明らかに作詞者(およびスタッフ)の何か強い意図、つまり起承転結の「転」ではないかと思いました。

2つ目は、最後の作詞となった『夏の扉』で彼から告白され、恋愛話が完結していること。

つまり意図的に自分(三浦)が最後の作詞として物語にケリをつけたかったのではないか、という想像です。

そして3つ目は、中川右介氏を著作に似た推察があったこと。

著作「松田聖子と中森明菜」(2014年朝日文庫/増補版)では、作曲した小田裕一郎とのコンビでの初期3作の関連性を解説しています。 それは『裸足の季節』では二人は映画に行くだけで海に行くのは妄想だったが、『青い珊瑚礁』ではついに海に行き、二人きりで流されてもいいと思うところまで発展する。『風は秋色』では二人に何かの行き違いがあったが、彼が追いかけてきて<あなたの胸の中で旅をする>という物語です。

実は、これが自分とは解釈が少し違うかなーと感じたことによります。

それでは早速、順を追ってみていきましょう。

1.プロローグ 『裸足の季節』 1 まず主人公の年齢ですが、松田聖子が18歳の時の歌ですから、素直に高校生として良いでしょうね。

主人公は高校1年生の”法子ちゃん”。

彼女には<夢の中のこととわかっていても><思い切りこたえる私>がいて、思い描く”彼”がいることは確かです。 ところでこの”彼”と『青い珊瑚礁』の”彼”は同じなのでしょうか。 先の中川氏の著作では同一人物として恋が続いていますが、自分はこの”彼”とは一旦ここで終ってしまったと思います。 何故なら、<背のびする季節と言われたけれど>と恋そのものに憧れつつ、<誘われた映画はまぶしすぎたの>と実際にデートはしたものの<ハラハラし通しのエピローグには思わずうつむいた私です>と、思い描いていた「恋」とは違っていたからです。結局、その恋は成就しなかったのでしょう。 青春の一頁、法子ちゃんのほろ苦い恋愛デビューだったのです。

2.2作目 青い珊瑚礁 2 さて、高校2年生になった法子ちゃん。

夏休みの間、彼女は強烈に一目惚れした彼に出会ってしまいました。 <ああ、私の恋は南の風に乗って走るわ> <ああ、青い風切って走れ あの島へ> いきなりサビで始まる歌詞は、最初からパワー全開、妄想大爆発です。 <二人っきりで流されてもいいの あなたが好き!> 前回は躊躇してしまった恋も、今回は最初から一気にヒートアップ、一切の戸惑いはありません。とにかく”彼”が好きで仕方がないのです。 それでは、では実際に二人は付き合っていたのでしょうか? <二人っきりで流されてもいいの>を彼女の願望とすると<二人の頬が近づいてゆくのよ>も同じく願望です。 この年に公開されたブルックシールズの映画「青い珊瑚礁」では孤島の二人は結ばれますが、残念ながらまだ片思いだったのでしょう。 実際に2人が付き合っているという描写も、歌詞の中にはまだありませんでした。

3.3作目 風は秋色 akiiro ”彼”を想ったまま夏が過ぎ、やがて秋になりました。 残念ながら、まだ恋は進展してません。 <忘れるために訪れた海辺の街> 憧れていた”彼”ですが、単に友達のままなのか、それとも別の彼女がいたのか・・・、残念ながら、まだ告白されていません。 それなら、いっそ忘れよう!と海辺の街を訪ねてみたものの、 <恋する切符を手に入れたこの渚で>2本のストローが揺れるソーダのグラスを見てしまい、思わず泣いてしまいます。 <ちぎれた愛が指に髪に離れない> と、忘れることも出来ません。 <遠くでほほえむ あなたをあなたを感じてるわ> と、離れていても大好きな彼を想い、 <Oh、ミルキィ・スマイル 抱きしめて あなたの腕の中で旅をする> <Oh、ミルキィ・スマイル 受け止めて やわらかなその愛で> と願う、切ない乙女心です。 さて、彼女の恋はどうなるのでしょうか?

4.4作目 チェリーブラッサム 4 先ほど起承転結の「転」になったと書いた曲がこちらです。

高校3年生になった法子ちゃん。その春、ついに彼女は決意しました。 <何もかもめざめていく新しい私> <私は今愛のために 激しい風吹かれて> 今まで色々あったけれど、昨日の私と今日の私は違う! 何故なら、 <あなたとの約束が叶うのは明日> いよいよ、彼と初デートだからです! きっと、彼女は思い切って彼を誘い、約束をこぎつけたのでしょう。 <胸に抱いた愛の花 受け止めてくれるでしょう> でも、なかなか告白が出来なかった彼女、きっとまだ「好きだ」と言っていないのでしょうね。 それでも、 <走り出した船はただ あなたへと続いてる> と彼女は固い決意を固め、恋への一歩を踏み出すのです。 いや、書いていてドキドキしますね(苦笑)。

5.エピローグ 夏の扉 5 彼と初デートは無事に成功、二人は友達としてスタートしました。

しかし彼はなかなか「告白」してくれません。 痺れを切らした彼女、夏らしく、思い切って髪をショートカットにしたのに、<違うひとみたいと あなたは少し照れたよう 前を歩いてく> 彼は<綺麗だよ>とも言ってくれません。 <あなたはいつも”ためらい”のヴェールのむこうね> 彼女は悩んでいます。どうしたら好きと言ってくれるのか・・・、 しかしクライマックスは突然現れます。 <あなたは道の向こう側 何か叫んでる> <”好きだよ”と言ってるの まさか嘘でしょう> ここでなんと、まさかの衆人環視の中での愛の告白です。 思いつめた彼も清水の舞台から飛び降りる心境だったでしょう。 <みんなが見てる目の前で どうかしているわ> と戸惑いつつも、もちろん彼女が本気で怒っている訳ではありません。 <フレッシュ!フレッシュ!フレッシュ!夏は扉を開けて 裸の二人包んでくれる> いやー、良かったですね! 長かった物語もここで完結、めでたしめでたしです。 きっと三浦徳子からの主人公への最後のプレゼントだったのかもしれません。

いかがですか。かなり強引なところもありますが、そこはお許し下さい。 三浦徳子はここで作詞から降り、その後は松本隆に引き継がれるのは 皆様ご存知の通りです。 自分の解釈はちょっと違うよ!というアナタ、是非たいむましんへ投稿下さい。 お待ちしております!


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