漫画家アシスタント物語 番外編「それでも、さがみゆき先生は怒らなかった」その6

イエス小池

漫画家アシスタント物語番外編「それでも、さがみゆき先生は怒らなかった」その1はこちらから。

 

                   その6

このエッセイのタイトルには、「さがみゆき先生は怒らなかった」と書いていますが、アシスタントのせいで締め切りが遅れた挙句に、先生自身で背景を描かなくてはならなくなった・・・・・・・・まったく、とんだ災難です・・・・・・・・怒らずにいられるものではないと思います。

表面的には菩薩の様に優しい表情でも、腹の中では鬼の様な表情でおられたのだと・・・・・・・

それなのに、私は、さが先生のやさしさに甘え切っていましたので、軽く謝罪して全てを済ませてしまうほどいい加減な男でした。

今更、アシスタントに怒ってみたところで失われた時間が取り戻せる訳もない・・・・・・・・・疲れる事をさが先生は避けただけなのかもしれません・・・・・・・

実は、この辺りの経緯についてハッキリとした記憶がありません。(自分に都合の悪い事は、スッパリ忘れる性格なのです)

ただ、結論としては、単行本を一冊手伝っただけでアシスタントを辞めてしまったわけです。

コタツでいい加減な仕事をして、ゴロゴロと怠惰に過ごす生活によほど自己嫌悪を感じていたのか・・・・・・・・・

私の様な者でも必要としてくれたさが先生には、あっさりと辞意を告げて・・・・・・・・・新しい状況へ進んでいきたかったのかも知れません。

さが先生の仕事を紹介してくれた漫画同人誌の会長からは、随分と怒られてしまいました。

 「あんなに良い先生はいないぞ! それなに、お前、何やってんだよ!」

この事があってからこの会長さんには顔向けが出来ず・・・・・・・・以来、40年以上絶縁状態です。

単行本は、仕上がってから2ヵ月ほどしてから出版されました(さらにその2ヵ月ほど後で原稿料や印税が支払われます)

私にとっては、初めての漫画関係の仕事ですので、親や親類にも報告したのですが・・・・・・・・

単行本を見た従妹の一人が・・・・・・・率直な感想を一言・・・・・・・・・・・・

 「真っ黒な背景ばかりで、これじゃ手抜きにしか見えないね」

・・・・・・ってなキビシイご賢察・・・・・・・・読者って鋭いな・・・・・・・・・と冷や汗が出たのを覚えています。

もっとも、この作品「人喰い屋敷」(ひばり書房)は、真っ暗な洞窟で人を食べて生きる女の話ですので、画面が全体に暗いのは仕方がないのです・・・・・・・・もっとも、その暗さを私は、「ベタで済ませられるぜ、エッヘヘ」と喜んでいたのですから・・・・・・・お恥ずかしい限りです。

ちなみに、この単行本の巻末には、アシスタントのページとして1Pだけ自由に描かせてもらうコーナーがありました。

そこで私は、制作上の挨拶や自画像を描いてみたわけです。(図参照)

単行本・自画像ssこのイラストは、さが先生の単行本「人喰い屋敷」の巻末に載せていただいた「アシスタントのページ」です。自由に自己紹介のイラストを描いてよいと言われたので、仕事より真面目に描きました。(本編の背景画より良く描けています)

 

長髪に度の厚い眼鏡、気取って描いていますが、現実は・・・・・・・・臭い3畳間と裸電球、万年床とエロ本、即席ラーメンとタバコの吸い殻・・・・・・・・・改めて思うのは、漫画ってやっぱり「夢」なんですね・・・・・・・・・・。

今、62歳になる私にとって、さが先生との数ヵ月は「真っ暗な青年期」を代表する一時期だったと思います・・・・・・・短いけれども忘れる事の出来ない貴重な体験だったのですが・・・・・・・・・・

絶対に漫画家にはなれないタイプの典型的なダメパターンそのものです。

そんな私がビッシっと鍛えられるのが、しばらくしてから仕事をする事になるかわぐちかいじ先生との出会いでした。

さて、さが先生とのお話はこれくらいですが・・・・・・・・

次回は、最後にさが先生と再会した時の事を書かせていただきたいと思います。

さが先生のところを辞めて、アルバイトを探したり、他の作家のアシスタントをしたり・・・・・・・・いろいろありましたが、ゴミの様に東京の中をフワフワと漂って行った先に、また、さが先生との再会がありました・・・・・・・というお話です。

次回、最終回です・・・・・・・・あまり期待しないで待っててね!

 

漫画家アシスタント物語 番外編「それでも、さがみゆき先生は怒らなかった」その7 最終回はこちら。

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1955年(昭和30年)生まれ、高卒。74年、19歳で最初のアシスタントさがみゆきに師事。20歳でかわぐちかいじ、22歳で村野守美、78年、23歳から現在までジョージ秋山に師事。87年「ヤングジャンプ青年漫画大賞」で準入選、同作品でデビュー。96年単行本「サイコホスピダー」出版。08年ブログ書籍「漫画家アシスタント物語」出版。


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